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雷鳴
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店を出て走る。
陸橋はすぐそこだけど走る。
お兄さんはいてくれるだろうか、待っててくれるだろうか。
いた。
お兄さんはいつものように電車を見ていた。
「あの!」
お兄さんがゆっくり振り返る。
俺を見て穏やかに笑う。
「走ってきたの?」
「あの、あの、俺、あの…」
ふっ
「落ち着いて」
「あの、俺、待てせてごめんなさい!
待っててくれてありがとうございます!」
「時間の約束してなかったから、いつまで待てばいいのかわからなくて」
お兄さんはそう言って笑う。
「…ごめんなさい」
「ここで電車見てるとすぐ時間過ぎちゃうから平気だよ」
よかった、怒ってないみたい。
「俺に話って何かな?」
そうだ、俺、お兄さんに話があるって言ったんだった。
「あの…それなんですけど…」
「はい」
「何話そうとしたのか忘れちゃって…」
怒られるよな、こんなに待たせて話すこと忘れたなんて…
「ふっ」
「…待てせておいてごめんなさい…」
「ふふっ」
どうしよう…
「ふはは!」
お兄さんが声をあげて笑う。
「あんなに必死に待ってろって言ってたのに忘れたのかよw」
あ、思い出した。
俺、これを言いたくて…
「あの、思い出しました」
「くくっ 思い出したの?」
「はい」
「じゃあ、聞くよ。何かな?」
「…俺、前にも言ったかもしれないんですけど、お兄さん、笑ってる方がいいです」
「うん、前にも言ってたね」
「はい、言いました」
「どうして?どうしてそう思うの?」
お兄さんがちょっと真顔になる。
「お兄さんのこと、時々見かけるって言ったと思うんですけど」
「うん」
「いつも寂しそうで…今にも泣き出しそうで…」
「……」
「でも笑ったら血が通ったみたいになって、この人ちゃんと生きてるって思えて…」
なに言ってんだ、俺…
自分でもなに言ってるのかよくわからない。
でも…言ってることめちゃくちゃだけど嘘じゃない。
本当にそう思ったんだ。
「だから…俺と話しただけで笑ってくれるなら笑ってて欲しくて…」
「…俺、そんなに酷かった?」
「え?」
「俺、死にそうだった?」
「いつかいなくなっちゃうじゃないかって思ってました」
「そっか…死んでるみたいだったのはそうかもしれないな」
「あの、嫌です」
「え?」
「もうお兄さんのこと知っちゃったから、知ってる人がいなくなるの嫌です」
「……」
「生きてて欲しいって思うし、俺と話して笑ってくれるなら、寂しくなくなるならそうして欲しいんです」
ふっ
「大丈夫、死なないよ」
「本当ですか?」
「うん、今はね」
「……」
「心配しないで、死ぬ気はないよ」
ホッとする。
「ねえ、時間大丈夫?」
「え?」
「終電」
「え?あ、え!?」
スマホで時間を確認する。
終電出ちゃった…
「終電逃しちゃいました…」
「ごめん、俺がもっと早く気づけば良かったね」
「いえ、歩いて帰るので大丈夫です。
くだらない話のために長い時間待たせてしまってすみませんでした、帰ります」
「近いの?」
「一駅なので」
ピカッ
すごい稲光だ。
ゴロゴロゴロ…
雷鳴も轟いている。
ポツポツ…
ポツポツポツポツ…
ザア──ッ!
「うわっ!」
「降ってきたな」
かなり降ってきている。
「俺、帰りますね」
お兄さんに頭を下げて走り出す。
「待って」
「え?」
「こんな雨の中走っても濡れるでしょ?
それに雷も鳴ってるし危ないよ」
「でも…」
「俺の家、すぐそこだからおいで」
「え、でも…」
お兄さんが俺の腕を掴んで笑う。
「ほら、走って!」
陸橋はすぐそこだけど走る。
お兄さんはいてくれるだろうか、待っててくれるだろうか。
いた。
お兄さんはいつものように電車を見ていた。
「あの!」
お兄さんがゆっくり振り返る。
俺を見て穏やかに笑う。
「走ってきたの?」
「あの、あの、俺、あの…」
ふっ
「落ち着いて」
「あの、俺、待てせてごめんなさい!
待っててくれてありがとうございます!」
「時間の約束してなかったから、いつまで待てばいいのかわからなくて」
お兄さんはそう言って笑う。
「…ごめんなさい」
「ここで電車見てるとすぐ時間過ぎちゃうから平気だよ」
よかった、怒ってないみたい。
「俺に話って何かな?」
そうだ、俺、お兄さんに話があるって言ったんだった。
「あの…それなんですけど…」
「はい」
「何話そうとしたのか忘れちゃって…」
怒られるよな、こんなに待たせて話すこと忘れたなんて…
「ふっ」
「…待てせておいてごめんなさい…」
「ふふっ」
どうしよう…
「ふはは!」
お兄さんが声をあげて笑う。
「あんなに必死に待ってろって言ってたのに忘れたのかよw」
あ、思い出した。
俺、これを言いたくて…
「あの、思い出しました」
「くくっ 思い出したの?」
「はい」
「じゃあ、聞くよ。何かな?」
「…俺、前にも言ったかもしれないんですけど、お兄さん、笑ってる方がいいです」
「うん、前にも言ってたね」
「はい、言いました」
「どうして?どうしてそう思うの?」
お兄さんがちょっと真顔になる。
「お兄さんのこと、時々見かけるって言ったと思うんですけど」
「うん」
「いつも寂しそうで…今にも泣き出しそうで…」
「……」
「でも笑ったら血が通ったみたいになって、この人ちゃんと生きてるって思えて…」
なに言ってんだ、俺…
自分でもなに言ってるのかよくわからない。
でも…言ってることめちゃくちゃだけど嘘じゃない。
本当にそう思ったんだ。
「だから…俺と話しただけで笑ってくれるなら笑ってて欲しくて…」
「…俺、そんなに酷かった?」
「え?」
「俺、死にそうだった?」
「いつかいなくなっちゃうじゃないかって思ってました」
「そっか…死んでるみたいだったのはそうかもしれないな」
「あの、嫌です」
「え?」
「もうお兄さんのこと知っちゃったから、知ってる人がいなくなるの嫌です」
「……」
「生きてて欲しいって思うし、俺と話して笑ってくれるなら、寂しくなくなるならそうして欲しいんです」
ふっ
「大丈夫、死なないよ」
「本当ですか?」
「うん、今はね」
「……」
「心配しないで、死ぬ気はないよ」
ホッとする。
「ねえ、時間大丈夫?」
「え?」
「終電」
「え?あ、え!?」
スマホで時間を確認する。
終電出ちゃった…
「終電逃しちゃいました…」
「ごめん、俺がもっと早く気づけば良かったね」
「いえ、歩いて帰るので大丈夫です。
くだらない話のために長い時間待たせてしまってすみませんでした、帰ります」
「近いの?」
「一駅なので」
ピカッ
すごい稲光だ。
ゴロゴロゴロ…
雷鳴も轟いている。
ポツポツ…
ポツポツポツポツ…
ザア──ッ!
「うわっ!」
「降ってきたな」
かなり降ってきている。
「俺、帰りますね」
お兄さんに頭を下げて走り出す。
「待って」
「え?」
「こんな雨の中走っても濡れるでしょ?
それに雷も鳴ってるし危ないよ」
「でも…」
「俺の家、すぐそこだからおいで」
「え、でも…」
お兄さんが俺の腕を掴んで笑う。
「ほら、走って!」
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