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3巻
3-3
『すぐ話せるようになる』
ん? 今誰かお話しした? 気のせいかな? たぶん気のせいだよね。よし! グッシーとたくさん遊ぼう‼
グッシーは僕が言った方向に、ちゃんと進んでくれます。あっちに進んだり、こっちに進んだり。僕達の横を歩いている、係のお兄さんがビックリしていました。
いつもは係のお兄さん達が呼んだ方にしか、グリフォンさん達は歩かないんだって。遊びに来てる人の言うことは聞かないみたい。そういえば、僕達の前に乗った人達はそうだったよね。
「今度はそっち‼」
向こうの方からお兄ちゃんの声が。お兄ちゃんが乗っているグリフォンさんも、お兄ちゃんの言う通りに進んでくれているみたい。
「かなり気に入られたのでしょうね。私がここで働き始めて、こんなに言うことを聞くのは初めてです」
そっかぁ、グッシー達は、僕達のことを気に入ってくれたんだね。僕もグッシーのこと大好きだよ。
そうだ! お兄ちゃん達と一緒に歩こう。僕はグッシーに、お兄ちゃん達の方に行ってってお願いします。グッシーはすぐに向かってくれました。ちゃんとお話しできないけど、グッシーは僕の言葉をちゃんと分かってくれます。
「にー!」
お兄ちゃん達の所に行ったら、お兄ちゃんが興奮しながら、パパにお話ししてきました。
「パパ‼ 僕、このグリフォンととっても仲良しだから、係のお兄さんと一緒なら空飛んでも良いって! パパ、飛んでいい⁉」
え? 何々? 仲良しだとお空飛べるの⁉ 僕は思い切りパパの方を振り向きます。そしたらパパが「あちゃあ」ってお顔をしました。
「ぱ~ぱ、びょお‼」
『ラディス、ジョーディが自分も飛びたいと言っているぞ』
ローリーがはっきり伝えてくれました。
「パパ! いいでしょう‼」
騒ぐ僕とお兄ちゃん。それから嫌な顔をしているパパ。周りでは、自分達も飛びたいってドラック達が跳ね回ります。
「大丈夫ですか?」
パパが係のお兄さんに聞くと、頷きました。
「ええ、これだけ仲が良いのは珍しいですからね。私と一緒ならば問題ありません」
「そうですか。マイケル、大人しく、お兄さんの言うことを聞くんだぞ」
「やったぁ‼」
お兄ちゃんは飛んでいいって。僕は⁉
「問題はジョーディだな」
パパと係のお兄さんが話し始めます。僕はドキドキして待ちながら、グッシーの首を撫で撫で。大きすぎて頭に手が届かないからね。グッシーが嬉しそうな声で鳴きます。
そんなことをしていたら、お兄ちゃんの乗る大きいグリフォンさんが、お羽をバサァって広げました。それでバサバサ、二回お羽を動かしてジャンプ。お兄ちゃん達がお空に向かって飛びました。
上からお兄ちゃんの、喜んでいる声が聞こえてきます。僕も早く飛びたい‼
「君達ではなく、私が子供と一緒に飛んでも良いか? ジョーディはこれで、なんだかんだと危険なんだ。迷惑をかけるかもしれない」
「安全上のため、本来は私達が乗るのですが、ラディス様なら問題はないかと」
パパ達のお話が全然終わりません。そうだ‼ 今のうちにグッシーにお願いしておこう。
「ちー! びょおよぉ‼」
こう、ブワッと、ビュンッと高く飛んで欲しいなあ。それから凄く速く飛んでもらったり、景色を見られるように、逆にゆっくり飛んでもらったり。そんなお願いをしていたら、グッシーが大きなお声で鳴きました。
『ギャウゥゥゥ‼』
それでお羽をバサァって広げます。あれ? パパ達、飛んでいいって言ったっけ?
僕がパパ達の方を向いたら、パパもお兄さんもとっても慌てていました。パパがグッシーの首に付いていた縄を掴みます。それから僕がお座りをしている所に付いていた、ベルトみたいな物を僕とパパ自身に結びました。
慌てていたのはパパだけじゃありません。ドラックパパ達がドラック達を咥えて、僕の方に二匹を飛ばしてきました。二匹は僕の前に綺麗に着地して、お座りします。またまた慌てるパパ。ドラック達にもベルトを結んだよ。
グッシーは振り返って僕とパパを見た後、もう一回大きな声で鳴いて、バサァ、バサァ‼ 思いっきりジャンプ‼ グッシーが飛び立ちました。
何回か羽を動かすと、もうママ達が小さく見えるくらいの所まで飛んで、それからまたすぐに、街全体が見える所まで飛んじゃいました。
「にょおぉぉぉぉぉぉ‼」
『わぁ‼』
『凄いねぇ。みんなちっちゃくなっちゃった』
「おい、頼むから静かに乗っててくれ」
大丈夫だよパパ。僕、グッシーの首から手を離したりしないよ。たぶん?
