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不浄の門編
海魔 その①
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シンシアの救出の後、様子見で一週間滞在したが何事も無かったので、アルカド伯爵の屋敷を出発する事にした。
「お世話になりました」
「何を言っている、助けてもらったのは私達だ」
シンシアが、いつものドレス姿ではなく冒険者のような格好をしている。元気になったのだ、きっと久々に何処かに行くのだろう。良かったな、などと思いながらシンシアを眺めていると、伯爵がコホンと咳ばらいをした。
「それでだ。私も考えたのだが、シンシアはこの通り、とても美しいのだ。良からぬ事を考える奴が出てきて、また同じ様な事が起こらんとも限らん。そうだろう?」
「有り得ますね」
「うむ、シン殿なら解ってくれると思っていたよ。そこでだ、一番安全な所は何処かと?考えた結果、シン殿に娘を預ける事にした。宜しく頼む」
「はぃ~?」
「シン様、宜しくお願いします」
……ああ、ナーシャ様のどや顔が見える様だ。これも神の思し召しなら、当然の成り行きか。
「リサ、レナはいいのか?」
「もちろんです」
この一週間で3人は仲良くなったからな、根回しはバッチリと言う事か?
「解りました。しかし危険な旅になりますよ」
「それは承知している。シンシアも覚悟の上だ。だが、シン殿が護ってくれるだろう、違うかね?」
「はい、必ず」
「ふふ、頼む」
「お父様、行って参ります」
「しっかりな」
「シルバーも身体に気をつけるのですよ」
「……お嬢様」
不浄に取り憑かれていた獣人の子達は、伯爵が面倒を見てくれる事になった。これで、お互いに幸せになるだろう。
獣人の国領に入り、海岸線の街道を進んでドワーフの国に行くことにした。
今回は、理由の解らない不浄の呪いの様な物で、伯爵もシンシアも不覚をとったが、シンシアは相当な実力者だ。吸血鬼のお嬢様だからな……そこが、ちょっと心配なのだが。
「シンシア、少し聞き難いのだが……」
「はい、何でしょう?」
「食事はどうなっている?」
「……、あ~、大丈夫です。私は人の血は必要としません。たまに、動物か魔物の血を少し頂けば、すみます。お母様の血の方が強く出たのだと思います」
「そうか……お母様には、お会いしなかったが?」
「お母様は私が小さい時に、亡くなりました」
「……伯爵はそんな可愛い1人娘を、よく危険な旅に出したね」
「お父様は、私の頼みは大抵きいてくれます」
「ふふ、そうか。そうそう、仲間を紹介しよう」
「えっ?」
空間からミイが飛び出て、シンシアの膝の上に乗る。
「まぁ、可愛い」
「ミイだ、宜しくな。もう1頭ライがいるが、さすがに馬車の中では出せないんだ」
「会うのが楽しみですね」
俺達の他に客はいないので、気楽に過ごす事が出来た。このまま何事もなく港街、トロイカに着いて欲しいものだ。
神様が俺の願いをきいてくれたのか、問題なく無事にトロイカに着くことが出来た。しかし、街に入った途端、雲行きが怪しくなった。
何人かの若者が大声で何かを訴えている。
「何事でしょうか?」
「獣人ではないようですね」
「あの人達は、西に在る島国の海人族のようです」
「海人族か?だとすると、自分の国を出るなんて珍しいな」
「そうですね。余程の事が有ったのでしょう」
海人族の若者達が一生懸命に話をするが、獣人の人達はチラッと見るだけで、立ち止まって聞く人はいない。いつから話していたのか判らないが、全く相手にしてもらえないので、若者達は座りこんでしまった。
そこに1人の獣人の女の子が駆け寄って行って、暫く話をしたかと思うと、みんなで何処かに行ってしまった。
「よく判らんが、取り合えず良かったのかな?」
「そうですね」
「さぁ、宿を探そう」
「はい」
3件目の宿でようやく部屋が空いていた。最悪、安全で全て揃っている時空間が有るので、問題は無いのだが、微妙に味気無いので、やはり宿が良い。
夕食は宿の食堂で食べる事にする。注文を取りに来た女の子は、何処かで見た顔だ。
「あっ、さっきの海人族の人達と話をしていた娘ですね」
「本当ですね」
奥の大きなテーブルで、かなり腕のたつ強そうなさ虎族の男とさっきの海人族の人達が話をしている。
「ねえ君、あの虎族の人は誰かな?」
「……あれは私の父ですが、何か?」
「いや、かなり強そうなんでね、気になって」
「ああ~、成る程。私の父はここの店主兼、ギルドマスターです」
「あっそうなの?どうりで。ありがとう」
「いいえ、ご注文は?」
「おっと、皆、好きに頼んでくれ」
「「「はい」」」
ーー
「ここのギルドマスターが、ちゃんと話を聞いてくれたんですね」
「良かったですね」と、リサが言った途端に海人族の声が響き渡る。
「そんな悠長な事を言っている場合で、は有りませんよ!」
海人族の女性が、声を荒らげて立ち上がった。食堂にいる全員がぎょっとして見る。
「落ち着け!まぁ、座れ」
「もう一刻の猶予も無いと思って下さい」
「しかしな、簡単には見つからないぞ。手掛かりが白い漁船だけではな」
ギルドマスターの声も大きくなっているので、ここまで聞こえてくる
「危険が迫っているのも解った。なら、なおさら冷静になれ。明日朝一番で冒険者に召集をかけて、聞いて見る。いいな?」
「……解りました」
う~ん。気になる。首を突っ込みたくは無いが、 ちょこっとなら良いよね。俺は、明日ギルドに顔を出す事に決めた。
「お世話になりました」
「何を言っている、助けてもらったのは私達だ」
シンシアが、いつものドレス姿ではなく冒険者のような格好をしている。元気になったのだ、きっと久々に何処かに行くのだろう。良かったな、などと思いながらシンシアを眺めていると、伯爵がコホンと咳ばらいをした。
「それでだ。私も考えたのだが、シンシアはこの通り、とても美しいのだ。良からぬ事を考える奴が出てきて、また同じ様な事が起こらんとも限らん。そうだろう?」
「有り得ますね」
「うむ、シン殿なら解ってくれると思っていたよ。そこでだ、一番安全な所は何処かと?考えた結果、シン殿に娘を預ける事にした。宜しく頼む」
「はぃ~?」
「シン様、宜しくお願いします」
……ああ、ナーシャ様のどや顔が見える様だ。これも神の思し召しなら、当然の成り行きか。
「リサ、レナはいいのか?」
「もちろんです」
この一週間で3人は仲良くなったからな、根回しはバッチリと言う事か?
