十の加護を持つ元王妃は製菓に勤しむ

水瀬 立乃

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不穏な再会(ルフナ視点)

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目が覚めると、俺はベッドの上にいた。
ここがどこだかわからないけど、どうやら俺は奇跡的に助かったらしい。
生きていたことに安堵すると、徐々に意識も現実に戻って来る。
試験はどうなったんだ?
セイン達は無事に戻れたのか?
穴に落ちた後何があった?
がばっと勢い良く起き上がって、不可思議な異変に気が付く。
俺の身長の倍以上はある深い穴に落ちたのに、全身のどこにも痛みがこない。
服から出た手足を見てみても、多少汚れてはいるが傷らしきものはなく、イーディアグルに抉られたはずの肩に触れてみても傷跡すらない。
何事が起きたのか理解しきれていない内に、聞き覚えのある声が耳に飛び込んで来た。

「――目が覚めたか。気分はどうだ?水は飲めそうか?」

驚いて声のした方を振り向くと、ベッド脇に置かれた椅子にグレイル様が座っている。
声を掛けられるまで全く気が付かなかった。
お忙しい身のはずなのに、いつからここにいたんだろう…。
戸惑いながらも差し出されたグラスを有り難く受け取って、喉を鳴らして飲み干した。

「ありがとう…ございます。すみません、グレイル様にこのような世話をさせてしまって…」
「私が自ら看病を申し出たんだ。気にするな」
「それは……。私に何をお聞きになりたいのでしょうか」

第一騎士団の団長で今回の試験監督も務めている彼が、平民の俺を気にかけはしても貴重な時間を割いてまで看病なんてするわけがない。
そうするに値する何かしらの理由があるはずだ。
単刀直入に伺うと、室内の空気が一変した。

「……察しの良いことだ、君は。表情には気を付けていたんだがね」
「何かあったのですか…?」
「自覚はない…か。これを見れば思い当たるかな?」

貼り付けたような微笑みから滲み出る威圧感に自然と背筋が伸びる。
口調が穏やかなだけに余計に恐怖心が煽られる。
何を聞かれるのかといくつか推測を重ねてみても、どれもしっくりこない。
数秒後にグレイル様が差し出したのは、銀のトレーだった。
自然とその上に乗っているものに視線が向く。

「これは君が身に付けていたものだ」

それは俺が首から下げていたあの指輪だった。
意識を失う前に桜色に光ったように見えたけど、今は特に変わった様子はない。
指輪の横には千切れて端が解けかけた組紐が丁寧にまとめられていた。

「君はこれをどこで手に入れた?内容如何によっては、君を牢に放り込むことになる」
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