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28話 会いたくない時に限って現れる、黒が進化したあいつ
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「もうこんな時間だったか。私としたことが。すまない、少し遅くなってしまったが、昼食にしよう。それからヒルドレッドや、他の者たちとの約束通り、昼寝をするように」
「もうしゅこし、おてちゅだい」
『ぴぴっ!』
『おいらも、もう少しだけなんだじょ』
「ダメだ。それに、お前たちがお手伝いをしすぎると、ヒルドレッドたちが心配をしてしまい、かえって具合が悪くなるかもしれないぞ」
「う~ん、しょれはだめ。みんな、きゅけい」
『ぴぃ』
『しかたないんだじょ。休憩なんだじょ』
タオルを補充してからも、順番にみんなの部屋を回って、タオルを替えたり、お水を飲む手伝いをしたりと、いろいろお手伝いをしていた私たち。気づけば、お昼の12時はとっくに過ぎていて、もう14時になっていたよ。
私はもともと、まだ小さいんだから、ちゃんと昼寝をして体を休め、体力を回復するように言われていてね。昼寝は、ほぼ毎日していたんだ。
だけど、今回のことがあって、私たちが走り回っていたら、具合が悪くてぐったりしているはずのアンドリューさんたちが、しっかり私たちを見ていて。必ず昼寝をして休憩しないと、これ以上ここにはいさせないって言われちゃったんだよ。
だから、そうならないように、本当はもっとみんなのために動きたいけど、昼寝をしないといけないの。まったく、こういう時くらい、そういうのはなくても良いと思うんだけどね。
「よし、それじゃあ食事を持って、リアの部屋へ行くぞ」
アルバートさんにそう言われて、渋々、裏庭へ向かう私たち。厨房は明日まで出入り禁止になっているんだ。どこから病気に罹ったのか分からないでしょう? というか、どころかどころか、原因そのものが分かっていないからね。
分からないものに対して、どう対応すればいいのか、みんな手探り状態だけど。それでも、せめてしっかり、掃除や浄化をしないと、こういった部屋は使わせないって、ギルドマスターたちが決めてね。厨房は明日、掃除と浄化が終わる予定だから、まだ入れないんだ。
ということで、食事の用意や、薬の準備なんかは、今は裏庭でやっているよ。
「今日はシシのスープとパンだと言っていたな」
「しし?」
「最近、子供たちに人気の料理だと聞いたが?」
「はじめてたべる。ね、ぴぃくん」
『ぴぃ!』
「みっけは?」
『おいらも初めてなんだじょ。でも……』
「でも?」
「なんか聞いたことがある気がするんだじょ。う~んだじょ』
どうやっているのか。地球のたぬきじゃ、絶対そんな動きできないだろうっていう。立ち上がって2本足で歩きながら、腕を組んで考えるミッケ。そうしてすぐに、ポンッと手を叩いたよ。
「思い出したんだじょ。せいっちが言ってたんだじょ。それで今度、おいらたちに食べさせてくれるって言ってたのに、結局食べさせてくれなかったんだじょ。きっと、いつもみたいに忘れてるんだじょ」
せいっち? 私以外にも、話ができる相手がいるってことだよね。ということは、その人はミッケたちが見えているってことで。じゃあ、セイッチさんはエルフさん?
