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第3話~空のおと~
同級生の彼女(7)
しおりを挟む「どうしてって、……その、つまり」
彼女は、おかしく思わないのだろうか。
弱い部分があることを遅まきながら認識した、今だから思う。この町にいた頃の自分は、本当に可愛げがなかった。良い成績を維持し、他の点でも「優等生」でいることがアイデンティティだと信じて、それだけを目的に日々を過ごしていた。周りの反感をどれだけ買おうと、かまわなかった──孤独感が頭をもたげることがあっても、気づかないふりをしてきた。
そんな自分が、他人からどう見られていたかは推して知るべしだ。
人間関係で鬱病になって仕事を辞めた、早い話が挫折したかつての「優等生」の姿は、憐れまれたり面白がられたりする対象でしかない。この1ヶ月ずっと、良行自身はそう思ってきた。
けれど。
「だって、苦手な人が一人や二人いても当たり前じゃない? まあ、誰とでも仲良くなれるっていう得な人も、たまにはいるかも知れないけど」
誰もが当たり前と認めているかのように、繭子は言った。迷いがかけらもない口調で。
その場限りのお愛想ではない、本心からの言葉だと素直に思えたのは、自分の感情のせいだろうか──こうして向かい合っていて、いくらかの緊張は当然あったが、それは決して重苦しいものではなかった。まだ担当医師とでさえ、話していて息の詰まる心地が時折するのに、今は違う。
彼女といると例えば、嘘をついたり隠し事をすることが、無意味に思えてくるのだった。
同級生だった中学の頃、もしこんなふうに二人きりになっていたら。会話などできないほどに上がってしまい、いっそ逃げ出したいと思ったことだろう。だが今は、年月の経過のおかげか多少は成長したということか、繭子に対する感情は落ち着いたものに変化しているのが自分でわかる。
そして、再会してからの二時間弱で、それが形を変えないままに熱を持ち始めているのも──
「ところで小野寺、さんは、仕事以外では今は」
「呼び捨てでかまわないわよ。……もうすぐ、小野寺じゃなくなるけど」
少し恥ずかしそうに、けれど確実に嬉しさをともなった、打ち明け話のような発言。
席に着いた時にはもう気づいていた。微笑む口元を押さえる、彼女の左手の指輪。
おめでとう、と言うのにそれほど苦労せずに済んだ。「ありがとう」と繭子は笑みを深める。
そのタイミングを狙うかのような、ためらいがちな声がすぐ横で聞こえた。そちらを見ると、お盆を持ったウエイトレス。忘れかけていたが、追加の注文が運ばれてきたのだ。
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