もふもふが溢れる異世界で幸せ加護持ち生活!

ありぽん

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2巻

2-3

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「今日は良いものを持って来ましたよ。このままだと僕は嫌われちゃいそうですからね」

 先生がカバンの中からサウキーとクマさんの、小さな人形を出しました。とっても小さいの。その小さな人形を先生が指に付けて動かします。

「これは指にはめて遊ぶのですよ。頑張って診察させてくれたジョーディ様にプレゼントです」

 先生が指から人形を外して手の上に載っけると、僕の方に差し出してきました。僕は警戒しながら少しずつハイハイで近づいて、パッてお人形を掴んでそのまま、高速で先生から離れます。
 ベッドの後ろに隠れて、自分の指に付けてみました。とっても可愛いサウキーとクマさん。わんわん達も僕の所に来て、一緒に隠れて指人形を見ます。二匹共やっぱり可愛いねぇって言ってくれました。
 ママがベッドの向こうから、先生にありがとうをしなさいって言うので、僕はベッドの陰から少しだけ顔を出して、「がちょっ」って言って、すぐに引っ込んで隠れます。

「はははっ、もう僕のことは敵と認識しているみたいですね」
「もうジョーディったら。先生、お忙しいところをお呼びしてすみません。診療所がまだお忙しいのに」

 だって、くれるって言ったんだもん。大好きなサウキーとクマさんだもん、もらえる物はもらわなくちゃ。僕、あの診察頑張ったし。
 またチラッと、ベッドの陰から先生を見たら、帰り支度をしていました。それからママと、そして隠れている僕にもさようならをして、お部屋から出て行きました。
 僕は指人形を見て、今度会ったら、少しだけ仲良くしてあげてもいいかな、と思いました。指人形分だけだけど。
 それからお昼ご飯を食べてゴロゴロしてたら、パパ達が帰って来たんだ。泣いている僕のことを、パパが抱っこして抱きしめてくれます。ママがまた吐いちゃうんじゃないかって心配してたけど、今回は何とか吐かずに済みました。
 パパ達はまだお昼のご飯を食べてないから、みんなでご飯を食べるお部屋に移動します。ママはお部屋にいなさいって言ったけど、僕がパパの洋服を離さなかったから、静かにしてるなら一緒に行っても良いって、パパが言ってくれたの。
 ご飯を食べるパパのお膝に座る僕。魔獣のみんなもわんパパ達の側に集まります。
 おやつの時間にはちょっと早かったけど、ベルがママ特製ゼリーを運んで来てくれました。
 パパも帰って来て、しかも美味しいゼリーを食べて、ニコニコの僕。
 パパも僕達の方を見てニコって笑います。でもすぐに、ママの方を見て少しキリッとした顔に変わります。パパのお仕事の時のお顔は三つ。だら~ってした顔、それからいやいやの顔、それとキリッとした顔です。

「食事の後に詳しく話すが、あまり良くない。一体何が起こったのか……」
「そう」

 パパ達のお話を聞いていたら、冒険者ギルドがとか、冒険者がとか言ってて。それでじぃじがまだ冒険者ギルドにいるってことが分かりました。なんかとっても大変なお仕事をしてるみたいです。
 あと、パパはご飯を食べて少しだけお休みしたら、またお仕事に行っちゃうんだって。
 それで今度はじぃじがお家に帰って来るの。パパがお仕事に行っちゃうのは寂しいけど、じぃじもお休みしないとダメだもんね。あとでどんなお仕事か聞いてみようかな?


 そんなことを考えてたら、パパが自分のデザートのゼリーに載っている、イチゴみたいな木の実を僕にくれました。えへへ、ありがとう!



