もふもふが溢れる異世界で幸せ加護持ち生活!

ありぽん

文字の大きさ
18 / 213
2巻

2-2

しおりを挟む
「いつもこうなんだよ。魔獣が来るとこうやって準備して、みんなで丈夫な部屋に移動するの」

 お兄ちゃんはニッコリ。全然怖がってません。ママ達も急いで荷物を準備していること以外、お顔はいつも通り。ラオク先生は窓の方に行って、今日はいい天気ですね、煙がよく見えますって落ち着いていました。

「では私は先に」
「レスター、この毛布を持って行って」

 レスターが僕のお気に入りの――サウキーの絵が描いてある毛布と、それから他にもたくさん物を持って、お部屋から出て行きます。それからすぐにばぁばが戻って来ました。

「用意は大丈夫?」
「はい。もう行けますわ。さぁ、マイケル、ジョーディ、それからわんわん達。これからお部屋を移動するわよ。マイケルはばぁばと、ジョーディは私と、わんわん達はベルと一緒にね。先生は私達の後について来てください」

 ばぁばとお兄ちゃんが、一番にお部屋から出ました。次にママが僕を抱っこして出ます。廊下をあっちこっち、使用人さん達とメイドさん達が走ってます。
 みんなで階段を下りて一階に着くと、右に歩いて行って一番端っこの部屋の前に。ドアがもう開いていて、レスターが荷物を運び入れていました。
 その中は、僕達がお泊まりしている部屋より、ちょっと小さいです。ママが僕をベッドに下ろして、また動かないでって注意します。お兄ちゃんとわんわん達もベッドに乗っかって、ママは荷物の方へ。
 ママ達を見ていたら、わんわん達が何かを見つけました。

『ジョーディ、もう一個ドアがあるよ』
『あとで見てみようよ。今はベッドから下りちゃダメだもんね』
「あい!」

 街で遊べないって言われてブーブー言ってたけど、それどころじゃなくなっちゃったし、お部屋の中を探検するのもいいかも。そんなお話をしていたら、

「ジョーディ様、朝のご飯を食べる前に診察してしまいましょうね」

 ラオク先生が、ベッドに乗ってる僕の方に近づいてきました。そうだ、色々あって忘れてたけど、僕は先生から逃げようとしてたんだった。だって知らない人だったから。忘れてたよ。
 ラオク先生は、ママとのお話からすると、たぶんお医者さんだよね。僕、この世界に来てもお医者さんと離れられないのかな? もう検査とかヤダ。だって今までいっぱいしたんだよ。
 あっ、でも、先生が僕のことをて、元気だって言ってくれたら、部屋の中で騒いで遊んでも大丈夫かも。そう思った僕は、先生が近づいて来ても、逃げないでじっとしてました。

「あれ、今度は逃げないんだね。じゃあ、そのまま静かにしていてね。診察はすぐに終わるよ」

 ラオク先生がそっと僕の頭に手を載せます。すぐに手を載っけたところが温かくなってきて、それが体全体に広がります。ポカポカ、ポカポカ。最初は大丈夫だったんだけど、どんどん熱くなってきて、今は熱いくらいです。
 僕が熱いのから逃げようとしたら、ママが僕のことを押さえました。手をバタバタ、足をバタバタさせて逃げようとしたけど、ママのガードが固くて身動きできません……涙が出ちゃいます。

「ジョーディ、もう少しだからね」

 もうダメってなった時、ラオク先生が頭から手を放しました。そしたら熱いのがどんどんなくなっていきます。

「うえ、うえぇ」
「もう終わりですよ」
「先生、どうでしょうか」
「何処も悪いところはありません。もう大丈夫だと思います。ですが油断は禁物きんもつです。今大丈夫でも、この騒ぎですからね。またぶり返す可能性もあります。やはり今日、明日は安静に」

