レンガの家

秋臣

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宣戦布告

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「いらっしゃいませー!
あ、陽南ちゃん」
バイトの拓海が元気な声を出す。
「はんちゃん、拓海さん、こんにちは」
陽南?
「あれえ陽南ちゃん、どうした?」
「これ持ってきたの、遅れてごめんね」
「ん?」
「凛ちゃんの誕生日プレゼント」
「マジ?」
「ネタバレすると服なんだけど、完全に私の趣味で選んじゃって…公佳さん嫌がるかもしれないから、趣味じゃなかったらリサイクルにでも出して」
「そんなことしないよ!一歳の時にくれた服、もう着られないけど気に入って大事に取ってあるよ」
「本当?それなら嬉しい!
少し大きめのサイズにしたからすぐには着られないかも」
「いや、助かるよ、本当にありがとね」
「ねえねえ凛ちゃんの写真ある?
見たい!」
「あるよ、いくらでもどうぞ!」
はんちゃんがスマホのカメラロールを見せる。
「すごい!凛ちゃんフォルダーがあるw」
「俺のイチオシはこれ。めっちゃかわいいでしょ?」
「出た!親バカw」
「親はみんなバカになるの」
「あはは!」
陽南は夢中になって凛ちゃんの写真を見てる。

「陽南、カフェラテでいいか?」
「え?お兄ちゃんの奢り?やった!」
「奢るなんて言ってねえぞ」
「ケチだなあ」
「ケチだな」
はんちゃんと二人で言っている。
「アイスでいい?」
「うん」

陽南は時々Bothに来る。
ふらっと用もなく寄ることが多いけど、今日は凛ちゃんへのプレゼントを持ってきたのが目的だったようだ。

「どうぞ」
「ありがとう」
ストローで勢いよく飲む。
「あー美味しい!」
「喉乾いてたのか?」
「外、暑いんだもん」
「確かに暑いな」
このまま夏に突入してしまうのでは?と思うくらいこのところずっと暑い。
「教えてもらったカレー屋さん行ってきたよ」
「『Khana』?」
「うん、壮祐くんと行ってきたよ、美味しかった!」

その名前を聞いて一瞬手が止まった。
陽南がその名前をわざと出したこともわかった。

半分ほど飲んだカフェラテの氷をストローでカラカラと混ぜながら陽南が俺を見る。

「壮祐くんに聞いた。
お兄ちゃん、壮祐くんのこと好きなんでしょ?」
「え…」
「なんとなくわかってた、今までと違うって。お兄ちゃん本気かもって最初から思ってた」
「……」
「私、お兄ちゃんに壮祐くん譲る気ないから」
「……」
「壮祐くんがお兄ちゃんを好きになったら仕方ないかもしれないけど、そうはならないから」
「え?」
陽南が俺の目を見る。

「壮祐くん、私のことが好きなんだって!残念でした!」

はんちゃんが笑いを堪えてる。

ふっ
「お前、宣戦布告しに来たのか」
「そうだよ」
「そうか、それなら俺も遠慮しない。
今永壮祐くんのこと、好きになりました」
「知ってる」
「陽南のこと傷つけるかもしれないけど、
俺も引けない」
「傷つくのはお兄ちゃんだけだよ」
はんちゃんの笑いが限界に近い。

「諦められない」

「かわいそうに」

ぶっは!
はんちゃんが限界を超えた。

「深影、お前無理だわ、諦めろw」
「やだ」
「どう考えても陽南ちゃんに勝てねえって」
「やだ!」
「子どもかw」

「とにかく」
そう言うと陽南は残りのカフェラテを飲み干す。
「お兄ちゃんの負けです、話になりません、以上です!」

はんちゃんが腹抱えて笑ってる。

「はんちゃん、公佳さんと凛ちゃんによろしくね」
「伝えるよ、プレゼントありがとう」
「うん、また来るね」
そう言って陽南はカフェラテの代金を置いていく。

「いいよ」
「ううん、お兄ちゃんに借りは作らない。どこでつけ込まれるかわからない、油断ならない」
こいつ…
「じゃあね!バイバイ」
陽南は笑顔で店を出て行った。


「いやあ、陽南ちゃんやるなあ」
「コテンパンにされた気分」
「だなw 強いな、陽南ちゃん」
「強くないよ」
「わかってる。あんなに手が震えてるのによく頑張ったよ、陽南ちゃんは強い」

陽南はずっと震えてた。
それでも俺に伝えに来たんだ。
陽南は本気だ、本気で宣戦布告してきたんだ。
それほどまでして守りたい壮祐くんのために。


でもな、陽南。
お前が来てくれたおかげかな、
俺、はっきりわかった。
壮祐くんが好きだし、諦められない。
たとえ陽南を泣かせることになっても…
酷い兄だと思ってる。
俺の気持ちを消せばいいのはわかってるんだ。
だけどそれはもうできない。
気づいちゃったからもうできないんだ。
とっくに振られてるのに諦め悪い兄貴でごめんな。
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