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3巻
3-2
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「ちゃっ‼」
「こんにちは。ようこそ魔獣園へ。この子はノーブルタイガーのエイドです。撫でてみますか」
係のお兄さんが、僕が触りやすいように、エイドを抱っこしてしゃがんでくれます。パパも僕の後ろにしゃがんで、そっと撫で撫でだぞって言いました。
そっと、そっと。僕はエイドの背中と頭を撫で撫で。エイドはふんふんとお鼻を鳴らしながら、撫で終わった後、僕の手を舐めてくれたよ。
それからお兄さんが、エイドのおやつを僕にくれました。エイドのおやつは、お肉をパサパサに乾燥させたやつでした。それをパパがちぎってくれて、そっとエイドの前に。
エイドは匂いを嗅いだ後、モグモグそれを食べてから「にゃあぁぁぁ‼」って、嬉しそうに鳴いてくれたんだ。
それ聞いて僕も嬉しくなっちゃって、
「にょおぉぉぉぉぉぉ‼」
そう言いながらジャンプします。そしたら、ゴチンッ‼ ガッ‼
「いてっ‼」
「ちゃ‼ ちゃぁ……うっ、うわあぁぁぁん‼」
頭が、頭が痛い‼ 何がぶつかったの⁉
ママが僕を抱っこして、頭を撫でてくれました。痛いよう、パパ、いつもみたいに早く治して。
「くそ、せっかく少し離れて、顔を上げていたのに」
「ぷっ、ふふふ。やっぱりあなたの対策じゃダメだったみたいね」
「おい、笑いごとじゃないんだぞ」
「わあぁぁぁぁぁぁん‼」
「待て、今先に治してやるから」
パパが僕の頭に手を乗せて、ヒールをしてくれました。
ふう……まだちょっと涙が出ているけど、痛みは消えました。
ふと、なんでか笑っているママを見ます。それからパパの方を見ると、顎を撫でながら鼻を押さえていました。もう! パパったら、また僕にぶつかったの!
「まさか二段階攻撃が来るなんてね。ジャンプしたジョーディの頭が顎にぶつかって、そのまま頭がずれて、鼻に当たるなんて。ふふふ」
「はぁ、私はどうしてもジョーディの攻撃から逃げられないのか?」
パパ、僕、頭とっても痛かったよ。ぶつからないように気を付けてよ。
「ほら、ジョーディ、そんなブスッとしたお顔しないで。可愛いお顔が台無しよ」
パパは僕の後すぐに、自分のことを治しました。
「はぁ、痛かった。それにしても最近のジョーディは表情が豊かになったな。特に怒ってる時や、今みたいに気に食わないことがあった時の顔といったら」
「おでこに皺寄せて、口をう~ってさせちゃって、あなたとマイケルがふてくされてる時の顔にそっくりだわ。嫌だわ、そんなの似なくても良いのに」
パパが僕の頭にぶつかったせいで、せっかくエイドにご飯あげられて楽しかったのに、ちょっと嫌な感じだよ。
お兄さんが困った顔で笑いながら、僕達にペンダントをくれます。僕とお兄ちゃんのには、ドラゴンさんのお顔の形をした銀の板が付いていて、パパ達のは、ただの丸い銀の板が付いています。
「こちらは入園証になりますので、園から出られるまで外さないでください。あと、従魔の名前をこちらに記入ください。それから付けられるところで良いので、こちらを付けていただいて」
パパがお兄さんからもらった物には、キラキラしてる小さい石が付いているの。ママが紙にドラック達の名前を書いているうちに、パパがドラック達のお耳にそれを付けました。
なんだかイヤリングみたい。これはドラック達が、魔獣園にいる魔獣じゃなくて、僕達の魔獣ですって証明なんだって。
小さい魔獣――ポッケとかホミュちゃん、土人形のブラスターは、小さすぎるからそのままで良いけど、魔獣園の中では絶対に離れないでくださいって言われました。そしたらポッケが、
『ボク、いつもポケットの中だよ』
ってお返事しました。
うん、そうだよね。いつもポケットの中だし、何処にも行かないから大丈夫だよね。
色々準備をしたら、やっと中に入れます。エイドにバイバイして、パパと手を繋いで門の中に入りました。
魔獣園の中は、魔獣の種類によって色んなコーナーに分かれていました。
ドラック達みたいな狼とかイヌとか、そういう魔獣ばっかり集まっているグループ。
ドラッホやエイド達みたいな、ネコさん達が集まっているグループ。
あとは鳥さんとかトカゲみたいなのが集まっているグループ。そんな風に、全部分かれているんだって。
一番人気は鳥さんグループ。グリフォンっていう魔獣がいて、その背中に乗せてもらえるんだって。とっても強いから、冒険者さんやクランマーさん達みたいな強い騎士さんでも、戦うのが大変な魔獣です。
でもここにいるグリフォンは、ちょっと違います。悪い人達が盗んできた卵を魔獣園が保護して、そこから孵った子だったり。一匹になっちゃったところを保護された赤ちゃんグリフォンだったり。色んな理由で、小さい頃からここで暮らしているグリフォンばかりです。
人にとっても慣れているから、僕達が乗ったりしても大丈夫なんだ。お兄ちゃんが一生懸命、興奮しながらそう教えてくれました。
「とりあえず順番に回ろう。グリフォンは最後だな。どうせそこから離れられなくなるだろうし」
最初に行ったのはネコさんグループの所です。小型や大型のネコ魔獣、エイドの大人バージョンや、ライオンみたいな魔獣、いろんな魔獣がいました。
動物園と違って、それぞれのいるスペースが分かれてないんだよ。小さい子も大きい子も、種類が違う子達も、みんな自由に動けるように。一番お外に小さい柵だけあって、屋根もないし、自由に飛んだり走ったりできるんだ。
「にゃあっ‼」
「ああ、そうだな。にゃあだな。でもなジョーディ、ここにいる魔獣は人に慣れていて、みんな優しいが、森や林、岩場や海にいる自然の魔獣は、とっても怖いんだぞ。ジョーディなんてひと口で食べられてしまう。ドラック達みたいに仲良くするのはいいが、気を付けるんだぞ」