「みっけ、せいっちしゃんは……」
『良い匂いなんだじょ!』
『ぴぴぴ!!』
聞こうとした瞬間、匂いに惹かれて、料理を作っているエルフさんたちの方へ飛んでいってしまったピィ君とミッケ。
エルフさんたちには、もともとミッケが見えているから、ふらふらしていても問題はなし。もちろん、人が多い時はちゃんと気をつけているよ。特に今はね。
「あるばーとしゃん、せいっちしゃん、えるふしゃんでしゅか?」
「いや、そのような名の者は知らない。だが、他もエルフの里はあるからな。もしかしたら、そちらのエルフかもしれん」
「しょでしゅか」
そんな話をしながら、ピィ君たちに追いついた私に、エルフのキーファンさんが、シシのスープをよそってくれようとする。
「たくさん食べてね。いっぱい作ったから」
「あい!」
でも、その時だった。まだ姿は見えていなかったけど、聞き覚えのある声が、こちらに向かって近づいてきて。
私とピィ君は顔を見合わせると、私はすぐにミッケを掴み、少し離れた場所にある、今は使っていない煉瓦窯の後ろに隠れたよ。
「リア?」
数秒後、裏庭に現れたのは人物は、私たちの思った人物で間違いなかったよ。第1騎士団団長のセリオス団長と、あの問題の黒人間、副団長のフィンレイが歩いてきたの。だから、慌てて隠れたんだ。
「どんな様子だ?」
「あまり良くはないな。それと、治癒師も薬も足りない」
「やはりそうか。こちらでもできる限りのことはするつもりだ。騎士も総動員で対処にあたっている。しかし、……はぁ、まさかこんなことが起きるとは」
「原因は分かりましたか?」
「いいや、今の何も。だが、私たちが調べているからな。何も分からないまま、ということはないだろう」
「まぁ、お前たちならな」
今回のことで、人の騎士団もいろいろと対応してくれていて。時々、宿舎の様子と他の状況について、確認しにくるんだ。それが今回はセリオス団長と、フィンレイだったみたい。
私たちは、なるべく気づかれないように、煉瓦窯の影からフィンレイの様子をそっと確認する。
「……おおう」
『……ぴぴぃ』
と、思わず少しだけ声が出ちゃったよ。ピィ君もびっくりしたんだろうね。
体から黒いモヤモヤの煙が出ていて、しかも黒い何かに包まれていたフィンレイ。その黒い物が前回よりも、体は半分以上、顔も時々掠れるくらい、ドス黒くさらに強いものになっていたの。
だから、気持ち悪さと、禍々しさもパワーアップしていたんだけど。あまりの濃さにびっくりの方が勝っちゃって、思わず『おおう』って言っちゃったんだよ。
「ぴぃくん、まっくろ、しゅごいねぇ」
『ぴぴぴ~』
『わぁなんだじょ。すごい真っ黒なんだじょ。リア、ピィ、あれには近づかない方がいいんだじょ』
「え? みっけ、あのくろいの、みえるの? ほかのひと、みえないんだ」
『見えるんだじょ。時々、ああいう人間や獣人がいるんだじょ。他の種族にもいるんだじょ。それで真っ黒なのは、意地悪で、みんなをいじめて、悪いことをするやつが多いんだじょ。だから、せいっちが近づかないようにって言ってたんだじょ』
「しょなんだ。あれ、やっぱりだめなんだ」
『ダメだじょ。あいつがいなくなるまで、ここで隠れてるんだじょ』
まさかミッケから、あの黒いものについての情報まで聞けるとは思わなかった。やっぱりあれ、見た目通りダメなやつだったんだね。まぁ、あれだけ嫌な感じがするなら当然って感じだけど。でも、知っている人、というかミッケが知っていてくれて良かったよ。
って、今もセイッチって名前が出てきたね。
「ミッケ、しぇいっちって……」
また聞こうとした私。でも今度は、エルフのイライアスさんが、いつの間にか私たちの方へきていて、私たちに声をかけてきたから、また聞きそびれちゃったよ。
「おう、そのまま聞いてろよ。あれがお前たちの苦手な人間か。確かに性格悪そうな顔してるよな。アルバートがすぐに、あの2人をここから連れ出すだろうから、そのまま隠れてろ。近づいてきたら、俺が止めてやる」
その言葉に、アルバートさんたちの方を見ると、確かにアルバートさんが、向こうへ連れて行こうとしているところだったよ。
「詳しい話は向こうへ行ってするとしよう」
「分かった。それにしても良い匂いだな」
「元気になるには、食事も大事だからな」
「確かに」
そう言って、アルバートさんたちは向こうへ歩き始める。と、その時。
「そういえば、彼女は……リアは元気にしていますか? 看病しているとか? 彼女はまだまだ幼いですからね。疲れて倒れるなんてことになると、彼らは余計に具合が悪くなるでしょうから」
シャッ!! と素早く煉瓦窯の陰に隠れる私たち。
「心配はいらない。ほとんど私と行動を共にしているからな」
「……そうですか。あなたが側にいるのなら、確かに問題はないでしょうね」