 え~、あんなに熱いの我慢したのに? それに、今は大丈夫なんでしょう? だったら遊んでもいいんじゃない?
 ラオク先生が、持っていたカバンの中から、瓶を取り出しました。あっ、あれは何となく覚えてる。確かとっても苦い物が入ってたよね。

「食後の後にこの薬を」

 僕がじぃーって瓶をにらんでたら、先生が笑いました。

「ははは、そんなに睨まなくても、この薬は美味しい薬ですよ。昨日の苦い薬を何となく覚えていましたか?」

 先生ったら笑ってるけど、大切なことだよ。苦い薬なんて飲みたくないもん。僕がまた瓶を睨んでいたら、ベルがご飯の準備ができましたって声を上げました。
 テーブルを見たら、いつの間にか朝のご飯の準備ができていました。
 僕はママに抱っこされて椅子に座ります。このお部屋にも僕専用の椅子がありました。赤ちゃんが使う、テーブルと椅子がくっ付いてるやつのことね。ママが僕の胸にハンカチを付けてくれて、ベルがテーブルに、お野菜のスープと果物の盛り合わせを置きます。
 みんなでいただきますをして、ご飯を食べている時でした。部屋の端っこの方で、レスターとベルがまだ荷物の片付けをしてたんだけど、ベルがカバンをガサゴソ探ります。そして中から出した物は……大きな枕でした。あの枕、僕がお家で使ってるやつ! どうやってカバンの中に入ってたの? だってカバンよりも枕の方が大きいんだよ?
 僕がビックリしてじぃ~って見てたら、ママが早くご飯食べなさいって注意しました。でも、ご飯を食べながらもカバンから目が離せません。だって枕の他にも、たくさん物が出てくるんだよ。あのカバン、絶対おかしいよ。
 よそ見して食べていたらスープをこぼしちゃって、ハンカチもテーブルの上もべちゃべちゃに。

「ジョーディ、ちゃんと前を見て食べて。何をそんなに真剣に見ているのよ」

 ママがベルの方を見て、ああって頷きます。それでベルに、僕がご飯終わるまで待ってって言いました。ベルが僕を見て、やっぱりああってなると、カバンを壁の方に片付けちゃったの。早くご飯を食べて、あのカバンを見せてもらわなきゃ。
 でも結局いつもみたいに、僕が一番最後までご飯食べてたよ……ちょうど食べ終わった時、窓を誰かが叩きました。あっ! ローリーだ‼
 ママにお顔をいてもらって、お兄ちゃんとわんわん達と一緒に、すぐに窓に走ります。ばぁばが窓を開けました。

「どんな様子?」
『思っていた、いや、感じていたよりもなぜか魔獣の数が多い。ラディスがルリエットに一度魔法を使って欲しいと呼んでいる』
「そんなに多いの? ルリエット、ここは私が見ていますから、あなたはあの人達の所へ」
「お義母様、よろしくお願いします」

 ママが僕達にキスしてお部屋から出て行きました。パパもママも大丈夫かな? 僕がずっと外を見ていたらお兄ちゃんが言います。

「これもいつもと同じ。だからママもパパもすぐに帰ってくるよ」

 お兄ちゃん、ニコニコ笑ってます。お兄ちゃんが僕の手を引っ張って、ベッドの方に連れて行きます。そして、ここで遊んでようって言いました。
 それでね、最初はベッドの上で、お兄ちゃんとわんわん達と大人しく遊んでたんだけど、やっぱり飽きちゃって。お兄ちゃんは本を読み始めて、僕とわんわん達はベッドの上をグルグル歩いてます。もちろん僕はハイハイね、その方が速いから。

「ちゃよねぇ」
『ねぇ~』
『飽きちゃったねぇ~』

 僕はベルを呼んで、下に降ろしてもらおうとしました。その時、またあの大きな音が鳴りました。お兄ちゃんが素早くベッドから飛び降りて、窓の方に走って行って、背伸びしてお外を見ます。

