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第7話 冒険のはじまり
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こうして装備も調達し、準備はほぼ整った。考えられる万全の状態に整えた所で、いよいよ旅立ちの時を迎える。
「ふっふーん、ははははーん」
「ご機嫌だね」
「そりゃそうよ。あのじーさん、意外と話がわかる奴だった!」
クレインは購入したばかりの戦斧を取り出し、刃の煌めきに酔いしれている。同時に購入した冒険者用の鎧も、気に入っているのかそわそわと触る様子が見られた。
「結局わたしの用事が終わっても話し込んでたし。武器ってそんな選ぶほどなの?」
「選ぶほどだぞ! いいか例えばこの刃一つ取ってもなあ、切れ味と重さと値段と折れやすさその他あれこれを考慮しないといけないのであって――」
「あーっ、ああーっ。もういいですとっとと行きましょう」
「お前ーっ!! お前だってあんなにポプリについて語りたがってたろー!! それと同じことだ、白けた顔すんなー!!」
憤慨しつつもルチルが家から出て行こうとしていたので、慌ててついていくクレインであった。
ルチルも服装についてはあれこれ考えたが、結局普段と同じものが落ち着くという結論に至った。オーバーオールに赤いミニハット、ピンクの髪留めで緩いポニーテールである。
ポシェットには食料とポーションをお金を詰め込んで。久しぶりにローゼンの町から出る規模の旅が、今始まる。
「こんにちはー、二人で乗りたいでーす」
「ん、どうも。とうとう出発かい、春風の魔法少女」
「はい、なんだかんだありましたが行ってきます」
やってきたのは馬車の待合所。まずはここから乗って、南に一直線である。
「休みなしで一日突っ走ると、どのぐらいまで行きます?」
「ここからだと……4番ベースキャンプだ。今ならソフィア様が駐在されているはずだぜ」
「ソフィアさんが……」
いるという情報を得るだけで、ごくりと生唾を飲んでしまうその人物は、アスカンブラ中の魔術師を束ねる団長である。
「おお、おれも知っている名前だ。アスカンブラじゃ右に出る奴はいねえ魔術師!」
「どわっ、何だこの若いのは。ルチルの知り合いかい?」
「はい、彼も一緒に行きます。なのでチケット二人分ください」
「旅行ですら珍しいのに二人旅とは……ほい、600クローネだ」
「はいはーい」
ルチルはクローネ硬貨を差し出し、きっちり料金を払う。引き換えに乗車券を二枚貰った。
「右に行くと馬車が並んでいる。16番だから間違えんなよ~」
「ありがとうございまーす」
「ありがとうございます!」
ルチルは慣れていることもあって気さくな雰囲気だが、クレインはどこかお堅いかしこまったお辞儀だ。
「やっぱりクレインもさ、お城で頭の下げ方教わってるの?」
「そりゃあもう。一人で用足しできるようになったら、すーぐにそれの訓練だ。長時間立つのだって大変なんだぞ~?」
「ちっちゃい頃から徹底的に教え込まれるんだね……大変だあ」
待合所に並んでいる馬車は、多い日だと60はあると言う。大陸の中でも中心部にあるローゼンには、アクセスの良さから様々な方面に向かう馬車が集うのだ。
高い金額を払わない限り、馬車は乗り合いが基本。4~8人の乗車人数の中で、知らない誰かと顔を合わせて座るのも、また醍醐味であるのだ。
「えーと16番16番……」
「ルチル! こっちにあったぞ!」
「わっ、通り過ぎてた~!」
クレインがいなかったら、ルチルは確実に迷子になっていただろう。目的の馬車を発見し、二人でぞろぞろと乗り込む。
「あら、元気な子が乗り込んできたわ」
「こんにちは。しばらくの間よろしくお願いします」
「ふふふ……よろしくね」
乗り込んだ馬車には、女性が先に座っていた。ルチルとクレインがどたどた座っているのを受けて、優しく微笑んでいる。
「元気がいいのね。あなた達も旅行?」
「そうなんです! お姉さんは?」
「私も……旅行みたいなものかな。ちょっと『テポリ』に用事があって」
テポリはローゼンより南西にある町。今回のルートでは通らないが、それなりに規模がある町であることをルチルはクレインに伝えた。
「確かベースキャンプから乗り換えるんでしたっけ。どうしてテポリに行くんです?」
「ポプリに使いたい花があって、それを買いに行くの。『オスロダリア』って知ってる?」
「へえ~オスロダリア! ってことは結婚式用のポプリですね!?」
「……待て、おれを置いていくな。せめてここにいるからには、会話に参加したいぞ」
クレインは軽く手を上げ、盛り上がるルチルを制する。彼はテポリについて聞いた時より、今の方が難解そうな顔をしている。
「はいはい説明ね。といってもポプリに関してはにわか赤ちゃん初心者も当然のクレイン、一体どこから説明したものやら」
「言いようが酷すぎねーか」
「貴方のご両親は、結婚式の前にポプリを作らなかったのかしら?」
女性がクレインに尋ねた矢先――
馬がヒヒーンといなないて、座っている馬車が動き出す。
「おっ出発か。なんか、結構速度出すんだな?」
「これぐらいの速度じゃなきゃ、満足に距離を伸ばせないからね~。ほら、いい景色!」
ルチルに続いてクレインも窓から顔を覗かせる。穏やかな晴れの日の風が、吹き込んできては流れていく。
クレインはその光景に心を奪われているようだった――なにせ目の前に広がっているのは、祖国スヴァーダではお目にかかれない、緑広がる大平野。やはり緑は目の保養として最高級なのである。
野生動物が群れを成して横切っていったり、鳥が空を飛んでいたり、魚が水面から思いっ切り跳ねていたり。生物が織り成す風景のひと欠片が、彼の心に深々と刺さっていく。
「……えー、失礼しました。それでお姉さん、何でしたっけ。結婚式用のポプリ?」
ある程度風景を堪能した所で、クレインは向き直る。彼が受けてきた教育の中には、他人の話を折らないというものもあったのだ。
「あら。話題を戻してくれて、お優しいのね。それじゃそれに甘えて……結婚式を挙げるカップルは、ポプリを作るって風習があるのだけど。ご存知ない?」
「初耳ですね……」
「クレインが知らないだけであって、みーんなやってることだよ。そんでもってオスロダリアはぁー、結婚式用の需要がとっても高い花なのだ!」
ルチルは思わず口を挟んでしまう。彼女は語りたくてうずうずしている様子だった。
「そうなのよね。香りも見た目もいいし、何より花言葉。『幸せな結婚』って」
「なんだか結婚式用に生まれたような花ですね……」
「それもちょっとはあるんじゃない? オスロってのは町の名前なんだけど、その町に名産品が欲しくて作った品種らしいよ。結婚式って名目にすれば、飛ぶように売れるだろうし」
「あ、あれれ~。花ってもっとこう、金とか関係なしに凛と咲くもんじゃね~のかなぁ~」
「お花で経済が潤ってるって町、結構あるわよ。ポプリが生活に密接している以上、それに目を付ける人は必ずいるもの。商売ってそういうものよ?」
「うーむ……そういうもんか……」
案外達観している雰囲気の女性二人に、少し理解が及ばず唸るクレインであった。
と、乗り合わせた女性とも良好な雰囲気を築きつつ、馬車は進んでいたのだが――
「ん……? なんか速度落ちてね?」
「止まるのかな……? でもベースキャンプには、まだ距離が……」
ルチルがクレインと話している間にも、馬車はすっかり止まってしまう。馬が完全に停止するべく、前足を上げて大きな声でいななく。
「何かあったのかな……お馬さんの調子が悪いとか」
「天気も良さそうですし、原因がないように思えますけど……」
「……」
クレインは無言で馬車を降りる。安全対策の扉は、強引に押し開けた。
「あっ、ちょっとどうしたの!? 勝手に行かないで!?」
ルチルは慌てたが、クレインは少し歩いた先にいたので胸を撫で下ろす。しかし広がっている光景は異様なものであった。
「まいったなあ……これじゃ先に進めねえぞ」
「こんなにも『ディーディー』がいるなんて……ていうかうるさっ」
御者の男性は、二本の足で立つ鳥のような生命体を見て、深く溜息をつく。クレインもその数に唖然としており、もちろんルチルも例外ではない。
