お使いはタバコとアイスとお兄さん

秋臣

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心を動かす

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「まさきさん、この本借りてもいいですか?」
「朝都くん、ついでに画集取ってもらってもいいかな」
「どれですか?」
「『季節の色・冬』ってない?」
「待ってください…あ、あります。
はい、どうぞ」
まさきさんに画集を手渡す。
「ごめんね、ありがとう。
本、それだけでいいの?」
「一冊ずつインプットした方が確実に入るんですよね」
「わかる」
「また借ります」
「そうだね」

「まさきさん、明日は『喜楽』でいいですか?」
「うん、まだ制覇できてないからね」
「結構負けず嫌いですよね、まさきさんって」
「朝都くん、これはね、店長さんと俺との戦いなんだよ」
「なんすか、それw」
「テイクアウトできないメニューを全部食べる」
「それ、無理ですよ」
「なんでよ」
「だって店長、どんどんまさきさんが食べ尽くしていくから、躍起になって新しいメニュー作ってますよ」
「嘘でしょ…」
「本当ですw」
「俺、終われないじゃん…」
「毎度」
「毎度じゃないよ、店長さん止めてよ」
「くふふ」
「笑ってんじゃないよ」

「これ終わったら俺風呂入って寝るから、朝都くんは終電遅れないようにね」
「はい、アラームかけてます」
「よろしい」
「まさきさん、俺、いいこと思いついちゃった」
「嫌な予感しかしない」
「俺んち、ここから一駅じゃない?
自転車買えば終電気にしなくていいんですよ」
「あのね、朝都くん」
「はい」
「終電というのは時間の目安の意味でもあるんだよ」
「ん?」
「帰りなさいって促してんの」
「あーそういうことか」
「察しなさいね」
「なんか京都の人みたい」
「なんだと?」
「嫌味っぽい」
「嫌味だよ」
「まさきさんはそんな人じゃない!」
「俺は汚ない大人だよ」
「やだやだ、大人って」
「やだねえ、ガキは」
「性格悪いっ!」
「お互い様だっ!」
「うー」
「いいか、俺が風呂入ってる間に帰れよ」
「はいはい」
「返事は一回」
「はーい」

「あ、そうだ、忘れてた。日堂出版の池田さん、時間取ってくれるって」
「マジですか!?」
「うん、これ連絡先」
まさきさんが名刺を渡してくれる。
「うわあ…やった!」
「忙しい人だから、時間を有意義に使ってね」
「ありがとう!まさきさん大好き!」
「やっすいなあ」
「池田さんに会うのまさきさんの家でいいですよね?」
「ここ喫茶店じゃないんだけど」

出版、編集の仕事に興味があるとずっと言い続けている俺に、まさきさんが仕事で付き合いのある編集さんに話をしてくれて、編集の仕事がどんなものかなど話を聞く機会を作ってくれたのだ。
やった、やった!

あれからまさきさんとはこんな感じで付き合い方は変わらない。
まさきさんの家で本を借りたり、ご飯食べたり、話をしたりする。
まさきさんは仕事したり、打ち合わせしてたりしてる。

時々、『喜楽』でご飯を食べたりもする。

時々、陸橋に行ったりもする。

そういう時は止めない。
行きたいとまさきさんの心が動いたのだから、止めない。
見てて切ないけど、それでいいと思う。

「徘徊ご苦労様です」
と揶揄うと、
「徘徊じゃない!」
とムキになって怒るまさきさんが面白いし、それで少し安心したりする。

この人は大丈夫。
ちゃんと心が動いてる。

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