好きを教えて

秋臣

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15周年記念イベント

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15周年記念イベント、当日。
みんなで銭湯に入ろうという企画は大盛況だった。
頼のお客さんってこんなにいた?ってくらい大勢来た。
頼のタトゥーを入れているという共通項だけで、個々の繋がりは薄いはずなのに、花やプレゼントを持ってきてくれる人たち、思い出話に花が咲く人たち、互いのタトゥーを見せっこしてる人たち……
いろんな人が来てて楽しい!
懐かしい人もたくさんいて、俺にも声をかけてくれる。
その大半が、
「あの覗きしてた子か!」
だった。
頼が、
「お前、警察に突き出されなくてよかったな」
と爆笑してた。

京さんも来た。
「店は?」
「任せてきちゃった。今日はこっちが最優先でしょ、俺も銭湯入りたいしね」
「頼、番台にいるよ」
「おう、声かけてくる」
番台にいる頼に声をかけると、なにやら二人で盛り上がって笑ってる。
ちょっとだけチクっとする。
楽しい日にこういうのダメ! 無し!
「才、お前も京と入ってくるか?」
「いいの?」
「入ってこい」
「うん!」

銭湯なんて何年振りだろう。
何度か頼に連れられて来たことがある。
家の何倍も大きい風呂に入ると、ものすごくワクワクした。いつもと違うことするのってドキドキする。

タオルを腰に巻いて浴場に入る。
ガヤガヤと声も賑やかだが、絵面も賑やかだ。
色とりどりのたくさんの絵や文字にちょっと圧倒されて、これ全部頼の作品なんだよなあとそれぞれ見入っちゃう。

ついジーッと見ちゃうと、
「お、見るか?」
と惜しげもなく見せつけてくる。
大抵の人はそういう反応だけど、中には、
「入れたの後悔して消そうと思った」
と頼に話している人もいた。
実際消してる人もいると思う。

頼はそれを咎めたりはしない。
そういう人は入れる時の反応でわかると言ってた。
だから何度も何度も説明するし確認した上で承諾書と契約書を書いてもらうんだ。
そういう人に頼は、
「だから言っただろ?」
と笑ってる。
自分の作品を消したい、消したなんて言われて悲しくないわけないけど、それは人に言わないし、そんな姿は絶対に見せない。

それどころか、
「デザインの変更なら対応できるかもしれないから、なにかあれば声かけて」
と言ってる。
頼って……
「すげえなあ」
俺の代わりに京さんが呟く。
「京さん?」
「自分が描いたものを消したいなんて言われたら切ないよなあ」
「うん」
「それをおくびにも出さず対応できる頼、
かっこいいじゃん」
「うん」
「才の自慢だな」
「うん!」

湯船に浸かる、あったかい……
夏だけど、汗かくけど気持ちいい……

「ところで」
「なに?」
「少しは大人になりましたか?」
と京さんが俺の無防備なチンコをガン見する。
「うわあ! なに見てんだよ!」
「いいじゃん、減るもんじゃないし」
「減る!」
「増えてるよ」
「え?」
ちょっと勃ってる……
「体積増えてますけどw」
「ただの生理現象!」
「なに? 才くん元気になっちゃったの?」
他のお客さんたちが揶揄ってくる。
「若いねえ」
「俺、才くんなら抱ける」
「やだー! やだー!」
「才く~ん!」
「あっちいけ! くっつくな!」
「かわいい!」
「やめてーやめてー!」
あはははは!
わはははは!
ぎゃははは!

バァーーーーン!!

脱衣所の少し涼しい空気が浴場内に流れ込む。
頼が牛乳瓶持って仁王立ちしてる。
牛乳? 飲むの?

「才に手出したらこれで頭カチ割るぞっ!」
と牛乳瓶を突き出す。

「出たあーーっ!! バカ親! バカ保護者!!」
「相変わらずだなあw」
「このやりとり久しぶり! 懐かしい!」

ぎゃはははははは!!

「俺は本気だぞ!」
と頼が振りかぶると後ろから、
「トラブル起きたら即終了な~」
と六さんにでかい釘刺されて頼は番台に戻っていった。
その頼を見てまたみんなが爆笑してる。
うん、みんないいお客さん、大好き!

もうすぐ23時になる。
「頼さん、またこれやってよ」
「楽しかった!」
「タトゥー入れたこと後悔させないでくれてありがとう」
「タトゥーシールありがとね!」
次々とそう言われて頼はちょっと涙ぐんでた。
「これからも店と俺をよろしくお願いします!」
と深々と頭を下げてお開きとなった。

一人を除いて。
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