「うむ、後でリアにも何か持ってこよう。彼女も心配で、精神的に疲れているだろうからな」
う~む。隠れていて姿は見えないはずだけど、フィンレイがこっちを見ているような気がするよ。ピィ君とミッケも隠れたまま威嚇してるし。
どんどん遠くなっていった、アルバートさんたちの会話。そして、完璧に会話が聞こえなくなってから数分。
「……よし、行ったな。さぁ、食事の用意してやるから、そこでゆっくり食べろ」
イライアスさんが確認してくれたあと、煉瓦窯の陰から出てきて、自分でも確認したけど、フィンレイの姿はなし。
こうして私たちはやっと。ご飯を食べることができたんだ。
ただ、この時は面倒なフィンレイに会わずに済んで良かったけど。これ以降、良いことも悪いことも、立て続けに起こるなんて、この時の私は思いもしていなかったんだ。
そしてその最初のドタバタは、2日後に起こったの。
「もうしゅこし、おてちゅだい」
『ぴぴっ!』
『おいらも、もう少しだけなんだじょ』
「ダメだ。それに、お前たちがお手伝いをしすぎると、ヒルドレッドたちが心配をしてしまい、かえって具合が悪くなるかもしれないぞ」
「う~ん、しょれはだめ。みんな、きゅけい」
『ぴぃ』
『しかたないんだじょ。休憩なんだじょ』
タオルを補充してからも、順番にみんなの部屋を回って、タオルを替えたり、お水を飲む手伝いをしたりと、いろいろお手伝いをしていた私たち。気づけば、お昼の12時はとっくに過ぎていて、もう14時になっていたよ。
私はもともと、まだ小さいんだから、ちゃんと昼寝をして体を休め、体力を回復するように言われていてね。昼寝は、ほぼ毎日していたんだ。
だけど、今回のことがあって、私たちが走り回っていたら、具合が悪くてぐったりしているはずのアンドリューさんたちが、しっかり私たちを見ていて。必ず昼寝をして休憩しないと、これ以上ここにはいさせないって言われちゃったんだよ。
だから、そうならないように、本当はもっとみんなのために動きたいけど、昼寝をしないといけないの。まったく、こういう時くらい、そういうのはなくても良いと思うんだけどね。
「よし、それじゃあ食事を持って、リアの部屋へ行くぞ」
アルバートさんにそう言われて、渋々、裏庭へ向かう私たち。厨房は明日まで出入り禁止になっているんだ。どこから病気に罹ったのか分からないでしょう? というか、どころかどころか、原因そのものが分かっていないからね。
分からないものに対して、どう対応すればいいのか、みんな手探り状態だけど。それでも、せめてしっかり、掃除や浄化をしないと、こういった部屋は使わせないって、ギルドマスターたちが決めてね。厨房は明日、掃除と浄化が終わる予定だから、まだ入れないんだ。
ということで、食事の用意や、薬の準備なんかは、今は裏庭でやっているよ。
「今日はシシのスープとパンだと言っていたな」
「しし?」
「最近、子供たちに人気の料理だと聞いたが?」
「はじめてたべる。ね、ぴぃくん」
『ぴぃ!』
「みっけは?」
『おいらも初めてなんだじょ。でも……』
「でも?」
「なんか聞いたことがある気がするんだじょ。う~んだじょ』
どうやっているのか。地球のたぬきじゃ、絶対そんな動きできないだろうっていう。立ち上がって2本足で歩きながら、腕を組んで考えるミッケ。そうしてすぐに、ポンッと手を叩いたよ。
「思い出したんだじょ。せいっちが言ってたんだじょ。それで今度、おいらたちに食べさせてくれるって言ってたのに、結局食べさせてくれなかったんだじょ。きっと、いつもみたいに忘れてるんだじょ」
せいっち? 私以外にも、話ができる相手がいるってことだよね。ということは、その人はミッケたちが見えているってことで。じゃあ、セイッチさんはエルフさん?
「みっけ、せいっちしゃんは……」
『良い匂いなんだじょ!』
『ぴぴぴ!!』
聞こうとした瞬間、匂いに惹かれて、料理を作っているエルフさんたちの方へ飛んでいってしまったピィ君とミッケ。
エルフさんたちには、もともとミッケが見えているから、ふらふらしていても問題はなし。もちろん、人が多い時はちゃんと気をつけているよ。特に今はね。
「あるばーとしゃん、せいっちしゃん、えるふしゃんでしゅか?」
「いや、そのような名の者は知らない。だが、他もエルフの里はあるからな。もしかしたら、そちらのエルフかもしれん」
「しょでしゅか」
そんな話をしながら、ピィ君たちに追いついた私に、エルフのキーファンさんが、シシのスープをよそってくれようとする。
「たくさん食べてね。いっぱい作ったから」
「あい!」
でも、その時だった。まだ姿は見えていなかったけど、聞き覚えのある声が、こちらに向かって近づいてきて。
