1 / 51
第1話~波のうた~
誠広さん(1)
しおりを挟む
◇
──海と空が、窓から一緒に見える。
そんな家に住むのが夢だった。
◇
「こら、夏実!」
「──げっ、姉ちゃん」
声の時点でわかっていたけど、振り返った先にいたのはやっぱり春香姉ちゃんだった。気づかれないように家を出てきたつもりなのに、どうしてわかったのだろう。
「『げっ』じゃない。あんた今日も宿題ほったからしでしょ」
「いいじゃん、だってまだ7月だよ」
「そんなこと言って、去年の休み、最後の3日間で受験生のあたしにまで手伝わせて徹夜したの、誰だったっけ?」
「……今年はやらない。約束する」
姉ちゃんは呆れたように鼻を鳴らした。
「当たり前でしょ、頼まれたって手伝わないわよ。だからさっさと帰ってさっさと宿題する」
「今日は見逃してよ。もう約束しちゃってるから」
言いながら、手にした捕虫網を振って見せる。今日はクラスの連中が集まっての虫捕り勝負で、1位は他の皆から1週間アイスをおごってもらうことになっているのだった。
「だったら、あたしが友達に頼んで帰らせてもらうから。ついてくわよ」
「……ええ~、それはカンベンしてよ。ねぇ、お姉ちゃん」
「甘えてもダメ。母さんに絶対連れて帰ってこいって言われ──ってこら、ちょっと!」
「ごめん、ほんとに今日だけ!」
「待ちな……夏実、前!」
「え、──うわっ」
すぐ前を通り過ぎかけた一軒家、そこの門から出てきた人とまともにぶつかってしまった。勢いで道に尻餅をついてしまい、ひっくり返りかける。姉ちゃんが慌てて駆け寄ってきて、
「何やってんのよもう──すみません、大丈夫ですか?」
当然ではあるけど、気遣いはぶつかった相手に向けられた。ひょろりとした感じの、20代後半ぐらいの男の人は、よろめいた拍子に落としたらしいスケッチブックを拾いながら答えた。
──海と空が、窓から一緒に見える。
そんな家に住むのが夢だった。
◇
「こら、夏実!」
「──げっ、姉ちゃん」
声の時点でわかっていたけど、振り返った先にいたのはやっぱり春香姉ちゃんだった。気づかれないように家を出てきたつもりなのに、どうしてわかったのだろう。
「『げっ』じゃない。あんた今日も宿題ほったからしでしょ」
「いいじゃん、だってまだ7月だよ」
「そんなこと言って、去年の休み、最後の3日間で受験生のあたしにまで手伝わせて徹夜したの、誰だったっけ?」
「……今年はやらない。約束する」
姉ちゃんは呆れたように鼻を鳴らした。
「当たり前でしょ、頼まれたって手伝わないわよ。だからさっさと帰ってさっさと宿題する」
「今日は見逃してよ。もう約束しちゃってるから」
言いながら、手にした捕虫網を振って見せる。今日はクラスの連中が集まっての虫捕り勝負で、1位は他の皆から1週間アイスをおごってもらうことになっているのだった。
「だったら、あたしが友達に頼んで帰らせてもらうから。ついてくわよ」
「……ええ~、それはカンベンしてよ。ねぇ、お姉ちゃん」
「甘えてもダメ。母さんに絶対連れて帰ってこいって言われ──ってこら、ちょっと!」
「ごめん、ほんとに今日だけ!」
「待ちな……夏実、前!」
「え、──うわっ」
すぐ前を通り過ぎかけた一軒家、そこの門から出てきた人とまともにぶつかってしまった。勢いで道に尻餅をついてしまい、ひっくり返りかける。姉ちゃんが慌てて駆け寄ってきて、
「何やってんのよもう──すみません、大丈夫ですか?」
当然ではあるけど、気遣いはぶつかった相手に向けられた。ひょろりとした感じの、20代後半ぐらいの男の人は、よろめいた拍子に落としたらしいスケッチブックを拾いながら答えた。
0
あなたにおすすめの小説
潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい
葉方萌生
ライト文芸
淡路島で暮らす28歳の城島朝香は、友人からの情報で元恋人で俳優の天ヶ瀬翔が島に戻ってきたことを知る。
絶妙にすれ違いながら、再び近づいていく二人だったが、翔はとある秘密を抱えていた。
過去の後悔を拭いたい。
誰しもが抱える悩みにそっと寄り添える恋愛ファンタジーです。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
下宿屋 東風荘 7
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。
狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか!
四社の狐に天狐が大集結。
第七弾始動!
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
【完結】曖昧な距離で愛している
山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。
その出会い、運命につき。
あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。
妹のために愛の無い結婚をすることになりました
バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」
愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。
婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。
私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。
落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。
思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる