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第11話。

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 その日の夕食に何故か俺もお呼ばれする事になった。
 最初は身分違いを盾に辞退しようとしたのだが、王女殿下と辺境伯様がどうしてもと聞き入れてくれなかっので、覚悟を決めて出席した。
 その際に一つだけ、お願いをした。

「俺は平民の冒険者に過ぎませんので、テーブルマナーなんて知りません。お見苦しい事になりますが、そこはお許し下さい」

 無礼者! とか言われて処刑されたくない。
 それをお願いしたら、笑顔で許してもらえた。
 そして、こんなに緊張させてくれたので、ちょっとしたイタズラを考えた。
 夕飯のメニューは、マーガリンを塗った白パンと海老のスープにステーキ、フルーツの盛り合わせだ。
 ステーキにナイフを入れた面々に、俺は意地の悪い笑みを浮かべた。

「まあ! このお肉は今までに食べた事のない美味しさですわ!!」

 まずは王女殿下が。
 次いで辺境伯様が。

「ほう! 我が家の料理長も良い肉を手に入れたようだな。これ程の肉は滅多に手に入らないだろう。後で褒美を出さなければな。コレル。この肉はどこで買ったのだね?」

 コレル料理長は、額に微かに滲む汗を拭きながら、俺を見る。
 俺が頷くと、

「ミューラー様に提供していただいた物でございます」
「何? ミューラーくんに?」

 辺境伯様は、まさかと目を瞠る。

「ダンジョンの90階層のボスだった、レッドドラゴンの肉でございます」

 テーブルについていた全員が、ナイフとフォークを落としかけた。

「「「『レッドドラゴンの肉!!??』」」」

 驚愕の大合唱。
 いや、悲鳴に近かった。

「王女殿下が列席される晩餐会ですよ? これくらいの食材は提供しなくてはね」

 してやったり、という顔をする俺。
 辺境伯様は溜め息を吐いて、顔を振った。
 王女殿下は、生まれて初めてのドラゴン肉を食べた事にビックリしながらも、とてもお喜びのご様子だ。

「ドラゴンのお肉は、こんなにも美味しい物だったのですね。お父様やお母様、お兄様やお姉様達にも食べさせて差し上げたいですわ!」

 うん。
 マリルーシャ王女様。そのお気持ちに応えてさしあげましょうとも。

「殿下。護衛騎士の方々の中にアイテムボックスを使える方、もしくはマジックポーチをお持ちの方はおいででございますか?」
「アイテムボックスなら、私とリンが。マジックポーチは全員が持っていますわ。それが何か?」
「ドラゴン肉。欲しくはありませんか?」
「…頂けますの?」

 王女殿下の声が若干、震えている。
 無理もない。
 ドラゴンの肉が手に入るのだ。

「アースドラゴン、グリーンドラゴン、レッドドラゴン、ブラックドラゴンの肉10kgを十個ずつ献上致します。護衛の方々にも10kgを一個ずつ差し上げますのでご心配なく。サムシング辺境伯家にお世話になっている者からの、心ばかりのお土産でございます。お納め下さい」

 黄色い歓声が食堂を支配した。

「ミューラーくん。我が家には?」
「ご心配なく。不義理な真似はしませんよ」

 辺境伯家の面々からも歓声があがる。

「お喜びいただけたようで何より。(暫くはドラゴン肉がメニューに並ぶな)」
 
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