「にゃんにゃ、きゃあぁぁぁ‼」
パパがなんか言ってるけど、僕はネコ魔獣に夢中です。すると、ドラックとドラッホが答えてくれました。
『うん、あの子可愛いね!』
『あっちの魔獣は、お父さんみたいにカッコイイ‼』
「おい、私の話を……」
「無理よあなた。もう少し大きくなってお勉強しないとね。今は可愛い、カッコいいで終わりよ」
「はぁ、確かにな。でも一応説明くらいはな。気のせいだろうが、ジョーディは変に私達の話を理解していると感じることがある」
ネコさんグループが終わったら、次はお魚さんグループ。それが終わったらトカゲさんグループでしょう。途中までは歩いていたんだけど、それだと時間がかかって、最後にグリフォンとあんまり遊べなくなっちゃうからって、パパが抱っこしてくれました。
それでね、ワンちゃんグループに行った時、柵の中に入っている人達がいたの。
係のお兄さんとお姉さん、それから僕達みたいにペンダントを付けている男の人です。その人の前にはシマシマ模様のワンちゃん魔獣がお座りをしています。
お兄ちゃんが、このしましまワンちゃんはブリザードドッグだと教えてくれました。雪とか氷とかの魔法を使えるワンちゃんなんだって。ほんとはもっと大きいけど、あそこにいる子はまだとっても小さくて、僕と同じ歳くらいらしいです。
「にゃの?」
『うん、何してるのかな?』
『でもあの子、何か嬉しそう』
「あれはね、これから契約するのよ」
僕とドラック、ドラッホが気になっていると、ママが説明してくれます。
魔獣園では時々、ここにいる魔獣さんと契約する人がいるんだって。たまたまここに遊びに来て、パパとローリーが昔そうだったみたいに、出会った瞬間、家族になりたいってお互いに思う人達。何回か遊びに来ているうちに、仲良しになって契約する人達。
色々な人と魔獣が出会える魔獣園だけど、「契約したい」って言うと、ここで働いている人達が何日もかけて、その人がどういう人か調べます。それで本当に契約して良いって判断されると、魔獣と契約できるんだ。
でも、少しでもその人に問題があると契約できません。例えば街で問題を起こす人とか、前に理由もなく飽きたからとかで、魔獣と契約を解除しちゃった人とか。そういう人達は契約させてもらえません。
あっ、あとね、こういう人もいたみたい。事前に調べた人の中に、盗賊だった人が。その盗賊は上手に自分のことを隠していて、街の人達も気付かなかったんだけど、魔獣園の人達が細かく調べ上げて捕まえちゃったんだ。凄いね、魔獣園のお兄さん、お姉さん。
「あの人は認められたから、これからあの子と契約するのよ」
パパ達が歩き始めます。僕は男の人とブリザードドッグを見ながら、自分が大きくなって、もっとここで自由に遊べるようになったら、お友達になれる魔獣さんがいるかなって考えました。
セレナさんが僕とお兄ちゃんに、簡単に契約できる魔法をくれたでしょう? 僕は、僕と一緒にいたいって思ってくれる魔獣達と契約して、みんなで遊びたいの。お家でゴロゴロしたりするのも良いよね。
それからパパやママ、お兄ちゃんにレスター達も一緒に、みんなでお出かけしたり。ね、楽しそうでしょう?
色々なグループを回って、いよいよ鳥さんグループです。ドキドキ、ワクワク。早く、早くグリフォンの所に行こう! いつもみたいにパパの手を引っ張ります。そして……。
「にょおぉぉぉぉぉぉ‼」
僕達の前には鷲さんみたいな鷹さんみたいな、大きな大きなグリフォンが。スプリングホースよりも大きいグリフォンがいっぱいです。お兄ちゃんが僕を抜かして、係のお兄さん達の所に走って行きます。僕も行かなくちゃ‼
慌ててお兄ちゃんを追いかけます。う~、遅い! 僕はローリーを呼びました。
「リー、ちゃの‼」
すぐにローリーが、僕の洋服を咥えて走ってくれました。どのグリフォンに乗せてもらえるのかな?
列の後ろに並んで順番を待ちます。僕達の前には五組の家族?友達?が並んでいました。前の人達の様子を見ていたら、自分で乗りたいグリフォンを選べるみたいです。お兄ちゃんが待っている間に、乗りたいグリフォンを僕も選ぼう! そう思って、柵を握って中を見ます。
どの子にしようかなぁ? 濃い茶色の子、ちょっとまだら模様の子、白い部分が多い子。色んなグリフォンがいます。う~ん、遠くの方はよく見えない。ジャンプしたり、背伸びしたり、何とかして遠くのグリフォンを見ます。
「あっ、僕、あの大きいグリフォンがいい‼」
「ああ、あのグリフォンか。じゃあ係の人にちゃんと言うんだぞ。だが、他の前に並んでる人が選んでしまったら、諦めるんだぞ」
「は~い!」
お兄ちゃんとパパがそんなことを話していました。
そっかあ、前の人が選んじゃうかもしれないんだ。僕が選んだ子は選ばれないといいなぁ。
列が少しずつ進んでいきます。早く選ばなくちゃ。でも……グリフォンは何で、みんな僕の方を向いているのかな。
最初は気のせいだと思っていたんだけど、柵の中にいるグリフォン達みんなが、止まっていても歩いていても、僕のことをずっと目で追ってくるんだ。それは人を乗せているグリフォン達も同じで、前を見ずにこっちを見ているの。
「何でみんな、同じ方向を向いてるんだ?」
あっ、パパも気付いたみたい。ね、みんな見ているよね。
『あれは……』
『ああ』
『まずいかもしれないな』
ローリーやドラックパパ、ドラッホパパがコソコソお話ししています。パパ達は気付いてないけど、何がまずいの? もしかして、みんな僕を乗せたくないとか? ちょっと心配になってきちゃいました。う~、あんまり考えないようにしよう。とにかく、乗りたいグリフォンを早く決めなくちゃ!
