恋人ごっこはおしまい

秋臣

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合鍵

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俺は完全に堕ちた。

春休みなのをいいことに本能の赴くままに京佐を欲した。

今まで以上にに京佐の部屋に入り浸り、京佐の体を求める。
俺ほど乗り気ではないが、求めれば応じる。
しかし、求める時には、
「嫌だ……」
と拒否から入るのだ。
結局は応じるのになぜか毎回リセットされて拒否される。


「恋人ごっこしようぜ」

今日もいつものように肩を抱き誘う。

「……」
ん?
あれ?
何も言わない。
拒否もしない。
「け~すけ~?」
ほっぺにチュッとキスする。
「……」
あれ?

「……がいい」
え?
何か言ってる?
「京佐?」
「……」
「なに? 聞こえない」
「……」

京佐の声がやっと聞こえた。


「……セフレならいいよ」


セフレ?

「え? セフレ?」
コクンと京佐が頷く。

マジか。

京佐からセフレなんて言葉を聞くとは思わなかった。

いや、でもそうだよな……
この状態はどう見ても、どう考えても、
誰に聞いても、セフレだよな……

それを京佐が受け入れたってことだよな?
俺とのこの関係、続けてくれるってことだよな?

マジで!?
京佐、マジ最高!!

ノリが良すぎる!
めっちゃいいじゃん!

友達でもいてくれるし、体の関係も有りなんてやばすぎる!

「それでいいか?」
京佐がそう言って俺を見つめるから、
俺は、
「お前、最高!」
と遠慮なくがっついた。


それからの京佐は拒否することはなくなり、いつでも俺を受け入れてくれる。
なんなら今まで以上に素直だし、受け身だけど喜んでるような素振りも見せるし、何よりやたら感度が良くて、イきまくってくれるのがいい。
めちゃくちゃいい!!

そんな生活が春休みが終わり、3年になっても続いた。

京佐が俺の部屋に来ることはほとんどなく、俺が通い詰めている。

ある日、いつものように京佐の部屋で過ごしている時、不意に、めんどくせえな……と思った。
ここに来る時は事前に京佐にアポを取る時もあれば、アポ無しで来る時もある。

京佐は、
「部屋の前で待つな。アパートの人に不審がられるだろ」
まあ確かにそうなんだよ、それは俺も気になってた。
「アポ取ってから来いよ」
そういうけど思いついたらすぐ来たいじゃん。

あ! そうだ!
いいこと思いついた。

数日後、いつものように京佐の部屋で楽しんだ後、ベッドで寛ぎながら言ってみた。

「京佐」
「ん?」
「合鍵ちょうだい」
「え?」
「この部屋の合鍵くれよ」
くれくれと手を出しながら言うと、珍しく、
「それはちょっと……」
と断ってきた。

「なんでよ? 合鍵あれば部屋の中で待ってられるじゃん」
「……それは無理」
「なんでだよ。なんで合鍵くれねえの?」
「複製禁止だし……」
その言い分はちょっとわかる。
俺の部屋も鍵の複製は禁じられているのでマスターキーの他に2本スペアをもらってる。失くした場合は鍵交換費用がかかり敷金から引かれる。 

「スペアあるだろ?」
「あるけど……」

煮え切らない京佐にイラッとする。

俺は部屋にある京佐の机の引き出しを開ける。
「なにしてんだよ!」
京佐が俺を止める。
一番上の引き出しの奥、折りたたんだ封筒がある。それを取り出す。
「おいっ!」
「へへへ~」
中身を出し、ぷらぷらと見せつける。
スペアキーだ。

「なんで知ってんだよ! 返せ!」
「京佐くん、隠し方がワンパターンなんだよねえ」
「くそがっ」

以前、やましいものを隠してないか京佐の部屋を物色した時に見つけていた。
へえ、こんなところに入れてるのか、くらいにしか覚えてなかったが、まさか役立つとは。

「いいから返せ」
「やだね」
「やだじゃねえよ、複製作れないんだから返せ」
「失くさないから大丈夫だって」
「禄郎!」
「あーはいはい、うるさいねえ、京佐くんは」

京佐の手に鍵を握らせる。

「は? 何これ? 俺の部屋の鍵じゃねえぞ」
「俺の部屋の鍵」
財布にスペアを入れておいたんだ。
合鍵欲しがるなら自分の部屋のも用意しないとな。
「要らねえよ」
「まあ遠慮すんな」
「要らねえって」
「いつでも来てね♡」
「……」

こうして俺は京佐の部屋の鍵を手に入れた。

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