グッシーは僕がお願いした通りに、早く飛んでくれたり、遅く飛んでくれたり。
空から見た街の景色はとっても綺麗でした。でも、お山の方が綺麗に見えたんだ。だからお山が綺麗だねって言ったら、グッシーはすぐにお山の方を向いて飛んでくれました。
ポッケ達に通訳してもらってないのに、それにドラックパパ達に、言葉が分かるようになる魔法をかけてもらっていないのに。自然と僕の言っていることを分かってくれて、嬉しいなぁ。
「まったく。なぜ時々私が言ったのとは違う方へ飛ぶんだ? しかも、決まってジョーディが何か言った後に。もしかしてジョーディが何か言っているのか?」
パパがそう言います。僕は景色が綺麗って言っただけだよ。あとはグッシーの首に掴まってるだけ。
その後は、お兄ちゃん達と並んで飛びました。それから少しして、お兄ちゃんと一緒に乗っていた係のお兄さんが、そろそろ下に降りましょうって。
気付けばお空がオレンジ色になっていて、僕達は帰る時間です。魔獣園も閉まる時間なんだって。ちょっぴり残念だけど仕方ないよね。
ゆっくりゆっくり下に降りていくグッシー達。最後は、ママがいる入口の近くに降りました。他の人達はもうみんな帰っちゃったみたい。僕達は順番にグッシー達から下りて、最後に、グッシーが下げてくれた頭を撫で撫で。グッシー、楽しかったよ。ありがとう‼
僕が撫でるのをやめたら、グッシーが僕のポケットの中に、無理やりくちばしを入れてきました。お兄さんにやめなさいって言われて、グッシーがすぐに離れます。
僕は柵の外に出て、パパに抱っこしてもらいながら出口に向かいます。グッシーに何度もバイバイと手を振って。それから残念そうに僕のことを見ている、他のグリフォンさん達にもバイバイします。
バイバイしたら、グッシーが仲間の所に走って行ってギャウギャウ鳴いて、みんなのことを向こうに行かせちゃいました。フンッと鼻を鳴らした後、ニコニコしています。
グッシー、また遊びに来るからね! 明日もう一回遊びに来られないかな? パパは用事があるみたいだけど、ママやじぃじは? 遊びに来られたらいいなぁ。やがて道を曲がって、グッシーが見えなくなります。
そういえば、どうしてグッシーは、僕のポケットをグリグリしたんだろう。僕はポケットに手を入れました。何か入ってる? 何だろう? フワフワ、カチカチ。
ポケットに入っていた物を取り出しました。
「にょ?」
それは、小さな真っ白いお羽根でした。それから何かのメダル。魔獣と契約する時に模様を描くでしょう? あれみたいな模様が描いてあるメダルです。透明で、とっても綺麗だよ。
「ジョーディ、どうした?」
モゾモゾ動いていたら、パパが僕と手に持っている物を見て、とっても驚いたお顔になりました。
「それはどうしたんだ?」
「ちゃのよぉ!」
『グッシーがくれたって』
『さっきグッシーが、ジョーディのポケットをごそごそしたでしょう』
ドラックとドラッホが通訳してくれたのを聞いたパパが、「これはグッシーの羽根か」って言いました。グッシー、僕に自分の羽根をプレゼントしてくれたみたい。ありがとう! パパはこんなことをするグリフォンは初めて見たって驚いています。ふふ、特別な優しいグリフォンさんなんだね、グッシーは。
メダルの方は、パパも、それからママやローリー達も見たことないって。パパ達が見たことないなら、とっても珍しいメダルなのかも。またまたグッシーありがとう!
帰ったら「あの入れ物」にしまっても良いか、ホミュちゃんに聞いてみよう。ホミュちゃんが大好きな、あの石があるでしょう。僕が森から持って来ちゃったやつ。あの石をしまっておくための可愛い入れ物を、この前ママが街のお店で買ってくれました。
何処かに遊びに行く時や、石で遊ばない時、それから寝ている時とかは、その可愛い入れ物にしまっておきなさいって。可愛い入れ物は、石を入れてもまだゆるゆるだから、羽根とメダルも一緒にしまってもらえたら、なくさないでしょう。
ママが、僕が羽根とメダルを落とさないように、自分のカバンにしまってくれます。それで魔獣園の出口まで来た時、パパがハッとして、「グッシーって誰だ」って聞いてきました。あれ? 僕、ずっとグッシーって言っていたよね? パパ、気付かなかったの?