 2章 誰がお仕置き? それに街で遊べない⁉


 おやつの後は、お昼ご飯を食べ終わったパパに、ずっと抱っこをしてもらいました。それから一緒にお昼寝です。
 次に起きた時、パパはお仕事に行っちゃってて、ちょっとしょんぼりです。でもしょうがない、お仕事だもん。それにさっきよりも寂しくありません。ローリーやわんパパ達はお仕事に行かなくて、僕達と遊んでくれるって。
 あと、じぃじが帰って来ていました。じぃじはご飯を食べた後、今お部屋でお昼寝してます。

『じぃじね、ジョーディの寝てるお顔を見て、ニヤニヤしてたよ』
『ねぇ~、気持ち悪かったぁ』

 何で僕の顔を見てニヤニヤしてたのかな?
 わんわん達が何して遊ぶって聞いてきたんだけど、僕はまずはローリー達とお話ししようって言いました。魔獣を倒したママのカッコいいお話を聞きたいし。わんわん達も、自分のパパのカッコいいお話を聞きたいでしょう?
 そう言ったら二匹はうんって頷いてくれました。みんなでベッドに集まってお話です。お兄ちゃんも一緒だよ。ベッドにいれば、ママもベルも静かにしてなさいって怒らないもんね。今日まで我慢。またラオク先生に診察されるのは嫌だもん。指人形くれたけど……。
 ローリーとわんパパ達は、体が大きいからベッドの横に座ります。

「りー、ま~ま、かっちゃ?」
『ああ、とってもカッコ良かったぞ。一瞬でたくさんの魔獣を倒していた』
「じゃあパパは? パパも剣でたくさん魔獣倒した?」
『ああ、そうだな。ラディスもかなり倒していた。が、ラディスは皆の指揮をとっている時間の方が長かったな』

 やっぱりパパよりもママの方が強いんだね。そんなに強いなら、今度魔獣を倒すところを見せてくれないかな。
 パパとママの後は、わんパパ達の話です。わんパパ達が倒したのはベヒモスと、ワイルドボアっていう魔獣。僕はどっちも見たことがありません。ママが倒したウォーキングウッドも知らないし、どんな魔獣かお兄ちゃんに聞いたら、ベッドから下りて、近くに置いてあったカバンをごそごそ。そして絵本を取り出しました。

「この絵本には、たくさん魔獣の絵が描いてあるんだよ」

 お兄ちゃんがパラパラ、ページをめくります。最初に見せてくれたのはウォーキングウッド。ウォーキングウッドの隣には人の絵も描いてあって、どのくらいの大きさなのか、分かりやすくしてありました。
 ウォーキングウッドは、歩いて攻撃する木です。人が三人縦に並んだくらいの背の高さで、とっても大きくて、魔獣なのに木の姿をしています。僕ね、ローリー達みたいな動物を「魔獣」と呼ぶんだと思ってました。木の魔獣もいるんだね。
 次はベヒモス。ベヒモスもとっても大きくて、背はウォーキングウッドよりも低いけど、カバさんを大きくした感じ。カバさんが三、四匹分? 街を守ってる壁とかに、勢い良くぶつかって来て、穴を開けちゃうんだって。それだけお体が丈夫なの。
 最後はワイルドボアです。ワイルドボアも大きいんだけど、ウォーキングウッドとベヒモスが大きすぎて、なんか小さく感じちゃいます。でも人よりはとっても大きいです。ワイルドボアはきばが鋭くて、何でもみ切っちゃうんだ。
 こんなに大きくて、とっても強い魔獣を倒しちゃうなんて、ママ凄いねぇ。もちろん、パパもね。
 魔獣のお話をした後は、パパ達のお仕事がどうして忙しくなっちゃったのか聞きます。

「ぱ~ぱ、ごちょ、ちいのねぇ?」
『ジョーディのパパ、忙しいの何で?』
『お父さん達も何で忙しかったの?』
『ジョーディやお前達に悪いことをした冒険者達がいただろう? そいつらが誰かにお仕置きされたんだ。でも誰にお仕置きされたのか分からなくて、ラディス達はそれを調べているんだ』

 そうなの? 悪い冒険者ってわんわん達を攫った人達のことだよね。それからキラービーを街に連れて来ちゃった冒険者さん達と、僕達が捕まえた変な人。
 冒険者さん達ね、なんかとっても怖いお仕置きをされちゃったんだって。でもパパ達はお仕置きして良いって誰にも言ってなくて、勝手にやられちゃったの。
 パパ達はそのお仕置きした人を今探してるから、とっても忙しいんだ。誰がやったのかな? それにどんなお仕置きされたのかな? ママがいつもパパのことを怒る時みたいな感じかな?

