1.5

秋臣

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最終話 1.5

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1.5
「一人だと持て余すけど二人になるには足りない。
要するに中途半端ってことね。
でも中途半端じゃあまりにも味気ないじゃない? だから1.5。
心の距離とか気持ちの量って言えばわかるかしらね」
ママは続ける。

「初めて柊ちゃんがお店に来た時に名刺を渡したの。
あの子しばらく名刺を見てて、
『この店名、ママが考えたの?』ってあなたと同じように私に聞いたの。そうよって答えたんだけど大抵その後に由来を聞かれるから、またか……ってうんざり気味だったし、説明が面倒だから最近ははぐらかすことが多かったけど、柊ちゃんは『余る、足りない……いい名前だね』そう言ったのよ。
初見で的確に言い当てた客初めてだったわよ。それがなんだか嬉しくてね、それからは時々通ってくれるようになって今では大切な常連さん。柊ちゃん美人だからあの子が来ると集客上がるし、いろんな意味で有り難い存在よ。
それ以上にあの子にとってここが寛げる場所であればいいと思ってるのよ」

「うちね、面白いシステムがあってね。
ゲイバーに出会いを求めにきたけどなかなか奥手で踏み出せない人とかゲーム感覚で楽しみたい人用のシステム。
お目当ての人が飲んでるものと同じものをオーダーして、2枚のコースターを渡すの。
1枚は黒いコースター、もう1枚はこの白いコースター」
ママが白いコースターをひらひらさせる。
「で、白いコースターに依頼主が自分の名前を書いて槇ちゃんに渡して貰うんだけど、OKなら黒いコースターに白いコースターを重ねる。NGなら黒いコースターのまま」

ママは白いコースターを久我に渡す。
「そっちの黒いコースターに『1.5』って書いてあるでしょ?」
黒いコースターにはシルバーで『1.5』という文字が印字してある。
「白いコースターを見て。印字は『0.5』つまり隙間を埋めるってこと」
「足りない分を補うんだ……」
ママが豪快に笑う。
「我ながら粋だなって感心するわよ」

「柊ちゃん、白いコースターを貰うことは多かったけど一度も白にしたことなかったのよ、ずっと黒いまま。難攻不落の美人、気高いけど勿体無いわよね。
でもね、そんな柊ちゃんが初めてシステムを使ったのが例の彼。
驚いたけど、やっと柊ちゃんの時計が動き出したのかってちょっと泣きそうになったわよ。
やっと『2』になりたい、そう思えたのかなってね」

「『1.5』か……俺のことだな……」
久我が涙を拭うこともせず静かに笑う。

「みんなそうよ、なにかを持て余してるし、なにかが足りないの。時々枯れさせたり溢れさせたりして生きていくのよ。楽しいわよね、人生って」
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