「なかなか、今回は大変そうですね」
旦那だんな様方がいますから、もう少しで終わるはずですよ」

 ラオク先生とベルも窓の外を見ています。

「べゆ~、ちて!」
「ダメですよジョーディ様、静かにベッドの上です」
「べちょ、ち~」
「そうですよ。しぃ~ですよ」

 でも静かにしてるの、飽きちゃったんだもん。僕はほっぺを膨らませて、ベッドの上を高速ハイハイして抗議します。わんわん達も伏せをしたまま上手にハイハイみたいに動いて、一緒に怒ってくれました。
 それを見たラオク先生が、少しだったら動いても良いってベルに言ってくれたの。ラオク先生の診察はあんまり好きじゃないけど、少し好きになってあげてもいいかな?

「これ以上我慢させたら、ベッドの上で余計に動きそうですからね。気分転換させましょう」

 ベルがそっと、僕のことを下に降ろしてくれます。その時また大きな音がして、今度は少しお家がミシッて鳴りました。
 ベルとラオク先生がお兄ちゃんの方に歩いて行って、お外を見ました。僕はその間に、さっきの不思議なカバンの方に歩いて行きます。僕の体よりもちょっと大きくて、茶色いカバンです。わんわん達も僕について来て、一緒にカバンを見ました。

『変なカバンだったね』 
『カバンは小さいのに、大きな物がたくさん出てきたよね』

 わんわん達も同じことを思っていたみたい。あとで見てみようって二匹でお話ししてたんだって。
 カバンにはボタンが四個も付いていて、開けるのはとっても大変でした。でもこの前森にいた時、何回も服のボタンを外したりめたりしてたから、ちょっとだけ上手にできるようになったんだよ。
 全部のボタンを開けて、カバンのふたをめくります。それでみんなで中を覗きました。あれ? 何にも入ってない。中は空っぽでした。

『何も入ってないね、全部出しちゃったのかな?』
『大きい物、たくさん入ってたもんね』
「とよぉ~」
『うん、もっと中見てみよう』

 僕達は上から覗くのをやめて、今度はカバンの中に顔を突っ込みます。そしたら急にカバンの中が少し明るくなって、中にたくさんの道具とか毛布とか、色々な物が見えたの。それにとっても中が広いんだよ。
 僕もわんわん達もビックリ、もっと顔を中に入れちゃいます。僕の体もわんわん達の体も、半分くらいカバンに入っちゃいました。このカバン、どうなってるのかな? だって僕達がこれだけ中に入っても口はゆるゆるだし、それだけじゃなくて、中が今いるお部屋よりも広いんだよ。うんとね、お家にある僕のお部屋くらい。
 じぃ~って見てたら、もっとビックリな物が見えました。
 カバンの中の端っこの方を、お魚さんが泳いでいたんだ。カバンの中で泳いでるんだよ。青色でとっても綺麗きれいなお魚さんです。お魚さんにられて、にゃんにゃんがそっちに行こうとしました。その時、誰かが僕達を引っ張りました。

「皆様、何をなさっているのですか⁉」

 ベルがわんわん達を抱っこして、お兄ちゃんが僕の洋服を引っ張っていました。ラオク先生は焦った顔をして、それからため息をつきました。僕は興奮しながらみんなにカバンの話をして、にゃんにゃんはお魚さんが欲しいってベルに訴えて、もう一度カバンの方に行こうとしました。

「ダメですよ。このカバンはとても大切な物なのです。それに中に入って大丈夫だと証明されているわけではないのです。まぁ昔やったバカはいますが、その時はどうだったか……。まぁ、それは良いのですが、危ないことをしてはいけません!」
「本当に、子供って何するか分からないね」
「ジョーディ、それやると、パパもママも怒るよ」

