ショートショート集

秋臣

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カスタマイズ

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やってられるか。

何が、
「彼女に赤ちゃん出来てさ~、結婚するんだ。俺パパだぜ」
だよ。
ヘラヘラニヤニヤしやがって。
つーか、彼女いたのかよ、俺が浮気相手かよ。
そっちにびっくりだよ。

むしゃくしゃするから有給取って旅行する。
温泉行って癒されたい。

考えるの面倒だからルーレットアプリで行き先を決める。
東北に決まった。


ネットで宿を探していておかしな文言を見つけた。
『カスタマイズお宿』
なんだこりゃ?
興味を惹かれてHPを開く。

なになに?
『私どもの宿はベーシックプランにオプション(以下OP)を追加し、自由にカスタマイズする事が可能です。
お客様のお好みに合わせてご自由にお選びください』

OPは一つから可能だが、OP3は3個追加で、OP5は5個追加で少しお得。
更に追加もOKらしい。

面白そう、ここにする。


当日、宿に着く。
「いらっしゃいませ、瀧川たきがわさま、お待ちしておりました」

女将さんとご亭主らしき人が出迎えてくれる。

「お世話になります」

『この宿はカスタマイズが可能でございます。瀧川さまはいかがなさいますか?」
「そうだなあ」
なんて言いながらそれを楽しみにしているのだ。
「ちなみにどんなOPがあるのですか?」
「はい、こちらにメニューがございます」

そう言ってタブレットを渡される。

うわ、すごい……

・好きな枕
・浴衣かパジャマか
・歯ブラシの硬さ
・トイレットペーパーをダブルに

など備品を事細かに選択できる。
これはよくあるな。

「こちらもどうぞ」
別メニューを表示する。
そこには、

・担当の仲居を同性もしくは異性に
 変更。指名可
・仲居と会話を楽しむ
・仲居と散策
・仲居と食事を摂る
・仲居に背中を流してもらう
・仲居と添い寝

…………

なんだ、これは……
怪しい店のメニューみたいだ。

うーん……

「とりあえずベーシックのままで、後から追加でもいいですか?」
「はい、もちろんでございます」

ご亭主が部屋に案内してくれる。
案内されたのは部屋に露天風呂が付いている部屋だ。
「いい部屋ですね」
「はい、このお部屋は大変人気がございます」
ラッキー!
「OPがない場合は私がこちらのお部屋を担当させていただきます。ごゆっくりお寛ぎくださいませ」
「はい、ありがとうございます」

ス……
襖が閉まる。

よし、とりあえず風呂だ!
俺は温泉に癒されにきたのだ。
さっさと服を脱ぎ、かけ湯をし湯船に入る。

あ~極楽~
あ~癒される~

色づき始めた山並みと近くを流れる川のせせらぎ、なんて贅沢なのだろう。
露天風呂を満喫する。
あ~幸せ~

一時間ほどのんびりと湯に浸かっていた。

浴衣に着替え、宿の周りを散策する。
観光地で賑わっている。
土産か…買う相手がいなくなっちゃったな……

振られたことを思い出してちょっと泣いた。

あっという間に夕食。

「瀧川さま、お食事をご用意いたしました」

豪勢な料理がテーブルに並んでいる。
地酒だろうか、これがなんとも美味い。
料理も美味しいし、最高だな。

食事の後、再び風呂に入る。
少し冷たくなってきた秋風が心地良い。

食事を下げた時に布団を敷いておいてくれた。
ごろんと寝転ぶ。

癒された……

…………

ヤバい。
もうやることがない。

俺は時間を贅沢に使うというのができない男だった。
時間に縛られたサラリーマンの性か。

二泊するのにどうしたらいいんだ……


ふと、テーブルの上のタブレットに目に留まる。

OPで遊んでみるのもいいかもしれない。

うーん。
やっぱりOPつけるならパックにしたほうが得だな。
どうせならOP5にしてみるか。
自分で要望を決められるフリー枠というのもあるらしい。
タブレットで項目を選択する。

