文字の大きさ
大
中
小
17 / 213
2巻
2-1
プロローグ
僕はジョーディ。元々、如月啓太って名前で日本に住んでたんだけど、神様のせいで病気になって、小学三年生で死んじゃったの。そしたら別の女神のセレナ様に、異世界に転生させてもらえることになったんだ。
家族みんなが仲良しなことと、僕の体が元気なこと。その二つを約束してもらって、マカリスター侯爵家に転生しました!
新しいパパはラディス、ママはルリエット、お兄ちゃんはマイケル。そして忘れちゃいけないのが、ブラックパンサーのローリー。みんなとっても優しくて、大好きな家族です。
そして僕はあっという間に一歳になりました。
そんな僕の誕生日を祝うために、パパのお父さんとお母さん――じぃじとばぁばの家に遊びに行くことになったんだけど……旅行の途中で、魔獣の群れに襲われちゃいました! 僕も魔獣に攫われちゃって、ちょっと怖い思いをしたんだ。
でもローリーが助けてくれて、あと、魔獣のうち四匹と一緒に行動することに。ついて来たのはダークウルフの親子とホワイトキャットの親子。子供の二匹――僕はわんわんとにゃんにゃんって呼んでいます――が悪い病気になっちゃって、僕の家に来ると良くなるかもしれないんだって。
そんなこんなで、僕達はわんわんやにゃんにゃんを連れて、じぃじの家に再出発!
その後も、途中で合流したじぃじのお顔が怖くて泣いちゃったり、変な赤い塊を見ちゃってビックリしたり、怪しい男の人を捕まえたり……とにかく大変だったよ。
じぃじの家に着いたら、ばぁばが迎えてくれて、僕達は楽しいパーティーをしました。こんな日が明日も明後日も続くといいなぁ!
1章 苦いジュースと甘いジュースと魔獣襲撃
「ひっく、うう、うえぇ」
「ダメね、止まらないわ。やっぱり薬を飲ませないと」
「まさかちょうど薬が切れてるとは」
今は夜中。僕はもう三回も吐いてます。それに熱もあるの。
あのね、じぃじの家に着いてから、とっても楽しくて興奮しちゃって、たくさんご飯を食べて動いて……そしたら、寝るちょっと前に熱が出ちゃいました。
僕はパパがすぐに魔法で治してくれると思っていました。でもパパのヒールだとお熱は下げられないんだって。だからすぐにお薬を飲もうとしたら、お熱を下げるお薬がちょうど、じぃじの家になくて。仕方ないから、朝になったら急いでお薬を買いに行くって、パパが言いました。
でもその後どんどんお熱が上がって、気持ち悪くなった僕は吐いちゃったの。パパ達はとっても慌てて、今ばぁばがお医者さんの所に、お薬を取りに行ってくれています。
「うえっ!」
また吐いちゃった。気持ち悪いし、それにぼうっとする。
「ジョーディ? あなた、冷たい水に変えて」
「分かった」
パパがお水の入った器を魔法で冷やします。ママが僕のおでこに、冷たいお水で濡らしたタオルを付けてくれました。
「ただの興奮による熱だと良いんだが」
「ぱ~ぱ、ヒック、ま~ま」
「大丈夫よ。ママもパパもここにいるでしょう? もうすぐ、ばぁばが薬を持って来てくれるからね」
とっても楽しいご飯だったのに、吐きすぎて疲れちゃいました。
「ジョーディ? いやだわ、熱が上がっちゃったみたい⁉」
「ちょっと様子を見てくる」
パパ何処行くの? 行かないで、行っちゃヤダ。
「ぱ~ぱ、うえぇ」
「あなた、ダメよ。今これ以上泣いたら、また熱が上がってしまうわ。きっともうすぐよ」
泣いてるからよく見えないけど、一生懸命手を伸ばして、何とかパパの手を握ります。
すると、バタンッ‼と何かの音が聞こえました。
「先生が来てくださったわ!」
今のは、ばぁばのお声?
「先生! 熱が上がってしまって!」
「ジョーディ様を私に」
誰かが僕のことを抱っこします。ママでもパパでもありません。僕、二人の抱っこを間違えないもん。誰? ママとパパの所に帰して!