 面白そうだったのに……それに、にゃんにゃんが、お魚お魚って止まりません。ベルが仕方ありませんねって、カバンをガサゴソ探って、お魚さんを取ってくれました。それからカバンは、僕の手が届かない高い場所に置かれることに。残念。
 でも今度は別の気になることができました。それは、ベルが出してくれたお魚さん。お水がないのにお部屋の中を、すい~すい~って泳いでいます。そういえばカバンの中にもお水はなかったよね。
 ベルが言うには、このお魚さんは、空を泳ぐことができるんだって。もちろんお水の中でも泳げるけど、空を泳いでる方が多いんだって。
 お魚さんを見て喜んでいると、にゃんにゃんがお魚さんを食べたいって騒ぎ始めました。ベルがとっても苦いからやめなさいって注意しても、どうしても食べたいってゆずらないにゃんにゃん。
 ベルがため息をついて、一匹のお魚さんを捕まえて、しっぽの所をちょっとだけ切ります。このお魚さんは怪我けがとかしても、少しすると治っちゃうから大丈夫なんだって。
 切ったしっぽをにゃんにゃんに渡すベル。にゃんにゃんがすぐにかぶりつきます。そして勢い良く吐き出しました。かなり苦かったみたい。ぺっぺってして、もう絶対に食べないって言いました。




     *********


「ぐあっ‼」
「ルドルフ様……、なぜ……」

 私――レイジンは、自分の偽名を呼ぶ冒険者の足を斬りつける。

「ぎゃあぁぁぁっ‼」

 冒険者は叫び声を上げ、その場に崩れ落ちた。綺麗に片足が切断されている。素晴らしい剣だ。ここへ来る前にベルトベル様に頂いたのだ。今まで使っていた剣とまるで違い、斬った感触かんしょくがまったくない。それなのに冒険者の足は完全に切断されていた。
 冒険者は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、私に話しかけてきた。

「なぜ? なぜですかルドルフ様」
「なぜ? お前達は最初から消される運命だった。ただそれだけだ」

 私は静かに冒険者に近づく。その時、デイライトが私のいる牢に顔を出した。そして私達を見てまだ終わっていないのかと眉をひそめる。分かっている、今殺すところだ。私は剣を構え直し、そして……。

「私の名前はルドルフではない」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ‼」

 冒険者の頭を斬り落とした。ふむ。やはりすっと斬ることができた。刃を確認するが刃こぼれも起こしていない。数回斬っただけだが、悪い剣なら、頭を斬り落とせば一回で刃こぼれしてしまう。
 ギルドを出る前に再度、全員死んでいるかを確認し、皆で冒険者ギルドから出た。ベルトベル様に奴らの気をらしてもらったおかげで、取り調べが本格的に始まる前に、全員を殺すことができた。
 少し離れた場所まで移動すると、向こうからマカリスター家の親子と、その契約魔獣が走って来るのが見えた。奴らの部下と、冒険者ギルドのマスター、カーストの姿も見える。
 奴らは私達の横を過ぎ、冒険者ギルドへと走って行った。おそらく異変に気付いたのだろう。もう遅いがな。奴らを見送り、再び私達はアジトに向かって歩き始める。
 私達がアジトに戻ると、既にベルトベル様は戻られていた。が、ベルトベル様が複雑な表情をしていることに気付く。何かあったのだろうか?


     *********


 私――ラディスの所へルリエットが来てくれて、少し劣勢れっせいに立たされていた我々は持ち直すことができた。ルリエットは相変わらず、物凄い勢いで魔法をり出し、ウォーキングウッド達を焼き払った。威力がありすぎて時々爆発まで起こしていたが、それについては触れないでおこう。
 そしてベヒモス達の方も、ローリー達が上手く対応してくれた。ダークウルフとホワイトキャットには感謝しなければ。魔獣は私達が考えていたよりも数が多く、彼らがいなければ、今頃街への侵入を許し、かなりの被害が出ていただろう。
 しかし、ルリエットが来て少しして、私達の所へローリーが慌てて戻って来ると、冒険者ギルドの方で嫌な気配が複数すると伝えてきた。皆、顔を見合わせる。

