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人形
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まだT大受験を決めきれなくて迷っていた俺は放課後進路指導室の隣の資料室でその手の情報を調べたり、過去問集めたりすることが多かった。ネットでも手っ取り早く調べられるが、学校独自の情報量はバカにできない。
その日も何年か遡って過去問を入手して、帰ろうと思った時、廊下の先で久我の姿を見かけた。
今日進路指導って言ってたな、隣にいたのか。全然気づかなかった。
距離が遠かったので声はかけず、久我の後を追って教室まで行ったところで、久我が誰かと話しているのが聞こえた。
後輩か。
そういえば後輩に雑誌とか本とかあげる約束してるって言ってたような。
久我と声をかけようとした俺の目には後輩にキスをしてる久我の姿が映った。
最初は軽く次第に深くなる久我のキスに後輩も抵抗していない。
「秘密にできるか?」
という久我の問いに頷いた後輩は久我と専科教室のある棟のトイレに消えた。
ショック……とは違う。
ただ一瞬でどうでもよくなった。
俺じゃなくてもいいなら、もうどうでもいい。そういうことだ。
自分で自分の冷静さに驚いたが、強がりではなく本音だった。
俺はそのまま学校を後にした。
その日以降なにもなかったように過ごしている。感情を失うとかえって頭がクリアになった。久我はいつもと何ら変わらない、なにもなかったかのように。
それでいいよ。
いつもと変わらないから俺への愛情は相変わらず重いし、体の関係も求めてくる。
なにも変わらない。
自分の中に黒いものが蠢いているのが分かる。その正体はぼやけてよく見えないのにどんどん大きくなっている。
俺は空っぽになって気持ち良さだけを味わう人形でいることにした。
あの日だけでなく、久我は男女問わず何人もと関係を持っていたようだ。
「久我、遊びまくってるらしいぜ」
そんな噂話も何度か耳にした。
実際ホテルに連れ立って入っていくのを図書館帰りに見たこともあった。
こんな偶然望んでないのに。
やるならわからないようにやれよ。
わからないようにやっていたとしても体を重ねればそれは嫌でもわかってしまう。
違うやつと寝ているのは感覚でわかるものだ。下世話な言い方をすれば具合が違う。
他の人と関係を持てるなら俺はもう要らないだろう。俺もお前にそれを求めていない。
それなのになぜ今まで以上に執拗に俺を求める?
「柊……柊……!」
と抱くたび俺を求める声が熱を帯びる。
別れる選択肢もあった。
そうするつもりだった。
それなら最後まで人形でいて、餞の言葉を送ろうと決めた。
その日も何年か遡って過去問を入手して、帰ろうと思った時、廊下の先で久我の姿を見かけた。
今日進路指導って言ってたな、隣にいたのか。全然気づかなかった。
距離が遠かったので声はかけず、久我の後を追って教室まで行ったところで、久我が誰かと話しているのが聞こえた。
後輩か。
そういえば後輩に雑誌とか本とかあげる約束してるって言ってたような。
久我と声をかけようとした俺の目には後輩にキスをしてる久我の姿が映った。
最初は軽く次第に深くなる久我のキスに後輩も抵抗していない。
「秘密にできるか?」
という久我の問いに頷いた後輩は久我と専科教室のある棟のトイレに消えた。
ショック……とは違う。
ただ一瞬でどうでもよくなった。
俺じゃなくてもいいなら、もうどうでもいい。そういうことだ。
自分で自分の冷静さに驚いたが、強がりではなく本音だった。
俺はそのまま学校を後にした。
その日以降なにもなかったように過ごしている。感情を失うとかえって頭がクリアになった。久我はいつもと何ら変わらない、なにもなかったかのように。
それでいいよ。
いつもと変わらないから俺への愛情は相変わらず重いし、体の関係も求めてくる。
なにも変わらない。
自分の中に黒いものが蠢いているのが分かる。その正体はぼやけてよく見えないのにどんどん大きくなっている。
俺は空っぽになって気持ち良さだけを味わう人形でいることにした。
あの日だけでなく、久我は男女問わず何人もと関係を持っていたようだ。
「久我、遊びまくってるらしいぜ」
そんな噂話も何度か耳にした。
実際ホテルに連れ立って入っていくのを図書館帰りに見たこともあった。
こんな偶然望んでないのに。
やるならわからないようにやれよ。
わからないようにやっていたとしても体を重ねればそれは嫌でもわかってしまう。
違うやつと寝ているのは感覚でわかるものだ。下世話な言い方をすれば具合が違う。
他の人と関係を持てるなら俺はもう要らないだろう。俺もお前にそれを求めていない。
それなのになぜ今まで以上に執拗に俺を求める?
「柊……柊……!」
と抱くたび俺を求める声が熱を帯びる。
別れる選択肢もあった。
そうするつもりだった。
それなら最後まで人形でいて、餞の言葉を送ろうと決めた。
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