『ディーディー』はレヴス・ラーシルに住まう特別な生命体、『ガンド』の一種。鳥のような顔立ちに羽毛を持っているが、先にも挙げた二本の足、そして球体にも似た胴部分と頭を繋ぐ、太く屈強な首が特徴的。鳥なのに飛べないのが最大の特徴である。
彼らはホッドミーミル大陸の各地に生息しており、危機を感じるとその足で勢いをつけ、猛タックルを繰り出すという危険な一面も持つ。しかしこちらが敵意を見せなければ、ただ屈強なだけの生物として受け流せる。
――というのがルチル達の常識なのだが。
「「「グェーグエー」」」
「「「グェーグェー」」」
「「「グェェェェェッ」」」
「……一体何匹いるんだ? どう見ても数百は超えてそうだが……」
「確かこの辺にゃあ、こいつらが根城としている森があったと思うんだが……そっから全部逃げ出していそうだな」
「全部だってぇ!? ……しかもよく見たら、様子が不自然っつーか……」
ディーディー達は周囲に攻撃するでもなく、ただ進行方向に密集しているだけ。数百匹が固まって壁になっているものだから、馬も先に進めず困っていたのである。
だが困っているのはディーディー達も同じ――クレインにはそう見えた。
「おーい! 馬車が止まってるから一体何事、ってええ……」
「あっどうも~……」
ルチルが後ろを振り向くと、そこには御者の制服を着た男性が。そしてルートを同じくする他の馬車が、徐々に集まっていきていた。
このままでば馬車の運行に支障が出てしまう――ルチルがそう思った矢先、
「おっさん、その根城の森って一体どこにある? おれが様子を見てくるよ」
「はぁ!? んなことしてどうすんだって……あっ、今ディーディーが1匹逃げてきた森がそうだが……」
クレインに尋ねられた男性が、その方角を指差して答える。確かに今もなおディーディーが森から出てきており、その様子は何者かに追われているようにも見えた。
「日が暮れないうちに終わらせてくっから、待っててくれよー!」
「あっ、ああーっ!? 無理はすんなよー!?」
(……えっ、えええええ~!? 無理すんなよじゃなくって、他に言うことあるんじゃない!?)
ルチルは思わぬ行動に戸惑いを見せたが――
少しおろおろして気持ちを整えた後、覚悟を決めてクレインの後を追うのだった。
「ふっふーん、ははははーん」
「ご機嫌だね」
「そりゃそうよ。あのじーさん、意外と話がわかる奴だった!」
クレインは購入したばかりの戦斧を取り出し、刃の煌めきに酔いしれている。同時に購入した冒険者用の鎧も、気に入っているのかそわそわと触る様子が見られた。
「結局わたしの用事が終わっても話し込んでたし。武器ってそんな選ぶほどなの?」
「選ぶほどだぞ! いいか例えばこの刃一つ取ってもなあ、切れ味と重さと値段と折れやすさその他あれこれを考慮しないといけないのであって――」
「あーっ、ああーっ。もういいですとっとと行きましょう」
「お前ーっ!! お前だってあんなにポプリについて語りたがってたろー!! それと同じことだ、白けた顔すんなー!!」
憤慨しつつもルチルが家から出て行こうとしていたので、慌ててついていくクレインであった。
ルチルも服装についてはあれこれ考えたが、結局普段と同じものが落ち着くという結論に至った。オーバーオールに赤いミニハット、ピンクの髪留めで緩いポニーテールである。
ポシェットには食料とポーションをお金を詰め込んで。久しぶりにローゼンの町から出る規模の旅が、今始まる。
「こんにちはー、二人で乗りたいでーす」
「ん、どうも。とうとう出発かい、春風の魔法少女」
「はい、なんだかんだありましたが行ってきます」
やってきたのは馬車の待合所。まずはここから乗って、南に一直線である。
「休みなしで一日突っ走ると、どのぐらいまで行きます?」
「ここからだと……4番ベースキャンプだ。今ならソフィア様が駐在されているはずだぜ」
「ソフィアさんが……」
いるという情報を得るだけで、ごくりと生唾を飲んでしまうその人物は、アスカンブラ中の魔術師を束ねる団長である。
「おお、おれも知っている名前だ。アスカンブラじゃ右に出る奴はいねえ魔術師!」
「どわっ、何だこの若いのは。ルチルの知り合いかい?」