僕の代わりにドラック達が説明してくれます。僕が真っ白グリフォンさんって言うのが大変だから、グッシーって名前を付けたこと。名前を付けたら、グッシーがニコニコ笑ってたこと。全部お話ししてくれました。
ん? パパ、どうしてそんな、ぽけっとした顔をして、僕のことを見ているの。それに固まってるし。ママは困ったお顔をして笑っているけど。
僕はパパの顔をツンツンしてみます。僕がツンツンしたら、パパがまた動きました。
「ジョーディ、お名前付けちゃったのか?」
だって真っ白グリフォンさんだと、長くて面倒でしょう? それにあんなに仲良しになれたんだもん。お名前はあった方が良いよ。
僕とパパの話を聞いていたお兄ちゃんが、今度魔獣園に来たら、自分もあの大きいグリフォンさんに名前を付けて良いか、係の人に聞いてみようって言い出しました。
パパはそれを聞くと、慌てて僕をママに渡して、ちょっと行ってくるって言い残して、今来た道を走って戻って行っちゃいました。ママが魔獣園の出口で待とうと言うので、出口にまだいたノーブルタイガーのエイドと遊びながら、パパを待ちます。
少しして戻って来たパパ。ママに何か言った後、さぁ帰るぞって。それからお兄ちゃんに、名前を付けるのはまだ待ちなさいって言ったんだ。
お兄ちゃんはちょっとブーブーと言って、それから考えるだけ考えとくってお返事しました。パパは困った顔して、頭をフルフル振ります。
エイドにバイバイして、僕らはお城に帰りました。
お城に帰ったら、じぃじとばぁばが、お部屋でお茶をしていました。
僕はばぁばの所に走って行って、お膝の上で抱っこしてもらいます。じぃじのお膝抱っこも好きだけど――もちろんパパも――でも、ママとばぁばのお膝抱っこはお尻がゴワゴワしないから特に好き。パパ達のは、ズボンの飾りが痛かったり、なんか少し硬かったりするの。
お膝抱っこしてもらって、僕は今日の報告です。しっかり話せない僕の代わりに、ほとんどドラック達とパパがじぃじとばぁばにお話ししてくれました。
「そうかそうか、マイケル、ジョーディ、楽しかったかの」
「うん‼ とっても楽しかったよ‼」
「たいのぉ‼」
あっ、アレのこと、ホミュちゃんに聞くの忘れてた。お話が終わって、僕達はご飯ができるまでおもちゃで遊んで待つことに。その間にホミュちゃんに、羽根とメダルを石と一緒にしまっていいか聞いてみました。
「こぉ! ちゃいの、ちょのぉ!」
『うん、一緒にしまうなのぉ!』
ホミュちゃん、一緒に入れていいって言ってくれました。ママの所に行って、カバンから羽根とメダルを出してもらいます。それを入れ物にしまって。えへへ、ホミュちゃんの宝物と一緒。嬉しいね。
今日は楽しかったなぁ。いろんな魔獣に会えたし、グッシーとお友達になれたし。グッシーにプレゼントももらったし。明日も遊びに行きたいなぁ。あとでパパ達にお願いしなくちゃね。でも他にも行きたい所あるし。う~ん。
そんなことを考えていたら、いつの間にか僕は寝ちゃってました。
*********
とある森の奥で、地響きが轟いていた。
ゴゴゴゴゴッ、ガガガガガガガガッ‼
住処で眠っていた魔獣達が首を持ち上げ、すぐに駆け出す。その後ろから、何百という魔獣が溢れ出した。
『ギャウゥゥゥ‼』
『ワフワフッ‼』
『キャシィィィッ‼』
バキバキバキバキッ‼ ガガガガアァァァッ‼
木々をなぎ倒し、魔獣の群れが森の外へと向かっていく。
*********
「まさかグリフォンに名前を付けていたなんて……もしかして契約してしまったかと、慌てて戻る羽目になったよ」
「ガハハハハ‼ さすがワシの孫じゃな」
「父さん、笑い事じゃないよ。ジョーディを巡って、グリフォン達は予想外の行動に出るし。あのジョーディを気に入った白のグリフォンは、係や私の言うことを聞かずに、ジョーディの言うことばかり聞いて。挙句、最後には自分の羽根と、何か分からないメダルをよこすなんて」
私――ラディスは、今日あった出来事を父さんと母さんに聞かせた。
なぜこうもジョーディの周りには魔獣が集まるんだ。今回など、ほとんどのグリフォンがジョーディの元に集まり、ジョーディ争奪戦を繰り広げた。ほとんどというか、マイケルが選んだグリフォン以外、全グリフォンだが。あの白いグリフォンがいなかったらどうなっていたことか。
だが、助けてくれたグリフォンも問題だ。あそこまでジョーディに懐くなんて。初めて会ったにもかかわらず、きちんとジョーディの言うことを聞き、あの子が望んだことは何でも叶えようとする。
そしてジョーディはジョーディで、私が知らないうちにグリフォンに名前を付けてしまっていた。確かグッシーといったか? それを聞いたマイケルまで、名前を付けたいと言う始末だ。
まったく私達の息子ときたら。どれだけ自分達が規格外か、これからじっくり教える必要があるな。グリフォンなんて契約してみろ。この間のような得体の知れない輩が、ジョーディ達の能力に気付き、また襲ってくるかもしれないんだぞ。
ただ、規格外だと教えるにしても、どう教えたら良いものか。マイケルは丁寧に説明すれば分かってくれるだろうが、ジョーディは……一歳になったばかりの子に理解できるはずがない。
