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視えない敵の影 編
エルフの森
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女性達の眠っている馬車を回収して謎の集団に案内されたのは、なんの変哲もない小さな村だった。若者達が屯っている木で造られた門をくぐり中に入る。
『中々の実力者揃いのようね』
『確かにな』
さすがに魔人はいないみたいだ。
集会所らしき建物に入ると俺達と話したリーダーの男が奥の棚を横にずらす。現れたのは地下に続く階段だった。
やはり目的を持って何らかの活動をしているようだ。
地下は1部屋だけでなく食糧が蓄えれた炊事場とかなりの数の宿泊施設が有った。有事の際はここに立てこもる事が出来る。
大きなテーブルのある会議室の様な部屋に通され席につくと、さっき村の門の所にいた娘がハーブティーを出してくれた。
皆がハーブティーに一口つけたところでリーダー役の男が切り出した。
「君達がいなければ我々は全滅していただろう。あらためて感謝する。この恩に報いたいが金銭や高価な物は見ての通り皆無だ、許してくれ」
「俺達は金には困っていない。できれば少し話が聴きたいんだが?」
「……敵ではなさそうだし大まかで良いのなら」
「ああ、それで良い」
「で、何が知りたいんだ?」
「さっき奴らを人では無いと言った。雰囲気からして俺は人外の者だと言っていると判断したんだが、あんた達は識別出来るのかい?」
「いや、我々にその能力は無い」
「じゃ、なぜ判る?」
「或る御方からの情報だ。それと識別が出来る魔道具がある」
「或る御方か……」
そいつは魔人だと判っているって事だよな?思いを巡らせているとセシリアが心配そうな顔で手を握って来た。
そうか、セシリアも魔人だった。
「その魔道具って、今も持っているのかい?」
「ああ、ここに有る」
ポケットから出て来たのは紫色の水晶の様なものだった。
「人外の者が居れば色が変わる。ここにはいないので安心してくれ」
どうやらセシリアには反応しないらしい。セシリアもホッとしている。
「それも或る御方から?」
「そうだ」
「俺達がその御方に会うことは可能かい?」
「それは難しい。たぶん実際にお会いしたことがあるのはほんの一握り……いや1人か2人だと言われている」
「なるほどね」
「どうするつもり、ヘイシロウ?」
「う~ん」
カマをかけてみるか。
「では伝言を頼めるか?」
「内容にもよるが」
「なに、簡単さ。"魔人"とだけ伝えてくれれば良い」
「……解った、俺の名はリベラだ。あと、これを渡しておこう。大切にしてくれ」
リベラが差し出したのは古びた銀貨だった。
ーー
建物の外に出ると真っ暗だったので、一晩村に泊まる事になった。
「どう思う?」
「或る御方は魔人の事を知っているんじゃないかな」
「そうよね」
「その銀貨は古代の銀貨だぞ。滅多にお目にかかる事は出来ない代物だ」
「お宝じゃない、金目の物は無いと言ってたのに」
「宝物として使うわけじゃないからだろうね」
「何かあったら向こうから接触して来るという事かしらね?」
「たぶん」
ーーーー
翌日、流石にあまりのんびりはしていられないので朝一番で出発する。
「ゆっくり休めたかな?」
「ああ、お陰様で」
「我々の仲間は各地にいる、力になれる時もあるかもしれん」
「そうだね、その時は頼むよ」
「ああ、任せろ」
「寄り道はしたけど、面白い繋がりが出来たかも」
「そうね」
「良い方に転がれば良いです」
村を出てから俺達はひたすらバッカスニア帝国領を北上して行く、そして村や街をいくつも通り2ヶ月が過ぎた頃、永遠に続いていそうな広大な森が見えて来た。
「森に沿って西に向かっているこの街道を進めば正式なソルレンティス王国領への入口に着きますが、前に話した通り森を突っ切ります。異論は有りますか?」
「「異議なし」」
馬車は無理なので馬ごと指輪の空間に入れ、世話は獣人の娘達に面倒を見てもらう事にする。
「この森に魔物はいないの?」
「この森には魔物にとっての食糧が豊富なので、街道付近には滅多に出て来ませんが、奥深くに行けばCランク~Sランクまでの魔物がいます」
「中々だな。ダンジョンと変わりないね」
「ええ、ある意味ダンジョンより大変かもしれません」
「どうして?」
「ダンジョンのように攻略されたことなく地図が無いからです。エルフ以外にこの森に入る者は相当な実力者でないと無理です」
「あっ!アンジュ、さてはエルフが何かしてるわね?」
「ご想像にお任せします」
「アンジュがいるから俺達は大丈夫なんだろう?」
「お任せください、ヘイシロウ殿」
「頼むよ」
この森では残念エルフではないようだ。
森に入って5分も経たないが、樹々に遮られ日の光は僅かしか入らず辺りは仄暗く視界は悪い。
「方向感覚もおかしくなりそうね」
「そうだね、アンジュこのまま進んで良いのかい?」
「大丈夫です」
『ヘイシロウ様、なにか強いプレッシャーを放つ者が近づいて来ます』
俺の肩に乗っているイズナが反応する。
「何か来るぞ」
さ、さすがはヘイシロウ殿、判るのですね。
「確かに強い気配は感じられるけど何も見えないわね」
「俺もだ」
そうか、もう一つの欠点が有った。俺に見えない敵は録画出来ない可能性が高い。これはちょっと不味いな。
何か方法はないものか?