「はい、彼も一緒に行きます。なのでチケット二人分ください」
「旅行ですら珍しいのに二人旅とは……ほい、600クローネだ」
「はいはーい」
ルチルはクローネ硬貨を差し出し、きっちり料金を払う。引き換えに乗車券を二枚貰った。
「右に行くと馬車が並んでいる。16番だから間違えんなよ~」
「ありがとうございまーす」
「ありがとうございます!」
ルチルは慣れていることもあって気さくな雰囲気だが、クレインはどこかお堅いかしこまったお辞儀だ。
「やっぱりクレインもさ、お城で頭の下げ方教わってるの?」
「そりゃあもう。一人で用足しできるようになったら、すーぐにそれの訓練だ。長時間立つのだって大変なんだぞ~?」
「ちっちゃい頃から徹底的に教え込まれるんだね……大変だあ」
待合所に並んでいる馬車は、多い日だと60はあると言う。大陸の中でも中心部にあるローゼンには、アクセスの良さから様々な方面に向かう馬車が集うのだ。
高い金額を払わない限り、馬車は乗り合いが基本。4~8人の乗車人数の中で、知らない誰かと顔を合わせて座るのも、また醍醐味であるのだ。
「えーと16番16番……」
「ルチル! こっちにあったぞ!」
「わっ、通り過ぎてた~!」
クレインがいなかったら、ルチルは確実に迷子になっていただろう。目的の馬車を発見し、二人でぞろぞろと乗り込む。
「あら、元気な子が乗り込んできたわ」
「こんにちは。しばらくの間よろしくお願いします」
「ふふふ……よろしくね」
乗り込んだ馬車には、女性が先に座っていた。ルチルとクレインがどたどた座っているのを受けて、優しく微笑んでいる。
「元気がいいのね。あなた達も旅行?」
「そうなんです! お姉さんは?」
「私も……旅行みたいなものかな。ちょっと『テポリ』に用事があって」
テポリはローゼンより南西にある町。今回のルートでは通らないが、それなりに規模がある町であることをルチルはクレインに伝えた。
「確かベースキャンプから乗り換えるんでしたっけ。どうしてテポリに行くんです?」
「ポプリに使いたい花があって、それを買いに行くの。『オスロダリア』って知ってる?」
「へえ~オスロダリア! ってことは結婚式用のポプリですね!?」
「……待て、おれを置いていくな。せめてここにいるからには、会話に参加したいぞ」
クレインは軽く手を上げ、盛り上がるルチルを制する。彼はテポリについて聞いた時より、今の方が難解そうな顔をしている。
「はいはい説明ね。といってもポプリに関してはにわか赤ちゃん初心者も当然のクレイン、一体どこから説明したものやら」
「言いようが酷すぎねーか」
「貴方のご両親は、結婚式の前にポプリを作らなかったのかしら?」
女性がクレインに尋ねた矢先――
馬がヒヒーンといなないて、座っている馬車が動き出す。
「おっ出発か。なんか、結構速度出すんだな?」
「これぐらいの速度じゃなきゃ、満足に距離を伸ばせないからね~。ほら、いい景色!」
ルチルに続いてクレインも窓から顔を覗かせる。穏やかな晴れの日の風が、吹き込んできては流れていく。
クレインはその光景に心を奪われているようだった――なにせ目の前に広がっているのは、祖国スヴァーダではお目にかかれない、緑広がる大平野。やはり緑は目の保養として最高級なのである。
野生動物が群れを成して横切っていったり、鳥が空を飛んでいたり、魚が水面から思いっ切り跳ねていたり。生物が織り成す風景のひと欠片が、彼の心に深々と刺さっていく。
「……えー、失礼しました。それでお姉さん、何でしたっけ。結婚式用のポプリ?」
ある程度風景を堪能した所で、クレインは向き直る。彼が受けてきた教育の中には、他人の話を折らないというものもあったのだ。
「あら。話題を戻してくれて、お優しいのね。それじゃそれに甘えて……結婚式を挙げるカップルは、ポプリを作るって風習があるのだけど。ご存知ない?」
「初耳ですね……」
「クレインが知らないだけであって、みーんなやってることだよ。そんでもってオスロダリアはぁー、結婚式用の需要がとっても高い花なのだ!」
ルチルは思わず口を挟んでしまう。彼女は語りたくてうずうずしている様子だった。
「そうなのよね。香りも見た目もいいし、何より花言葉。『幸せな結婚』って」