私は大きくため息をつくと、使用人のトレバーが用意してくれたお茶を飲み干した。そういえば、ジョーディが帰る時にグッシーから受け取った、あの羽根とメダル。
羽根の方は、仲良くなったジョーディに対して贈った、友情の証といったところだろうが、あのメダルは何だ? あの模様、何処かで見たことがあるような気がするのだが。何だったか? そのうち思い出すか、うん。
とりあえず、王都にいるのもあと数日。明日はジョーディを襲ったあの茶色い服の男達に対して、最後の取り調べをする。その後は陛下が直々に、色々と聞き出すとおっしゃっていた。父さんも時々王都に来て、拷問に参加すると。
拷問か。そういえば明日は、ルリエットも拷問に参加すると言っていたな。私も参加したいが、この様子では彼女を止める方に回されそうだ。
トレバーに新しいお茶を入れてもらい、今度はゆっくり飲み直す。家に帰るまで、もう何も事件が起こらなければ良いが。そしてジョーディも余計なことをしでかさなければ良いが。
*********
次の日、僕はグッシーに会いに行きたかったけど、やっぱり行けませんでした。お願いしたんだけどね、お買い物できなくても良いの?って言われちゃって。
う~ん、残念だけどお買い物も大切。そういうわけで、今日はじぃじとばぁばと一緒にお買い物です。パパとママはご用事があるから来られないんだって。
お買い物をするだけだから、スプリングホースじゃなくて、馬車でお店が並んでいる所に行きました。馬車と荷馬車の両方だよ。ばぁばはママにお願いされた物を買いに行くみたい。
僕は昨日魔獣園に行く時に見た、ローリーの形をしている乗り物を買ってもらわなくちゃ。みんなで一緒に乗って遊べるように。あとは色々、欲しい物をね。
お店が並んでいる所に着いたら馬車から下りて、歩いてお店を回ります。馬車は駐車場に停めてあります。馬車係の人がいて、その人に預けました。
順番にお店を見て行きます。順番にっていうか、ばぁばがすぐに足を止めるから、そんな回り方になりました。少し歩いてはお店に入って、また少し歩いてはお店に入って。どんどん荷物が増えて、いっぱいになると、使用人のトレバーとレスター達が荷馬車へ持っていきます。
じぃじがおでこに皺を寄せています。
「ちと、買いすぎじゃないかのう」
「あら、まだまだ足りない物がいっぱいよ。それにルリエットに頼まれている分もあるし。でもそうね、あんまり私の買い物に付き合わせるのは、マイケル達が可哀想ね。私はトレバーと回るから、あなたはレスターと一緒に、マイケル達の買い物をお願いね」
そう言って、ばぁばはトレバーとまたお店に入って行っちゃいました。
ばぁばとバイバイして、僕達はおもちゃ屋さんに。ローリーの乗り物と、ボールと、おままごとのお道具。じぃじは全部買ってくれました。じぃじありがとう‼ お兄ちゃんも色々買ってもらってニコニコです。
お昼は人気のレストランで食べました。レスターが僕にちゃんと食べさせてくれたよ。ばぁばはたぶんずっとお買い物中でいません。
お昼を食べてからは、じぃじのお買い物をして、僕達は馬車に戻りました。馬車の中でばぁばのことを待っていたんだけど、全然帰って来ないから、僕はこっくりこっくり。そしたら僕のことを抱っこしていたじぃじが、
「どうしてこう、あやつの買い物は長いんじゃ。昔からそうじゃったが。しかし邪魔もできんしのう。一度文句を言った時の、ばぁさんの反応ときたら」
と、呟きました。
じぃじ、どうしたのかな? 眠い目を擦りながら見たじぃじの顔、とっても辛そうで、あと怖がっていました。
*********
魔獣園の一角で、仲間のグリフォンが何かに気付いて我に話しかけてきた。
『おい、あの子供達が街の外に向かっているぞ。どうやら街を出るらしい』
『そうか。では次に会えるのを楽しみに、別れの挨拶にでも行くとするか』
次はいつ会えることか。だが必ず我はあの子供の元へ行くぞ。我の主だからな。なるべく早く主と一緒に暮らしたいものだな。
仲間は係の連中を見て言う。
『勝手に行って良いのか?』
『本来我々は自由に生きる魔獣だぞ。まぁ、ここのおかげで苦労はしていないが。いつもほぼほぼ言うことは聞いているんだ。たまには見送りに飛んでも良かろう』
『そうか。じゃあ俺も見送りに行くか』
主の兄、確かマイケルと言っていたか? マイケルと運命の出会いを果たした奴も、我と一緒に主達の見送りに行くと言ってきた。まぁ良いか。グリフォンが二匹飛ぶくらい、別に大したことではないだろう。
「お、おい、アレ!」
「お前達待て‼」
我らが飛ぶために翼を広げた時だった。気付いた係の者達が、急いでこちらへ走って来る。そして飛ぼうとする我らを必死に止めてきた。
本気になればこんなもの、すぐにでも突破できるが、一応いつも世話になっているからな。飛ぶのをやめ、我のことをいつも世話してくれている者のことを見つめる。奴はグリフォンの世話係で一番上の人間だ。
「何処へ行くつもりだ」
我はじっと奴を見つめ続ける。しばらくして、奴が悟った。
「まさかあの子の所へ見送りに行くつもりか? 先日あの子の父、ラディス様がいらして、色々確認していった。お前、あの子に色々渡したらしいな。まったく、私の知らないところで。しかもお前に至っては、名前も付けてもらっていたな」
そう我は主に、名をもらった。グッシーだ。