どんどん列が進んでいくうちに、ふと気付きました。とっても奥の方に、真っ白なグリフォンがいたんだ。その子も僕の方をじっと見ていて、僕と真っ白グリフォンの目が合って。
なんか不思議な感じです。前からあのグリフォンのことを知ってたみたい? 何でだろう? 今日初めて会うのにね。うん! 決めた‼ 僕、あのグリフォンにしよう‼ 前の人、お願いだから選ばないで。
そして、いよいよ僕達の番です。最初にお兄ちゃんが係のお兄さんに、あの大きいグリフォンに乗りたいって言いました。お兄ちゃんは、決めていた大きなグリフォンにちゃんと乗れそうです。
別の係のお兄さんが、大きいグリフォンを連れて来てくれました。あっ、この子は僕の方を見てない。
「どうしますか、一人で乗りますか? それともご家族のどなたかが?」
「僕、一人で乗りたい‼」
「大丈夫か? お兄さんの言うことを聞いて静かに乗るんだぞ。グリフォンの嫌がることは絶対にするんじゃないぞ」
「は~い‼」
お兄ちゃんは一人で乗るんだって。いいなぁ、僕も早く一人で乗れるくらい大きくなりたいなぁ。
連れて来てもらった大きいグリフォンに、お兄ちゃんが乗っけてもらいます。そのまま係のお兄さんがグリフォンに声をかけて、お兄ちゃんを乗せたグリフォンがそれに従ってゆっくり歩き始めました。
次はいよいよ僕の番です。パパが僕を抱っこしてくれました。係のお兄さんが聞いてきます。
「どのグリフォンがいいかな?」
「ちゃのぉ‼」
僕は真っ白グリフォンを指さします。あっ、あの子、こっちに歩いて来てくれてる。
「あの真っ白なグリフォンですね。では今連れて……」
お兄さんが急に黙っちゃいました。それに、僕も真っ白グリフォンが見えなくなっちゃって。なんだろう、茶色い頭がいっぱい見えるよ。
「な、何だ⁉」
パパ、どうしたの? パパの顔を見たらビックリしています。向こうで待っていたママ達も。それでみんなが見ている方を見たら、いつの間にか僕達の周りには、たくさんのグリフォンが集まって来ていました。さっきの茶色い頭はグリフォンのだったんだ。
しかも、みんなでギャウギャウ鳴き始めたました。どうしたの?
「ほら、お前達静かにしないか。もっと離れろ」
「今まで、自分から乗せたいって言ってくるやつはいなかったのに。そんなにこの子を乗せたいのか?」
係のお兄さん達がグリフォン達を離してくれたんだけど、なんかみんな、ブーブー不満そうなお顔をしてる。ごめんね、僕、あの真っ白い子に乗りたいの。もしまた別の日に遊びに来られたら、他の子にも乗るからね。
係のお兄さんが真っ白グリフォンを連れて来てくれている間に、パパが僕を横に下ろして、乗る準備をします。早く乗りたいなぁ。どんな感じなのかな? フサフサのお毛々? それともゴワゴワ? そんなことを考えている時でした。
『おい‼』
ローリーの声が聞こえた時、急に僕の体が持ち上がりました。ローリーが僕のことを、いつもみたいに咥えて持ち上げているの? でもローリーの声は横から聞こえているし。
「ジョーディ‼」
今度はパパの声が。どうしたの? それに僕の後ろの方を見ています。向こうでグリフォン達を離してくれていた係のお兄さん達が、慌てて僕の方に走って来ていて。僕はなんとか、後ろを振り向きました。
それでね、僕もビックリしちゃったよ。後ろには大きなグリフォンの顔がありました。とってもニコニコのグリフォンが、僕の洋服を咥えてブラブラしてたの。
「にょ?」
『待て‼』
ローリーがそう言った途端、グリフォンが僕をブラブラしたまま走り始めました。それを見て、離れていたグリフォン達も走り出して、追いかけっこを始めちゃったの。
「ぱ~ぱ‼」
「ジョーディ‼」
そういえば、前にもこういうことなかった? あれだ! 森で初めて会ったドラッホパパが、僕のことを連れて行っちゃった時。
でも、あの時のドラッホパパは怖い顔をしていたけど、今僕をブラブラしているグリフォンは楽しそうなお顔です。周りのグリフォンはずるいって言いたそうなお顔をしています。
『ギャウギャ‼』
一匹のグリフォンが、飛びながら近づいて来ました。そして、ギャウギャウと言いながら、僕を咥えているグリフォンに何かしています。上を向いたら、そのグリフォンさんが、僕を咥えているグリフォンさんのことをつついていました。
『ギャウギャ‼』
『ギャウゥゥゥ……、ギャッ‼』
僕を咥えているグリフォンさんが、大きなお声で鳴きました。
あれ? 僕なんか軽くなった? こう、ふわぁって。
それからパパやみんなが逆さまに見えて、地面も見えて。ん? 僕飛んでる?
