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お礼
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まさきさんの家に泊めてもらってから、まさきさんを陸橋で見かけていない。
いつも見てるわけじゃないからすれ違ってるだけかもしれないけど、前にも増して気になるようになってしまった。
同時にどうして陸橋にいるんだろうと考えてしまう。
なぜそこに?
なぜ夜に?
だって夜の方が仕事しやすいって言ってた。
それなのにどうして夜の陸橋にいるんだ?
矛盾。
いや、そんなのまさきさんの勝手だし、自由だ。
でも、気になる。
店長にテイクアウトできるメニューをたくさん頼んだ。
「なんだ?パーティか?」
と聞かれた。
この量はそうだよな。
どれくらい頼めばいいかわからなくて思いつくのを全部頼んじゃった。
バイト帰りにそれを持って、俺はまさきさんの家に向かった。
まだちゃんとお礼してなかったし、連絡先知らないから直接行くしか方法が思いつかなかった。
部屋番号は覚えていた。その番号を押す。
「はい」
まさきさんだ。
「朝都です、高左右朝都です」
「え?朝都くん?」
「あの…これ…」
店長がでかい紙袋にまとめて入れてくれたものを掲げる。
「え?ちょっと待って、今開けるから」
ガチャン。
オートロックが解除された。
3階にある、まさきさんの部屋のインターホンを押す。
ドアが開く。
「朝都くん、どうしたの?」
「あの、これ…」
「これ?」
「この前のお礼です」
紙袋をまさきさんに渡す。
「俺のバイト先の居酒屋、飯が美味いんです。良かったら食べてください」
「え?こんなにいっぱい?」
「あの、全部美味いんです。
テイクアウトできるメニュー全部頼んだら思ってた以上に多くて…自分でもびっくりしてて…パーティか?って言われちゃって…」
ふふっ
「これ俺一人で食うの?」
「すみません…加減がわからなくて…」
なんかめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
頼む、受け取ってくれ。
「どうぞ入って」
「え?」
「一緒に食べてよ」
「でも、これはお礼だから」
「はい、お礼は受け取りました。
受け取ったからそれを誰と食べてもいいよね?」
「……」
「ありがとう、朝都くん。
一緒に食べよう」
「はい」
恥ずかしいのが救われた。
「またこんな時間にお邪魔しちゃってすみません」
礼をしに来たのにこれじゃ本末転倒だ。
「ちょうど小腹空く時間だから助かったよ」
まさきさんは俺に気遣ってくれる。
「それにしてもすごい量だね」
テーブルに並べられた料理の数々を見て改めて驚いてる。
「信じてください、美味しいんです」
「疑ってないよw 朝都くんのお勧めはどれ?」
「この茄子のやつと、キッシュが好きです」
「居酒屋だよね?」
「はい、でもいろいろあるんです。
俺、キッシュって食べ物をこの店で初めて食べて、俺、まだ知らない食べ物があってこんな美味しいものあったってことに感動して…でもここのしか食べたことないからキッシュの正解は今だにわからないです」
「そうなんだw」
「だからこれお勧めします。
あ、でもキッシュなんて珍しくないのか…」
「そんなことないよ、俺作れないし」
「それなら是非」
「じゃあキッシュから食べようか」
「はい!」
まさきさんが皿に取り分けてくれる。
店長が作りたてを入れてくれたからまだ温かい。
「いただきます」
「食べてください」
「へえ!美味しいね」
「ですよね?俺、それ食べてキッシュが好きになりました」
「初見でこれ食べちゃったらキッシュのハードル上がっちゃうね」
「組み合わせ、めちゃくちゃなんですけど、この茄子を豚肉で巻いたのと、きのこのサラダも食べてみてください」
皿に取り分けてまさきさんに振る舞う。
「普通のチャーシューかと思ったら茄子入ってる!美味しい!」
「きのこも食べて」
「きのこのサラダ初めてだ。
え?予想外に美味いな」
「でしょ?」
「美味しい店で働いてるんだね」
「みんなバイトは賄いが目当てです」
「あはは!わかるよ、美味しいもんね。
これが賄いなら嬉しいよね」
「はい!」
まさきさんとあれこれ食べたけど、とても二人で食べ切れる量ではなかった。
「大体のものは明日まで大丈夫です。
冷凍しておけるものもあるので食べきれない分は冷凍してください」
「朝都くん、持って帰りなよ」
「いえ、これはお礼なので」
「受け取った人がどうぞと言ってるんだからいいんだよ」
あれ?持って帰る?