私とピィ君は顔を見合わせると、私はすぐにミッケを掴み、少し離れた場所にある、今は使っていない煉瓦窯の後ろに隠れたよ。
「リア?」
数秒後、裏庭に現れたのは人物は、私たちの思った人物で間違いなかったよ。第1騎士団団長のセリオス団長と、あの問題の黒人間、副団長のフィンレイが歩いてきたの。だから、慌てて隠れたんだ。
「どんな様子だ?」
「あまり良くはないな。それと、治癒師も薬も足りない」
「やはりそうか。こちらでもできる限りのことはするつもりだ。騎士も総動員で対処にあたっている。しかし、……はぁ、まさかこんなことが起きるとは」
「原因は分かりましたか?」
「いいや、今の何も。だが、私たちが調べているからな。何も分からないまま、ということはないだろう」
「まぁ、お前たちならな」
今回のことで、人の騎士団もいろいろと対応してくれていて。時々、宿舎の様子と他の状況について、確認しにくるんだ。それが今回はセリオス団長と、フィンレイだったみたい。
私たちは、なるべく気づかれないように、煉瓦窯の影からフィンレイの様子をそっと確認する。
「……おおう」
『……ぴぴぃ』
と、思わず少しだけ声が出ちゃったよ。ピィ君もびっくりしたんだろうね。
体から黒いモヤモヤの煙が出ていて、しかも黒い何かに包まれていたフィンレイ。その黒い物が前回よりも、体は半分以上、顔も時々掠れるくらい、ドス黒くさらに強いものになっていたの。
だから、気持ち悪さと、禍々しさもパワーアップしていたんだけど。あまりの濃さにびっくりの方が勝っちゃって、思わず『おおう』って言っちゃったんだよ。
「ぴぃくん、まっくろ、しゅごいねぇ」
『ぴぴぴ~』
『わぁなんだじょ。すごい真っ黒なんだじょ。リア、ピィ、あれには近づかない方がいいんだじょ』
「え? みっけ、あのくろいの、みえるの? ほかのひと、みえないんだ」
『見えるんだじょ。時々、ああいう人間や獣人がいるんだじょ。他の種族にもいるんだじょ。それで真っ黒なのは、意地悪で、みんなをいじめて、悪いことをするやつが多いんだじょ。だから、せいっちが近づかないようにって言ってたんだじょ』
「しょなんだ。あれ、やっぱりだめなんだ」
『ダメだじょ。あいつがいなくなるまで、ここで隠れてるんだじょ』
まさかミッケから、あの黒いものについての情報まで聞けるとは思わなかった。やっぱりあれ、見た目通りダメなやつだったんだね。まぁ、あれだけ嫌な感じがするなら当然って感じだけど。でも、知っている人、というかミッケが知っていてくれて良かったよ。
って、今もセイッチって名前が出てきたね。
「ミッケ、しぇいっちって……」
また聞こうとした私。でも今度は、エルフのイライアスさんが、いつの間にか私たちの方へきていて、私たちに声をかけてきたから、また聞きそびれちゃったよ。
「おう、そのまま聞いてろよ。あれがお前たちの苦手な人間か。確かに性格悪そうな顔してるよな。アルバートがすぐに、あの2人をここから連れ出すだろうから、そのまま隠れてろ。近づいてきたら、俺が止めてやる」
その言葉に、アルバートさんたちの方を見ると、確かにアルバートさんが、向こうへ連れて行こうとしているところだったよ。
「詳しい話は向こうへ行ってするとしよう」
「分かった。それにしても良い匂いだな」
「元気になるには、食事も大事だからな」
「確かに」
そう言って、アルバートさんたちは向こうへ歩き始める。と、その時。
「そういえば、彼女は……リアは元気にしていますか? 看病しているとか? 彼女はまだまだ幼いですからね。疲れて倒れるなんてことになると、彼らは余計に具合が悪くなるでしょうから」
シャッ!! と素早く煉瓦窯の陰に隠れる私たち。
「心配はいらない。ほとんど私と行動を共にしているからな」
「……そうですか。あなたが側にいるのなら、確かに問題はないでしょうね」
「うむ、後でリアにも何か持ってこよう。彼女も心配で、精神的に疲れているだろうからな」
う~む。隠れていて姿は見えないはずだけど、フィンレイがこっちを見ているような気がするよ。ピィ君とミッケも隠れたまま威嚇してるし。
どんどん遠くなっていった、アルバートさんたちの会話。そして、完璧に会話が聞こえなくなってから数分。
「……よし、行ったな。さぁ、食事の用意してやるから、そこでゆっくり食べろ」
イライアスさんが確認してくれたあと、煉瓦窯の陰から出てきて、自分でも確認したけど、フィンレイの姿はなし。
こうして私たちはやっと。ご飯を食べることができたんだ。
ただ、この時は面倒なフィンレイに会わずに済んで良かったけど。これ以降、良いことも悪いことも、立て続けに起こるなんて、この時の私は思いもしていなかったんだ。
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