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第1話~波のうた~
雪乃さん(5)
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けれど実際はなんだか、ドラマでよく見るような別れ話みたいに聞こえる。見つけたカーテンの隙間から中をのぞいてみて、思わず「……え?」とつぶやいていた。
部屋にいるのは誠広さん一人だった。電気スタンドの明かりだけの中、椅子に腰かけ、誰もいない空間を見ながら一人で二人分の声を出して、しゃべっている。
その光景に戸惑っている間も、興奮し続ける女の人の声を、誠広さんの声がなだめ続けていた。そして、
「もうやめよう。──いつまでも、そうやって、僕になったままで過ごすつもり?」
そう言った途端、誠広さんの姿がゆらりと揺れて、半透明になった。それに重なって、全く同じ姿勢と服装で、女の人が椅子に座っているのが見えた。
会ったことのない人だ──けれど顔は一度見たことがある。誠広さんに見せてもらった写真で。
「雪乃さん?」
自分で意識したよりも大きな声になっていたらしい。椅子を倒しそうな勢いでその人が立ち上がり、駆け寄ってくる。
カーテンと窓を開けたのは、見間違えようもなく女の人だった。茫然としている。
「……夏実ちゃん」
つぶやいた雪乃さんの顔は、青白かった。月明かりのせいだけではないだろうと思う。
その雪乃さんに、また人影が重なった。
「──誠広さん」
なんて言えばいいのか、そもそも自分が何を言いたいのかさえ、見当もつかない。わかったのは、今まで会っていた人が本当は誠広さんじゃなく、雪乃さんだったということ……いや、その言い方も正しいのかどうなのか。
ごめんね、と誠広さんの声が言った。
「だますつもりじゃなかったけど……結果的にそうなっちゃったね」
「え──」
「雪乃、やっぱりもう潮時だよ。今やめないと、遠からずこの子以外にも知られてしまう。そうなったら君の立場が危うくなる」
「……そんなの」
「どうでもいい、なんて言うんじゃない」
ずっと穏やかだった誠広さんの表情と声が、一瞬厳しくなった。雪乃さんがはっと肩を震わせる。
部屋にいるのは誠広さん一人だった。電気スタンドの明かりだけの中、椅子に腰かけ、誰もいない空間を見ながら一人で二人分の声を出して、しゃべっている。
その光景に戸惑っている間も、興奮し続ける女の人の声を、誠広さんの声がなだめ続けていた。そして、
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そう言った途端、誠広さんの姿がゆらりと揺れて、半透明になった。それに重なって、全く同じ姿勢と服装で、女の人が椅子に座っているのが見えた。
会ったことのない人だ──けれど顔は一度見たことがある。誠広さんに見せてもらった写真で。
「雪乃さん?」
自分で意識したよりも大きな声になっていたらしい。椅子を倒しそうな勢いでその人が立ち上がり、駆け寄ってくる。
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