「これは……良いですか、私がこれから言う物を用意してください!」
僕の周りがバタバタとっても煩くなりました。少しして、誰かが「先生、持って来ました」って。
「カバンの中から青色の瓶を出して、その中に持って来た薬草をすり潰して入れてください!」
うう~、煩い。頭痛いし気持ち悪いし、誰か知らない人が僕のことを抱っこしてるし。パパ、ママ、何処? 何処にいるの?
さっき誰かに抱っこされた時に離しちゃった手を少し動かして、パパ達を探します。ふと、誰かが僕の手を握ってくれました。これ、ママの手だ! 絶対そうだよ。そう思っていたら、反対の手も誰かが握ってくれて……こっちはパパだ!
「大丈夫よ。ママもパパもジョーディの側にいるわ」
「先生、できました‼」
「私に! ジョーディ様、これで具合が良くなりますからね」
いきなり口の中に何かが入って来ました。それがとっても苦くて、僕は吐き出しちゃいます。
「ジョーディ、飲んで」
また口の中に苦い物が。うえ、今度は飲んじゃった。嫌がっても、苦い物がどんどんお口に入ってきます。その度に飲んだり吐き出したり……うええ、たくさん飲んじゃった。
僕を抱っこしている誰かが、ほっとした声で言います。
「ふう、吐き出すのを考えて多めに作りましたからね、これで良いでしょう。即効薬ですから、すぐに熱が下がってくるはずです。それを確認したら次の治療に移ります」
あれ? なんか体のポカポカがなくなってきた? 頭が痛いのと気持ち悪いのはそのままだけど。
僕はそっと目を開けました。ぼやっとしていたけど、だんだんとはっきりしてきて、最初に見えたのはパパとママのお顔でした。僕が二人のことを呼んだら、二人共心配そうな顔をしながら、ニコッて笑います。
「ちゃんと薬が効いたみたいですね。では次にこの薬を。この薬は甘くて美味しいですから、ジョーディ様も喜んでくれるでしょう」
誰かが僕にまた何かを飲ませようとしました。僕は口をぎゅって固く閉じます。だって、さっき、苦い変な物を飲んだもん。覚えてるよ、今もお口の中は苦いままだし。
「ジョーディ、甘いジュースよ。さぁ飲んで」
本当かな? 僕はゆっくり鼻を近づけて、クンクン瓶の匂いを嗅ぎます。ちょっとハチミツの匂いがしました。匂いは大丈夫そうだけど……今度はぺろって、少しだけ舐めてみます。
やっぱりハチミツだ! ジュースじゃなくてハチミツだよ、これ! ねばねばしていない、サラサラのハチミツだ。
瓶の中身が分かった僕は、安心してコクコク飲みました。飲み終わったら、お口に残っていた苦いのがさっぱり消えています。それに、全部じゃないけど、頭の痛いのも、気持ち悪いのも治った気がします。
ん? あれ、そういえば?
僕は頭を上げて周りをキョロキョロ。パパとママは僕の左に座っていて、それから……。僕は上を見ました。
そこにはパパと同じ歳ぐらい?で、とってもカッコいい男の人がいて、僕を見て優しい顔で笑っていました。なんと、その人が僕のことを抱っこしています。
「ふえぇ⁉」
「おっと、ルリエット様、ジョーディ様をお返しします。今泣かれたら、せっかく落ち着いたのに、また元に戻ってしまいますから」
ママが僕のことを、ぎゅっと抱っこしてくれます。それからベッドに行って寝かせてくれました。僕はママと離れないように、ママの手を握ったままです。
「先生、それでジョーディは?」
「かなり体がお疲れになっているようです。これほどの疲れ、ジョーディ様のような小さなお子様には、かなり危険なレベルのもの。そのままの状態だったら、命が危なかったかもしれません。一体何がこんなにジョーディ様を……」
パパが男の人と話している間、僕はあっちを見たりこっちを見たり、男の人を観察したり。あの男の人、僕のことを治してくれたの? もしかしてお医者さん?
