恋人ごっこはおしまい

秋臣

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複雑なお年頃

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テントに戻ると曽川は砂に埋まってた。
京佐が埋めたらしい。
顔だけ出して、砂で作った巨乳のお姉さんになってる。

「何してんだよw」
「きょうさの力作」
「理想」
「ふっ」
「で? お前らは随分楽しそうだな」
絵里香ちゃんと葉月ちゃんに出会った経緯を二人に教える。

「そっち行けばよかったなあ」
「曽川を砂に埋めてる場合じゃなかった」
ふっ

「それで? 釣果は?」

依田がブツブツ言って、自分のスマホに打ち込んでる。
番号な、入力しないと忘れるよな。

「依田はうまくいったんじゃね?」
「これが本物の番号ならな」
「かけてみれば?」
「こういうのは大体出まかせだよなあ」
依田がかけてみるとコールする。
マジか。

「絵里香ちゃん? そう、薫。マジか」
電話の向こうで、
「マジかってなによ~」
と絵里香ちゃんが笑ってる。
通話ができると言うことだから、メッセージが送れるということだ。
そこからLINEで繋がることにしたらしい。

「あーあ、依田が勝ち抜けかあ」
「お先に~」
「禄郎も女の子といたよな?」
とまだ砂に埋まったままの曽川に聞かれる。
「うん」
「禄郎はどうだったのよ?」
「楽しかったよ」
そう、楽しかった、それだけでいいんだ。
砂と気持ちを払って立ち上がる。
「じゃ、そろそろ行きますか」
「だな」
テントを片付ける。
荷物を持って歩き出す。

「ちょっと待て! 出せ!」
砂に埋まった曽川が叫ぶ。
「似合ってるよ、爆乳のお姉さん」
「昨日の筋肉お兄さん、来ねえかなw」
「今ならやりたい放題できるぞw」
「待て待て! マジで出してくれ!」

砂から曽川を掘り出し、坂道をヒーヒー言いながら登り、一度別荘へ戻る。
外にシャワーがついてるので砂を洗い流す。
この後は観光に行く予定だ。

「この辺ってなんかあるのか?」
昼飯を食い損ねた京佐と曽川がカップ麺を啜りながら依田に聞く。
「近くにはないな。車でしばらく走らないとないかな」
「どうするか」
調べてみたら海中水族館とかロープウェイがあるらしい。
ベタだがそこに行ってみることにした。

ベタなコースだったが、夏のテンションが加味されるとなんでもキラキラして見えるものなのだな。
野郎4人でもそれなりに楽しめるからすごい。

「絵里香ちゃんと見たかった~」
「絵里香ちゃんってさっきの子?」
京佐に聞かれてる。
「そう」
にまにますんな。
「お持ち帰りすればよかったじゃん」
「あのな、絵里香ちゃんはそういう子じゃないんだよ」
「ちょっと遊んだくらいで何がわかるんだよ」
「わかるんだよなあ、なんかねえ、心が綺麗」
「なんでわかるんだよ」
「だって砂でイルカ作っちゃう子だぞ?」
「イルカ関係ねえしw」
「イルカになってなかったしなw」
「そこがいいんだろ?」
「はいはい、惚気てろ」

「禄郎は?」
曽川に聞かれる。
「もう一人の子と本当に連絡先交換しなかったのかよ」
「うん、振られた。俺とはそこまでじゃなかったみたいだな」
葉月ちゃん、嘘ついた、ごめん。
「そりゃ残念だなw」
「うるせえ」
「ふうん」
京佐はそう言って先を歩いて行く。
京佐?
曽川が、
「複雑なお年頃ですわねえ」
と京佐の後を追う。
どういうこと?


帰りにスーパーに寄る。
曽川が明日の朝はサンドイッチにしようというので材料を買い足す。
それと明日は最後だから花火をやることにした。あとはスイカ割り。
今日の夕飯はおばちゃんにもらった干物を使った炊き込みご飯にするようだ。
ブラボー! ママ!

夕方、別荘に帰ると曽川ママは早速調理に取り掛かる。
もう依田も京佐も曽川に託してる。
ママ、お願いします!
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