そう思っていたらガクンって体が止まりました。それでまたさっきみたいにブラブラの状態です。後ろを見たら、さっき僕を咥えていたグリフォンさんじゃなくて、別のグリフォンさんが僕の洋服を咥えていました。それでまた走り始めたの。
『ジョーディ!』
『大丈夫か⁉』
『なんとか助けるからな』
横をローリー達――大人魔獣三匹が一緒に走ります。ドラックパパ達も大きいけど、グリフォンさんの方が大きいから、僕はみんなが踏まれないか心配。
『まったく。オレの大切なジョーディに何てことするんだ! おい! ジョーディを離せ‼』
ローリーがとっても怒っていて、グリフォンさんを止めようとするんだけど、上手に避けられちゃいます。他のグリフォンさん達も、またさっきみたいに追いかけて来ました。
ローリー達、本当に気を付けて。僕、怖くないよ。だってグリフォンさん達から、この前のドラッホパパに連れて行かれた時や、茶色のお洋服の悪い人達に連れて行かれそうになった時みたいに、「怖い」って感じないんだ。
でもグリフォンさん達、何で僕を咥えたり追いかけたりするの? 咥えている子は楽しそうだけど。そう思っていたら、また別のグリフォンさんが飛んできて、さっきみたいにケンカを始めて――ぽ~ん‼ また僕はクルクル宙を飛びます。
「おにょおぉぉぉ~‼」
『わあぁぁぁ‼』
『クルクルなのぉ‼』
ポッケ、ホミュちゃん、胸ポケットから出ないでね。危ないからね。
そして、また別のグリフォンさんが僕のことを咥えます。運ばれるんじゃなくて、みんなの背中に乗って遊びたいんだけど。そういえば、僕が乗りたかった真っ白グリフォンさんは?
ブラブラさせられながら周りを見ます。真っ白グリフォンさんは何処ぉ?
また他のグリフォンさんが追いついて、ケンカを始めた時でした。急に辺りが暗くなって、バサァ、バサァ‼と大きな羽音が。
上を見たら、一匹のグリフォンさんが、僕達の上を回りながら飛んでいました。それから少しずつ下に降りてきて、大きなお声でギャウゥゥゥ‼って鳴きながら、僕達の目の前に着地します。
あっ! 真っ白グリフォンさんだ‼ 降りてきたのは真っ白グリフォンさんでした。
降りてきた真っ白グリフォンさんは、僕の方を見てニコって笑った後怖い顔になって、周りのグリフォンさんのことを睨みます。今まで煩かったグリフォンさん達が、みんなしーんって静かになりました。
でも僕を咥えているグリフォンさんと、ケンカしているグリフォンさんは静かになりません。二匹に近づく真っ白グリフォンさん。もっと怖いお顔になると……。
『ギャウギャアァァァァァァッ‼』
おおお⁉ 大きな声。頭がぐわんってなっちゃったよ。でもその大きな声のおかげで、ケンカが止まりました。
僕を咥えていたグリフォンさんが、くちばしをそっと前に出します。すると、真っ白グリフォンさんが僕のことを咥え直して、頭を振りました。ぽんっ‼ また僕は宙を飛んでいます。何でみんな、僕のことを投げるの?
べしゃ‼ 僕はうつ伏せで、何かの上に乗りました。目をそっと開けて……ん? この真っ白なお毛々は……僕が乗ったのは真っ白グリフォンさんの背中でした。
「にょおぉぉぉぉぉぉ‼」
喜ぶ僕。静かに真っ白グリフォンさんが歩き始めて、走って来るパパ達の方に向かいます。
「ぱ~ぱ‼」
「ジョーディ‼ 大丈夫か‼」
パパが僕を下ろそうとするけど、僕は拒否です。だって、せっかく真っ白グリフォンさんに乗れたのに。ほら、早くパパも乗って。
僕達の周りにいたグリフォンさんを、係のお兄さん達が急いで何処かに連れて行きます。向こうの大きいお家が、みんなの暮らすお家なんだって。
「ほら、お前も一度戻るぞ」
係のお兄さんまで僕を下ろそうとします。ダメだよ! 一緒に遊ぶの! 僕は真っ白グリフォンの首にしがみ付きました。真っ白グリフォン……面倒くさい、グリフォンの「グ」と真っ白の「し」で「グッシー」ね。グッシーもお顔をプイってします。
「申し訳ありません。ほら」
それでも下ろそうとしてくるお兄さん。そんな係のお兄さんをパパが止めました。
「このグリフォンは落ち着いているようだ。どうだろう、うちのジョーディも乗りたがっているし、このまま乗せてもらえないだろうか」
「かまいませんが、よろしいので?」
「ああ、これだけ息を合わせて、下りるのを拒否されたらな」
パパが台を持って来てもらって、僕の後ろに乗りました。
「ちゃあ‼」
『ギャウギャウ‼』
僕が出発って言ったら、グッシーが鳴いて歩き始めます。歩きながら僕は、側を歩くドラックパパ達にお願いしました。いつもの魔法で、グリフォンさんのお話が分かるようにしてって。でもドラックパパ達はダメだって首を横に振りました。どうして?
