異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ありぽん

文字の大きさ
48 / 61

47.走るの大好きカウロウの

しおりを挟む
 白いロウカウの走りに、最初はやっぱり驚いていた俺。景色を楽しむ余裕なんてなくて。だけど俺以外のちびっ子達は、大盛り上がりだった。それは避難しているとは思えないほどに。シャイン達まで一緒になって喜んでいたからな。

『いけいけ!!』

『もっと速く!!』

『飛ばされないなら安心だから、もっと速く』

 あ、うん、もっと速くなのね。でもこれ以上早く走ったら、完璧に景色が見えなくなるんじゃ? シャイン達を見ていてようやく落ち着いて来た俺。周りを眺めれば、木々が凄い勢いで僕達のは横を過ぎて行っている。

 たぶんこれ以上速く走れたら、何かの物体が目の前を通り過ぎたって。何が通り過ぎたか、まったく分からなくなると思うぞ?

『なぁなぁ、避難が終わっても、これに乗りたいぞ!』

『僕も!! こんなに楽しいのがあったんだね!』

『ぼくもこれなら良い』

「ばあう、あうぅ?」
 
『速すぎて、何かにぶつからないのか?』
 
『狭い場所だと、けっこう木を倒してるよね。それに大きな大きな石を割ったり』

『でも直してる』

 え? 直してる? 何を? 俺達の話しを聞いていたレイナさんが説明してくれた。カウロウとエルフは昔からの付き合いなんだけど。昔からカウロウは、その辺を走り回っては、色々な物にぶつかって倒したり、粉々に割ったりしていたらしい。木とか大きな岩や石をね。

 それであまりにもぶつかるのに、いつもケロッとしているから、心配になったエルフ達がカウロウを調べたんだよ。でもカウロウには、傷の1つも付いていなくて。魔獣と話ができたエルフ達はカウロウに、体のどこか、痛い場所はないかって。それも確認した。

 それに対してカウロウの答えは。『え? 何が?』だったらしい。それからも定期的にカウロウに平気かどうか聞いたけど、毎回答えは一緒で。だからよっぽど体が丈夫なんだ、ってことでまとまったらしい。

 それ以来、保護されて来たカウロウは、しっかりと体調を調べるけれど。普通に生活しているカウロウのことは、あまり気にしていないって。もちろん風邪とかで具合が悪い時なんかは、すぐの治療をしてあげるけど。

 ただ、何でもぶつかって進むカウロウ、わざわざぶつかる事はないからな。エルフの里の一部はカウロウが動きやすいように、余計な木が切ってあって。その切った木で、みんなの家を建てたり、必要な施設を建てたり。

 例えばこの避難通路な。この避難通路も、本来なら何もしなくてもカウロウは大丈夫だけど。一緒に避難している俺達が、結界を張っているからって。カウロウが木にぶつかったり岩にぶつかったりすれば、縦揺れ横揺れが発生して、そのせいで怪我をする可能性が。

 だから避難経路は綺麗に道を整備し、その周りを木で包みトンネルみたいにして、周りからバレないようにカモフラージュしてあるらしい。木々の間を通っていると思ったら木のトンネルだった。

 でも子供達が怖がらないように、そのトンネルに色々素掛けがしてあるらしく、みんなそれを楽しんでいるようで。カウロウはこれを楽しんでと言ったらしい。俺はまだ目が慣れていなくて分からないんだけど。

 それでカウロウのために切った木だけど、ほらエルフの里では全て、無駄にしないで使っているけど。
 自然で生きているカウロウは? 毎回毎回走って木を倒しているわけで。じゃあその木は? それにそれだけ木を倒していたら、森が禿げちゃうんじゃないかって思うだろう?
 
 それが違ったんだ。俺はそれを聞いて驚いた。倒した木を元通りに植え直すらしいんだ。走ることが大好きなカウロウ。この大きさだけど、速さはかなりのものだろう? だから見かけによらず、小回りも効くみたいで、木々が少ない場所なら問題なく走るらしい。

 じゃあ木々が多い場所で、木を倒したら? 後でまとめて魔法で植え直すんだ。ぶつかればもちろん枝は折れるし、大きく木を割ったり、途中から折ったりするんじゃなく、丸々1本綺麗に倒したり。

 そうして通った場所がしっかりと分かるほど、色々と破壊しながら走った後は。自分が倒した木をぜんぶまとめて魔法で持ち上げ、完璧に木を回復させると、元の場所に立たせ。
 さらに魔法を使って、その木の周りにしっかりと土をか伏せて。後はしっかりと踏み固めれば元通りの森に。植え直した木は、ちょっとやそっとじゃ倒れないって。岩や石は、後から何処からか運んでくるらしい。

 こうして自然のカウロウ達は走るのを楽しんでいるんだ。まさかの方法だったよ。木を植え直すって。確かにラピーの言った通り、『直してる』だった。

 ただその走っているカウロウに巻き込まれると、カウロウの速さで凄い風が発生して、精霊達や小さな魔獣達はみんな飛ばされちゃうんだよ。
 みんな分かっているかあんまり文句は言いたくなけど、走る時は大きな声で鳴いて知らせてくえるとか、木を揺らして教えてくれるとか、何かしてくれとは言っているみたいだ。

『ね、それさえしてくれれば、全く問題ないのにね』

『カウロウはみんなに怒られないし、俺達はこれで楽しめるし。楽しいばっかりになるのにな』

『今度また、みんなで注意しに行く』

 そんなカウロウの話しを聞き終わった時だった。あれだけ俺達の周りを、ビュンビュン流れて行っていた景色が、ゆっくりになってきて。どうしたのかと思ったら、もうすぐ避難場所へ着くらしい。
 流石にこの速さで急には止まれないようで、走り始める時は最初からこのスピードだったけど。止まる時は徐々にだった。

 よく見えるようになってきた周りを確認すると、確かみ木に囲まれていて、トンネルになっていた。そしてそのトンネルの木の壁にの所々に、木で作られた魔獣の人形が付いていて。
 そう、森の中を再現しているみたいになっていたんだ。もしかしたら他にも何か仕掛けがあるかもしれない。

 なるほど。これなら小さい子達は避難の時でも、少しは安心できるんじゃないかな。それにしても、さっきまでの速さで見えてるのは凄いな。

 更にスピードが落ちて、かなりゆっくりになってきた。そうしたらシャインがレイナさんの頭に乗り進行方向を見て。

『あ!! 扉が見えたぞ!!』

 ろ。どうやら避難場所へ着いたらしい。静かに白いカウロウが止まる。避難中何も起きなくて良かったよ。後からくるエルフ達も、何も問題が起きないと良いけど。

「さぁ、順番に降りるぞ」

 しっかりと止まると、すでに避難場所にいたエルフが俺達の周りに寄ってきた。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

処理中です...