19 / 37
第4話。
しおりを挟む
社交パーティーで明らかになった、貴族の横暴な態度で国内の冒険者ギルドを敵に回すかもしれない事実を重く受け止めた国王陛下が、暗部と査察官に厳重な調査を命じた。
その結果、騎士爵家12、準男爵家7、男爵家22、子爵家4、伯爵家2、侯爵家19、大公爵家1家が不正を行っていた事が判明した。
降爵、爵位剥奪、領地没収、闕所、罰金処分を言い渡された。中には官吏達に賄賂を送って減刑を求める者もいたが、官吏達は直ぐに陛下に報告したために、更に重い刑罰が科された。国外追放や奴隷落ちの上に鉱山送りになった者も…。
その事を俺が知ったのは、魔導騎士育成学園に首席で合格した後だった。
かなりの数の貴族に罰が下されたのだが、嫡男ばかりではなく、次男、三男などが代官や小領地の領主として叙爵されたので、貴族が少なくなるのではないかという懸念は無くなった。
まあ、俺には何の関わりも無い話だ。
それよりも、今日は待ちに待った入学式だ!
真新しい制服に袖を通す。
「着心地は悪くないな。仕込みも万全だしな」
魔導騎士育成学園の生徒は、得意な武器、防具の携行が許されている。
俺はセミロングソードとショートソードを帯剣している。
このセミロングソードとショートソードは魔鋼鉄製でできていた。
「業物みたいだけど…ちょっと、ね」
ミスリル、アダマンタイト、ヒヒイロガネ、オリハルコン製の業物を直に見て、使っていた身としては少々物足りない気持ちになるのは当然の事と許してもらいたい。
「中々似合っていますわね」
この声は…、
「お褒めにあずかり恐悦至極にございます。マリルーシャ王女殿下」
「あら? マリュー様ばかりではありませんのよ?」
「勿論、分かっておりますとも。リリミナお嬢様の制服姿も、お似合いですよ」
「本当かしら?」
「おや? お嬢様は私の言葉に偽りがあると? そのような悲しい事を…うぅ」
片手で目元を覆うと、リリミナお嬢様が慌てる慌てる。
マリルーシャ王女殿下は苦笑いをしている。これは見破られたな。
「ミューラーくん。嘘泣きはいただけないわよ?」
「え? 嘘泣き?」
リリミナお嬢様はビックリしている。
「やはり、王女殿下の目を偽る事は叶いませんでしたか。残念、無念」
戯ける俺を見て、リリミナお嬢様はぷくぅっと頬を膨らませて、俺の胸をポカポカと叩く。
「ミューラーくんの嘘つき!」
それを見ながら、俺と王女殿下が大笑いする。暫くすると、リリミナお嬢様も笑い出す。
こうして入学式まで過ごそうとしていたら、後ろから何かが飛んで来た。
振り返りざまに魔力圧で叩き落とす。
飛んで来たのは紙クズだった。中には小石が包んであった、
「おや? 何かと思ったら、下賤の平民ではないか。ゴミ箱と間違ってしまったよ。失敬、失敬」
金髪碧眼の如何にも「THE・貴族」感満載のお坊ちゃまくんが、取り巻き連中を引き連れていて、俺を嘲笑っていた。
「レジアイド子爵家が三男、レザック。一体、何の真似だ?」
「き、貴様! 平民の分際で僕の名前を呼び捨てにしたな!? そこへ座れ! 不敬罪で斬り捨ててやる!」
さっきから聞いていれば、バカの一つ覚えのように、「平民」を連呼している。
確かに俺は平民から名誉伯爵に成り上がった。そこは認めよう。しかし、既に貴族として叙爵された貴族当主だ。それを、こんな子爵家の三男坊風情に悪様に嘲笑される謂れは無い。
沸々と湧き上がる怒りを感じたか、王女殿下とリリミナお嬢様がビクッと肩を震わせたが、それも仕方ない事と思ってくれたらしく、俺の前に立ってくれた。
「貴方。先程から何を仰ってますの?」
「あ"? 誰だ、お前は?」
…こいつ…正気、か?
成り行きを見守っていた野次馬達が、声を揃えて大合唱!
