もふもふが溢れる異世界で幸せ加護持ち生活!

ありぽん

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4巻

4-1

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 プロローグ


 僕の名前はジョーディ。日本から異世界の侯爵家こうしゃくけに転生して、この前一歳になりました。
 大きな街・アースカリナで一歳の誕生日パーティーをしてもらった後、いつも暮らしているフローティーの街に帰って来た僕達。
 しばらくしたら、黒いもやもやが街に入って来て、大変なことになっちゃいました。この黒いもやもやの中に入ると、魔獣まじゅうさん達の具合が悪くなったり、暴れたりしちゃうんだよ。
 そのもやもやは遠くの森から発生したみたいで、そこで暮らしていた魔獣さんや他の生き物が逃げ出して、今はあちこちに隠れています。
 そんな風に逃げてきた妖精ようせいさんが僕の家にもやって来て、お友達になりました。
 花の妖精のピットとビット、それに闇の精霊せいれいのシャーマ君。
 シャーマ君は黒いもやもやに入っても具合が悪くならないんだけど、その代わり、力が入らなくなっちゃうんだって。怖いねぇ。
 こんな嫌なもやもやだけど、消す方法があります。
『フラッシュ』っていう光の魔法で、パパが使ってくれました。カッコいいんだよ。
『フラッシュ』が効くって分かってからちょっとして、僕達はパパのお兄さんの、クレインおじさんが住んでいるミリーヘンっていう街に行くことになりました。クレインおじさんも、黒いもやもやのせいで困っているみたいなんだ。
 パパ、ママ、お兄ちゃんに使用人さん達、騎士団の人達、それにじぃじとばぁばでしょう。あと僕の友達の魔獣さん達がいっぱい。大勢でおじさんの家を目指して出発です。
 だけど、フローティーからミリーヘンへは、十日もかかるんだよ。僕、ずっと馬車に乗っているから飽きちゃいました。
 途中で、森から逃げ出したたくさんの魔獣さん達が僕に会いに来て、「もやもやを消してくれてありがとう」って言ってくれたんだけど……もやもやを消したのはパパだよ? 変なの。


 そして、ミリーヘンに着くちょっと前に、クレインおじさんの方からやって来て、僕は初めてクレインおじさんと会いました。
 パパとそっくりなんだけど、やっぱりおじさんです。でも「おじさん」って言ったら、ちょっと悲しそうでした。
 そんなこんなでクレインおじさんと合流した僕達は、ミリーヘンへと再出発します。
 どんな街なんだろう? いっぱい遊べるといいなぁ。




 1章 タヌーのウンチと噴水ふんすいダイブ


「ふわあぁぁぁ~」
「あら、ちょうど起きたわね」

 お昼寝から起きたら、馬車がちょうどミリーヘンの街に着くところでした。ママが笑って僕の頭をでています。
 僕が伸びをして頭をスッキリさせていたら、パパが窓を開けてくれました。窓から顔を出したら、道の先には大きな壁が。僕の住んでいるフローティーと同じくらいの、街を囲む大きな壁です。壁の上にはたくさんの騎士さんや、たぶん冒険者さん?が立っていました。
 あれ? 何か変?
 もうすぐ夜なのに、街から出て行こうとする人達でいっぱいです。逆に、街に入るための列は人が少なくて。
 不思議ふしぎに思って窓の外を見ていると、スプリングホースに乗って馬車の横を歩いていたクレインおじさんが言いました。

「今から外に出るのはまずい。何でこんな夕方に移動しようとしてるんだ」
「他の街の話を聞いて、急遽きゅうきょ避難しようとしてこの時間になったんでしょう」

 執事しつじのスタリオンさんがそう答えると、クレインおじさんは嫌そうなお顔をしました。

「夜に街の外に出るなんて、危険だと分かっているだろうに。スタリオン、止めるぞ」

 それから、馬車を運転しているお兄さんにも話しかけます。

「お前達はゆっくり来い。どうせ少ないとはいえ、列に並ぶんだからな」

 すると、僕の隣に座っていたパパが、クレインおじさんに呼びかけました。

「私も手伝うよ。ルリエット、あとは任せる」
「ええ」

 ママが頷いた後、馬車が止まってパパが下りていきます。それと入れ替わりに、ばぁばが乗って来て僕の隣に座りました。
 外から、パパが騎士団のアドニスさん達を呼ぶ声が聞こえてきます。その後は、街に戻ってくださいとか、すぐに引き返せって、色んな声が聞こえてきました。
 僕達の馬車は、そのまま街に入るための列に並びます。列が短かったからすぐに街に入れたよ。
 街の中は夕方なのにとても明るくて、僕の友達の魔獣さん達が大喜びです。

『わぁ、この街もお昼だね!』
『もやもやが来なくて、このままお昼みたいだったら、ずっとお外で遊べるね』

 ダークウルフのドラックと、ホワイトキャットのドラッホが窓に足をかけて、キョロキョロしています。ここに来るまで、黒いもやもやが出ると、僕達は部屋とか馬車から出ちゃダメって言われて、いつもお留守番でした。
 ドラック達の言ったことを聞いて、ホワイトミラリーバードのホミュちゃんが、困った様子で言いました。

『でも寝る時間がないなのぉ』
『僕、寝るの好きだよ』
『オレも好きだぜ!』
『オレは寝るのも遊ぶのも、どっちも好きなんだぞ』

 土人形のポッケとブラスター、サウキーのミルクがホミュちゃんに続いてワイワイと自分の意見を発表します。ピット達妖精も楽しそうに頷いていました。
 僕もミルクに賛成だったので、手を勢い良く挙げます。

「ちゃいの!」
『うん、ジョーディも遊ぶのも寝るのも好きだよね』

 ドラックが頷いてくれました。馬車の中にいる魔獣さんは、まだ上手くしゃべれない僕の言葉が分かるんだよ。ドラックのお父さん――ドラックパパとか、大人になっちゃうとダメみたいなんだけど。不思議だねぇ。
 もっと街をよく見たくなって、僕はばぁばに抱っこをお願いしました。でもちょっと待ってねって。それから馬車が右の方に少し進んで止まりました。ここでパパ達を待つみたい。
 抱っこしてもらえなくて、あんまり外が見えなかったけど、さっきまで僕達が並んでいた列が、少し長くなっているのは見えました。

「今街から出たばかりの者はこちらの列に並べ!」

 門の側にいる騎士さんが、外に向かって叫んでいます。すると、ゾロゾロと新しい列ができました。
 それから少しして、パパ達が街に入って来ます。パパはスプリングホースに乗ったまま、馬車が進み始めました。ブラックパンサーのローリーがその横を歩いています。
 街の中は、しまっているお店がいっぱい。みんな、街から逃げちゃったのかな。
 でも開いているお店もあって、何だか美味おいしそうなにおいがしました。あそこに見えるなべの中には、何が入っているのかな? あっちにはとっても大きいお肉が、串に刺さって売られています。
 馬車は止まらずにどんどん街の中を進んで、着いたのは僕の家にそっくりの家の前でした。色や窓の形が違うけど、形はそっくりなの。
 門の前にいた騎士さんがパパ達に挨拶あいさつをすると、僕達の馬車もそのまま門を通って中に。騎士さんに手を振ったら、振り返してくれたよ。
 玄関前に着くと、やっと外に出られると思って、魔獣達が勢い良く馬車から下りていきます。いつもは僕が最後だけど、今日はパパに洋服をつかんでもらって少し早めに下りました。
 クレインおじさんが扉の前に立つと、その後ろにスタリオンさんが立ちます。それから、家の中から使用人さんとメイドさん達がゾロゾロ出て来て、二人の横にズラッと並びました。

「よく来てくれた。さぁ、中に入ってくれ」

 クレインおじさんがニコニコしながらそう言うと、パパが質問します。

「ローリーはいつも屋敷の中に入っていたが、ドラックパパ達を入れても?」
「もちろんだ。ただ、さすがにグエタは大きいからな。休憩室きゅうけいしつのある方の庭に案内するから、そっちに行ってくれ」