「そういえば今日、街を出るとおっしゃっていたな。お前達、かなりあの子達を気に入っていたからな」
我はもう一度翼を広げる。それを見てまた慌てて止める係の者達。その時、
「はぁ、分かった。見送ったらすぐに帰って来るんだぞ。あとで文句を言われるのは私なんだからな」
奴が、突然許可を出したのだ。別の係の男が困惑する。
「いいのか?」
「どうせ、こいつらが本気になれば、私達には止められないだろう? なら止めるだけ無駄だ。さぁ、早く行ってさっさと帰ってこい」
『ギャウゥゥゥ‼』
我らは二匹で空へと舞い上がる。あとで奴に何かお礼でもしてやるか。我の夕飯を分けてやってもいい。そうしよう。
主達が進んでいる場所へ、一直線に。待っていてくれ主、すぐに挨拶に行くぞ。そして次回会える時まで覚えていられるように、あの可愛い笑顔を見せてくれ。
ん? 今誰かお話しした? 気のせいかな? たぶん気のせいだよね。よし! グッシーとたくさん遊ぼう‼
グッシーは僕が言った方向に、ちゃんと進んでくれます。あっちに進んだり、こっちに進んだり。僕達の横を歩いている、係のお兄さんがビックリしていました。
いつもは係のお兄さん達が呼んだ方にしか、グリフォンさん達は歩かないんだって。遊びに来てる人の言うことは聞かないみたい。そういえば、僕達の前に乗った人達はそうだったよね。
「今度はそっち‼」
向こうの方からお兄ちゃんの声が。お兄ちゃんが乗っているグリフォンさんも、お兄ちゃんの言う通りに進んでくれているみたい。
「かなり気に入られたのでしょうね。私がここで働き始めて、こんなに言うことを聞くのは初めてです」
そっかぁ、グッシー達は、僕達のことを気に入ってくれたんだね。僕もグッシーのこと大好きだよ。
そうだ! お兄ちゃん達と一緒に歩こう。僕はグッシーに、お兄ちゃん達の方に行ってってお願いします。グッシーはすぐに向かってくれました。ちゃんとお話しできないけど、グッシーは僕の言葉をちゃんと分かってくれます。
「にー!」
お兄ちゃん達の所に行ったら、お兄ちゃんが興奮しながら、パパにお話ししてきました。
「パパ‼ 僕、このグリフォンととっても仲良しだから、係のお兄さんと一緒なら空飛んでも良いって! パパ、飛んでいい⁉」
え? 何々? 仲良しだとお空飛べるの⁉ 僕は思い切りパパの方を振り向きます。そしたらパパが「あちゃあ」ってお顔をしました。
「ぱ~ぱ、びょお‼」
『ラディス、ジョーディが自分も飛びたいと言っているぞ』
ローリーがはっきり伝えてくれました。
「パパ! いいでしょう‼」
騒ぐ僕とお兄ちゃん。それから嫌な顔をしているパパ。周りでは、自分達も飛びたいってドラック達が跳ね回ります。
「大丈夫ですか?」
パパが係のお兄さんに聞くと、頷きました。
「ええ、これだけ仲が良いのは珍しいですからね。私と一緒ならば問題ありません」
「そうですか。マイケル、大人しく、お兄さんの言うことを聞くんだぞ」
「やったぁ‼」
お兄ちゃんは飛んでいいって。僕は⁉
「問題はジョーディだな」
パパと係のお兄さんが話し始めます。僕はドキドキして待ちながら、グッシーの首を撫で撫で。大きすぎて頭に手が届かないからね。グッシーが嬉しそうな声で鳴きます。
そんなことをしていたら、お兄ちゃんの乗る大きいグリフォンさんが、お羽をバサァって広げました。それでバサバサ、二回お羽を動かしてジャンプ。お兄ちゃん達がお空に向かって飛びました。
上からお兄ちゃんの、喜んでいる声が聞こえてきます。僕も早く飛びたい‼
「君達ではなく、私が子供と一緒に飛んでも良いか? ジョーディはこれで、なんだかんだと危険なんだ。迷惑をかけるかもしれない」
「安全上のため、本来は私達が乗るのですが、ラディス様なら問題はないかと」
パパ達のお話が全然終わりません。そうだ‼ 今のうちにグッシーにお願いしておこう。
「ちー! びょおよぉ‼」
こう、ブワッと、ビュンッと高く飛んで欲しいなあ。それから凄く速く飛んでもらったり、景色を見られるように、逆にゆっくり飛んでもらったり。そんなお願いをしていたら、グッシーが大きなお声で鳴きました。
『ギャウゥゥゥ‼』
それでお羽をバサァって広げます。あれ? パパ達、飛んでいいって言ったっけ?
僕がパパ達の方を向いたら、パパもお兄さんもとっても慌てていました。パパがグッシーの首に付いていた縄を掴みます。それから僕がお座りをしている所に付いていた、ベルトみたいな物を僕とパパ自身に結びました。
慌てていたのはパパだけじゃありません。ドラックパパ達がドラック達を咥えて、僕の方に二匹を飛ばしてきました。二匹は僕の前に綺麗に着地して、お座りします。またまた慌てるパパ。ドラック達にもベルトを結んだよ。
グッシーは振り返って僕とパパを見た後、もう一回大きな声で鳴いて、バサァ、バサァ‼ 思いっきりジャンプ‼ グッシーが飛び立ちました。
何回か羽を動かすと、もうママ達が小さく見えるくらいの所まで飛んで、それからまたすぐに、街全体が見える所まで飛んじゃいました。
「にょおぉぉぉぉぉぉ‼」
『わぁ‼』
『凄いねぇ。みんなちっちゃくなっちゃった』
「おい、頼むから静かに乗っててくれ」
大丈夫だよパパ。僕、グッシーの首から手を離したりしないよ。たぶん?