「解りました。しかし危険な旅になりますよ」
「それは承知している。シンシアも覚悟の上だ。だが、シン殿が護ってくれるだろう、違うかね?」
「はい、必ず」
「ふふ、頼む」
「お父様、行って参ります」
「しっかりな」
「シルバーも身体に気をつけるのですよ」
「……お嬢様」
不浄に取り憑かれていた獣人の子達は、伯爵が面倒を見てくれる事になった。これで、お互いに幸せになるだろう。
獣人の国領に入り、海岸線の街道を進んでドワーフの国に行くことにした。
今回は、理由の解らない不浄の呪いの様な物で、伯爵もシンシアも不覚をとったが、シンシアは相当な実力者だ。吸血鬼のお嬢様だからな……そこが、ちょっと心配なのだが。
「シンシア、少し聞き難いのだが……」
「はい、何でしょう?」
「食事はどうなっている?」
「……、あ~、大丈夫です。私は人の血は必要としません。たまに、動物か魔物の血を少し頂けば、すみます。お母様の血の方が強く出たのだと思います」
「そうか……お母様には、お会いしなかったが?」
「お母様は私が小さい時に、亡くなりました」
「……伯爵はそんな可愛い1人娘を、よく危険な旅に出したね」
「お父様は、私の頼みは大抵きいてくれます」
「ふふ、そうか。そうそう、仲間を紹介しよう」
「えっ?」
空間からミイが飛び出て、シンシアの膝の上に乗る。
「まぁ、可愛い」
「ミイだ、宜しくな。もう1頭ライがいるが、さすがに馬車の中では出せないんだ」
「会うのが楽しみですね」
俺達の他に客はいないので、気楽に過ごす事が出来た。このまま何事もなく港街、トロイカに着いて欲しいものだ。
神様が俺の願いをきいてくれたのか、問題なく無事にトロイカに着くことが出来た。しかし、街に入った途端、雲行きが怪しくなった。
何人かの若者が大声で何かを訴えている。
「何事でしょうか?」
「獣人ではないようですね」
「あの人達は、西に在る島国の海人族のようです」
「海人族か?だとすると、自分の国を出るなんて珍しいな」
「そうですね。余程の事が有ったのでしょう」
海人族の若者達が一生懸命に話をするが、獣人の人達はチラッと見るだけで、立ち止まって聞く人はいない。いつから話していたのか判らないが、全く相手にしてもらえないので、若者達は座りこんでしまった。
そこに1人の獣人の女の子が駆け寄って行って、暫く話をしたかと思うと、みんなで何処かに行ってしまった。
「よく判らんが、取り合えず良かったのかな?」
「そうですね」
「さぁ、宿を探そう」
「はい」
3件目の宿でようやく部屋が空いていた。最悪、安全で全て揃っている時空間が有るので、問題は無いのだが、微妙に味気無いので、やはり宿が良い。
夕食は宿の食堂で食べる事にする。注文を取りに来た女の子は、何処かで見た顔だ。
「あっ、さっきの海人族の人達と話をしていた娘ですね」
「本当ですね」
奥の大きなテーブルで、かなり腕のたつ強そうなさ虎族の男とさっきの海人族の人達が話をしている。
「ねえ君、あの虎族の人は誰かな?」
「……あれは私の父ですが、何か?」
「いや、かなり強そうなんでね、気になって」
「ああ~、成る程。私の父はここの店主兼、ギルドマスターです」
「あっそうなの?どうりで。ありがとう」
「いいえ、ご注文は?」
「おっと、皆、好きに頼んでくれ」
「「「はい」」」
ーー
「ここのギルドマスターが、ちゃんと話を聞いてくれたんですね」
「良かったですね」と、リサが言った途端に海人族の声が響き渡る。
「そんな悠長な事を言っている場合で、は有りませんよ!」
海人族の女性が、声を荒らげて立ち上がった。食堂にいる全員がぎょっとして見る。
「落ち着け!まぁ、座れ」
「もう一刻の猶予も無いと思って下さい」
「しかしな、簡単には見つからないぞ。手掛かりが白い漁船だけではな」
ギルドマスターの声も大きくなっているので、ここまで聞こえてくる
「危険が迫っているのも解った。なら、なおさら冷静になれ。明日朝一番で冒険者に召集をかけて、聞いて見る。いいな?」
「……解りました」
う~ん。気になる。首を突っ込みたくは無いが、 ちょこっとなら良いよね。俺は、明日ギルドに顔を出す事に決めた。
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