「なんだか結婚式用に生まれたような花ですね……」
「それもちょっとはあるんじゃない? オスロってのは町の名前なんだけど、その町に名産品が欲しくて作った品種らしいよ。結婚式って名目にすれば、飛ぶように売れるだろうし」
「あ、あれれ~。花ってもっとこう、金とか関係なしに凛と咲くもんじゃね~のかなぁ~」
「お花で経済が潤ってるって町、結構あるわよ。ポプリが生活に密接している以上、それに目を付ける人は必ずいるもの。商売ってそういうものよ?」
「うーむ……そういうもんか……」
案外達観している雰囲気の女性二人に、少し理解が及ばず唸るクレインであった。
と、乗り合わせた女性とも良好な雰囲気を築きつつ、馬車は進んでいたのだが――
「ん……? なんか速度落ちてね?」
「止まるのかな……? でもベースキャンプには、まだ距離が……」
ルチルがクレインと話している間にも、馬車はすっかり止まってしまう。馬が完全に停止するべく、前足を上げて大きな声でいななく。
「何かあったのかな……お馬さんの調子が悪いとか」
「天気も良さそうですし、原因がないように思えますけど……」
「……」
クレインは無言で馬車を降りる。安全対策の扉は、強引に押し開けた。
「あっ、ちょっとどうしたの!? 勝手に行かないで!?」
ルチルは慌てたが、クレインは少し歩いた先にいたので胸を撫で下ろす。しかし広がっている光景は異様なものであった。
「まいったなあ……これじゃ先に進めねえぞ」
「こんなにも『ディーディー』がいるなんて……ていうかうるさっ」
御者の男性は、二本の足で立つ鳥のような生命体を見て、深く溜息をつく。クレインもその数に唖然としており、もちろんルチルも例外ではない。
『ディーディー』はレヴス・ラーシルに住まう特別な生命体、『ガンド』の一種。鳥のような顔立ちに羽毛を持っているが、先にも挙げた二本の足、そして球体にも似た胴部分と頭を繋ぐ、太く屈強な首が特徴的。鳥なのに飛べないのが最大の特徴である。
彼らはホッドミーミル大陸の各地に生息しており、危機を感じるとその足で勢いをつけ、猛タックルを繰り出すという危険な一面も持つ。しかしこちらが敵意を見せなければ、ただ屈強なだけの生物として受け流せる。
――というのがルチル達の常識なのだが。
「「「グェーグエー」」」
「「「グェーグェー」」」
「「「グェェェェェッ」」」
「……一体何匹いるんだ? どう見ても数百は超えてそうだが……」
「確かこの辺にゃあ、こいつらが根城としている森があったと思うんだが……そっから全部逃げ出していそうだな」
「全部だってぇ!? ……しかもよく見たら、様子が不自然っつーか……」
ディーディー達は周囲に攻撃するでもなく、ただ進行方向に密集しているだけ。数百匹が固まって壁になっているものだから、馬も先に進めず困っていたのである。
だが困っているのはディーディー達も同じ――クレインにはそう見えた。
「おーい! 馬車が止まってるから一体何事、ってええ……」
「あっどうも~……」
ルチルが後ろを振り向くと、そこには御者の制服を着た男性が。そしてルートを同じくする他の馬車が、徐々に集まっていきていた。
このままでば馬車の運行に支障が出てしまう――ルチルがそう思った矢先、
「おっさん、その根城の森って一体どこにある? おれが様子を見てくるよ」
「はぁ!? んなことしてどうすんだって……あっ、今ディーディーが1匹逃げてきた森がそうだが……」
クレインに尋ねられた男性が、その方角を指差して答える。確かに今もなおディーディーが森から出てきており、その様子は何者かに追われているようにも見えた。
「日が暮れないうちに終わらせてくっから、待っててくれよー!」
「あっ、ああーっ!? 無理はすんなよー!?」
(……えっ、えええええ~!? 無理すんなよじゃなくって、他に言うことあるんじゃない!?)
ルチルは思わぬ行動に戸惑いを見せたが――
少しおろおろして気持ちを整えた後、覚悟を決めてクレインの後を追うのだった。
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