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由来
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「あの人たちとは付き合い長いのか?」
帰りながら曽川が依田に聞く。
行きは下りだったが、帰りは登りだから坂が地味にきつい。
「うん、別荘を買う前からの付き合いみたいだよ。
海釣りするのに船出してもらってから仲良くなって、ここを紹介してもらったって聞いた」
「いい人そう」
「いい人だよ、おじちゃんもおばちゃんも」
「うん、そんな感じ」
「依田の名前、薫だったんだな」
「それ!」
「知らなかったわけじゃないけど、改めて薫って言われると誰? ってなるなw」
「なんで薫なの? なにか名付けの由来とかあんの?」
「それよく聞かれるんだけどさ、あまりにもくだらなくてさ」
「どういうこと?」
話してるうちに坂を登りきって別荘に着いた。
リビングのソファーに座って話の続きを聞く。
「依田家の男はみんな名前の最後が『る』で終わるんだよ。
いつからそうなってるのか知らないけど、少なくともひい爺ちゃんの頃にはそうなってた」
「ひい爺ちゃんの名前は?」
「まもる、守るの守。
ひい爺ちゃんの兄弟は勝(まさる)と傑(すぐる)なんだって」
「本当に『る』だな」
『じゃあ医者やってる爺ちゃんは?」
「譲(ゆずる)。爺ちゃんは女兄弟しかいないからそこはそれだけ」
「うんうん」
「なるほど」
「で、親父が亘(わたる)、叔父さんが稔(みのる)。兄貴が覚(さとる)」
「順当に来てるな」
「いや、そうなんだよ。まだ『る』のつく名前なんてあるだろ?
なのになんで『薫』になる?
これのおかげで散々女に間違えられたよ」
ふっ
ふっふっ
「なに?『薫』嫌なのか?」
「女みてえだろ? 嫌だよ」
「ふくくく」
「薫、いいじゃん。そんなに嫌か?w」
「笑ってんじゃねえかよ、嫌だよ」
「あははははは!」
「俺、抗議したよ。『とおる』とか『たける』とか『すばる』とかまだいろいろあるだろ?って」
「うんw」
うぷぷぷ
「思いつかなかっただと」
「いや、そこは親父さんとお母さん、頑張ってあげてw」
「だろ? もう少し頑張ってくれよって思うじゃん」
「ぎゃははは!」
「なるほどねえ、名前ねえ。
きょうさ、は読めねえけど京佐だろ?」
「読めるだろ」
「読めねえよ」
「で、依田は薫だろ」
「うん」
「で、俺は大知じゃん」
「たいち?」
「曽川ってたいちだっけ?」
「そうだよ、知らねえのかよ」
「だいちだと思ってた」
「あ、俺もだいちだと思ってた」
「違うわ! た・い・ち! 濁らない!」
ふははは! ウケるw
「で? 禄郎は? なんで禄郎なんだ?」
「あんまりいないよな」
「歴史かなにかにまつわる名前とか?」
「『元禄』でしか見たことない漢字」
「確かに」
これ、言わなきゃダメ?
「なんで黙るんだよ」
「いや……」
「なによ? なんか言いづらい理由でもあんのか?」
もごもご……
「え? なに?」
「何言ってんだ?」
「声、ちっさ!」
もういい!
開き直る!