「「「『第三王女殿下に対して不敬にも程があるだろう!!』」」」
と。
「へ? お、王女殿下…?」
抜剣して構えていたレザックは、目の前に立っているのが、第三王女マリルーシャ殿下であらせられる事を知って、腰を抜かしてしまった。
「貴方。剣を抜いてらっしゃるのね」
「へ…?」
「その剣の切先は、私に向けているのかしら?」
「…はい?」
どうやら、レザックはぷちパニックに陥っているようで、マリルーシャ王女殿下が仰っておられる事を理解できていないようだ。
野次馬達は、心の中で合掌した。
アイツ、終わったな。ご愁傷様。
その結果、騎士爵家12、準男爵家7、男爵家22、子爵家4、伯爵家2、侯爵家19、大公爵家1家が不正を行っていた事が判明した。
降爵、爵位剥奪、領地没収、闕所、罰金処分を言い渡された。中には官吏達に賄賂を送って減刑を求める者もいたが、官吏達は直ぐに陛下に報告したために、更に重い刑罰が科された。国外追放や奴隷落ちの上に鉱山送りになった者も…。
その事を俺が知ったのは、魔導騎士育成学園に首席で合格した後だった。
かなりの数の貴族に罰が下されたのだが、嫡男ばかりではなく、次男、三男などが代官や小領地の領主として叙爵されたので、貴族が少なくなるのではないかという懸念は無くなった。
まあ、俺には何の関わりも無い話だ。
それよりも、今日は待ちに待った入学式だ!
真新しい制服に袖を通す。
「着心地は悪くないな。仕込みも万全だしな」
魔導騎士育成学園の生徒は、得意な武器、防具の携行が許されている。
俺はセミロングソードとショートソードを帯剣している。
このセミロングソードとショートソードは魔鋼鉄製でできていた。
「業物みたいだけど…ちょっと、ね」
ミスリル、アダマンタイト、ヒヒイロガネ、オリハルコン製の業物を直に見て、使っていた身としては少々物足りない気持ちになるのは当然の事と許してもらいたい。
「中々似合っていますわね」
この声は…、
「お褒めにあずかり恐悦至極にございます。マリルーシャ王女殿下」
「あら? マリュー様ばかりではありませんのよ?」
「勿論、分かっておりますとも。リリミナお嬢様の制服姿も、お似合いですよ」
「本当かしら?」
「おや? お嬢様は私の言葉に偽りがあると? そのような悲しい事を…うぅ」
片手で目元を覆うと、リリミナお嬢様が慌てる慌てる。
マリルーシャ王女殿下は苦笑いをしている。これは見破られたな。
「ミューラーくん。嘘泣きはいただけないわよ?」
「え? 嘘泣き?」
リリミナお嬢様はビックリしている。
「やはり、王女殿下の目を偽る事は叶いませんでしたか。残念、無念」
戯ける俺を見て、リリミナお嬢様はぷくぅっと頬を膨らませて、俺の胸をポカポカと叩く。
「ミューラーくんの嘘つき!」
それを見ながら、俺と王女殿下が大笑いする。暫くすると、リリミナお嬢様も笑い出す。
こうして入学式まで過ごそうとしていたら、後ろから何かが飛んで来た。
振り返りざまに魔力圧で叩き落とす。
飛んで来たのは紙クズだった。中には小石が包んであった、
「おや? 何かと思ったら、下賤の平民ではないか。ゴミ箱と間違ってしまったよ。失敬、失敬」
金髪碧眼の如何にも「THE・貴族」感満載のお坊ちゃまくんが、取り巻き連中を引き連れていて、俺を嘲笑っていた。
「レジアイド子爵家が三男、レザック。一体、何の真似だ?」
「き、貴様! 平民の分際で僕の名前を呼び捨てにしたな!? そこへ座れ! 不敬罪で斬り捨ててやる!」
さっきから聞いていれば、バカの一つ覚えのように、「平民」を連呼している。
確かに俺は平民から名誉伯爵に成り上がった。そこは認めよう。しかし、既に貴族として叙爵された貴族当主だ。それを、こんな子爵家の三男坊風情に悪様に嘲笑される謂れは無い。
沸々と湧き上がる怒りを感じたか、王女殿下とリリミナお嬢様がビクッと肩を震わせたが、それも仕方ない事と思ってくれたらしく、俺の前に立ってくれた。
「貴方。先程から何を仰ってますの?」
「あ"? 誰だ、お前は?」
…こいつ…正気、か?
成り行きを見守っていた野次馬達が、声を揃えて大合唱!
「「「『第三王女殿下に対して不敬にも程があるだろう!!』」」」
と。
「へ? お、王女殿下…?」
抜剣して構えていたレザックは、目の前に立っているのが、第三王女マリルーシャ殿下であらせられる事を知って、腰を抜かしてしまった。
「貴方。剣を抜いてらっしゃるのね」
「へ…?」
「その剣の切先は、私に向けているのかしら?」
「…はい?」
どうやら、レザックはぷちパニックに陥っているようで、マリルーシャ王女殿下が仰っておられる事を理解できていないようだ。
野次馬達は、心の中で合掌した。
アイツ、終わったな。ご愁傷様。
応援ありがとうございます!
1,020
お気に入りに追加
2,199
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる