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願望
空は見えてるのに羽ばたかない。
ほら、飛び立ってごらん。
足枷が邪魔?
うん、でもそれは取れないよ。
全てを自由にしたら君は逃げるだろ?
泣かないで、怖くないよ。
俺がいるよ、俺がいるから。
心配しないで。
俺を信じて。
俺を愛して。
そうすれば君は自由だよ。
君と出会ったのは俺が働く花屋だった。
「アルバイトの面接に来ました、美羽 伊純です」
「こんにちは、店長の沖田です、どうぞ」
「はい、失礼します」
大学生だそうだ、3年生か。
就活は問題ないのかな?
卒業後は親戚の会社で働くことになっているらしい、それなら大丈夫か。
うちとしては短期でも長期でもどちらでも構わない。
花への興味とやる気がありさえすれば。
美羽くんは物腰が柔らかく年齢よりも少し幼く見える。
かわいらしい子だと思った。
そんな見た目とは違い、店で働き始めた彼はテキパキ動き、とても覚えが早かった。
花の名前も種類も仕事も驚くほど吸収していく。
まるで水切りしたばかりの花のように。
他の従業員ともすぐに親しくなり、和気藹々としている。
店の雰囲気がいいのはとても喜ばしいことだ。
店にとってそれは重要なことで、そこで働く従業員たちの醸し出す空気というのはお客様に伝わるものなのだ。
その空気が悪いと客足は遠退く。
数店舗、店長として受け持ってきたが、それは明らかだった。
仕事にも慣れた頃、彼の歓迎会として皆で食事に行った。
小さなレストランで値段はリーズナブルだが質の良い食材を使っている上品で美味しい店だ。
「こういうところあまり来たことないので……」
と言っていたが、とても綺麗に食べる子だなと感心した。
駅前で皆と別れる。
「店長、今日は歓迎会を開いていただきありがとうございました」
そう言って美羽くんは頭を下げる。
「いえいえ、またバイトの方お願いね」
「はい、頑張ります」
そう言うと彼はにっこり微笑む。
なんてかわいらしい。
彼に対して明らかに特別な感情を抱いていることを自覚する。
恋人にしたい、恋人になりたい。
彼は俺を受け入れてくれるだろうか。
俺のものにしたい、誰にも見せたくない。
閉じ込めて愛でて俺だけのものにしたい……
そんな欲望が俺を侵食していく。
機会をじっと待つ。
いつのまにか破裂しそうなくらいに膨らんだ伊純くんへの想いが募る。
いつその時が来てもいいように準備をしておこう。
彼に相応しい部屋、
彼に相応しい装飾、
彼に相応しい俺、
全て抜かりなく準備しよう。
いつだったか店の従業員たちが、
「美羽くんは構いたくなるね、ペットみたい」
と伊純くんを揶揄っていた。
「それなら僕は猫がいいなあ」
などと伊純くんも悪ノリをしていたら、
「店長はどう思いますか?」
と聞かれ思わず、
「かわいくて閉じ込めたくなっちゃうね」
と口にしてしまった。
従業員たちは、
「わかります~」
と賛同してくれて、伊純くんも、
「店長ならすごくかわいがってくれそう」
と面白がっていた。
俺、本気なんだけどな。
そしてとうとうそのチャンスが巡ってきた。
その日はシフトがどうしても組めなくて俺と伊純くんだけで対応せざるを得ず、とても忙しかった。
「閉店まで付き合わせてしまって申し訳ない」
「いえ、大丈夫です」
こんな時でさえ彼は優しく微笑む。
「伊純くん、よければ飲みに行かないか? 奢らせてくれ」
「はい! お言葉に甘えます」
さり気なく名前で呼んでみたけど、彼は気づいてないのかいつもと変わりなく、かわいらしい笑顔を見せる。
酒が弱いことは聞いていた。
すぐ赤くなって眠くなってしまうようだ。
「飲みすぎないようにね」
「はい、気をつけます」
そういいながら既にウトウトし始めている。
「伊純くん、立てる?」
「僕、眠いです……」
「歩ける?」
「眠い……」
ほら、飛び立ってごらん。
足枷が邪魔?