他のグリフォンさん達なら言葉が分かるようになるけど、グッシーと、お兄ちゃんが乗っているグリフォンさんは魔力が強いから、簡単にお話しできないんだって。何回も会って慣れたら分かるようになるかも、それか契約するか。ということでした。
そっかぁ。僕、いつでもここに遊びに来られるわけじゃないから、すぐにお話しできるようにはならないね。それにすぐに契約するのもダメ。ちゃんとお友達になってからならいいけど。
ちょっと残念。でも、いつかお話しできるといいなぁ。
「こんにちは。ようこそ魔獣園へ。この子はノーブルタイガーのエイドです。撫でてみますか」
係のお兄さんが、僕が触りやすいように、エイドを抱っこしてしゃがんでくれます。パパも僕の後ろにしゃがんで、そっと撫で撫でだぞって言いました。
そっと、そっと。僕はエイドの背中と頭を撫で撫で。エイドはふんふんとお鼻を鳴らしながら、撫で終わった後、僕の手を舐めてくれたよ。
それからお兄さんが、エイドのおやつを僕にくれました。エイドのおやつは、お肉をパサパサに乾燥させたやつでした。それをパパがちぎってくれて、そっとエイドの前に。
エイドは匂いを嗅いだ後、モグモグそれを食べてから「にゃあぁぁぁ‼」って、嬉しそうに鳴いてくれたんだ。
それ聞いて僕も嬉しくなっちゃって、
「にょおぉぉぉぉぉぉ‼」
そう言いながらジャンプします。そしたら、ゴチンッ‼ ガッ‼
「いてっ‼」
「ちゃ‼ ちゃぁ……うっ、うわあぁぁぁん‼」
頭が、頭が痛い‼ 何がぶつかったの⁉
ママが僕を抱っこして、頭を撫でてくれました。痛いよう、パパ、いつもみたいに早く治して。
「くそ、せっかく少し離れて、顔を上げていたのに」
「ぷっ、ふふふ。やっぱりあなたの対策じゃダメだったみたいね」
「おい、笑いごとじゃないんだぞ」
「わあぁぁぁぁぁぁん‼」
「待て、今先に治してやるから」
パパが僕の頭に手を乗せて、ヒールをしてくれました。
ふう……まだちょっと涙が出ているけど、痛みは消えました。
ふと、なんでか笑っているママを見ます。それからパパの方を見ると、顎を撫でながら鼻を押さえていました。もう! パパったら、また僕にぶつかったの!
「まさか二段階攻撃が来るなんてね。ジャンプしたジョーディの頭が顎にぶつかって、そのまま頭がずれて、鼻に当たるなんて。ふふふ」
「はぁ、私はどうしてもジョーディの攻撃から逃げられないのか?」
パパ、僕、頭とっても痛かったよ。ぶつからないように気を付けてよ。
「ほら、ジョーディ、そんなブスッとしたお顔しないで。可愛いお顔が台無しよ」
パパは僕の後すぐに、自分のことを治しました。
「はぁ、痛かった。それにしても最近のジョーディは表情が豊かになったな。特に怒ってる時や、今みたいに気に食わないことがあった時の顔といったら」
「おでこに皺寄せて、口をう~ってさせちゃって、あなたとマイケルがふてくされてる時の顔にそっくりだわ。嫌だわ、そんなの似なくても良いのに」
パパが僕の頭にぶつかったせいで、せっかくエイドにご飯あげられて楽しかったのに、ちょっと嫌な感じだよ。
お兄さんが困った顔で笑いながら、僕達にペンダントをくれます。僕とお兄ちゃんのには、ドラゴンさんのお顔の形をした銀の板が付いていて、パパ達のは、ただの丸い銀の板が付いています。
「こちらは入園証になりますので、園から出られるまで外さないでください。あと、従魔の名前をこちらに記入ください。それから付けられるところで良いので、こちらを付けていただいて」
パパがお兄さんからもらった物には、キラキラしてる小さい石が付いているの。ママが紙にドラック達の名前を書いているうちに、パパがドラック達のお耳にそれを付けました。
なんだかイヤリングみたい。これはドラック達が、魔獣園にいる魔獣じゃなくて、僕達の魔獣ですって証明なんだって。
小さい魔獣――ポッケとかホミュちゃん、土人形のブラスターは、小さすぎるからそのままで良いけど、魔獣園の中では絶対に離れないでくださいって言われました。そしたらポッケが、
『ボク、いつもポケットの中だよ』
ってお返事しました。
うん、そうだよね。いつもポケットの中だし、何処にも行かないから大丈夫だよね。
色々準備をしたら、やっと中に入れます。エイドにバイバイして、パパと手を繋いで門の中に入りました。
魔獣園の中は、魔獣の種類によって色んなコーナーに分かれていました。
ドラック達みたいな狼とかイヌとか、そういう魔獣ばっかり集まっているグループ。
ドラッホやエイド達みたいな、ネコさん達が集まっているグループ。
あとは鳥さんとかトカゲみたいなのが集まっているグループ。そんな風に、全部分かれているんだって。
一番人気は鳥さんグループ。グリフォンっていう魔獣がいて、その背中に乗せてもらえるんだって。とっても強いから、冒険者さんやクランマーさん達みたいな強い騎士さんでも、戦うのが大変な魔獣です。
でもここにいるグリフォンは、ちょっと違います。悪い人達が盗んできた卵を魔獣園が保護して、そこから孵った子だったり。一匹になっちゃったところを保護された赤ちゃんグリフォンだったり。色んな理由で、小さい頃からここで暮らしているグリフォンばかりです。
人にとっても慣れているから、僕達が乗ったりしても大丈夫なんだ。お兄ちゃんが一生懸命、興奮しながらそう教えてくれました。
「とりあえず順番に回ろう。グリフォンは最後だな。どうせそこから離れられなくなるだろうし」
最初に行ったのはネコさんグループの所です。小型や大型のネコ魔獣、エイドの大人バージョンや、ライオンみたいな魔獣、いろんな魔獣がいました。
動物園と違って、それぞれのいるスペースが分かれてないんだよ。小さい子も大きい子も、種類が違う子達も、みんな自由に動けるように。一番お外に小さい柵だけあって、屋根もないし、自由に飛んだり走ったりできるんだ。
「にゃあっ‼」
