水の中でも何処でももふもふ!! あたらしい世界はもふもふで溢れていました

ありぽん

文字の大きさ
19 / 111

第18話.ウォーターホースのプレゼント

しおりを挟む
 ウォーターホースでの移動は、かなり快適だった。まぁ、俺は母さんに抱っこしてもらっていたせいもあると思うけど。揺れをほとんど感じず、見た感じも、そんなに揺れているようには見えなかった。
 
 外の景色が揺れずに見えていたし。姉さんが途中から、あの父さんが荷物をしまっていた白い丸から、小さな人形を何個か出してもらって、その人形を椅子に並べて遊んでも全然平気なくらいだ。

 そうして最初は起きて、窓の外の景色を見ていた俺だったが、途中で眠くなってしまい。気づいたのは、馬車が俺の家に到着した時で。せっかくの景色を楽しもうと思っていた俺は、ちょっと寂しい気分に。
 だけどまぁ、これからここで暮らすんだから、ゆっくり楽しんでいけば良いだろう。

『今日は向こうの道が空いていて良かったですね。いつもより早めに着くことができました』

『ああ。あそこからゆっくり進めば4時間間かかるからな』

 外から父さんと馬車の人の声が聞こえる。4時間? この世界の時間だろうけど、この国だけなのか、それともこの世界の共通なのか。

 話しながらドアが開かれて、先ずは姉さんが。それから母さんが父さんにモコモコ達と俺を渡して、最後に母さんが馬車から降りた。降りてからはまた母さんに抱かれる俺。
 そのまま母さんと姉さんと一緒に、先程話していた通り、ウォーターホースを見せてもらうことになった。

『あなたの所のウォータホースは大人しい子ばかりだから、子供達に魔獣を見せる時、安心して見せられるわ』

『それぞれ性格がありますからね。うちはなるべく大人しい子を選んでいるので。さぁ、どうぞ』

 最初に姉さんが、父さんに抱っこされて、ウォーターホースの首の辺りを撫でる。撫でているとウォーターホースの表情がまったりとしてきて、最後は自分から姉さんの頬に、すりすりとすり寄ってきた。

 姉さんはそれが嬉しかったらしく、あのヘンテコな歌を歌い出し。その途端ウォーターホースが驚いた顔をしていたような気がしたが、ちょっと後ろに下がった気がしたが、まぁ、気のせいだろう。

 そして次はいよいよ俺の番だ。母さんはウォーターホースに近づくと、俺の手をそっと包み込んで、そのまま一緒にウォーターホースの体の方へ。触ればとても不思議な感覚がした。
 水に手を入れているような、水を触っているような、何とも言えない感覚で。でもとても気持ちが良かった。なるほど、これは暑い時に触らせてもらえたら、とっても気持ちいだろう。

 それに他にも不思議なことが。他も触らせてもらったんだけど。触る場所によって、ウォーターホースの体温が違っていた。背中の方は少し冷たく、お腹の方はとても暖かく、首の辺りはぬるま湯っていう感じだった。もしかしたら他も触れば、みんな違うかもしれない。

 最後に俺は頬を撫でさせてもらうことに。そっとそっと撫でれば、姉さんの時と同様、まったりの表情に。馬車の人曰く、これはとっても喜んでいる時の表情らしい。

 撫で終わると、俺は通じないながらもお礼を言うことにした。

「ばぶぅ!!」

『ヒヒヒ~ンッ!!』

 大きな声でウォーターホースが鳴いた。と、今まで静かだったウォータホースが、ヒヒンヒヒンと、馬車の人に何かを訴えて、馬車の人はウォータホースの言っていることが分かったらしい。『ああ』と言って、ウォーターホースの馬車に繋げていたロープを外した。

 すると俺達から離れて、円を描くようにジャンプしながら回り始めた。これは喜びのジャンプで、何か嬉しいことがあると、ああしてジャンプするって、母さんが教えてくれた。

 そして数分ジャンプして回っていたウォーターホースが止まると、思いきり体をブルブルさせて。と、ウォータホースから何かが2つ飛んだ。それを上手にキャッチするウォーターホース。そうして俺達の所まで来ると、それを差し出してきた。
 
『これは珍しい。ウォータホースが羽を渡すなんて。この子は始めてか?』

『ええ、今まで誰にも渡そうとしたことは』

『貰って良いのかしら?』

『もちろんです!!』

 母さんはウォーターホースから何かを受け取り、1つを俺の胸のところに、1つを姉さんに渡した。その後よく見せて貰えば、何とそれは水の羽だった。水色の透明な羽。
 
 ウォータホースの立て髪は、地球の馬と違い毛というよりも、たくさんの羽が立て髪の代わりになっている。その綺麗な立て髪の羽を、ウォーターホースが俺達にくれたんだ。

『これはお馬さんの羽よ。お馬さんが大切な人や、認めた人にしか、この羽はくれないの。とってもとっても珍しいことなのよ。貰えて良かったわね』

 そんなに珍しい羽を貰ったのか。俺は手を動かして感謝を伝える。

「ばぶぅ!! ありゃ!!」

『さぁ、ケニーシャも、ちゃんとお礼を言おうな』

『うん!! ありがとう!! ありがとうのおうた…』

 お歌って言ったところで、父さんが姉さんを止めた。うん、今は止めておこう。さっきビックリした表情をしていたし。

 そして父さんがウォータホースと馬車の人にお礼を言い。その後馬車の人が俺と姉さんに、俺達が馬車に乗った場所でいつも仕事をしているから、時々ウォーターホースに会いにきてくださいと言ってから帰って行った。

 この世界へ来てモコモコもふもふ、そして不思議なウォーターホースにと。すでに楽しいことばかりだ。まぁ、生まれた瞬間は別として……。あの家族のことはなかったことにしたい。

『旦那様』

 俺達が馬車を見送ると、突然後ろから声をかけられた。さっきは馬車を降りてからはすぐに、ウォータホースの方へ行ったから、周りをまったく見ていなかった事に気づく。そういえば俺の家は?

 みんなで振り返るとすぐ側に、お爺さんと父さんより少し若い男の人、それから若い女の人が数人。その人達の後ろにも、何人もの男の人と女の人が立っていて。そしてそのまた後ろには、大きな大きな家が建っていた。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...