好きを教えて

秋臣

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義理

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脱衣所ではまだ才と深町さんが騒いでる声が微かに聞こえる。
なにしてんだか。
俺と見上さんは湯船に浸かってる。

見上さんは湯船の淵に片腕を乗せてもたれかかりながら、その微かな声を楽しそうに聞いている。
綺麗な観音様を背負った見上さんの綺麗な体。
尻のラインが艶めかしい。

それを見てたらちょっと元気になってしまった。
見上さん見て元気になるとかなにしてんだ、俺。
「あいつら楽しそうだな」
「そうですね」
「そろそろ上がるか」
「……お先にどうぞ」
「ん?」
「俺はもう少し入ってます」
今出られない……
「付き合ってやろうか?」
「いえ、大丈夫です」
「遠慮すんな、こんな機会滅多にないんだから」
お願い、隣に来ないで……
来ちゃった……

「そういや、坊主4年だっけか?」
「そうです」
「就活か」
「先日内定出ました」
「へえ! じゃあ就職祝いやらねえとな」
「気を遣わなくて大丈夫です」
「俺がやりてえんだよ」
「しかし……」
「もう大人だし、就職だろ?
車とか……」
「そんな高価なものはやめてください!」
「なんで?」
「そんな義理ありません」
「……」

今のはよくない……言葉が悪い、傷つけた…
「すみません、言い過ぎました」
「義理ね……」
怒ってる、当然だ。
せっかく楽しかったのにまた俺がぶち壊した。
「義理じゃなければいいのか?」
「え?」
「こういう仲になれば義理では無くなるか?」
顔を見上さんの方に向けられる。
仕掛けられる。
ずるい、自分からは来ない。

ダメだ……さっき背中に触れた感触が蘇る。
素肌が触れる、湯が波打つ。
ダメだ、見上さんは客だ、抑えろ。
濡れた髪が、目が、色っぽい。

抑えられない。

見上さんの唇に俺の唇が触れる。
熱い。
軽く触れただけの唇が離れようとしてる。
俺はそれを唇で阻止する。
見上さんの中を求めてる。
ほら、来てよ、もっと来てよ……
なかなか応じてくれない。
それなら俺が迎えにいく。
舌を強引に差し入れる。
ビクッと見上さんの体が反応する。
顔にかかる濡れた髪の色気が凄い。
濡れた目がやばい。

おとなしい舌がじれったい。
もっと絡ませてよ、もっと絡んでよ。
欲しくてたまらない、止められない。

パシャンパシャン。
湯が波打つたびに熱さが増す。
見上さんを抱えてその肌の感触を自分の肌で味わう。
指や手で触れてるだけじゃわからない、
吸い付くような滑らかな肌がまとわりつく。
たまらない……
首元に触れる。
「んっ」
と声を漏らす。
ああ……

急にクタッとする。
ん?
あれ?
見上さん?

まずい!
のぼせやすいと深町さんに言われてた!
「見上さん!?」
「……」
まずい!

「深町さんっ!」

叫んだと同時にスーツのまま深町さんが飛び込んできた。
濡れるのも厭わず、そのまま湯船に入り、見上さんを抱え上げる。
「大丈夫です、いつものことなので」
のぼせやすいと言われてたのに注意しきれなかった俺を気遣ってくれる。

脱衣所で水を飲ませ、少し休むと見上さんはすぐに回復した。

「すみません、注意が至りませんでした」
謝る俺に、
「いや、俺がいつまで経っても自分の加減がわからねえだけだから気にすんな」
と見上さんは笑ってる。
「見上さん、アイス食べない?」
才がアイスを持って見上さんを誘う。
「おっ、いいな、くれ」
二人で並んでるアイス食ってる。
大丈夫そうだ。

「本当に申し訳ない」
ずぶ濡れの深町さんに謝る。
「予想はしていたので着替え持ってます」 と平然としてる。
「俺ダメですね」
いつも迷惑をかけてしまう。
「あなたじゃなきゃダメなんです」
「え?」
よく聞こえなかった。
「いえ、なんでもありません」



のぼせやすいのもわかっているのに、 
それでもあなたと一緒にいたかったんです。
才くんと楽しそうにアイスを食べてるその人は。
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