まず仲居さんを選ぼう。
え?
年齢も選べるの?
それなら同世代がいいかなあ、20代男性にする。
性格?
そんなのも選べるの?
積極的とか聞き上手とか優しいとかいろいろある。
聞き上手がいいな。
写真はないが猫タイプか犬タイプで大まかにその人を表しているらしい。
へえ。
犬がいい、犬好きだ。

他に仲居さんと会話する、散策するを選び、残り二つはフリーにして、タブレットにチェックを入れ、注意事項を読み同意を押す。
確認を押して完了。

明朝からOPが始まる。
楽しみだ。



「瀧川さま、おはようございます。
本日仲居を務めさせていただきます、
椎名しいなと申します。よろしくお願いいたします」

翌朝来てくれた仲居さんは俺と同年代で人当たりの良さそうな人だった。背が高くてかっこいい。犬でいうとラブラドールかな。

「おはようございます瀧川です、よろしくお願いします」
「早速ですが朝食をご用意してもよろしいでしょうか」
「はい」

手際よくテーブルに並べる。朝食も美味しそうだ。

「ご用意できました。どうぞお召し上がりください」
「はい、いただきます」
腹減ってる、よそってくれたご飯が美味い。

しまった、一緒に食事のOP付けてない。
「一人で食べて申し訳ない」
と謝ると、
「大丈夫ですよ。なにかお話ししましょうか?」
そうか、会話OP付けてたっけ。
「はい、お願いします」

椎名さんの話は面白かった。こっちの話も上手に聞き出し会話に盛り込む。
さすが聞き上手。
ちなみに椎名さんは一つ年上の26歳だそう。

食事を終えると布団を上げ、
「天気が良いので散策しませんか?」
と誘ってくれる。
これもOPだな。

女将さんが用意してくれた弁当を持って出掛ける。
観光地から少し離れたそこは静かでのどか、椎名さんとの会話も楽しい。
山道では、
「危ないですので」
と手を貸してくれるジェントルマンだ。

うわあ、楽しい。
椎名さん、いいなあ。

俺は部屋に戻るとタブレットで一緒に食事のOPをつけた。

「よろしいのですか?」
「はい、夕食ご一緒したいです」
「ありがとうございます、嬉しいです」

だって楽しいんだもん。

椎名さんはいける口で酒が入るとほんのり顔を赤らめ饒舌になる。
なんかかわいい。
人と食べる飯は美味いな。

風呂にも入りたい。
あ、そうだ、背中流しOPつけよっと。

湯船に浸かっていると、
「失礼します」
と腰にタオルを巻いた椎名さんが入って来た。
え、服脱ぐの……
めっちゃいい体してる……うわあ……

「背中流しますね」
「は、はい……」

まさかの素手だった。
「綺麗な肌ですね」
まずい……俺は男に反応してしまう。
泡だらけの大きな手がスルッと滑って胸を掠める。
「ひゃん!」
「かわいい声ですね……」
耳元に熱い息がかかる。
ヤバい、早くも完勃ち。

椎名さんの固いものが当たってる。
欲しい……

もうOPを使い切ってしまった。
つーか、この期待大の展開にOP使えるのか?

「俺もうOPないので……」
「でしたら私のを使いましょう」
「え?」

どういうこと?

椎名さんはふっと笑うと、
「私も宿泊客です。OPで仲居体験をしています」
マジか!?
「私のOPを使ってもいいですか?」
「ちなみにどんなOPですか?」
「添い寝です」
「あ……添い寝……」
椎名さんの指が俺の唇をなぞる。
ゾクッ……
「……わかってるくせに。だから犬を選んだんでしょ?」
犬ってそういう意味か! タチとは表記できないから犬か。
猫は……だよな。

「……使って欲しい」
「かしこまりました」

風呂から上がり布団に寝かされる。
添い寝してくれる。

が……

浴衣の帯が解かれる。

「仲居はここまでです。ここからはただの椎名です」
「椎名さん……」

濃厚なキス、いやらしい指で触れる全てが敏感に反応する。疼く。

待てない。

「来て……」
「かわいい猫ちゃん……すぐいくよ」

傷心を癒して身を焦がす夜が始まる。










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