う~ん……データ修復ソフトの解析を利用できないかな。取り敢えず周りの景色を録画してとデータ解析を作動する。
「うっ……」
「どうしたの?」
SF映画に出てきそうな異形の姿形、光の屈折率や鏡の反射を利用していると思われる人らしきその物は、周りの景色に同化している感じで虫の擬態そのものだ。
データ解析が進んできたのか、段々とその物の輪郭がハッキリしてきた。
耳が長い……アンジュと同じ?
「エルフ?」
「なにっ!貴様、何者だ!」
いきなり変な形の仮面を付け剣を構えた5人のエルフが眼の前に現れた。
「ま、待て!私は第3騎士団、団長アンジュ・マクラレンだ。拐われたメアリ王女をこの者たちが救出してくれたので王城に向かうところだ」
「むぅ……」
「ヘイシロウ殿」
俺はアンジュに促され、指輪の空間からメアリ王女とエルフの女の娘達を出した。
『中々の実力者揃いのようね』
『確かにな』
さすがに魔人はいないみたいだ。
集会所らしき建物に入ると俺達と話したリーダーの男が奥の棚を横にずらす。現れたのは地下に続く階段だった。
やはり目的を持って何らかの活動をしているようだ。
地下は1部屋だけでなく食糧が蓄えれた炊事場とかなりの数の宿泊施設が有った。有事の際はここに立てこもる事が出来る。
大きなテーブルのある会議室の様な部屋に通され席につくと、さっき村の門の所にいた娘がハーブティーを出してくれた。
皆がハーブティーに一口つけたところでリーダー役の男が切り出した。
「君達がいなければ我々は全滅していただろう。あらためて感謝する。この恩に報いたいが金銭や高価な物は見ての通り皆無だ、許してくれ」
「俺達は金には困っていない。できれば少し話が聴きたいんだが?」
「……敵ではなさそうだし大まかで良いのなら」
「ああ、それで良い」
「で、何が知りたいんだ?」
「さっき奴らを人では無いと言った。雰囲気からして俺は人外の者だと言っていると判断したんだが、あんた達は識別出来るのかい?」
「いや、我々にその能力は無い」
「じゃ、なぜ判る?」
「或る御方からの情報だ。それと識別が出来る魔道具がある」
「或る御方か……」
そいつは魔人だと判っているって事だよな?思いを巡らせているとセシリアが心配そうな顔で手を握って来た。
そうか、セシリアも魔人だった。
「その魔道具って、今も持っているのかい?」
「ああ、ここに有る」
ポケットから出て来たのは紫色の水晶の様なものだった。
「人外の者が居れば色が変わる。ここにはいないので安心してくれ」
どうやらセシリアには反応しないらしい。セシリアもホッとしている。
「それも或る御方から?」
「そうだ」
「俺達がその御方に会うことは可能かい?」
「それは難しい。たぶん実際にお会いしたことがあるのはほんの一握り……いや1人か2人だと言われている」
「なるほどね」
「どうするつもり、ヘイシロウ?」
「う~ん」
カマをかけてみるか。
「では伝言を頼めるか?」
「内容にもよるが」
「なに、簡単さ。"魔人"とだけ伝えてくれれば良い」
「……解った、俺の名はリベラだ。あと、これを渡しておこう。大切にしてくれ」
リベラが差し出したのは古びた銀貨だった。
ーー
建物の外に出ると真っ暗だったので、一晩村に泊まる事になった。
「どう思う?」
「或る御方は魔人の事を知っているんじゃないかな」
「そうよね」
「その銀貨は古代の銀貨だぞ。滅多にお目にかかる事は出来ない代物だ」