パパがこれまでのことを簡単に説明すると、男の人が頷きました。
「そんなことが。元気に見えていても、かなりストレスと疲れが溜まっていたのでしょう」
話を終えた男の人が僕に近づいて、おでこに手をくっ付けてきました。
「熱は完全に下がりましたね。症状も落ち着いているようです。ですが明日、明後日はこのまま安静に。このくらいの歳の子は、元気になるとすぐに動き始めますから。今落ち着いているだけで、無理をすればまた同じことの繰り返しになります」
男の人が立ち上がって、ママがご挨拶した後、ドアの方に歩いて行きます。そして、パパと一緒に部屋から出て行きました。少ししたら、パパが戻って来たよ。
ママとパパがニコニコ、僕の頭を撫で撫でしてくれます。パパ、ママ、僕もう平気だよ。とっても元気!
*********
医師のラオクは、次男のジョーディを診察した後、マカリスター家をあとにした。歩きながら、一つ気になっていることがあった。
体の中心にあった、あの光は一体? あの光のおかげでジョーディ様は一命を取り留めた。あの光がなければ今頃……。
明日も一応診察に行こう。そしてあの光をもう一度確認してみよう。
彼はそう心に決め、家路を急ぐのだった。
*********
「ジョーディはどうした‼」
私――ラディスがほっとしていると、父さんが姿を現した。
「父さん、今眠ったところだから静かに。ラオク先生のおかげで何とか落ち着いたよ」
「そうか。良かった良かった。知らせを聞いた時は肝を冷やしたぞい」
父さんが声を落としジョーディに近づくと、小さな頭を撫でる。
そこへ母さんが、ジョーディに洋服を掴まれて動けないルリエットに、お茶を持って来てくれた。母さん特製の、体が温まる薬草入りお茶だ。
「お義母様、ありがとうございます」
「いいのよ。それで? あなたはどうしてここにいるのかしら?」
母さんが尋ねると、父さんは鼻息を荒くする。
「孫の一大事じゃ。駆け付けるに決まっておるじゃろ。それにちょうど仕事は終わったところじゃ」
「なら私達は談話室で一息つきましょう。あなたがいたら煩くて、せっかく寝たのに起きてしまうわ」
母さんに言われてルリエットを残し、私と父さんは部屋を出て談話室に向かう。部屋に入ると、すぐに使用人のトレバーが飲み物を運んできた。そのお茶を飲み、一息つく。
はぁ、それにしても慌てた。あんなに苦しむジョーディを見たのは初めてだったからな。いや、マイケルでも、あそこまでのことはなかったな。
自分の子供があんなに苦しんでいるのに、親として何もできないとは……自分の不甲斐なさが頭にくる。ラオク先生のおかげで落ち着くことができて、本当に良かった。
父さんに今回の病状の説明をすれば、明日の尋問では覚えていろと唸る。そう、明日から早速、あの事件を起こした冒険者達の尋問が、ギルドの牢で行われるのだ。
ダークウルフとホワイトキャットの子供を誘拐しようとした、あの冒険者達。あいつらがあんな危険なことをしなければ、そもそもジョーディが怖い目に遭うこともなかった。
父さんには夕食前に、この街の冒険者ギルドのマスター、カーストの所に行ってもらっていた。そして夕食を挟んだ後、先程まで明日の段取りを考えてくれていたのだ。
今回取り調べたい連中は、既にギルドに放り込んでおいてある。魔獣を攫おうとした冒険者達、途中の街で、キラービーの襲撃を引き起こした冒険者達。そして、二つの事件を手引きしたと自供した男……今頃ギルドの地下は大騒ぎだろう。
「そういえば、カーストは今何を?」
「先に届けておいた報告書に書き切れんかったことを伝えたら、すぐに尋問を始めると、地下に下りて行きおった。凄い笑顔だったぞ」
明日からの尋問は、父さんと私と、ダークウルフの父親――通称わんパパ達、それからアドニスが率いる騎士団の者達で、交代しながら行うことになっている。
そのため、父さんはお茶を飲み終えると、明日からの尋問に備え、もう寝ると部屋を出て行った。
そんな父さんを見て、母さんが私にも早く寝ろと促す。大人しく部屋に戻りジョーディの様子を窺うと、笑みを浮かべながら眠っていた。顔色ももういつも通りだ。
ルリエットも安心したんだろう。ベッドに腰掛けたままの格好で、ジョーディの隣で眠っていた。
本当に良かった。良かったが、一つ問題がある。ジョーディがこのまま二日間、大人しくしていられるだろうか?