 それを聞いて、僕は石の魔獣のグエタに手を振ります。またすぐに会えるからね、お庭で待っていてね。グエタも手を振ってくれて、使用人さんの後ろをついて行きました。
 そして、僕達は順番に家の中に入って行きます。僕はお兄ちゃんの後ろです。扉の前に階段があったから、そこはママに抱っこしてもらいました。ママの腕から降りて、玄関の中を見たら……

「にょおぉぉぉぉぉぉ‼」

 とても広くて綺麗きれいな玄関です。僕は思わず叫んじゃいました。ドラックやドラッホも色んな所を見ながらワクワクしています。

『わぁ、凄いね』
『ジョーディのお家にないものがあるよ』

 ポッケも同じものを見て首をかしげました。

『アレは何かなぁ?』
『面白いなの!』
『おれ、あっちに行ってみたいんだぞ!』

 ホミュちゃんとミルクもそれに気づいて興奮しています。
 みんなが見ているのは、変な大きな人形でした。

「ちゃいのぉ‼」

 僕は人形の置いてある方を指さして、みんなに突撃って言いました。もちろん僕はすぐにしゃがんで高速ハイハイです。みんなで一気に走ります。
 でも慌ててパパ達が追いかけて来て、すぐに確保されちゃいました。ドラック達もドラックパパ達と、それから使用人のレスターやメイドのベルに捕まっちゃったよ。
 パパが静かにしなさいって怒るけど、僕達はバタバタ暴れます。だって見たいんだもん!
 そんな様子を見ていたクレインおじさんが、僕達のことを「陸に上がった魚みたいだ」って言って、とっても笑っているの。僕達魚じゃないよ。それに、おじさんは笑ってるけど、僕達は捕まえられて怒っているんだからね。
 何とか床に降りようとしたんだけど、結局そのまま休憩する部屋に連れて行かれちゃいました。
 その後は、僕達はブスッとしたまま、こっちを見て笑うパパ達とお茶を飲みました。
 パパ達は大人同士でお話をして、僕と魔獣のみんなは窓からグエタに話しかけながら、夜のご飯までゆっくり過ごします。
 ドラックとドラッホが僕にコソコソと言いました。

『ねぇねぇ、あとで家の中を探検たんけんできるかな』
『探検したいね』
「ちゃいのよぉ? ちてよぉ」

 何も言わないで探検すると、さっきみたいに捕まっちゃうから、ちゃんとパパ達に聞いてから行こうね。
 と、思ったら。パパ達は夜ご飯を食べたら、すぐにお仕事に出かけちゃいました。だからママに探検しに行ってもいいか聞いたんだけど、ママはダメだって言います。

「ジョーディ、それにみんなも、ここは私達のお家じゃないのよ。人のお家の中でフラフラするのはダメなのよ」

 でも、僕の家にないものが廊下にいっぱいあるし、他にも何か面白いものがあると思うんだよね。
 諦め切れないから、明日、やっぱりクレインおじさんやパパに聞いてみよう。だって、前に森の中のお家に住んでいた時は、お部屋の探検中に綺麗な石を見つけて、それがきっかけでホミュちゃんに会えたからね。この家でも新しい物を発見して、新しいお友達に会えるかも。
 ご飯の後はまたグエタの所に行って、少しお話しした後におやすみなさいをしました。


 次の日起きたら、パパ達はまたいませんでした。昨日の夜遅くに帰って来た後、とっても早く起きてお仕事に行っちゃったんだって。もう! 遊んでいいか聞きたかったのに。
 と、思ったんだけど、ママがパパとクレインおじさんに聞いておいてくれました。お家の中とお庭なら探検してもいいって。だから最初はグエタと一緒にお庭を探検したかったんだけど、グエタもお仕事に行っちゃいました。
 はぁ、みんなお仕事ばっかり。もやもやを消さなくちゃいけないのは分かっているけど、でもみんながいないのは寂しいなぁ。ママ達もご飯食べたらお仕事をするんだって。
 僕がしょんぼりしていると、ドラックとドラッホがなぐさめてくれました。