「ま~ま、こあいにょ」
『ジョーディのママが怒った時みたい?って』
『それともボクのお父さん達が、おじいちゃんやおばあちゃんに怒られる時みたい?』

 にゃんにゃん達のおじいちゃんとおばあちゃんには、僕も森の中で会いました。とっても優しかったんだよ。

「わんわん、にゃんにゃん、じじばばこあい?」
『うん、僕達には優しいけど、お父さん達には怖いよ』
『お父さん達は怒られた後、いつもぐったりしてるの』

 へぇ、そういえば、前もそんなこと言ってたっけ。おじいちゃんに蹴られたり、おばあちゃんに引っかかれたりして、わんパパ達は傷だらけになっちゃうんだって。
 僕のパパをお仕置きするママもとっても怖いよ。一度怒っちゃうと、朝から僕が夜寝る時まで、ずっとパパは怒られてるの。
 怒ってるママは時々、魔法でパパのお顔にお水をかけたりします。ご飯も食べずにずっとパパの隣にいて、パパが仕事から逃げないように見張ったり。だからお仕事が終わるとパパはぐったり。ママは自業自得じごうじとくですってよく言ってます。

「わりゅ、じねぇ」
『悪い冒険者も、お父さん達みたいなお仕置きされてた?』
『傷だらけ? ぐったり?』

 僕らの質問に、パパ魔獣達が頷きます。

『あぁ、まぁ、そんなところだ』
『確かに傷だらけだったな』

 それを聞いて、わんわんとにゃんにゃんは笑いました。

『僕達に意地悪したからだよね』
『そのせいでジョーディも泣いちゃった。お仕置きされて当たり前だよね』

 わんわん達と良かった良かったって喜びます。ローリー達は変なお顔で笑ってたけど。


 次の日の朝、ラオク先生がまた来て僕のことを診察しました。でも今日はあの熱くなる診察はなくて、ちょっと僕のお顔見たり、体を触ったりするだけですぐに終わっちゃいました。しかも……。

「もう大丈夫ですよ。走っても外で遊んでも、好きに遊んでください」

 やったぁ‼ やっとこれでお外で遊べる! 僕は高速ハイハイでおもちゃの入ってるカバンの所に飛んでいきます。この中に、お外で遊ぶおもちゃが入ってるんだ。
 わんわん達とおもちゃを選んでいる間に、ラオク先生は帰って行って、選んだおもちゃをお兄ちゃんが木でできているバケツに入れてくれます。
 僕が考えた今日の予定は、お昼の時間まではじぃじの家のお庭で遊んで、ご飯食べたらお昼寝。その後は街に遊びに連れて行ってもらうの。まだじぃじの家以外、全然見てないもん。
 ……って、僕の考えた通りになればいいんだけど。
 お庭でたくさん遊んでから、お昼ご飯を食べている時に、パパとじぃじがお仕事を終えて帰って来ました。それでね、少しの間、僕もわんわん達も、じぃじの家から出られないって。出ても良いのはお庭までって言ったんだ。
 それを聞いてビックリの僕。何でって聞こうと思ったら、先にわんわん達がパパの所に走って行って尋ねました。その勢いにちょっと困ってるパパ。
 なんかね、この前の魔獣の襲撃のお片付けが残っているとか、直さないといけない所があるとか……つまりまだ街が元に戻ってないから、それが全部終わるまで、僕達は街で遊べないんだって。
 そんなぁ~⁉ 僕、とっても楽しみにしてたのに。ラオク先生も遊んでいいって言ったし、昨日だって大人しくしてたんだよ。僕がしょんぼりしてたら、お兄ちゃんがまたぁ?って代わりに怒ってくれました。