ああ!
「どうしたの?」
「まさきさん、終電…」
「あ…」
バツが悪そうな顔してる俺を見てまさきさんが笑って言う。
「どうぞ、泊まっていって」
「ごめんなさい…」
俺、何してんだよ…
結局泊まらせてもらうことになってしまった。
また風呂をいただく。
「上がりました…」
「あれ?元気ないね」
「礼をしに来たのに、またやらかして…
自分何やってんだって凹んでます」
「うん、それはそうだね」
はっきり肯定されてしまった、凹む。
「朝都くんのおかげで美味しいご飯食べられたし、俺は嬉しかったけどな」
「本当ですか?」
「うん、一人だと食事いい加減になっちゃうから」
「そう言ってもらえると救われるんですけど、俺、自分で持ってきた礼、食っちゃってて…」
ますます凹む。
「あはは!いいじゃない、明日の朝も一緒に残りの食べよう」
「はい…」
「朝都くんは面白いね」
恥ずかしい…
「またベッドで寝てね」
あ、それ…
「明日は1限からなのでこのまま起きてます」
「え?でも少し寝た方がいいよ」
「まさきさんは仕事ですか?」
「うん」
「あの、見てたらダメですか?」
「え?」
「装丁デザインってどんな風に作るのか見てみたい…」
「んー、今やってるのはもう仕上げなんだけどそれでもいい?」
「邪魔じゃないですか?」
「邪魔ではないけど見られてるプレッシャーみたいなのはあるかな」
「こっそり見ます」
「見ててもいいけど少しは寝るんだよ、それが条件」
「わかりました」
いつも見てるわけじゃないからすれ違ってるだけかもしれないけど、前にも増して気になるようになってしまった。
同時にどうして陸橋にいるんだろうと考えてしまう。
なぜそこに?
なぜ夜に?
だって夜の方が仕事しやすいって言ってた。
それなのにどうして夜の陸橋にいるんだ?
矛盾。
いや、そんなのまさきさんの勝手だし、自由だ。
でも、気になる。
店長にテイクアウトできるメニューをたくさん頼んだ。
「なんだ?パーティか?」
と聞かれた。
この量はそうだよな。
どれくらい頼めばいいかわからなくて思いつくのを全部頼んじゃった。
バイト帰りにそれを持って、俺はまさきさんの家に向かった。
まだちゃんとお礼してなかったし、連絡先知らないから直接行くしか方法が思いつかなかった。
部屋番号は覚えていた。その番号を押す。
「はい」
まさきさんだ。
「朝都です、高左右朝都です」
「え?朝都くん?」
「あの…これ…」
店長がでかい紙袋にまとめて入れてくれたものを掲げる。
「え?ちょっと待って、今開けるから」
ガチャン。
オートロックが解除された。
3階にある、まさきさんの部屋のインターホンを押す。
ドアが開く。
「朝都くん、どうしたの?」
「あの、これ…」
「これ?」
「この前のお礼です」
紙袋をまさきさんに渡す。
「俺のバイト先の居酒屋、飯が美味いんです。良かったら食べてください」
「え?こんなにいっぱい?」
「あの、全部美味いんです。
テイクアウトできるメニュー全部頼んだら思ってた以上に多くて…自分でもびっくりしてて…パーティか?って言われちゃって…」
ふふっ
「これ俺一人で食うの?」
「すみません…加減がわからなくて…」
なんかめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
頼む、受け取ってくれ。
「どうぞ入って」
「え?」
「一緒に食べてよ」
「でも、これはお礼だから」
「はい、お礼は受け取りました。
受け取ったからそれを誰と食べてもいいよね?」
「……」
「ありがとう、朝都くん。
一緒に食べよう」
「はい」
恥ずかしいのが救われた。
「またこんな時間にお邪魔しちゃってすみません」