『ジョーディ、お庭探検はグエタがいる時にして、僕達はまず僕達のお泊まりしてるお部屋と、ジョーディじぃじ達がお泊まりしてるお部屋から探検しよう』
『それで、お昼ご飯を食べてお昼寝したら、昨日の変な人形が置いてある所とか探検するの』
『お家大きいから探検大変。探検する所もいっぱい。早く行こ』

 そうだね。そうしようか。
 朝ご飯を食べてから、まずは僕達のお部屋から探検。でも特に変わったものがなかったからすぐに終わっちゃって、そのまま次はじぃじ達のお部屋に行くことにします。
 そして、じぃじのお部屋に行こうとお部屋から出た時でした。お兄ちゃんが最初にお部屋から出たんだけど、ちょっと大きい木の箱を持っている使用人さんとぶつかりそうになっちゃったの。そしたら使用人さんは驚いて、箱を落としちゃったんだ。

「マイケル様、飛び出してはいけません」

 僕達と一緒にいてくれたベルが急いで、箱から出ちゃったいっぱいの手紙を、使用人さんと一緒に箱に戻します。

「ごめんなさい」

 手紙を全部戻してから、お兄ちゃんが使用人さんにごめんなさいをしました。

「いえ、私こそ気をつけるべきでしたのに、申し訳ございません。ラディス様のご子息のマイケル様とジョーディ様でいらっしゃいますね。はじめまして、私はコリンズと申します。よろしくお願いいたします」

 コリンズさんは挨拶してすぐにお仕事に行っちゃったけど、その後、お昼ご飯の時にまた会ったんだ。ご飯の準備をしてくれた使用人さんの中にコリンズさんがいたの。僕達が手を振ったら、お昼ご飯を食べに戻って来たパパが、いつ知り合ったんだって驚いていました。
 ベルがさっきのことをお話しすると、それを聞いていたクレインおじさんがコリンズさんにこう言いました。

「そうか、ならコリンズ、頼みがある。ジョーディ達はこの後また探検するだろう。お前がついて行って、何かあれば説明してやれ」
かしこまりました」

 コリンズさんが一緒なら、あの人形のこととか聞いたら教えてくれるかな? さぁ、ご飯を食べたら探検。その後はお昼寝しないとね。


     *********


 昼食をとった後、私――ラディスは、屋敷の中にある会議室に向かっていた。その道すがら、昨日、私、クレインお兄さん、父さん、母さんの間で行われた話し合いのことを思い出す。


 兄さんは開口一番、ジョーディ達に対する悲しみの言葉を発した。

「私はおじさんと言われるような歳か? まだいけると思うんだが」
「兄さん、諦めた方がいいよ。私はまだお兄さんでいけるけどね」
「お前だって同じようなもんだろう」
「いや、同じじゃないさ。私の方が兄さんよりも五つも若いんだから」

 よっぽどマイケルとジョーディ達におじさんと言われたのがショックだったらしい。まぁ、私には関係ないが。兄さんが今の時点でおじさんなら、私はもう少しお兄さんでいけるだろう。


「何だ、お前のその余裕の顔は。よし、今度街の子供達に……」
「何くだらないことを話しているんですか。早く話を始めなさい。まったくあなた達ときたら、大事な話をする前に、いつもどうでもいい話で時間を潰すのだから。大体おじさんでもお兄さんでもどちらでも良いではないの。いずれ皆老人になるのだから。ただ……」

