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第2話~風のこえ~
「ひーたん」(4)
しおりを挟む他にも話したいことがあると言えばあるのだが、その話をいきなり始めるのはためらわれた。何の前置きもなしに言うには、唐突すぎると思うからだ。
迷っていたその時、陽南がくるりと体ごと振り返った。
まともに視線が合う。陽南の目の中で様々な感情が行き来するのを、映見子は静かに見守った。
やがて、感情は一つの位置に落ち着いたらしい。何か覚悟を決めたような表情を浮かべながら、陽南は口を開いた。
「変な人ですね、お姉さんて」
「そう?」
「なんでそんなにわたしを気にするんですか。家族でも、友達でもないのに」
「私だけじゃないわよ。近所の人たちだって」
「知ってます。でもそれは、──珍しい動物とか、自分に関わりない事件のニュースを見るような気持ちででしょう」
好奇の目で自分を見る人のことを、陽南はずいぶんと辛辣に表現した。それが普通の反応なのもわかってます、と付け加えてから、
「だけど、お姉さんは最初からそうじゃなかった」
「──どうしてそう思うの?」
少しの間。
「……目が、他の人と全然違うから。初めからお母さんに似てて、でもお母さんよりももっと近い人みたいな、そんな気がする時もあって」
一緒にいるとなんだか落ち着かなくなって、それで映見子をつい避けていたのだ、という。陽南のその言葉に、映見子は少なからず驚かされた。けれど意外なことではないかも、とも思った。彼女の持つ「勘」が、はっきりとではないにせよ、そのことを感じ取っている証拠と言える。
それでも、口にするにはもう少しの勇気、あるいは何かきっかけがほしい。そう考えていると、
「ずっとこのままなんて、無理だってわかってます」
にわかに、陽南の口調が強くなった。
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