*********
「レイジン、どうだ様子は?」
「もう尋問が始まっています」
「全員か?」
「私が仕掛けた方の冒険者からです。明日にはサイラス・マカリスター達が自ら尋問を行うかと」
私――レイジンとデイライトの前には今、ベルトベル様がいる。私達がいる場所は、表向きには武器屋だが、私達の密会のための家でもある。普段は別の街にある本部にいるベルトベル様だが、これからの計画のために、自らここへお越しになられた。
「あの剛腕の騎士が自らか……。本当に厄介なことになった」
「いかがされますか。すぐにでも、奴ら冒険者達の元へ参りましょうか」
「向こうにはカーストがいる。奴がいると、あそこへ忍び込んだ途端に気付かれ、見張りを増やされてしまうだろう。が、サイラス達が尋問を始めれば、すぐに私達の情報が漏れてしまう可能性もある」
奴ら冒険者は、私達に繋がる確実な証拠とまでは言えない。奴らに会っていた時は変装していたし、手紙などによる連絡もしていない。絶対に我々の情報が漏れないようにしていたが……。
しかし、それでも何かの拍子に、私達のことがバレてしまう可能性もないわけではない。しかも今回尋問するのは、そこら辺のギルド職員ではない。あのサイラス達なのだ。ちょっとの矛盾を突いて、私達の存在に気付いたらと思うと、ベルトベル様の懸念も理解できる。
ベルトベル様は、少し考え込んだのちに口を開いた。
「とにかく、尋問を開始される前に動かなければなるまい。良いか、カーストは私が何とかギルドから引き離す。その間にお前達は……分かっているな」
「完璧に死体が残らないまで殺るか?」
デイライトの目が鋭く光った。
「ああ。だが無理ならば、殺すだけで早くそこから離れろ。この問題が片付いたら次の作戦に移るぞ。予定よりかなり遅れている。オルゾイド様がお待ちだ」
「分かった」
そして話し合いの数時間後。
「ベルトベル様、準備が整いました」
「よし。少し遅れてしまったが、間に合うだろう。良いか。作戦を開始する。合図を送れ」
「はっ‼」
「奴らもこれは放っておけないだろう」
ベルトベル様が部屋を出て、それぞれが自分の仕事に取りかかる。私とデイライト、そして仲間の何人かは、冒険者ギルドの近くで待機する。気配を探れば、かなりの人数で尋問をしていることが分かった。前回確認した時の倍ぐらいの人数が、ギルドの地下を行ったり来たりしている。
私は仲間達に指示を飛ばす。
「良いかお前達、いつでも行けるようにしておけ」
「「「はっ‼」」」
*********
ガタガタ、ゴソゴソ。
「……で、……だから」
う~ん、煩い。僕、寝てるんだから静かにして。
目を擦りながら頭を上げて、周りをキョロキョロ見渡します。僕の隣でお兄ちゃんがすぅすぅと寝息を立てていて、それから別の部屋で寝ていたはずのわんわん達が、ボールで遊んでいます。
部屋の真ん中辺りにいるのはローリーとわんパパ達でしょう。窓の方ではパパ達がお話ししていました。パパはお外に行く時のお洋服を着ています。
「ぱ~ぱ」
「ん? ジョーディ起きたのか、具合はどうだ?」
『ジョーディおはよう』
『もう大丈夫?』
具合? 何のこと?
わんわん達がボールで遊ぶのをやめて、僕の方に来て顔をすりすりしてきました。それからママも僕の方に歩いて来て、おでこに手をくっ付けました。それからニッコリ笑います。
「頭痛くない? 気持ち悪かったり、お腹痛かったりしない?」
「ちゃま、ちゃいちゃい、ぽんぽんちゃいちゃい?」
「そう、ちゃいちゃいよ。でもこの様子なら大丈夫そうね」
僕、元気だよ。全然何処も悪くないよ。どうしてそんなこと聞くのかな? まっ、いっか。
僕は今、パパの方が気になります。だってパパが今着てるのは、外に遊びに行く時の服なんだもん。あの服を着ていると、いつもママが、あんまりお酒飲まないで早く帰って来てって、パパに注意してるんだ。パパ、何処かに遊びに行くの?