「ああ、そうだな。にゃあだな。でもなジョーディ、ここにいる魔獣は人に慣れていて、みんな優しいが、森や林、岩場や海にいる自然の魔獣は、とっても怖いんだぞ。ジョーディなんてひと口で食べられてしまう。ドラック達みたいに仲良くするのはいいが、気を付けるんだぞ」
「にゃんにゃ、きゃあぁぁぁ‼」
パパがなんか言ってるけど、僕はネコ魔獣に夢中です。すると、ドラックとドラッホが答えてくれました。
『うん、あの子可愛いね!』
『あっちの魔獣は、お父さんみたいにカッコイイ‼』
「おい、私の話を……」
「無理よあなた。もう少し大きくなってお勉強しないとね。今は可愛い、カッコいいで終わりよ」
「はぁ、確かにな。でも一応説明くらいはな。気のせいだろうが、ジョーディは変に私達の話を理解していると感じることがある」
ネコさんグループが終わったら、次はお魚さんグループ。それが終わったらトカゲさんグループでしょう。途中までは歩いていたんだけど、それだと時間がかかって、最後にグリフォンとあんまり遊べなくなっちゃうからって、パパが抱っこしてくれました。
それでね、ワンちゃんグループに行った時、柵の中に入っている人達がいたの。
係のお兄さんとお姉さん、それから僕達みたいにペンダントを付けている男の人です。その人の前にはシマシマ模様のワンちゃん魔獣がお座りをしています。
お兄ちゃんが、このしましまワンちゃんはブリザードドッグだと教えてくれました。雪とか氷とかの魔法を使えるワンちゃんなんだって。ほんとはもっと大きいけど、あそこにいる子はまだとっても小さくて、僕と同じ歳くらいらしいです。
「にゃの?」
『うん、何してるのかな?』
『でもあの子、何か嬉しそう』
「あれはね、これから契約するのよ」
僕とドラック、ドラッホが気になっていると、ママが説明してくれます。
魔獣園では時々、ここにいる魔獣さんと契約する人がいるんだって。たまたまここに遊びに来て、パパとローリーが昔そうだったみたいに、出会った瞬間、家族になりたいってお互いに思う人達。何回か遊びに来ているうちに、仲良しになって契約する人達。
色々な人と魔獣が出会える魔獣園だけど、「契約したい」って言うと、ここで働いている人達が何日もかけて、その人がどういう人か調べます。それで本当に契約して良いって判断されると、魔獣と契約できるんだ。
でも、少しでもその人に問題があると契約できません。例えば街で問題を起こす人とか、前に理由もなく飽きたからとかで、魔獣と契約を解除しちゃった人とか。そういう人達は契約させてもらえません。
あっ、あとね、こういう人もいたみたい。事前に調べた人の中に、盗賊だった人が。その盗賊は上手に自分のことを隠していて、街の人達も気付かなかったんだけど、魔獣園の人達が細かく調べ上げて捕まえちゃったんだ。凄いね、魔獣園のお兄さん、お姉さん。
「あの人は認められたから、これからあの子と契約するのよ」
パパ達が歩き始めます。僕は男の人とブリザードドッグを見ながら、自分が大きくなって、もっとここで自由に遊べるようになったら、お友達になれる魔獣さんがいるかなって考えました。
セレナさんが僕とお兄ちゃんに、簡単に契約できる魔法をくれたでしょう? 僕は、僕と一緒にいたいって思ってくれる魔獣達と契約して、みんなで遊びたいの。お家でゴロゴロしたりするのも良いよね。
それからパパやママ、お兄ちゃんにレスター達も一緒に、みんなでお出かけしたり。ね、楽しそうでしょう?
色々なグループを回って、いよいよ鳥さんグループです。ドキドキ、ワクワク。早く、早くグリフォンの所に行こう! いつもみたいにパパの手を引っ張ります。そして……。
「にょおぉぉぉぉぉぉ‼」
僕達の前には鷲さんみたいな鷹さんみたいな、大きな大きなグリフォンが。スプリングホースよりも大きいグリフォンがいっぱいです。お兄ちゃんが僕を抜かして、係のお兄さん達の所に走って行きます。僕も行かなくちゃ‼
慌ててお兄ちゃんを追いかけます。う~、遅い! 僕はローリーを呼びました。
「リー、ちゃの‼」
すぐにローリーが、僕の洋服を咥えて走ってくれました。どのグリフォンに乗せてもらえるのかな?
列の後ろに並んで順番を待ちます。僕達の前には五組の家族?友達?が並んでいました。前の人達の様子を見ていたら、自分で乗りたいグリフォンを選べるみたいです。お兄ちゃんが待っている間に、乗りたいグリフォンを僕も選ぼう! そう思って、柵を握って中を見ます。
どの子にしようかなぁ? 濃い茶色の子、ちょっとまだら模様の子、白い部分が多い子。色んなグリフォンがいます。う~ん、遠くの方はよく見えない。ジャンプしたり、背伸びしたり、何とかして遠くのグリフォンを見ます。
「あっ、僕、あの大きいグリフォンがいい‼」
「ああ、あのグリフォンか。じゃあ係の人にちゃんと言うんだぞ。だが、他の前に並んでる人が選んでしまったら、諦めるんだぞ」
「は~い!」
お兄ちゃんとパパがそんなことを話していました。
そっかあ、前の人が選んじゃうかもしれないんだ。僕が選んだ子は選ばれないといいなぁ。
列が少しずつ進んでいきます。早く選ばなくちゃ。でも……グリフォンは何で、みんな僕の方を向いているのかな。
最初は気のせいだと思っていたんだけど、柵の中にいるグリフォン達みんなが、止まっていても歩いていても、僕のことをずっと目で追ってくるんだ。それは人を乗せているグリフォン達も同じで、前を見ずにこっちを見ているの。
「何でみんな、同じ方向を向いてるんだ?」
あっ、パパも気付いたみたい。ね、みんな見ているよね。
『あれは……』
『ああ』
『まずいかもしれないな』
ローリーやドラックパパ、ドラッホパパがコソコソお話ししています。パパ達は気付いてないけど、何がまずいの? もしかして、みんな僕を乗せたくないとか? ちょっと心配になってきちゃいました。う~、あんまり考えないようにしよう。とにかく、乗りたいグリフォンを早く決めなくちゃ!