「お宝じゃない、金目の物は無いと言ってたのに」
「宝物として使うわけじゃないからだろうね」
「何かあったら向こうから接触して来るという事かしらね?」
「たぶん」
ーーーー
翌日、流石にあまりのんびりはしていられないので朝一番で出発する。
「ゆっくり休めたかな?」
「ああ、お陰様で」
「我々の仲間は各地にいる、力になれる時もあるかもしれん」
「そうだね、その時は頼むよ」
「ああ、任せろ」
「寄り道はしたけど、面白い繋がりが出来たかも」
「そうね」
「良い方に転がれば良いです」
村を出てから俺達はひたすらバッカスニア帝国領を北上して行く、そして村や街をいくつも通り2ヶ月が過ぎた頃、永遠に続いていそうな広大な森が見えて来た。
「森に沿って西に向かっているこの街道を進めば正式なソルレンティス王国領への入口に着きますが、前に話した通り森を突っ切ります。異論は有りますか?」
「「異議なし」」
馬車は無理なので馬ごと指輪の空間に入れ、世話は獣人の娘達に面倒を見てもらう事にする。
「この森に魔物はいないの?」
「この森には魔物にとっての食糧が豊富なので、街道付近には滅多に出て来ませんが、奥深くに行けばCランク~Sランクまでの魔物がいます」
「中々だな。ダンジョンと変わりないね」
「ええ、ある意味ダンジョンより大変かもしれません」
「どうして?」
「ダンジョンのように攻略されたことなく地図が無いからです。エルフ以外にこの森に入る者は相当な実力者でないと無理です」
「あっ!アンジュ、さてはエルフが何かしてるわね?」
「ご想像にお任せします」
「アンジュがいるから俺達は大丈夫なんだろう?」
「お任せください、ヘイシロウ殿」
「頼むよ」
この森では残念エルフではないようだ。
森に入って5分も経たないが、樹々に遮られ日の光は僅かしか入らず辺りは仄暗く視界は悪い。
「方向感覚もおかしくなりそうね」
「そうだね、アンジュこのまま進んで良いのかい?」
「大丈夫です」
『ヘイシロウ様、なにか強いプレッシャーを放つ者が近づいて来ます』
俺の肩に乗っているイズナが反応する。
「何か来るぞ」
さ、さすがはヘイシロウ殿、判るのですね。
「確かに強い気配は感じられるけど何も見えないわね」
「俺もだ」
そうか、もう一つの欠点が有った。俺に見えない敵は録画出来ない可能性が高い。これはちょっと不味いな。
何か方法はないものか?
う~ん……データ修復ソフトの解析を利用できないかな。取り敢えず周りの景色を録画してとデータ解析を作動する。
「うっ……」
「どうしたの?」
SF映画に出てきそうな異形の姿形、光の屈折率や鏡の反射を利用していると思われる人らしきその物は、周りの景色に同化している感じで虫の擬態そのものだ。
データ解析が進んできたのか、段々とその物の輪郭がハッキリしてきた。
耳が長い……アンジュと同じ?
「エルフ?」
「なにっ!貴様、何者だ!」
いきなり変な形の仮面を付け剣を構えた5人のエルフが眼の前に現れた。
「ま、待て!私は第3騎士団、団長アンジュ・マクラレンだ。拐われたメアリ王女をこの者たちが救出してくれたので王城に向かうところだ」
「むぅ……」
「ヘイシロウ殿」
俺はアンジュに促され、指輪の空間からメアリ王女とエルフの女の娘達を出した。
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