「ぱ~ぱ、くのね~」
「ん?」
「あちょ! くのよ~」
『遊びに行くんでしょう』
『ジョーディも行くって』
僕の言いたいことを、わんわんとにゃんにゃんが通訳してくれます。
「ジョーディ、パパはこれからお仕事なんだぞ。遊びに行くんじゃないんだ」
え~、嘘だよ。遊びに行くお洋服だもん。パパだけじゃなくてじぃじも、同じような格好だし、二人で遊びに行くんでしょう? 僕も行きたい! 僕のお話をまたわんわん達が伝えてくれます。
「遊びに行く洋服?」
「あなた、いつも飲みに行く時の格好をしてるから、ジョーディは遊びに行くと思っているんじゃないかしら。あなたがそういう格好する時、いつもニコニコして出かけるもの」
パパがよく見てるなって感心しました。
だって、僕はあんまりお外に出られないでしょう。出るとしてもお庭だけだったし。
それなのにお外に遊びに行く時のパパは、すっごくニコニコ。街ってどんなに楽しいんだろうって、パパを見ながらいつも考えてたんだ。
「子供は親の行動をよく見てるのよ。これからはこういう時のために、少しは控えたら?」
パパが僕のことを抱っこして、これから大事なお仕事だってお話ししてくれます。本当に本当?
じゃあパパはいいや。ママ! ママはお仕事ないでしょう? 遊びに行こうよ! またわんわん達が伝えてくれます。
そしたらニコニコだったママが、困り顔になって、遊びに行けないって言ったの。何で? 何でダメなの。僕はブーブー、手をバタバタしながら文句を言います。
「昨日お医者様に言われたのよ。明日までは安静にって。分かる? お家でゆっくりよ」
昨日、お医者さん? そう言えばさっきのママ達、具合悪くない?って僕に聞いたよね。昨日はどうしたんだっけ。夜のご飯をわんわん達とわいわいしながら食べて、その後はゆっくりするお部屋に行って、みんなでゴロゴロして遊んで……。
一生懸命考えていたら、だんだんと昨日のことを思い出してきました。そうだ! とっても体が熱くなって、それから気持ち悪くなって吐いちゃったんだ。その後は……。
吐いちゃったところまでは思い出したけど、その後のことが分かりません。もしかして僕が覚えていないだけで、お医者さんに行ったのかな? それで、お医者さんが明日まで安静にしなさいって言った?
僕は頭を触って、お腹を触って、それから胸をすりすり。それから足をバタバタ、腕をバタバタ。
うん。いつも通り元気! 大丈夫だから遊びに行こうよ。
「ダメよ。お医者様の言うことはちゃんと聞かないと。また具合が悪くなるかもしれないでしょう?」
僕はそれを聞いてまたブーブーです。ブーブー言ってたら、パパがお仕事に行く時間になったみたい。パパとじぃじがママに声をかけて、部屋から出て行っちゃいました。
ママ、僕とのお話し合いの途中だよ! 僕がこんなにブーブー騒いで遊びに行く交渉をしてるのに、お兄ちゃんはいつもみたいに全然起きないし。もう朝だよ! 起きてお話し合いに参加してよ。
お話し合いをしていたら、ばぁばが部屋に入って来ました。その後ろからカッコいいおじさんも入って来ます。パパと同じくらいの歳の人です。ん? 僕、会ったことがあるような?
「おはようございます」
「ラオク先生、こんな朝早くからありがとうございます」
ママが深くお辞儀をします。
カッコいいおじさんのお名前はラオク先生だって。先生って、何の先生?