グッシーは僕がお願いした通りに、早く飛んでくれたり、遅く飛んでくれたり。
空から見た街の景色はとっても綺麗でした。でも、お山の方が綺麗に見えたんだ。だからお山が綺麗だねって言ったら、グッシーはすぐにお山の方を向いて飛んでくれました。
ポッケ達に通訳してもらってないのに、それにドラックパパ達に、言葉が分かるようになる魔法をかけてもらっていないのに。自然と僕の言っていることを分かってくれて、嬉しいなぁ。
「まったく。なぜ時々私が言ったのとは違う方へ飛ぶんだ? しかも、決まってジョーディが何か言った後に。もしかしてジョーディが何か言っているのか?」
パパがそう言います。僕は景色が綺麗って言っただけだよ。あとはグッシーの首に掴まってるだけ。
その後は、お兄ちゃん達と並んで飛びました。それから少しして、お兄ちゃんと一緒に乗っていた係のお兄さんが、そろそろ下に降りましょうって。
気付けばお空がオレンジ色になっていて、僕達は帰る時間です。魔獣園も閉まる時間なんだって。ちょっぴり残念だけど仕方ないよね。
ゆっくりゆっくり下に降りていくグッシー達。最後は、ママがいる入口の近くに降りました。他の人達はもうみんな帰っちゃったみたい。僕達は順番にグッシー達から下りて、最後に、グッシーが下げてくれた頭を撫で撫で。グッシー、楽しかったよ。ありがとう‼
僕が撫でるのをやめたら、グッシーが僕のポケットの中に、無理やりくちばしを入れてきました。お兄さんにやめなさいって言われて、グッシーがすぐに離れます。
僕は柵の外に出て、パパに抱っこしてもらいながら出口に向かいます。グッシーに何度もバイバイと手を振って。それから残念そうに僕のことを見ている、他のグリフォンさん達にもバイバイします。
バイバイしたら、グッシーが仲間の所に走って行ってギャウギャウ鳴いて、みんなのことを向こうに行かせちゃいました。フンッと鼻を鳴らした後、ニコニコしています。
グッシー、また遊びに来るからね! 明日もう一回遊びに来られないかな? パパは用事があるみたいだけど、ママやじぃじは? 遊びに来られたらいいなぁ。やがて道を曲がって、グッシーが見えなくなります。
そういえば、どうしてグッシーは、僕のポケットをグリグリしたんだろう。僕はポケットに手を入れました。何か入ってる? 何だろう? フワフワ、カチカチ。
ポケットに入っていた物を取り出しました。
「にょ?」
それは、小さな真っ白いお羽根でした。それから何かのメダル。魔獣と契約する時に模様を描くでしょう? あれみたいな模様が描いてあるメダルです。透明で、とっても綺麗だよ。
「ジョーディ、どうした?」
モゾモゾ動いていたら、パパが僕と手に持っている物を見て、とっても驚いたお顔になりました。
「それはどうしたんだ?」
「ちゃのよぉ!」
『グッシーがくれたって』
『さっきグッシーが、ジョーディのポケットをごそごそしたでしょう』
ドラックとドラッホが通訳してくれたのを聞いたパパが、「これはグッシーの羽根か」って言いました。グッシー、僕に自分の羽根をプレゼントしてくれたみたい。ありがとう! パパはこんなことをするグリフォンは初めて見たって驚いています。ふふ、特別な優しいグリフォンさんなんだね、グッシーは。
メダルの方は、パパも、それからママやローリー達も見たことないって。パパ達が見たことないなら、とっても珍しいメダルなのかも。またまたグッシーありがとう!
帰ったら「あの入れ物」にしまっても良いか、ホミュちゃんに聞いてみよう。ホミュちゃんが大好きな、あの石があるでしょう。僕が森から持って来ちゃったやつ。あの石をしまっておくための可愛い入れ物を、この前ママが街のお店で買ってくれました。
何処かに遊びに行く時や、石で遊ばない時、それから寝ている時とかは、その可愛い入れ物にしまっておきなさいって。可愛い入れ物は、石を入れてもまだゆるゆるだから、羽根とメダルも一緒にしまってもらえたら、なくさないでしょう。
ママが、僕が羽根とメダルを落とさないように、自分のカバンにしまってくれます。それで魔獣園の出口まで来た時、パパがハッとして、「グッシーって誰だ」って聞いてきました。あれ? 僕、ずっとグッシーって言っていたよね? パパ、気付かなかったの?
