異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ありぽん

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53.あまりの事にパニックになる俺

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 俺の口に流し込まれた液体。俺はそれを飲んだ瞬間、あまりの衝撃にそれを一気に飲み込み、そして盛大に咽せた。

「ゲホッ、ケホッ、コホッ!!」

 に、にがあぁぁぁ~!! な、何だこれは!? 一体レイナさんは俺の口に、何を流し込んだんだ? この世にこんなに凄い物が存在するのか!? 苦いような、辛いような、甘いような、この世の全ての不味い液体を全て混ぜたような、なんとも言えない味だったんだよ。

 だからあまりの衝撃に、吐くこともできずに飲み込んじゃって、それで変な所に入っちゃって咳が。しかもだよ、飲んだからと言ったって、口に残った味が消えるわけもなく、飲み込んだ液体が逆流してくるんじゃないかって気がして。

 今さっき起こったことでもパニックだったけど、今度はこの液体のせいでパニックだ。俺は動かせるだけ手足を動かし、半泣きならぬ、ギャン泣きだ。そんな俺をレイナさんが優しく抱き上げ、俺をなんとか泣き止ませようとあやす。

『ティニー、大丈夫か!?』

『咳も泣くのも止まらないね、大丈夫かな? それに僕達の声聞こえる?』

『この世で1番不味い。たぶん』

 ラピー何だって? 今何て言った? この世で1番不味いかもだって!? そんな物を俺は飲まされたのか!?

「ウギャアァァァンッ!!」

「ティニー、ごめんなさいね。でも治療するには仕方がなかったのよ」

 え? 治療? 何の治療だ?

「レイナ、移動しよう。クランシー様が皆の避難を始めるはずだ。すぐに移動しないと……」

 辺りが急に静まり返り、俺の鳴き声だけが響く、そんな俺をしっかりと抱きしめたレイナさん。

「不味いわね」

「行こう!!」

「みんな、ティニーから離れないで!!」

 泣き続ける俺、俺のお腹にしっかりとくっついたシャイン達。急いで外へ出るレイナさんとカシミールさん。外に出る? 今どこから出た? 玄関から出たか? 確認しようとした時だった。

『グオォォォォォォッ!!』

 とても近くから、大きな大きな叫び声が聞こえたんだ。それのショックで、俺の涙が少し止まった。俺はそっと声の聞こえた方を見てみる。と、そこには。大きな大きな魔物が何体も立っていたんだ。あれって……。

「あぶあぁ」

 俺はまだ少し泣いているけど、みんなに聞いてみた。あれは何だ? って。

『あらはオークジェネラルだぞ!』

『オークがいっぱい現れたでしょう? その中で1番強いオークジェネラルが、真ん中の奴だよ』

『遠くから一気にここまで来た』

 やっぱり、あれはオークジェネラルか。小説で読んだ奴にそっくりだな。だけどなんか違う気もするし。何だろう、こう、こっちのオークジェネラルの方が強い気がする。

『あれ?』

『もしかしてティニー』

『聞こえる?』

「ばぶぅ」

 思わずあれがって口にする俺。と、シャイン達が思い切り勢いをつけて、お腹から胸に移動してきた。

『ティニー、俺達の声、聞こえるか!?』

『僕達のお話し、しっかり分かる!?』

『この世で1番不味い。治らなかったらダメ』

「あぶあ? ばぶう?」

 聞こえる? 治るって? と聞く俺。

『レイナママ、ティニー、聞こえるみたい!』

『俺達とお話ししてるぞ!』

『大丈夫そ』

「そう、良かったわ。みんなこれをティニーに。私達は移動するから、その間のティニーに説明してあげて」

 レイナさんはオークジェネラルを見たまま、何かをシャイン達に渡して、カシミールさんと頷きあった後、早歩きで進み始めた。俺は目を動かして、今までい居た場所を見てみる。するとそこには、壁が崩れていて、玄関がなくなっている家が。

 は? 何であんな事になっているんだ? だって今まで普通の家だっただろう? この時の俺、色々な事がありすぎて、最初の出来事をすっかり忘れてしまっていた。
 そんな混乱する俺の口に、シャイン達が何かを運んでくる。それは薄いピンク色の花びらのようで。

『ティニー、これ舐めるんだぞ』

『食べちゃダメだよ』

『舐めたらポイする』

 何だって? これを舐める? 大丈夫何だろうな? さっきのラピーが、この世で1番不味いって言った液体の味が、まだぜんぜん口に残ってるんだが? これを舐めて、余計酷い事にならないだろうな?  

 なかなか舐めない俺に、こうだよと、先にシャイン達全員が舐めた。そして甘くて美味しいよと。みんながそう言うんだからそうなのか? 俺は恐る恐る花びらを舐めてみる。するとみんなの言った通り、とっても美味しい蜂蜜のような味が口の中に広がった。

 俺が美味しいね、と言うと、そうでしょうとフラフィーが。それからもっと舐めろとシャイン。言われるまま舐め続ける俺。そしてついに味がなくなると。ラピーがもう口の中に大丈夫って。

 言われてみたら、確かにあれだけ口の中が地獄だったのに、今は蜂蜜の味が口に広がっていて、ぜんぜん不快に思わない。

「だうぅ!!」

 俺が、もう不味くない!! と言ったら、みんながホッとした顔をした。それから魔法で俺の舐めていた花びらをポイっと捨てると、そのままサッと、やっぱり魔法で燃やしてしまった。

 いやぁ、助かった、それにしても一体何が起きたんだ? 俺は何であんな地獄を味わったんだ?ようやく落ち着いて、泣き止んだ俺。俺が泣き止むと、レイナさんもホッとした顔で俺のことを見てきた。それから避難する前に泣き止んでくれて良かったって。

 そうだよ!! 何でここにオークジェネラルがいるんだよ!! 落ち着いたら俺は、向こうに見えるオークジェネラルを見る。真ん中のオークジェネラル、1番強いオークジェネラルって言ってなかったか?

 と、俺の周りがかなりの騒ぎになっている事に気づいた。オークジェネラルから目を離し、周りを確認してみる。すると俺達の周りには、たくさんの大人エルフ達と、静かに泣いている小さなエルフ達が。

「ばぶう? あぶあ?」

 みんなどうしたんだ? どうして泣いているんだ? ついさっきまで泣いていた俺が言うのも何だが、思わずみんなに聞いてしまう。

『オークジェネラルが攻撃してきたんだぞ!』

『それでティニーが怪我をしちゃって』

『その後奴らが来た。避難する前に』

 攻撃? 怪我? 避難する前に?
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