自由を知らない籠の鳥は淡く甘い夢を見る

秋臣

文字の大きさ
2 / 14

願望

しおりを挟む
空は見えてるのに羽ばたかない。
ほら、飛び立ってごらん。
足枷が邪魔?
うん、でもそれは取れないよ。

全てを自由にしたら君は逃げるだろ?

泣かないで、怖くないよ。
俺がいるよ、俺がいるから。
心配しないで。

俺を信じて。
俺を愛して。

そうすれば君は自由だよ。




君と出会ったのは俺が働く花屋だった。

「アルバイトの面接に来ました、美羽 伊純みわいずみです」
「こんにちは、店長の沖田おきたです、どうぞ」
「はい、失礼します」
大学生だそうだ、3年生か。
就活は問題ないのかな?
卒業後は親戚の会社で働くことになっているらしい、それなら大丈夫か。
うちとしては短期でも長期でもどちらでも構わない。
花への興味とやる気がありさえすれば。

美羽くんは物腰が柔らかく年齢よりも少し幼く見える。
かわいらしい子だと思った。
そんな見た目とは違い、店で働き始めた彼はテキパキ動き、とても覚えが早かった。
花の名前も種類も仕事も驚くほど吸収していく。
まるで水切りしたばかりの花のように。

他の従業員ともすぐに親しくなり、和気藹々としている。
店の雰囲気がいいのはとても喜ばしいことだ。
店にとってそれは重要なことで、そこで働く従業員たちの醸し出す空気というのはお客様に伝わるものなのだ。
その空気が悪いと客足は遠退く。
数店舗、店長として受け持ってきたが、それは明らかだった。

仕事にも慣れた頃、彼の歓迎会として皆で食事に行った。
小さなレストランで値段はリーズナブルだが質の良い食材を使っている上品で美味しい店だ。
「こういうところあまり来たことないので……」
と言っていたが、とても綺麗に食べる子だなと感心した。

駅前で皆と別れる。
「店長、今日は歓迎会を開いていただきありがとうございました」
そう言って美羽くんは頭を下げる。
「いえいえ、またバイトの方お願いね」
「はい、頑張ります」
そう言うと彼はにっこり微笑む。

なんてかわいらしい。
彼に対して明らかに特別な感情を抱いていることを自覚する。

恋人にしたい、恋人になりたい。
彼は俺を受け入れてくれるだろうか。

俺のものにしたい、誰にも見せたくない。
閉じ込めて愛でて俺だけのものにしたい……

そんな欲望が俺を侵食していく。

機会をじっと待つ。
いつのまにか破裂しそうなくらいに膨らんだ伊純くんへの想いが募る。 

いつその時が来てもいいように準備をしておこう。
彼に相応しい部屋、
彼に相応しい装飾、
彼に相応しい俺、
全て抜かりなく準備しよう。

いつだったか店の従業員たちが、
「美羽くんは構いたくなるね、ペットみたい」
と伊純くんを揶揄っていた。
「それなら僕は猫がいいなあ」
などと伊純くんも悪ノリをしていたら、
「店長はどう思いますか?」
と聞かれ思わず、
「かわいくて閉じ込めたくなっちゃうね」
と口にしてしまった。
従業員たちは、
「わかります~」
と賛同してくれて、伊純くんも、
「店長ならすごくかわいがってくれそう」
と面白がっていた。
俺、本気なんだけどな。


そしてとうとうそのチャンスが巡ってきた。

その日はシフトがどうしても組めなくて俺と伊純くんだけで対応せざるを得ず、とても忙しかった。

「閉店まで付き合わせてしまって申し訳ない」
「いえ、大丈夫です」
こんな時でさえ彼は優しく微笑む。

「伊純くん、よければ飲みに行かないか? 奢らせてくれ」
「はい! お言葉に甘えます」
さり気なく名前で呼んでみたけど、彼は気づいてないのかいつもと変わりなく、かわいらしい笑顔を見せる。

酒が弱いことは聞いていた。
すぐ赤くなって眠くなってしまうようだ。
「飲みすぎないようにね」
「はい、気をつけます」
そういいながら既にウトウトし始めている。

「伊純くん、立てる?」
「僕、眠いです……」
「歩ける?」
「眠い……」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

Original drug

佐治尚実
BL
ある薬を愛しい恋人の翔祐に服用させた医薬品会社に勤める一条は、この日を数年間も待ち望んでいた。 翔祐(しょうすけ) 一条との家に軟禁されている 平凡 一条の恋人 敬語 一条(いちじょう) 医薬品会社の執行役員 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

処理中です...