どんどん列が進んでいくうちに、ふと気付きました。とっても奥の方に、真っ白なグリフォンがいたんだ。その子も僕の方をじっと見ていて、僕と真っ白グリフォンの目が合って。
なんか不思議な感じです。前からあのグリフォンのことを知ってたみたい? 何でだろう? 今日初めて会うのにね。うん! 決めた‼ 僕、あのグリフォンにしよう‼ 前の人、お願いだから選ばないで。
そして、いよいよ僕達の番です。最初にお兄ちゃんが係のお兄さんに、あの大きいグリフォンに乗りたいって言いました。お兄ちゃんは、決めていた大きなグリフォンにちゃんと乗れそうです。
別の係のお兄さんが、大きいグリフォンを連れて来てくれました。あっ、この子は僕の方を見てない。
「どうしますか、一人で乗りますか? それともご家族のどなたかが?」
「僕、一人で乗りたい‼」
「大丈夫か? お兄さんの言うことを聞いて静かに乗るんだぞ。グリフォンの嫌がることは絶対にするんじゃないぞ」
「は~い‼」
お兄ちゃんは一人で乗るんだって。いいなぁ、僕も早く一人で乗れるくらい大きくなりたいなぁ。
連れて来てもらった大きいグリフォンに、お兄ちゃんが乗っけてもらいます。そのまま係のお兄さんがグリフォンに声をかけて、お兄ちゃんを乗せたグリフォンがそれに従ってゆっくり歩き始めました。
次はいよいよ僕の番です。パパが僕を抱っこしてくれました。係のお兄さんが聞いてきます。
「どのグリフォンがいいかな?」
「ちゃのぉ‼」
僕は真っ白グリフォンを指さします。あっ、あの子、こっちに歩いて来てくれてる。
「あの真っ白なグリフォンですね。では今連れて……」
お兄さんが急に黙っちゃいました。それに、僕も真っ白グリフォンが見えなくなっちゃって。なんだろう、茶色い頭がいっぱい見えるよ。
「な、何だ⁉」
パパ、どうしたの? パパの顔を見たらビックリしています。向こうで待っていたママ達も。それでみんなが見ている方を見たら、いつの間にか僕達の周りには、たくさんのグリフォンが集まって来ていました。さっきの茶色い頭はグリフォンのだったんだ。
しかも、みんなでギャウギャウ鳴き始めたました。どうしたの?
「ほら、お前達静かにしないか。もっと離れろ」
「今まで、自分から乗せたいって言ってくるやつはいなかったのに。そんなにこの子を乗せたいのか?」
係のお兄さん達がグリフォン達を離してくれたんだけど、なんかみんな、ブーブー不満そうなお顔をしてる。ごめんね、僕、あの真っ白い子に乗りたいの。もしまた別の日に遊びに来られたら、他の子にも乗るからね。
係のお兄さんが真っ白グリフォンを連れて来てくれている間に、パパが僕を横に下ろして、乗る準備をします。早く乗りたいなぁ。どんな感じなのかな? フサフサのお毛々? それともゴワゴワ? そんなことを考えている時でした。
『おい‼』
ローリーの声が聞こえた時、急に僕の体が持ち上がりました。ローリーが僕のことを、いつもみたいに咥えて持ち上げているの? でもローリーの声は横から聞こえているし。
「ジョーディ‼」
今度はパパの声が。どうしたの? それに僕の後ろの方を見ています。向こうでグリフォン達を離してくれていた係のお兄さん達が、慌てて僕の方に走って来ていて。僕はなんとか、後ろを振り向きました。
それでね、僕もビックリしちゃったよ。後ろには大きなグリフォンの顔がありました。とってもニコニコのグリフォンが、僕の洋服を咥えてブラブラしてたの。
「にょ?」
『待て‼』
ローリーがそう言った途端、グリフォンが僕をブラブラしたまま走り始めました。それを見て、離れていたグリフォン達も走り出して、追いかけっこを始めちゃったの。
「ぱ~ぱ‼」
「ジョーディ‼」
そういえば、前にもこういうことなかった? あれだ! 森で初めて会ったドラッホパパが、僕のことを連れて行っちゃった時。
でも、あの時のドラッホパパは怖い顔をしていたけど、今僕をブラブラしているグリフォンは楽しそうなお顔です。周りのグリフォンはずるいって言いたそうなお顔をしています。
『ギャウギャ‼』
一匹のグリフォンが、飛びながら近づいて来ました。そして、ギャウギャウと言いながら、僕を咥えているグリフォンに何かしています。上を向いたら、そのグリフォンさんが、僕を咥えているグリフォンさんのことをつついていました。
『ギャウギャ‼』
『ギャウゥゥゥ……、ギャッ‼』
僕を咥えているグリフォンさんが、大きなお声で鳴きました。
あれ? 僕なんか軽くなった? こう、ふわぁって。
それからパパやみんなが逆さまに見えて、地面も見えて。ん? 僕飛んでる?