僕の代わりにドラック達が説明してくれます。僕が真っ白グリフォンさんって言うのが大変だから、グッシーって名前を付けたこと。名前を付けたら、グッシーがニコニコ笑ってたこと。全部お話ししてくれました。
ん? パパ、どうしてそんな、ぽけっとした顔をして、僕のことを見ているの。それに固まってるし。ママは困ったお顔をして笑っているけど。
僕はパパの顔をツンツンしてみます。僕がツンツンしたら、パパがまた動きました。
「ジョーディ、お名前付けちゃったのか?」
だって真っ白グリフォンさんだと、長くて面倒でしょう? それにあんなに仲良しになれたんだもん。お名前はあった方が良いよ。
僕とパパの話を聞いていたお兄ちゃんが、今度魔獣園に来たら、自分もあの大きいグリフォンさんに名前を付けて良いか、係の人に聞いてみようって言い出しました。
パパはそれを聞くと、慌てて僕をママに渡して、ちょっと行ってくるって言い残して、今来た道を走って戻って行っちゃいました。ママが魔獣園の出口で待とうと言うので、出口にまだいたノーブルタイガーのエイドと遊びながら、パパを待ちます。
少しして戻って来たパパ。ママに何か言った後、さぁ帰るぞって。それからお兄ちゃんに、名前を付けるのはまだ待ちなさいって言ったんだ。
お兄ちゃんはちょっとブーブーと言って、それから考えるだけ考えとくってお返事しました。パパは困った顔して、頭をフルフル振ります。
エイドにバイバイして、僕らはお城に帰りました。
お城に帰ったら、じぃじとばぁばが、お部屋でお茶をしていました。
僕はばぁばの所に走って行って、お膝の上で抱っこしてもらいます。じぃじのお膝抱っこも好きだけど――もちろんパパも――でも、ママとばぁばのお膝抱っこはお尻がゴワゴワしないから特に好き。パパ達のは、ズボンの飾りが痛かったり、なんか少し硬かったりするの。
お膝抱っこしてもらって、僕は今日の報告です。しっかり話せない僕の代わりに、ほとんどドラック達とパパがじぃじとばぁばにお話ししてくれました。
「そうかそうか、マイケル、ジョーディ、楽しかったかの」
「うん‼ とっても楽しかったよ‼」
「たいのぉ‼」
あっ、アレのこと、ホミュちゃんに聞くの忘れてた。お話が終わって、僕達はご飯ができるまでおもちゃで遊んで待つことに。その間にホミュちゃんに、羽根とメダルを石と一緒にしまっていいか聞いてみました。
「こぉ! ちゃいの、ちょのぉ!」
『うん、一緒にしまうなのぉ!』
ホミュちゃん、一緒に入れていいって言ってくれました。ママの所に行って、カバンから羽根とメダルを出してもらいます。それを入れ物にしまって。えへへ、ホミュちゃんの宝物と一緒。嬉しいね。
今日は楽しかったなぁ。いろんな魔獣に会えたし、グッシーとお友達になれたし。グッシーにプレゼントももらったし。明日も遊びに行きたいなぁ。あとでパパ達にお願いしなくちゃね。でも他にも行きたい所あるし。う~ん。
そんなことを考えていたら、いつの間にか僕は寝ちゃってました。
*********
とある森の奥で、地響きが轟いていた。
ゴゴゴゴゴッ、ガガガガガガガガッ‼
住処で眠っていた魔獣達が首を持ち上げ、すぐに駆け出す。その後ろから、何百という魔獣が溢れ出した。
『ギャウゥゥゥ‼』
『ワフワフッ‼』
『キャシィィィッ‼』
バキバキバキバキッ‼ ガガガガアァァァッ‼
木々をなぎ倒し、魔獣の群れが森の外へと向かっていく。
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「まさかグリフォンに名前を付けていたなんて……もしかして契約してしまったかと、慌てて戻る羽目になったよ」
「ガハハハハ‼ さすがワシの孫じゃな」
「父さん、笑い事じゃないよ。ジョーディを巡って、グリフォン達は予想外の行動に出るし。あのジョーディを気に入った白のグリフォンは、係や私の言うことを聞かずに、ジョーディの言うことばかり聞いて。挙句、最後には自分の羽根と、何か分からないメダルをよこすなんて」
私――ラディスは、今日あった出来事を父さんと母さんに聞かせた。
なぜこうもジョーディの周りには魔獣が集まるんだ。今回など、ほとんどのグリフォンがジョーディの元に集まり、ジョーディ争奪戦を繰り広げた。ほとんどというか、マイケルが選んだグリフォン以外、全グリフォンだが。あの白いグリフォンがいなかったらどうなっていたことか。
だが、助けてくれたグリフォンも問題だ。あそこまでジョーディに懐くなんて。初めて会ったにもかかわらず、きちんとジョーディの言うことを聞き、あの子が望んだことは何でも叶えようとする。
そしてジョーディはジョーディで、私が知らないうちにグリフォンに名前を付けてしまっていた。確かグッシーといったか? それを聞いたマイケルまで、名前を付けたいと言う始末だ。
まったく私達の息子ときたら。どれだけ自分達が規格外か、これからじっくり教える必要があるな。グリフォンなんて契約してみろ。この間のような得体の知れない輩が、ジョーディ達の能力に気付き、また襲ってくるかもしれないんだぞ。
ただ、規格外だと教えるにしても、どう教えたら良いものか。マイケルは丁寧に説明すれば分かってくれるだろうが、ジョーディは……一歳になったばかりの子に理解できるはずがない。
私は大きくため息をつくと、使用人のトレバーが用意してくれたお茶を飲み干した。そういえば、ジョーディが帰る時にグッシーから受け取った、あの羽根とメダル。
羽根の方は、仲良くなったジョーディに対して贈った、友情の証といったところだろうが、あのメダルは何だ? あの模様、何処かで見たことがあるような気がするのだが。何だったか? そのうち思い出すか、うん。