「あなた、ここは私に任せて! あなたはギルドの方に。お義父さんも、カーストもよ!」

 ルリエットにこの場を任せ、私達は急いで冒険者ギルドに向かった。向かっている最中もローリー達に様子を探ってもらったが、途中で嫌な気配は消えてしまったらしい。そしてギルドに着いた私達を待っていたのは、最悪な光景だった。カーストがそれを睨む。

「やられたな。何処までが計算されたことだったのか」
「魔獣の襲撃は偶然か、それとも意図的に引き起こされたものか」

 牢に入れてあった者達がすべて殺されていた。もちろんジョーディが攫われる原因を作ったあの冒険者達も、キラービーの襲撃を引き起こした冒険者達も。そして……。

「……家族に連絡を。俺が話をする」
「……はい」

 カーストがギルド職員に指示を出す。カーストの前には、ここの見張りを命じたギルド職員の遺体が二人分。彼らの家族には悲しい知らせを伝えなければならない。
 カーストはしゃがみこんで、遺体を見つめる。

「こいつらは職員の中でも、そこそこの腕前だったんだ。元冒険者だったしな。それなのに抵抗ていこうした痕跡こんせきもなく殺されている」
「コレをやったのは、それなりの腕を持った奴らか……」
「何処から何処までが繋がっているのか、すぐに調べなければのう。孫達には街でたくさん遊んで欲しかったが、これでは安心して外に出せん。カースト、ここは任せるぞ。ラディス、お前はワシと共に魔獣達の所へ。すべての魔獣をさっさと倒し、こちらに力を入れなければ」

 カーストはギルドに残り、私と父さんはすぐにルリエット達の所へと戻った。


     *********


 空を飛ぶお魚さんと遊んでたら、いつの間にか大きな音が全然聞こえなくなっていました。

「しぃ~ね」
『本当だ、静かになってる』

 にゃんにゃんがお魚さんの方にジャンプした後、窓の方に駆け寄って、僕もわんわんもそれに続きます。お兄ちゃんはつま先で立てばお外が見えるけど、僕はジャンプしないと見えません。にゃんにゃんはお兄ちゃんの頭の上に乗っかって、わんわんは僕の肩にしがみ付いて、僕はジャンプしてお外を見ようとします。

「ジョーディ様、ジャンプはダメです」

 ベルが僕のことを抱っこしてくれました。騎士さん達がお庭の中をあっちに行ったり、そっちに行ったり。とっても忙しく動いてました。

「全然音がしなくなったから、ママもパパももうすぐ帰って来るよ。いつもそう」

 お外を見ているうちに、忙しくしていた騎士さん達がいなくなって、部屋の扉をトントンと、誰かがノックしました。ベルが返事をします。

「はい」
「クプレです。魔獣討伐とうばつが終了いたしました。それからこちらにラオク先生がおられると聞きました。診療所しんりょうじょに、怪我をした騎士と冒険者が集まって来たので、すぐにお戻りをと助手の方が」
「ちっ、やっぱりか。あれ程いつも怪我するなと言っているのに。また徹夜てつやか」

 今、ラオク先生舌打ちした? それにとっても嫌そうな顔してる。先生はお医者さんでしょう? すぐにお怪我した人達の所に行かなくちゃ。
 でも先生は、何でムサい男達の治療をしなればならないとか、その辺のポーションでも飲んでおけば治るだろとか、ずっとブツブツ言ってるの。みんなでそんな先生を見つめます。