そう思っていたらガクンって体が止まりました。それでまたさっきみたいにブラブラの状態です。後ろを見たら、さっき僕を咥えていたグリフォンさんじゃなくて、別のグリフォンさんが僕の洋服を咥えていました。それでまた走り始めたの。
『ジョーディ!』
『大丈夫か⁉』
『なんとか助けるからな』
横をローリー達――大人魔獣三匹が一緒に走ります。ドラックパパ達も大きいけど、グリフォンさんの方が大きいから、僕はみんなが踏まれないか心配。
『まったく。オレの大切なジョーディに何てことするんだ! おい! ジョーディを離せ‼』
ローリーがとっても怒っていて、グリフォンさんを止めようとするんだけど、上手に避けられちゃいます。他のグリフォンさん達も、またさっきみたいに追いかけて来ました。
ローリー達、本当に気を付けて。僕、怖くないよ。だってグリフォンさん達から、この前のドラッホパパに連れて行かれた時や、茶色のお洋服の悪い人達に連れて行かれそうになった時みたいに、「怖い」って感じないんだ。
でもグリフォンさん達、何で僕を咥えたり追いかけたりするの? 咥えている子は楽しそうだけど。そう思っていたら、また別のグリフォンさんが飛んできて、さっきみたいにケンカを始めて――ぽ~ん‼ また僕はクルクル宙を飛びます。
「おにょおぉぉぉ~‼」
『わあぁぁぁ‼』
『クルクルなのぉ‼』
ポッケ、ホミュちゃん、胸ポケットから出ないでね。危ないからね。
そして、また別のグリフォンさんが僕のことを咥えます。運ばれるんじゃなくて、みんなの背中に乗って遊びたいんだけど。そういえば、僕が乗りたかった真っ白グリフォンさんは?
ブラブラさせられながら周りを見ます。真っ白グリフォンさんは何処ぉ?
また他のグリフォンさんが追いついて、ケンカを始めた時でした。急に辺りが暗くなって、バサァ、バサァ‼と大きな羽音が。
上を見たら、一匹のグリフォンさんが、僕達の上を回りながら飛んでいました。それから少しずつ下に降りてきて、大きなお声でギャウゥゥゥ‼って鳴きながら、僕達の目の前に着地します。
あっ! 真っ白グリフォンさんだ‼ 降りてきたのは真っ白グリフォンさんでした。
降りてきた真っ白グリフォンさんは、僕の方を見てニコって笑った後怖い顔になって、周りのグリフォンさんのことを睨みます。今まで煩かったグリフォンさん達が、みんなしーんって静かになりました。
でも僕を咥えているグリフォンさんと、ケンカしているグリフォンさんは静かになりません。二匹に近づく真っ白グリフォンさん。もっと怖いお顔になると……。
『ギャウギャアァァァァァァッ‼』
おおお⁉ 大きな声。頭がぐわんってなっちゃったよ。でもその大きな声のおかげで、ケンカが止まりました。
僕を咥えていたグリフォンさんが、くちばしをそっと前に出します。すると、真っ白グリフォンさんが僕のことを咥え直して、頭を振りました。ぽんっ‼ また僕は宙を飛んでいます。何でみんな、僕のことを投げるの?
べしゃ‼ 僕はうつ伏せで、何かの上に乗りました。目をそっと開けて……ん? この真っ白なお毛々は……僕が乗ったのは真っ白グリフォンさんの背中でした。
「にょおぉぉぉぉぉぉ‼」
喜ぶ僕。静かに真っ白グリフォンさんが歩き始めて、走って来るパパ達の方に向かいます。
「ぱ~ぱ‼」
「ジョーディ‼ 大丈夫か‼」
パパが僕を下ろそうとするけど、僕は拒否です。だって、せっかく真っ白グリフォンさんに乗れたのに。ほら、早くパパも乗って。
僕達の周りにいたグリフォンさんを、係のお兄さん達が急いで何処かに連れて行きます。向こうの大きいお家が、みんなの暮らすお家なんだって。
「ほら、お前も一度戻るぞ」
係のお兄さんまで僕を下ろそうとします。ダメだよ! 一緒に遊ぶの! 僕は真っ白グリフォンの首にしがみ付きました。真っ白グリフォン……面倒くさい、グリフォンの「グ」と真っ白の「し」で「グッシー」ね。グッシーもお顔をプイってします。
「申し訳ありません。ほら」
それでも下ろそうとしてくるお兄さん。そんな係のお兄さんをパパが止めました。
「このグリフォンは落ち着いているようだ。どうだろう、うちのジョーディも乗りたがっているし、このまま乗せてもらえないだろうか」
「かまいませんが、よろしいので?」
「ああ、これだけ息を合わせて、下りるのを拒否されたらな」
パパが台を持って来てもらって、僕の後ろに乗りました。
「ちゃあ‼」
『ギャウギャウ‼』
僕が出発って言ったら、グッシーが鳴いて歩き始めます。歩きながら僕は、側を歩くドラックパパ達にお願いしました。いつもの魔法で、グリフォンさんのお話が分かるようにしてって。でもドラックパパ達はダメだって首を横に振りました。どうして?
他のグリフォンさん達なら言葉が分かるようになるけど、グッシーと、お兄ちゃんが乗っているグリフォンさんは魔力が強いから、簡単にお話しできないんだって。何回も会って慣れたら分かるようになるかも、それか契約するか。ということでした。
そっかぁ。僕、いつでもここに遊びに来られるわけじゃないから、すぐにお話しできるようにはならないね。それにすぐに契約するのもダメ。ちゃんとお友達になってからならいいけど。
ちょっと残念。でも、いつかお話しできるといいなぁ。
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