恋人ごっこはおしまい

秋臣

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溺れる背中  

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ベッドの上ではあはあと呼吸が乱れている京佐。
あの日俺を蕩けさせた窪みに手を伸ばす。
ビクッと反応する。
「や……やだ……」
そう言いながらも俺の指を今にも飲み込もうと吸い付いてくる。

「京佐……ローションとゴムは?
まだあるよな?」
曽川に新品で3点セットを返したと言っていたから、使いかけは捨ててなければ京佐の部屋にあるはずだ。
「……」
京佐は答えない。


京佐の部屋は物が少ない。
あまり飾り立てるようなことを好まない男だから、暮らしもすっきりしているのだろうか。
そんな京佐の部屋には何度も来ている。
「俺んちにいる方が多くないか?」
と京佐に言われるほど入り浸っていた。
だから京佐の部屋のことは熟知している。
ベッドの下は引き出しになっていて、洗い替えのシーツなどがしまってある。
左側の引き出しのその奥の箱に京佐はゴムを入れている。

以前、やましい物がないか調べてやるとふざけて遊んでたら、引き出しの奥から箱が出てきて、その中にゴムが隠してあった。
「余計なことすんな!」
と怒っていたが、その後も部屋に行くたびにその箱をチェックして、ゴムが減るたびに、
「ヤリチン野郎」
と揶揄うと、
「うるせえな、付けないよりマシだろ!」
と吠えていた。

京佐はなかなかモテる。
雰囲気が柔らかくて優しい。
それでいて顔もそれなりにいいもんだから、声をかけられたり彼女がいたこともある。
でもなぜか長続きしないようで、なんで別れたか聞くと、
「彼女に『自分にだけ優しくして欲しかった』って言われちゃう」
と言ってた。
そんなつもりないんだけどなあと項垂れてるけど、誰に対しても同じに優しいんだよ。
そこは悪いことじゃないと思ってる。


なにも答えない京佐の代わりに引き出しを開けて奥の箱を開ける。
やはりここに入っていた。
この前のローションとゴムを取り出す。

俺は服を脱ぐ。
背中を向けている京佐を後ろから抱きしめる。
ビクッと京佐の体が強張る。
細身だが大きくて男らしい背中のはずなのに、艶かしくて色っぽく見えるのはなぜだ。

「京佐……」
「……」
背中に唇を添わせる。
大きな背中が反応する。
それを俺は都合よく好感触と捉える。
「やめろっ……」
後ろから胸を触る。
乳首をコリッと摘む。
「んっ……」
声を出さないようにしているのか、京佐のくぐもった声がする。
「頼む……やめろ……」
乳首を摘まれたままで、ふーふーと息を殺しながら俺を拒絶する。
「なんでよ……こんなになってんのにさ……」
カリッと爪で弾くと、
「ふうん……!」
とかわいく鳴く。
カリッカリッと弾くたびに必死に抑えようとするも声は漏れてしまい、
「あっ……やっ……あ……」
と鳴く声は甘さを増していく。

窪みに手を伸ばす。
未知の世界だった場所が指に吸い付いてゆっくり飲み込もうとしている。
「嫌だっ……」
まだ抵抗する。
京佐から体を離す。
京佐が体を丸めて防御の姿勢を取る。

逆効果なんだよ……京佐……
その丸めた体が弱々しさを強調させ、雄味が消えていくんだよ……
強さや逞しさが消えるとその体は途端に種類の違う色気を放つ。
普段でも肩幅広めで細身ながら男らしいその背中は、男の目から見ても魅力があるし、女の子たちが、
「堤くんの背中って大きくて色気がある」
と言っているのを聞いて頷いたこともある。

そんな京佐を組み敷いていることに、
普段、女をよがらせている京佐をよがらせてることにこの上ない優越感を覚える。

俺の前で晒されている男を誘う綺麗な背中。
その背中に俺は溺れている。

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