「こほんっ、ラオク先生?」

 ベルがラオク先生を呼びます。ベルを見たラオク先生は急に慌てた顔になって、ドアの方に向かってお返事をしました。

「今すぐ行く」
「外に馬車を用意してあります。お急ぎください」

 ラオク先生がカバンの中を見て、忘れ物がないか確認します。それからドアの方に歩いて行くと、

「明日まで安静ですからね。旦那様にもう一度お伝えください」

 そう言って、僕とお兄ちゃんにさようならをして、お部屋から出て行きました。

「まったく、お子様方にあんな話を聞かせるなど」

 ベルは僕をベッドの上に降ろすと、部屋のお片付けを始めました。空を飛ぶお魚さんも、あの不思議なカバンにしまっちゃいます。お兄ちゃんもベッドの上のお片付けを始めて、僕とわんわん達に動かないでねって言いました。その後、僕達はちゃんと静かにしてたよ。
 ラオク先生が帰って少しして、ドアがバタンッ!と大きな音を立てて開きました。お部屋の中にママが入って来て、僕とお兄ちゃんを抱きしめます。

「みんな怪我はないわね? あら、ラオク先生は?」

 ママが早口に聞いてくるので、ベルが今までのことを説明します。それでママがやっと落ち着くと、お兄ちゃんがパパはどうしているのか聞きました。

「ちょっと魔獣が多くてね。じぃじと一緒に、騎士さん達の所に残っているの。きっと夜までには帰ってくるわ」

 パパもじぃじもまだ帰って来ないんだって。僕、ちょっとだけしょんぼりです。

「ジョーディ、ママ帰って来たでしょう? ママ、しょんぼりされたら悲しいわ」

 ママが帰って来てくれたのはもちろん嬉しいけど、でもパパも一緒だともっと嬉しかったの。

「そうだわ! 大人しくいい子で待っててくれたジョーディ達には、ママ特製のおやつをあげるわ! いつもよりも大きなゼリーよ」

 ゼリー‼ ママの作ってくれるゼリーはとっても美味しいんだよ。しょんぼりしていた気持ちがすぐに吹き飛びました。

「あの人よりゼリーの方が強いのよね」

 ママが何かボソッと言ったけど、よく聞こえませんでした。
 お片付けがほとんど終わって、僕達はお泊まりのお部屋に戻ります。あっ、それからね、今ばぁばはいません。ママが魔獣をやっつけに行ってすぐ、騎士さんがばぁばにも手伝って欲しいって呼びに来て、ばぁばも外に行っちゃったんだ。

「きっと、ばぁばはもうすぐ帰って来るわ。ベル、これからのことなのだけど……」

 ママがベルと話しながらキッチンへ向かいます。僕はみんなとゼリー楽しみだねってお話ししながら、おやつの時間を待ちます。早くパパもじぃじもばぁばも帰って来るといいなぁ。どんな魔獣が襲ってきたのかも聞いてみたいし。あとは……やっぱり僕、大人しくしてないとダメ?


 次の日。お昼ご飯を食べ終わった後、今日も静かにしてないとダメって言われて、ベッドの上でみんなでゴロゴロしてたら、パパがお部屋に入って来ました。

「ぱ~ぱ‼」
「パパ‼」
『お父さん!』
『お帰りなさい‼』

 わんパパ達、そしてもちろんローリーも一緒です。僕はママにベッドから下ろしてもらって、高速ハイハイでパパの所に向かいます。そしてパパの足に抱きついて、

「ば~ば~っ‼」

 思わず泣いちゃいました。パパがやっと帰って来たんだもん。
 ママは昨日、パパ達は夜に帰って来るって言ってたでしょう? でも夜になっても帰って来なくて、寝る時寂しくて泣いちゃったんだ。
 ママが、せっかく具合が良くなったのにって、何とか僕のこと抱っこしたり、おもちゃで遊ぼうとしたり。でもなかなか泣くのをやめられませんでした。
 それでいつも通り泣きすぎて、おえってなっちゃって……そのまま朝まで寝たり起きたり。そして朝、ラオク先生の登場です。あのとっても熱くなる診察を受けました。そのせいでまた泣いちゃったよ。

「大丈夫ですよ。ただ泣きすぎただけです。何処も悪くありません」

 僕は診察が終わると泣きながら、サササッて先生から離れます。


しおりを挟む
感想 598

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。