異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ありぽん

文字の大きさ
49 / 61

48.避難場所に到着、ロウカウからの贈り物

しおりを挟む
「さぁ、順番に。慌てなくて良いかなら」

 台車の板を外して、大人はもちろんそのまま、小さな子は順番に大人しく立って、エルフ達に降ろしてもらっていく。俺は籠に戻されて、籠はアロイシアスが持ってくれて、先にレイナさんが。全体の1番最後に俺が荷台から降ろされた。

 扉が開かれて、みんながその中へぞろぞろ入っていく。中から声が聞こえてきたけど、もうかなり集まっているみたいだ。俺達もみんなの後ろを付いて行こうとした。が、いきなりアロイシアスさんが止まって。

 何かと思ったら、アロイシアスさんの洋服の肩部分を、白いカウロウが咥えて止めていた。

「何だ? どうかしたのか?」

『何だ何だ?』

『どうかしたの?』

『何かある?』

 シャイン達が俺のお腹の上から飛んで、アロイシアスさんの咥えられている、洋服の肩の部分にへばり付いた。

『グオォォォ』

「何だ? くれるのか?」

『グオォォォ!!』
 
 返事をする白いカウロウ。それから頭を下げて。下の方からガサゴソ音が聞こえる。それからブチブチッて音が聞こえると、白いカウロウが頭を上げた。するとその口には白い綺麗な毛が。そして白いカウロウは俺に顔を近づけて、咥えていた白い毛を俺の上に置いたんだ。

「あう?」

『グオォォォ!!』

「お前にこの毛をくれると」

 ええ!? 白いカウロウのあんなに素晴らしい毛を俺に!? ブチブチッて、かなりの勢いでちぎっていたけど、ちぎった部分は大丈夫か? そこから毛が悪くなるとか、伸びなくなるとか。俺に毛をくれたせいで、そんなことになったら困るぞ?

「あら、ティニー、良かったわね。出会ってすぐの毛をもらえるなんて、なかなか貰えないのよ」

 中に入る列が止まっている間に、説明してくれたレイナさん。カウロウは大切に思う相手に自分の毛を贈るらしい。オスのカウロウがメスのカウロウにって感じで。そしてカウロウは家族になると。夫婦ってことだな。

 後は、夫婦になって子供が生まれると、自分達の毛を使って子供のために寝床を作ったり、子供の長い毛に自分達の毛を絡ませたり。この毛を絡ませる行為は、この子は自分達の子だ。手を出したら自分達が許さないって、相手へのに警告だって。

 そしてカウロウは、家族以外にも自分が認めた者に、毛と贈ることがあるらしんだけど。でもこれは本当に珍しいことで、カウロウの一生で1度あるかないかってくらい、とっても珍しい事だった。

 しかもカウロウの毛はほとんど抜けることがなく、抜け毛も見つけるのはほぼ困難で。もしもその毛が人間達や獣人達の街で売られる事があれば、かなりの高値で売買されるらしい。

 この白いカウロウは、そんな大切な時に使う、素晴らしい毛を俺にくれたのか? しかも抜け毛さえないなんて、やっぱり途中から引きちぎったら、元の綺麗な毛に戻らないんじゃ。
 慌てて聞いた俺。でも大丈夫だった。毛を切ると、その後はしっかりと元の長さまで、素晴らしい状態で生えてくるらしい。俺はホッとしてため息を吐いた。あ~、心配した。

 ところで何で大切な人や家族、認めた者にしか渡さない毛を、俺にくれたんだ? 俺はそう聞いてみる。

「あう? ばあう?」

『ブオォォォ!!』

『えー、良いなぁ。俺も欲しいぞ!』

『僕も!!』

『ぼくも欲しい!!』

 待って待って、今白いカウロウは何て言ったんだ? と、その前にみんな、僕の言ったこと伝えてくれ。今のは俺の声にただ反応して、鳴いただけなんだろう?  俺はみんなに俺の話しを伝えてくれって言った。

「あう、ばう!!」

『あれ? そういえば?』

『僕達伝えてないよね?』

『でもお返事?』

 ん? お返事?

『グオォォォ!』

『へぇ、そんなんだ』

『前の僕達と同じだね』

『うん、同じ』

『ティニー、カウロウはティニーの話し、なんとなく分かるって』

『それから毛をくれたのは、会えて嬉しかったから毛をあげるって。あと、今度またゆっくり遊ぼうねだって』

『その時に、もう少し毛をくれる。そう言ってる』

 ええ!? そんな事を言ってくれてたの? というか俺の言葉が通じてるって? それに、嬉しいなぁ。だけどいいよいいよ。そんな大切な毛なんだから。俺は今貰えたら分で十分だから。色々な事実が分かって、俺は考える事がいっぱいだ。

『俺も欲しいぞ』

『ねぇ、僕にもちょうだい』

『欲しい』

 みんな、無理やり貰っちゃダメだって。ほら、俺のを分けよう! 俺がそうみんなに言う前に、みんなから欲しい欲しい言われた白いカウロウ。仕方がないなぁ、という顔をして下を向くと、またブチブチと音が。そして俺が貰った毛の半分くらいの毛を、みんなにくれたんだ。

『やったぁ!! ありがとう!!』

『ちゃんとみんなで分けるからね!! ありがとう!!』

『ありがと!!』

『グオォォォ』

「まったく、あなた達は。ティニーの家族だからって特別に頂いたんだから、大切にするのよ」

『『『はーい!!』』』

 俺も急いでありがとうを言う。

「あうーっ!!」

 そしてうちの精霊達がすまなかった。後できちんと言っておくから。白いカウロウは、俺がお礼を言うと、とっても嬉しそうな顔をして。俺の顔に鼻先をちょんと当てた後、乗って来たエルフの人と一緒に、エルフの里へ戻って行った。

 後1回、ここまで他のエルフ達を運んでくるらしい。気をつけてな。敵がけっこう近づいて来ているみたいだから。色々が終わったら、約束通りゆっくり遊ぼうな。

 白いカウロウを見送った俺達。するとちょうど前のエルフ達が進み始めて、俺達もそれに続いた。毛はすぐにレイナさんがカバンにしまってくれたよ。こんなバタバタしている中、なくしたり、風で飛ばされたら大変だからな。

 前に進んでいくと、3人のエルフが立っていて、避難して来たエルフ達に、それぞれ場所を伝え。それに従って、避難して来たエルフはまた移動。みんな避難場での居る場所が決まっているらしい。

 中はどうなっているんだろう? まだ扉を通っていないから中の様子が分からない。避難場所だからな、そんなに広くはないだろうし。もうかなりの人数が避難して来ているはずだから、ちゃんと場所を決めておかないと、全員が入れなくなると困るからな。

 なんて考えているうちに、ようやく大きな扉を通った俺達。そこには俺の思っていたものと反対の景色が広がっていた。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...