好きを教えて

秋臣

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一人だけの客

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「来ないかな」
「かもな」
「どうする? もう少し待つ?」
「二人でゆっくり風呂入るか」
「俺二度目」
二人とももう脱ぎ始めてる。
あ、番台どうしよう。

「おいおい、せっかちな奴らだな」

「見上さん!」
「よう坊主、久しぶりだな」
「風呂気持ちいいよ」
「入らせてもらうよ」
「俺が番台にいるから安心して!」
「おう、ゆっくりさせてもらう」

「見上さん、いらっしゃい」
「来たぞ」
「お待ちしてました、どうぞ」
「ん」

「頼さん、遅れてしまって申し訳ございませんでした」
深町さんが頭を下げる。
「いえ、来てくれて嬉しいです」
「私は脱衣所で待たせてもらいます。外にも数名護衛はいますが目立たないよう潜んでますのご安心ください」
「はあ」

深町さんがちょっと小声になる。
頼に耳打ちする。
「見上はのぼせやすいので少しだけ気をつけてやっていただけますか」
「ふっ 子ども……」
「……そう言わずにお願いします」
「わかりました」

見上さんが服を脱ぐ。
隠すとか一切なく豪快に脱ぐ。
脱いだものをせっせと深町さんが拾って畳んでる。さすが手慣れてるw

あ! 観音様!
見るの数年振り!
俺、あの観音様が綺麗で大好きでよく施術してるのを覗いてた。
やっぱり綺麗だなあ。

俺の視線に気付いたのか見上さんがこっちを見る。
「どうだ、久しぶりだろ?」
「うん、拝んどく」
見上さんの背中に向けて手を合わせて拝む。
「あははははは!」
笑いながら見上さんと頼は浴場へ入っていった


「才くん」
深町さんに声をかけられる。 
「はい」
「あれから会う機会が無くてきちんと礼が言えていませんでした。
カナダのお土産、ありがとうございました」
と頭を下げる深町さん。
「ええ? 何年前の話?」
「ふっふふ」
笑った! ちょっとかわいい!
「なぜドリームキャッチャーを?」
「うーん、カナダの有名なお土産だから?」
「ふっ」
また笑った!
「持ってるといい夢が見られるんだって」
「夢ですか」
「深町さんの夢はなに?
やっぱり組長になること?」
「あははは!」
今日はいっぱい笑ってくれる。
「え? 違うの?」
「私の夢は守ることです」
「え? どういうこと?」
「そういうことです」
「えー! わかんない、教えてよ!」
「秘密です」
「深町さんってケチなんだね」
「ふふっ……ケチって……」
ひゃは。
深町さんは楽しい人だ。


あ、そうだ。
「ねえねえ、どうして深町さんは見上さんのこと組長って呼ばないの?
前は頭って言ってたのに今は見上さんって呼ぶよね?」
ずっと疑問だった。
組長になったのにどうして組長って呼ばないの?
「そんなところ気づきますか?」
「気づきました」
「……」
「それなら聞いてもいいでしょ? ダメ?」

「見上が言い出したことなんです」
「ん?」
「見上が襲名する時、私たちははしゃいでいました。自分たちの仕えてる人が組の長になる。こんな誇らしいことはありませんから」
「うん、わかる気がする」
「しかし、襲名披露が終わった後、見上は、『今から俺のことを組長と呼ぶな』と宣言したんです。
「えー? なんで?」
「そう思いますよね、私も皆も思いました。反発する者まで出てきました」
「うん」
「見上は『もう時代が違う、組長なんて呼ばれて天狗になってるようじゃダメなんだ。俺のことは見上と呼べ』と言いました」
「わかるようなわからないような」
「皆そんな感じでした。誰一人納得してないのを察した見上は『仕方ねえ、今日だけ許す、存分に呼べ。気が済むまで呼んだら明日から封印しろ』と」
「うん」
「一度言い出したら絶対曲げる人ではないのは皆わかっていますので、指示通りにしました。
その日はしつこいくらい『組長』と呼びました。明日からは『組長』もしくは『頭』と呼んだ者は出禁にする。早く慣れろと言われました」
「うんうん」
「『組長』はともかく、『頭』はずっと呼んでいた呼称なので今更『見上』や『見上さん』は慣れないし、そもそも抵抗があってしんどかったです、必死でした」
「なんでそこまで?」
「詳細は言えませんが、見上の計画です」
「計画?」
「それ以上は勘弁してください。とにかく見上からの指示でこう呼んでいます」
「頑固だね」
「はい、頑固すぎて手を焼いてます」
「あはははは! そんなこと言っていいの?」
「才くんが告げ口しなければ大丈夫です」
「このくそジジイ!って思うことある?」
「……」
「あるんだ!w」
「私が今後死なずに済むかは才くんの口にかかってますので頼みますね」
「あはははは! 深町さんっておもしろい!」
「ふっ」
「深町さん、大好き」
「ふふっ」
カシャッ!
「あ! また写真撮りましたね!?
消しなさい!」
「やだ」
「こら!」
「やだ!」
「言うこと聞きなさい!」
「やーだー」
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