「いつまでダメなの? 僕、行きたい所いっぱい」
「マイケルもジョーディも、少し我慢してくれ。それからわんわん達も。みんなが街で遊べるように、パパ達、頑張ってお仕事するからな」

 僕はテーブル椅子から抜け出して、お部屋の隅っこでわんわん達とがっかりします。みんなで遊びたかったのにって、ぐちぐちお話です。
 それをよそに、ママが何かの話を始めました。

「あなた、じゃあジョーディのアレも延期ね」
「ああ、さっき父さんとも話したんだが。落ち着くまでは延期することにした。父さんが陛下へいかに手紙を。スーに任せたからもう届いているだろう」
「ワシがお前達と合流する前に、一度手紙を出したからな。延期になるかもと。まだ準備していないじゃろて」
「せっかくの特別な日が……」
「こればかりは、な」

 何のお話をしてるか分かんないけど、気になる言葉が。スー? 僕はまだ落ち込んでるけど、側にいるローリーに聞いてみました。そしたらローリーがすぐに呼んでやるって言って、大きな声で鳴きます。それから、窓を見てろって。
 窓を見ていたらすぐに、黄色い塊が、凄い勢いで部屋の中に入って来ました。それでお部屋の中をぐるっと回って、ローリーの頭の上に乗ります。地球のツバメさんよりちょっと小さい、黄色い綺麗な鳥さんでした。

『この鳥はスプレイドという魔獣だ。とても速く飛べる鳥で、急いで手紙を届けないといけない時なんかに、運んでもらうのだ。サイラスが契約していて名前はスーだ』
「スー!」

 僕が呼んだら、スーが頭の上に飛んで来て止まりました。わんパパが、言葉が分かるように魔法を使ってくれます。

『初めまして、僕、スーだよ。今来た時よりも、もっと速く飛べるんだ。飛んでみようか?』

 本当? さっきもとっても速く飛んでたけど。
 スーが僕の目の前に来て、バサバサ羽ばたきます。僕が頷いたらスーが窓の方に飛んで行って、ベルが僕のことを抱っこして、窓まで連れて行ってくれました。
 そして窓から外に出たスー。その姿がいきなり見えなくなっちゃって、僕はあっちこっちに目をやりますが、何処にもスーがいません。

『どうだった? 速いでしょ?』

 ビクッ⁉ 僕、ビックリです。心臓がドキドキしっぱなしです。だっていきなり顔の前に現れたんだもん。僕は思わずスーに向かって手を伸ばして、叩こうとしました。本当にビックリしたんだよ。

