恋人ごっこはおしまい

秋臣

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最後の夜

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別荘に戻って風呂に入る。
明日は10時頃にこっちを発つ予定だ。

冷蔵庫の中も空にしたいから、明日の朝は残り物で何か作ると曽川が言っていた。
それでも残ったものは手分けして持って帰ることになっている。
飲み物も残っている。
水はどうにでもなるがビールは中途半端に2本だけある。
これは飲みたいやつの早い者勝ちということにした。

風呂から上がると曽川と依田がビールを飲んでいた。
「やっぱり取られたか」
「当然飲むわな」
「だよな」
仕方ない、水で我慢するか。
「京佐は?」
「もうすぐ上がると思うよ」
「ふうん」

「あっちい」
上半身裸で京佐が来た。
俺には目に毒。
「きょうさ、結構焼けたな」
「風呂入るたびに日焼けが痛い」
「日焼け止め塗ったのか?」
依田が聞く。
「塗ったけど焼けた」
「海入ったら落ちるから塗り直ししないと」
「やってねえわ」
「だからだよ」
みんなでどれくらい焼けたか見せっこした。
焼けやすいのか、日焼け止めをちゃんと塗り直さなかったからか、京佐が一番焼けてた。
「ほぼ焦げだな」
「焦げって言うな」


「明日は朝飯食ったら、おじちゃんとおばちゃんに挨拶してくるよ」
「なんだよ、俺たちも行くよ、世話になったんだから」
曽川が言う。
「俺たちも行くよ」
俺と京佐も同意だ。
「じゃあ、挨拶してから帰ろうぜ」
「了解」

昼寝したからかあまり眠くない。
というか、微かに聞こえる波の音と、暑さが残る夜風と、くだらない話で笑い合ってるこの空間が心地よくてまだ寝たくない。
本当に楽しかった5日間だった。



寝室に行き、寝ようとしたら依田が来た。

「あれ? どうした?」
「禄郎、お前あっちの部屋行け」
「え?」
いきなり依田が俺のベッドを占領する。
「え? どういうこと?」
「いいからこれ持って向こうの部屋行け」
曽川が俺の枕を手渡す。
「え? なんだよ、わかんねえよ」

曽川と依田が顔を見合わせ頷く。
そして曽川が俺に言う。
「今日で最後だろ? 話してこいよ。
話すことないならただ寝ろ。
それでも最後の夜くらい、きょうさと居たいだろ?」

二人がにやついてない。
茶化してない。

二人の気持ちはありがたい。
本当は行きたい。
でもやっとここまで戻れたのに……という思いもあって怖いんだ。

枕を持たされ立ち尽くす俺に、
「ほら、行け」
と依田がぐいぐい押す。
押しながら耳元で、
「京佐だってなにも考えてないわけじゃないぞ」
「え?」
「骨は拾ってやるから」
曽川がドアを開ける。
「おせっかいはやめられねえわ」
と二人はいつものにやけ顔で俺を廊下に追い出した。
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