とりあえず、王都にいるのもあと数日。明日はジョーディを襲ったあの茶色い服の男達に対して、最後の取り調べをする。その後は陛下が直々に、色々と聞き出すとおっしゃっていた。父さんも時々王都に来て、拷問に参加すると。
拷問か。そういえば明日は、ルリエットも拷問に参加すると言っていたな。私も参加したいが、この様子では彼女を止める方に回されそうだ。
トレバーに新しいお茶を入れてもらい、今度はゆっくり飲み直す。家に帰るまで、もう何も事件が起こらなければ良いが。そしてジョーディも余計なことをしでかさなければ良いが。
*********
次の日、僕はグッシーに会いに行きたかったけど、やっぱり行けませんでした。お願いしたんだけどね、お買い物できなくても良いの?って言われちゃって。
う~ん、残念だけどお買い物も大切。そういうわけで、今日はじぃじとばぁばと一緒にお買い物です。パパとママはご用事があるから来られないんだって。
お買い物をするだけだから、スプリングホースじゃなくて、馬車でお店が並んでいる所に行きました。馬車と荷馬車の両方だよ。ばぁばはママにお願いされた物を買いに行くみたい。
僕は昨日魔獣園に行く時に見た、ローリーの形をしている乗り物を買ってもらわなくちゃ。みんなで一緒に乗って遊べるように。あとは色々、欲しい物をね。
お店が並んでいる所に着いたら馬車から下りて、歩いてお店を回ります。馬車は駐車場に停めてあります。馬車係の人がいて、その人に預けました。
順番にお店を見て行きます。順番にっていうか、ばぁばがすぐに足を止めるから、そんな回り方になりました。少し歩いてはお店に入って、また少し歩いてはお店に入って。どんどん荷物が増えて、いっぱいになると、使用人のトレバーとレスター達が荷馬車へ持っていきます。
じぃじがおでこに皺を寄せています。
「ちと、買いすぎじゃないかのう」
「あら、まだまだ足りない物がいっぱいよ。それにルリエットに頼まれている分もあるし。でもそうね、あんまり私の買い物に付き合わせるのは、マイケル達が可哀想ね。私はトレバーと回るから、あなたはレスターと一緒に、マイケル達の買い物をお願いね」
そう言って、ばぁばはトレバーとまたお店に入って行っちゃいました。
ばぁばとバイバイして、僕達はおもちゃ屋さんに。ローリーの乗り物と、ボールと、おままごとのお道具。じぃじは全部買ってくれました。じぃじありがとう‼ お兄ちゃんも色々買ってもらってニコニコです。
お昼は人気のレストランで食べました。レスターが僕にちゃんと食べさせてくれたよ。ばぁばはたぶんずっとお買い物中でいません。
お昼を食べてからは、じぃじのお買い物をして、僕達は馬車に戻りました。馬車の中でばぁばのことを待っていたんだけど、全然帰って来ないから、僕はこっくりこっくり。そしたら僕のことを抱っこしていたじぃじが、
「どうしてこう、あやつの買い物は長いんじゃ。昔からそうじゃったが。しかし邪魔もできんしのう。一度文句を言った時の、ばぁさんの反応ときたら」
と、呟きました。
じぃじ、どうしたのかな? 眠い目を擦りながら見たじぃじの顔、とっても辛そうで、あと怖がっていました。
*********
魔獣園の一角で、仲間のグリフォンが何かに気付いて我に話しかけてきた。
『おい、あの子供達が街の外に向かっているぞ。どうやら街を出るらしい』
『そうか。では次に会えるのを楽しみに、別れの挨拶にでも行くとするか』
次はいつ会えることか。だが必ず我はあの子供の元へ行くぞ。我の主だからな。なるべく早く主と一緒に暮らしたいものだな。
仲間は係の連中を見て言う。
『勝手に行って良いのか?』
『本来我々は自由に生きる魔獣だぞ。まぁ、ここのおかげで苦労はしていないが。いつもほぼほぼ言うことは聞いているんだ。たまには見送りに飛んでも良かろう』
『そうか。じゃあ俺も見送りに行くか』
主の兄、確かマイケルと言っていたか? マイケルと運命の出会いを果たした奴も、我と一緒に主達の見送りに行くと言ってきた。まぁ良いか。グリフォンが二匹飛ぶくらい、別に大したことではないだろう。
「お、おい、アレ!」
「お前達待て‼」
我らが飛ぶために翼を広げた時だった。気付いた係の者達が、急いでこちらへ走って来る。そして飛ぼうとする我らを必死に止めてきた。
本気になればこんなもの、すぐにでも突破できるが、一応いつも世話になっているからな。飛ぶのをやめ、我のことをいつも世話してくれている者のことを見つめる。奴はグリフォンの世話係で一番上の人間だ。
「何処へ行くつもりだ」
我はじっと奴を見つめ続ける。しばらくして、奴が悟った。
「まさかあの子の所へ見送りに行くつもりか? 先日あの子の父、ラディス様がいらして、色々確認していった。お前、あの子に色々渡したらしいな。まったく、私の知らないところで。しかもお前に至っては、名前も付けてもらっていたな」
そう我は主に、名をもらった。グッシーだ。
「そういえば今日、街を出るとおっしゃっていたな。お前達、かなりあの子達を気に入っていたからな」
我はもう一度翼を広げる。それを見てまた慌てて止める係の者達。その時、
「はぁ、分かった。見送ったらすぐに帰って来るんだぞ。あとで文句を言われるのは私なんだからな」
奴が、突然許可を出したのだ。別の係の男が困惑する。
「いいのか?」
「どうせ、こいつらが本気になれば、私達には止められないだろう? なら止めるだけ無駄だ。さぁ、早く行ってさっさと帰ってこい」
『ギャウゥゥゥ‼』
我らは二匹で空へと舞い上がる。あとで奴に何かお礼でもしてやるか。我の夕飯を分けてやってもいい。そうしよう。
主達が進んでいる場所へ、一直線に。待っていてくれ主、すぐに挨拶に行くぞ。そして次回会える時まで覚えていられるように、あの可愛い笑顔を見せてくれ。
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