礼をしに来たのにこれじゃ本末転倒だ。
「ちょうど小腹空く時間だから助かったよ」
まさきさんは俺に気遣ってくれる。
「それにしてもすごい量だね」
テーブルに並べられた料理の数々を見て改めて驚いてる。
「信じてください、美味しいんです」
「疑ってないよw 朝都くんのお勧めはどれ?」
「この茄子のやつと、キッシュが好きです」
「居酒屋だよね?」
「はい、でもいろいろあるんです。
俺、キッシュって食べ物をこの店で初めて食べて、俺、まだ知らない食べ物があってこんな美味しいものあったってことに感動して…でもここのしか食べたことないからキッシュの正解は今だにわからないです」
「そうなんだw」
「だからこれお勧めします。
あ、でもキッシュなんて珍しくないのか…」
「そんなことないよ、俺作れないし」
「それなら是非」
「じゃあキッシュから食べようか」
「はい!」
まさきさんが皿に取り分けてくれる。
店長が作りたてを入れてくれたからまだ温かい。
「いただきます」
「食べてください」
「へえ!美味しいね」
「ですよね?俺、それ食べてキッシュが好きになりました」
「初見でこれ食べちゃったらキッシュのハードル上がっちゃうね」
「組み合わせ、めちゃくちゃなんですけど、この茄子を豚肉で巻いたのと、きのこのサラダも食べてみてください」
皿に取り分けてまさきさんに振る舞う。
「普通のチャーシューかと思ったら茄子入ってる!美味しい!」
「きのこも食べて」
「きのこのサラダ初めてだ。
え?予想外に美味いな」
「でしょ?」
「美味しい店で働いてるんだね」
「みんなバイトは賄いが目当てです」
「あはは!わかるよ、美味しいもんね。
これが賄いなら嬉しいよね」
「はい!」
まさきさんとあれこれ食べたけど、とても二人で食べ切れる量ではなかった。
「大体のものは明日まで大丈夫です。
冷凍しておけるものもあるので食べきれない分は冷凍してください」
「朝都くん、持って帰りなよ」
「いえ、これはお礼なので」
「受け取った人がどうぞと言ってるんだからいいんだよ」
あれ?持って帰る?
ああ!
「どうしたの?」
「まさきさん、終電…」
「あ…」
バツが悪そうな顔してる俺を見てまさきさんが笑って言う。
「どうぞ、泊まっていって」
「ごめんなさい…」
俺、何してんだよ…
結局泊まらせてもらうことになってしまった。
また風呂をいただく。
「上がりました…」
「あれ?元気ないね」
「礼をしに来たのに、またやらかして…
自分何やってんだって凹んでます」
「うん、それはそうだね」
はっきり肯定されてしまった、凹む。
「朝都くんのおかげで美味しいご飯食べられたし、俺は嬉しかったけどな」
「本当ですか?」
「うん、一人だと食事いい加減になっちゃうから」
「そう言ってもらえると救われるんですけど、俺、自分で持ってきた礼、食っちゃってて…」
ますます凹む。
「あはは!いいじゃない、明日の朝も一緒に残りの食べよう」
「はい…」
「朝都くんは面白いね」
恥ずかしい…
「またベッドで寝てね」
あ、それ…
「明日は1限からなのでこのまま起きてます」
「え?でも少し寝た方がいいよ」
「まさきさんは仕事ですか?」
「うん」
「あの、見てたらダメですか?」
「え?」
「装丁デザインってどんな風に作るのか見てみたい…」
「んー、今やってるのはもう仕上げなんだけどそれでもいい?」
「邪魔じゃないですか?」
「邪魔ではないけど見られてるプレッシャーみたいなのはあるかな」
「こっそり見ます」
「見ててもいいけど少しは寝るんだよ、それが条件」
「わかりました」
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