うん、でもそれは取れないよ。
全てを自由にしたら君は逃げるだろ?
泣かないで、怖くないよ。
俺がいるよ、俺がいるから。
心配しないで。
俺を信じて。
俺を愛して。
そうすれば君は自由だよ。
君と出会ったのは俺が働く花屋だった。
「アルバイトの面接に来ました、美羽 伊純です」
「こんにちは、店長の沖田です、どうぞ」
「はい、失礼します」
大学生だそうだ、3年生か。
就活は問題ないのかな?
卒業後は親戚の会社で働くことになっているらしい、それなら大丈夫か。
うちとしては短期でも長期でもどちらでも構わない。
花への興味とやる気がありさえすれば。
美羽くんは物腰が柔らかく年齢よりも少し幼く見える。
かわいらしい子だと思った。
そんな見た目とは違い、店で働き始めた彼はテキパキ動き、とても覚えが早かった。
花の名前も種類も仕事も驚くほど吸収していく。
まるで水切りしたばかりの花のように。
他の従業員ともすぐに親しくなり、和気藹々としている。
店の雰囲気がいいのはとても喜ばしいことだ。
店にとってそれは重要なことで、そこで働く従業員たちの醸し出す空気というのはお客様に伝わるものなのだ。
その空気が悪いと客足は遠退く。
数店舗、店長として受け持ってきたが、それは明らかだった。
仕事にも慣れた頃、彼の歓迎会として皆で食事に行った。
小さなレストランで値段はリーズナブルだが質の良い食材を使っている上品で美味しい店だ。
「こういうところあまり来たことないので……」
と言っていたが、とても綺麗に食べる子だなと感心した。
駅前で皆と別れる。
「店長、今日は歓迎会を開いていただきありがとうございました」
そう言って美羽くんは頭を下げる。
「いえいえ、またバイトの方お願いね」
「はい、頑張ります」
そう言うと彼はにっこり微笑む。
なんてかわいらしい。
彼に対して明らかに特別な感情を抱いていることを自覚する。
恋人にしたい、恋人になりたい。
彼は俺を受け入れてくれるだろうか。
俺のものにしたい、誰にも見せたくない。
閉じ込めて愛でて俺だけのものにしたい……
そんな欲望が俺を侵食していく。
機会をじっと待つ。
いつのまにか破裂しそうなくらいに膨らんだ伊純くんへの想いが募る。
いつその時が来てもいいように準備をしておこう。
彼に相応しい部屋、
彼に相応しい装飾、
彼に相応しい俺、
全て抜かりなく準備しよう。
いつだったか店の従業員たちが、
「美羽くんは構いたくなるね、ペットみたい」
と伊純くんを揶揄っていた。
「それなら僕は猫がいいなあ」
などと伊純くんも悪ノリをしていたら、
「店長はどう思いますか?」
と聞かれ思わず、
「かわいくて閉じ込めたくなっちゃうね」
と口にしてしまった。
従業員たちは、
「わかります~」
と賛同してくれて、伊純くんも、
「店長ならすごくかわいがってくれそう」
と面白がっていた。
俺、本気なんだけどな。
そしてとうとうそのチャンスが巡ってきた。
その日はシフトがどうしても組めなくて俺と伊純くんだけで対応せざるを得ず、とても忙しかった。
「閉店まで付き合わせてしまって申し訳ない」
「いえ、大丈夫です」
こんな時でさえ彼は優しく微笑む。
「伊純くん、よければ飲みに行かないか? 奢らせてくれ」
「はい! お言葉に甘えます」
さり気なく名前で呼んでみたけど、彼は気づいてないのかいつもと変わりなく、かわいらしい笑顔を見せる。
酒が弱いことは聞いていた。
すぐ赤くなって眠くなってしまうようだ。
「飲みすぎないようにね」
「はい、気をつけます」
そういいながら既にウトウトし始めている。
「伊純くん、立てる?」
「僕、眠いです……」
「歩ける?」
「眠い……」
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