ラオク先生が僕の方を見て、あれ?ってお顔をします。
「もう起きていらっしゃったのですね」
そう言ってこっちに歩いて来ました。僕とわんわん達は、急いで寝ているお兄ちゃんの後ろに隠れます。そしたらやっとお兄ちゃんが起きました。そんな僕をママが抱っこします。
「それでは先生よろしく……」
ド~ンッ‼ バア~ンッ‼
ママがお話ししようとした時でした。突然外で大きな音が。ママが僕とわんわん達を、それからお兄ちゃんのことをまとめて抱きしめます。
僕は近くに置いてあったサウキーのぬいぐるみに手を伸ばします。うう、あとちょっとなのに届きません。そしたら急にサウキーが僕の所にやって来ました。僕がちょっとだけお顔を上げると、サウキーを渡してくれたのはラオク先生でした。
「可愛いぬいぐるみだね。そのまま動いちゃダメだよ」
音が鳴るたびに、少しだけお家がガタガタと揺れます。音が止まったのは少し経ってからでした。音がやんですぐに、パパがお部屋に入って来ました。
「ルリエット、母さん! 街の壁の外で、何か所かから煙が上がってる。見張りからの信号によるとウォーキングウッドとベヒモスとワイルドボアの襲撃だ! かなりの数らしい!」
「時期的にはちょっと早いわね。それでも来てしまったのだから仕方がないわ」
「私と父さんが向かうから、母さんと君は子供達を」
わんパパとローリーが目を合わせます。
『俺達も行こう』
『木はラディス達に任せる。オレ達はベヒモスとワイルドボアの方へ』
「助かる。先生もルリエット達と一緒に避難を」
パパが僕とお兄ちゃん、ママをギュッて抱きしめた後、剣を持ってお部屋から出て行きます。聞いたことのない名前だけど、たぶん魔獣だよね。この前のキラービーみたいに、街に来ちゃったのかな? パパに続いて、ローリーとわんパパ達が、お部屋から出て行きました。
ママが僕達にベッドから下りないように言って、カバンに色々入れ始めました。ばぁばがすぐに戻って来ると言って部屋から出て行くと、入れ替わりに使用人のレスターとベルが部屋に来て、ママと一緒に荷物の準備をします。
僕がベルの名前を呼んだら、ニコッて笑って、おもちゃはちゃんと持ちましたからねって。あと、この前買ってもらったおもちゃとかぬいぐるみは、じぃじが特別な所にしまってくれたから大丈夫ですよって言いました。
お兄ちゃんがママ達を見て、何かピンと来たようです。ベッドの横に置いてある台の引き出しから、みんなのシャボン液を入れるための瓶を出して、それぞれの首にかけてくれます。それからさっきまでわんわん達が遊んでたボールをベルに渡して、カバンにしまってもらいました。
感想 599
あなたにおすすめの小説
世界樹を救ったのは転生幼児のハズレスキル【草むしり】でした〜ぐうたらおっさん精霊を更生させながら、もふ神獣たちと聖域生活始めます〜
神様のミスで死んでしまった高橋快晴(25)は、お詫びとして憧れの剣と魔法の異世界へ転生。魔法の名家として知られる、ヴァルディス侯爵家の3男、アルフレッドとして第2の人生を歩み始める。
だが、3歳で行われた魔法判定の儀で、歴代最高の魔力を持ちながら、属性魔法を一切使えない無能だと判明。さらに授かった固有スキルは、どう考えてもハズレスキルの【草むしり】で……。
そのため、実力至上主義の侯爵家では、アルフレッドが人々の目に留まることを恐れ、事故に見せかけて処分することを決定。『呪われた魔の森』と呼ばれる、誰も近寄ることのない森へ捨てられてしまう。
この状況に、死を覚悟するアルフレッド。しかしここで彼の前に現れたのは、敵意のない妖精たちで。なぜか彼らに気に入られたアルフレッドは、導かれるままにある場所へ向かうことに。そして連れられた先にあったのは、今にも枯れてしまいそうな『世界樹』だった。
するとそこで、ハズレスキルだと思っていた【草むしり】が、思いもよらない形で、世界樹を救うことになり?
この出来事をきっかけにアルフレッドは、ぐうたらなおじ守護精霊や、もふもふの神獣たちに囲まれながら、世界樹の元で新たな生活を送ることになるのだった。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
親に放置された四歳の末娘ですが、前世の知識で家のお金の使い込みを見つけて追放されました〜もふもふ聖獣と、おいしいものを食べる旅に出ます〜
子爵家の末娘リリア、四歳。家族の誰にもかまわれず、屋敷のすみで育ちました。
でも私には、前の人生の記憶があります。数字を見ると、勝手に計算してしまうんです。
ある日、お父様の帳簿のお金の使い込みを、うっかりその場で言ってしまいました。
返ってきたのは「出来損ない」の一言と、追放でした。持たされたのは銅貨23枚だけ。
いいでしょう。それなら、この銅貨23枚を開業資金にします。
森で助けた銀色のもふもふな子犬のフェンと一緒に、つぶれかけのお店を立て直しながら、おいしいものを食べる旅に出ます。
つぶれかけのパン屋さんは村一番の人気店に。ガラクタだらけの雑貨屋さんは町一番のお店に。
私はただの経理顧問。なのに、まわりが勝手に大騒ぎしていきます。
え? 今さら「家がつぶれそうだからお金を何とかして」?