「ぶー、めよっ‼」
『何で怒ってるの?』 
『お前が急に消えて急に現れたから、驚いたのだ』

 理由が分からないスーに、ローリーが僕の代わりに答えてくれました。

『あっ、そっか。ごめんね。僕、今屋敷の周りを一周してきたんだよ』

 え? 本当? だってちょっと消えただけだよ。その間に一周なんてできるの?
 ビックリしてると、ローリーがスプレイドのことを教えてくれます。
 スプレイドは、今この世界にいる鳥魔獣の中で、一番速い鳥。速すぎて野生のスプレイドを見つけるのは大変なんだって。もし見つけても、契約しようと準備しているうちに、また何処かに飛んで行っちゃって、結局諦める人ばっかりなんだとか。
 そんなとっても速いスプレイドだけど、何とじぃじは飛んでいるスプレイドを、手で捕まえちゃいました。
 パパ達と森の道を歩いていたじぃじ。急にみんなに動くなって言って、いきなり木を蹴って高くジャンプしました。すぐに下りてきたじぃじの手には、何かが握られていて。
 それがスプレイドのスーだったの。パパもローリーもこれにはビックリ。捕まったスーもビックリ。じぃじだけ、ガハハハハッて大笑いしてたんだって。
 じぃじは、何となくスーが飛んでいるのが分かって捕まえたみたい。じぃじ、凄いねぇ。そんなじぃじのことを、スーも凄いと思って契約したの。それからずっと、じぃじのお手伝いをしています。
 それからも何回も、じぃじと一緒に行っちゃうまで、スーに飛んでもらったんだけど、一回も飛んでるところは見えませんでした。お部屋に入って来た時に黄色く見えたでしょう? あれが一番遅いんだって。あれで一番遅いんだ……。
 スーのおかげで、街に遊びに行けないしょんぼりした気持ちがなくなりました。わんわん達とのお話し合いで、お昼寝の後もお庭で遊ぼうって決めて、すぐにお昼寝しに行きます。
 お昼寝が終わってからおやつを食べて、お庭で遊んでたら嬉しいことがありました。大きな石の魔獣のグエタが遊びに来てくれたの。グエタはクローさんっていう冒険者のおじさんと二人で、荷運びの仕事をしています。二人とは旅行の途中で出会って、この街まで一緒にやって来ました。
 グエタは最近お仕事が忙しくて、ゆっくり遊べるのはいつになるか分からないから、今なら少しだけ遊べるってことで来てくれたんだ。
 みんなでグエタに乗せてもらって、じぃじのお家の周りを歩いてもらいました。それからシャボンで遊んで、夕方になってグエタが帰っちゃう時、僕泣いちゃったよ。

『また遊びに来るからね。約束』
「ちょく……ヒック」
『うん、約束。バイバイの肩車してあげる』

 最後にもう一回お肩に乗せてもらって、本当にバイバイです。またねグエタ!


 それから毎日、僕達はお家の中で遊んだり、お庭で遊んだり。パパ達はいつもとっても忙しくお仕事して、時々ママもばぁばもそのお手伝い。結局、全然街に遊びに行けなかったんだ。
 そんな日が続いて、久しぶりにグエタが遊びに来てくれました。僕はとっても嬉しくて。でも……。その日、とっても楽しいことと、とっても大変なことが待っていたんだ。


     *********


 事件に関わった冒険者達を始末し、レイジンや他の手下達に準備を任せて数日。俺――ベルトベルは、マカリスター家を監視していた。俺達の組織にとって重要となりうる人物を見つけたため、俺自らが動くことにしたのだ。
 監視を始めた直後は、その人物は屋敷から姿を見せることはなかった。が、三日目、ようやく庭に姿を現した。名前はジョーディ・マカリスター。ラディス・マカリスターの次男で、一歳になったばかりの赤子だ。

「ベルトベル様。様子はいかがですか?」

 レイジンが俺を休憩させるために監視の交代に来る。ここ三日、寝ていなかったからな。この後の監視のためにも、一度休んでおく必要がある。

「ようやく外に出てきたところだ」
「そうですか。ではここからは私が。それにしてもベルトベル様、あんな赤子を監視する必要が?」

 俺はこの街に来て、レイジン達から報告を受けていたため、一応状況は分かっている。が、その報告だけでは分からないことも当然あった。
 子供がダークウルフに攫われた後、家族と再会した時。人には絶対に従わないとされていた、ダークウルフとホワイトキャットが、なぜ一緒に森から出て来たのか。その後、マカリスター家の印――首飾りや腕輪の形をした――まで付けたのだ。マカリスター家は奴らを手に入れたのか?
 それにその後の、デイライトが追われた時のことも気になる。ダークウルフはあの赤子を連れて、的確にデイライトを追ってきたと聞いた。見間違いかもしれないが、赤子が指示しているように見えたこともあったらしい。
 どちらもあの赤子が関わっている。だとすると、ダークウルフ達はあの子供について来ているのではないか? 一番考えられないことではあるが、もしかしたらあの赤子が、魔獣達と契約した可能性が? だが、まだ話すこともままならないあんな赤子が契約などできるのか?
 色々考えてもまとまらず、俺は監視することにしたのだ。しかし、もし、俺の考えが少しでも合っていれば? 上手くあの赤子を使い、俺達の計画をかなり進めることができる。