「親父がさ」
「うん」
「音楽好きで」
「うん」
察してくれ……
「それで?」
ダメか……
「ロック」
「ん?」
「ロックンロール」
「ロックンロールから禄郎……」
「え?w」
「ロックンロール……wろっくんろーる……ろくろーw」
「www」
3人とも爆笑。
「人の名前を笑うなと言われて育ったんだ、俺は。
だから俺は人の名前を笑わない!」
「ごめんw無理……w」
「言いたいことはわかるけど、由来が強すぎるww」
「薫が初めてマシに思えるww」
「くそがっ!」
散々笑った後、曽川が、
「これっきりにするから」
と言って、リビングの大窓を開け放ち、
夜の海に向かって、
「ロックンローール!!」
と叫んで京佐と依田は笑い死んだ。
帰りながら曽川が依田に聞く。
行きは下りだったが、帰りは登りだから坂が地味にきつい。
「うん、別荘を買う前からの付き合いみたいだよ。
海釣りするのに船出してもらってから仲良くなって、ここを紹介してもらったって聞いた」
「いい人そう」
「いい人だよ、おじちゃんもおばちゃんも」
「うん、そんな感じ」
「依田の名前、薫だったんだな」
「それ!」
「知らなかったわけじゃないけど、改めて薫って言われると誰? ってなるなw」
「なんで薫なの? なにか名付けの由来とかあんの?」
「それよく聞かれるんだけどさ、あまりにもくだらなくてさ」
「どういうこと?」
話してるうちに坂を登りきって別荘に着いた。
リビングのソファーに座って話の続きを聞く。
「依田家の男はみんな名前の最後が『る』で終わるんだよ。
いつからそうなってるのか知らないけど、少なくともひい爺ちゃんの頃にはそうなってた」
「ひい爺ちゃんの名前は?」
「まもる、守るの守。
ひい爺ちゃんの兄弟は勝(まさる)と傑(すぐる)なんだって」
「本当に『る』だな」
『じゃあ医者やってる爺ちゃんは?」
「譲(ゆずる)。爺ちゃんは女兄弟しかいないからそこはそれだけ」
「うんうん」
「なるほど」
「で、親父が亘(わたる)、叔父さんが稔(みのる)。兄貴が覚(さとる)」
「順当に来てるな」
「いや、そうなんだよ。まだ『る』のつく名前なんてあるだろ?
なのになんで『薫』になる?
これのおかげで散々女に間違えられたよ」
ふっ
ふっふっ
「なに?『薫』嫌なのか?」
「女みてえだろ? 嫌だよ」
「ふくくく」
「薫、いいじゃん。そんなに嫌か?w」
「笑ってんじゃねえかよ、嫌だよ」
「あははははは!」
「俺、抗議したよ。『とおる』とか『たける』とか『すばる』とかまだいろいろあるだろ?って」
「うんw」
うぷぷぷ
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「いや、そこは親父さんとお母さん、頑張ってあげてw」
「だろ? もう少し頑張ってくれよって思うじゃん」
「ぎゃははは!」
「なるほどねえ、名前ねえ。
きょうさ、は読めねえけど京佐だろ?」
「読めるだろ」
「読めねえよ」
「で、依田は薫だろ」
「うん」
「で、俺は大知じゃん」
「たいち?」
「曽川ってたいちだっけ?」
「そうだよ、知らねえのかよ」
「だいちだと思ってた」
「あ、俺もだいちだと思ってた」
「違うわ! た・い・ち! 濁らない!」
ふははは! ウケるw
「で? 禄郎は? なんで禄郎なんだ?」
「あんまりいないよな」
「歴史かなにかにまつわる名前とか?」
「『元禄』でしか見たことない漢字」
「確かに」
これ、言わなきゃダメ?
「なんで黙るんだよ」
「いや……」
「なによ? なんか言いづらい理由でもあんのか?」
もごもご……
「え? なに?」
「何言ってんだ?」
「声、ちっさ!」
もういい!
開き直る!
「親父がさ」
「うん」
「音楽好きで」
「うん」
察してくれ……
「それで?」
ダメか……
「ロック」
「ん?」
「ロックンロール」
「ロックンロールから禄郎……」
「え?w」
「ロックンロール……wろっくんろーる……ろくろーw」
「www」
3人とも爆笑。
「人の名前を笑うなと言われて育ったんだ、俺は。
だから俺は人の名前を笑わない!」
「ごめんw無理……w」
「言いたいことはわかるけど、由来が強すぎるww」
「薫が初めてマシに思えるww」
「くそがっ!」
散々笑った後、曽川が、
「これっきりにするから」
と言って、リビングの大窓を開け放ち、
夜の海に向かって、
「ロックンローール!!」
と叫んで京佐と依田は笑い死んだ。
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