……ふふ。数字は、うそをつきませんよ。
※本作は、既存作品を全面的に改稿(リライト)した作品です。
もふもふ神獣の幼児が、私から離れてくれません。〜事務能力で完璧なお世話をしていたら、甘えん坊な溺愛っ子になってしまいました〜
事務官として「効率化の鬼」と呼ばれていた私、エリーゼ。
職を失った私が次に選んだ仕事は、呪いで獣の姿になったまま幼児退行してしまった公爵家跡取り・レオ様のお世話係だった。
「誰も懐かない」「凶暴で手に負えない」と噂されるレオ様。
――けれど、それはただの『管理不足』が原因では?
私は持ち前の事務能力と、魔獣の生活リズムに基づいた『完璧なスケジュール管理』で、彼のお世話をスタート。
適切な室温、栄養バランスの取れた食事、そして至高のブラッシング。
私が粛々と業務をこなすと、あんなに凶暴だったレオ様が、みるみるうちにトロトロの甘えん坊に変貌して……!?
「おねえちゃん、だっこぉ……」
気づけば、私の膝の上はふかふかの獣の公爵令息の定位置に。
完璧な管理を目指したはずが、今日も彼にべったり甘やかされる、癒やしと溺愛の(ちょっと困った)スローライフが幕を開ける。
捨てられた赤ちゃんを拾ったら、創世神様でした。世界を救うより、お父さんを幸せにしたいそうです
山で捨てられていた赤ちゃんを拾い、家族として育てることを決めた青年。
その日から、枯れた大地は実り、病は癒え、伝説のもふもふ神獣たちが次々と家へ集まってくる。
実はその赤ちゃんの正体は、この世界を創った創世神だった。
「いっぱい育ててくれてありがとう。今度は私がお父さんを幸せにする番だよ。」
これは、神様が初めて手に入れた”家族”との、優しくて温かな奇跡の物語。
王宮の雑用係を追放されたので、辺境の森で「もふっ子保育園」を開いたら、なぜか国中から溺愛が押し寄せてきました
「お前のような無能な雑用係は、今日から我が家の恥だ。出ていけ!」
理不尽な理由で実家を追い出され、王国から放り出された少女・コレット。
けれど彼女は絶望するどころか、「やった! これで朝早く起きなくていいし、のんびり暮らせる!」と心底清々した顔で辺境の森へと旅立つ。
寂れた村のはずれで古民家を借りたコレットは、そこで傷ついた「手のひらサイズの可愛いもふもふ(実は最強の神獣)」を拾う。
「うちの子になったからには、美味しいご飯をたくさん食べさせてあげるね!」
そう言って彼女が気ままに振る舞うお茶や料理、そして特製のスープは、なぜか世界の常識を覆す【神級のチート効果】を秘めていた。
コレット本人は「私なんてただの一般人ですよ?」と無自覚だが、
彼女の作るご飯と圧倒的な母性に惹かれ、村の子どもたちや魔獣の赤ちゃんたちが次々と集まってきて――気がつけば、自宅は賑やかな**「もふっ子保育園」**に!
さらに、噂を聞きつけて辺境までやってきた「冷徹と恐れられる最強騎士団長」や「訳ありの王族末っ子」までもが、子どもたちのお世話を手伝う名目で毎日通い詰めるようになり……?
「おい、今日も他の男を園に近づけるな」「俺以外の男の作った飯を食うな」と、外ではクールな男たちが神獣や子どもたちと低レベルな嫉妬のバトルを繰り広げ、裏では元実家の国が「あの雑用係がいないせいで王宮の子供たちが大号泣して手がつけられない!」と大パニックで自滅中!?
基本は1話完結で、美味しいご飯と可愛いもふっ子たちに癒やされる、安心のほのぼの日常をお届けします。
笑えて、キュンとして、お腹が空いて、最高に癒やされる、無自覚チートな辺境ほのぼの保育園ラブコメ、開幕!