「ベルトベル様、休める時に休まれませんと」
「分かっている」

 色々考えていると、レイジンにそう忠告される。俺は彼にここを任せ、アジトに向かって走り始める。
 あの赤子に何があるのか。ダークウルフ達を捕まえるならば、やはりあの赤子も一緒だ。なに、何もなければ殺せば良いだけのこと。だが特別な能力を持っていれば……。
 こんな監視の生活を送って、さらに数日後。俺の所にアレが届いたため、今日、俺達は計画を実行することにした。今度こそ成功させなければ。


     *********


 久しぶりに遊びに来てくれたグエタは、土の魔法を見せてくれました。
 砂煙や泥で攻撃したり、大きな泥団子を作って飛ばしたり。それをみんなで眺めます。同じ土だけど、色々な土の魔法があるんだね。
 グエタが最後に、僕達がとっても喜ぶ魔法を見せてくれるって言いました。わくわくして魔法を待つ僕達。
 グエタが手をパンッて叩きました。そうしたら足元の土がもこもこ動き出して、だんだんと塊になっていきます。塊は大きい塊と小さな塊に分かれて、今度はもにょもにょ動きました。

「にょおぉぉぉぉぉぉっ‼」
『わぁ、凄い‼』
『カッコいいし、可愛いね‼』

 僕達の前には、土でできたお人形さんが立っていました。グエタよりもちょっとだけ小さい土人形さんと、とっても小さい土人形さんです。しかもただのお人形さんじゃないよ、動くんだ。
 小さい土人形さんが大きい土人形さんから下りて、僕達の方に歩いて来て、僕の肩に乗っかりました。可愛い‼

「おっ、凄い魔法を見せてもらってるな」

 パパとじぃじが僕達の所に来ました。僕達を見守っているママが声をかけます。

「あなた、仕事は?」
「まだやることはあるが、一休みしに来た」

 僕が手を前に出したら小さい土人形さんが乗ってくれて、僕はパパの所に行ってそれを見せます。土人形さんは手の上でダンスしたり、小さな土団子を投げてみたり、色々なことをしてくれました。
 大きい土人形さんはグエタと一緒に魔法を使って、土のボールでサッカーをやってみせます。それから泥団子を作って投げ合いっこです。グエタが土人形さんのお顔に泥団子をぶつけて、土人形さんがやられたぁ~、って格好をしました。

「グエタ、その魔法使ったのか⁉」

 突然僕達の後ろから、クローさんのお声がしました。みんなで後ろを振り返ります。そこには、困ったお顔をしたクローさんが立っていました。クローさん、さっきまでおトイレに行ってたの。

「また連れて行かないとダメじゃないか。そろそろあそこはいっぱいなんだぞ」
「クロー、どうしたのじゃ?」

 じぃじが聞くと、クローさんが説明を始めました。
 クローさんが土人形さんの隣に歩いて行って魔法を使います。さっきのグエタみたいに足近くの土がもこもこ動き始めて、クローさんも土人形さんを作りました。
 それからクローさんが作った土人形さんが、グエタの土人形さんの隣に並んで……あれ?

「これは……」

 土人形さんの色が違いました。グエタの方のお人形さんはとっても濃い茶色。クローさんの方はちょっと薄い茶色なんだ。

「俺が今作った土人形の方が、一般に知られている土魔法です。違いは色とその動きです。俺の方は命令しなければ何もしませんが、グエタの方は自らの意思で動く。自分を作り出した者と意識を共有し、こちらが言わなくても、誰が敵なのか判断し、戦闘に参加する」

 グエタが使った土のお人形さんの魔法は、グエタにしか使えないんだって。
 みんな土魔法の土人形は、全部茶色って思ってるから、少し色が違うだけじゃ気付かないみたい。確かに、パパ達も気付いていませんでした。
 それから他にも違うところがあって、普通の土人形さんは、少し経つと土に戻っちゃうんだけど、グエタの作った土人形さんは、ずっとずっとそのままなんだって。


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