 最後に部屋に入って来た母さんが、兄さんの話をさえぎった。そして鋭い目つきのまま言葉を続ける。

「女性に歳に関することを聞かないように、きちんとマイケル達をしつけなければね。あなた達、まさか女性にそういった発言をしていないでしょうね」

 私達はブンブン顔を横に振った。
 こうして私達は歳の話をすぐに切り上げ、これからのことについて、軽く話すことになった。
 まず、翌日の昼間は――つまりもう今日のことだが――街の周りの状況を確かめて、夜はベアストーレの森の見回りへ向かうことに決めた。
 ベアストーレの森は、ピット達が元々暮らしていた森であり、今回の黒いもやが最初に発生した場所だと私達は考えている。しかしこの森は非常に広大であり、通常の森がいくつも入るほどの大きさだ。
 そのため、森の調査の際は三組に分かれ、決して一人で動かないように、みんなに言い聞かせた。森でもしバラバラになってしまうと、何かあった時に対応するのが難しくなるからだ。
 明日にはすけがこちらの屋敷に来るらしいので、彼が来たら、また詳しく話す予定である。
 ベアストーレはその広大さから、二つの街によって監視かんしされている。一方は言うまでもなくミリーヘン。森の半分を監視し、何かあった時に対応するのが、兄さん達の仕事の一つだ。
 そしてもう半分を監視しているのが、ダージリーという街だ。オッド・イシュタルという人物が領主を務めている。明日屋敷に来る助っ人がこのオッドである。
 彼は兄さんの昔からの友達で、二人はとても仲が良い。勉強のために首都アースカリナの学校に通っていた時も、何かする時にはいつもつるんでいた仲だ。揃ってやんちゃをするせいで、時々学校から文句の手紙が家に届いていたが。
 私も小さい頃、いや私が学校に通うようになってからも、私を可愛がってくれた〝兄さん〟と呼べる存在の一人だ。まぁ、いじめられた記憶もあるが、基本世話好きの優しいお兄さんである。
 今回の靄事件、兄さんの話によると、どうもミリーヘン側の方が被害が多いらしく、オッドは自分の担当する側だけではなく、こちら側の警備にも手を貸してくれているらしい。
 兄さんが、私達が来る前にオッドと話した内容を教えてくれる。

「私達だけでは、森の奥深くまでは調査に行けないからね。オッドが無理をしてだいぶ奥に行ったようだが、原因があるかもしれないとされる、森の中心へはさすがに行けなかったと」

 それを聞いて父さんが頷いた。

「じゃろうな。あそこは簡単に入れる場所ではない。じゃが、ワシらが来たからの。森の最奥とまでとはいかなくとも、かなり奥までは行けるはずじゃ」
「ああ、だからそのためにも、オッド達ともしっかりと話し合わなければ」


 これが昨日、私達が少しだけ話した内容だ。時間も時間だったし、森をよく知るピット達は寝てしまっていたため、ピット達に詳しい話をするのは今日に回している。
 会議室に着いた私は、早速レスターにピット達を呼びに行ってもらった。ジョーディ達と探検と言って楽しみにしていたところを悪いが、フローティーで私達に教えてくれたことを、兄さんにも伝えてもらわなければならない。
 それに、兄さんにはジョーディの話もしなければ。時間があるならば、今回のことだけではなく、マイケルが加護をもらったことやドラック達との契約のこと、そして女神セレナ様のことも話しておきたい。たぶん最初は冗談だろうと笑われるだろうが。
 気になるのは、フローティーをつ前にローリー達が言っていたことだ。靄はジョーディから逃げている、とローリーは言った。それが本当なら、ジョーディがこの街にいることで、森の靄を発生させている力が弱まるかもしれない。
 ジョーディがここにいるのは危険だということは理解している。しかし、少しでも原因となるものの力を弱めておけば、危険な森の奥へ入った時、確実にその原因を叩くことができるはずだ。
 私がそう考えていると、庭の方から、探検中らしいジョーディ達の声が聞こえて来た。声というか、あの何ともいえない歌が。

「にょっにょ♪ にょっにょ♪」
『ワンワン♪ ワウワウ♪』
『ニャウニャウ♪ ニャア~ウ♪』
『『『にょっにょ♪ にょっにょ♪』』』
「にょ~にょ♪ にょ~にょ♪」
『わにょん♪ わにょん♪』
『ニャ~オン♪ ニャ~オン♪』
『『『にょ~にょ♪ にょ~にょ♪』』』

 初めて歌を聞く兄さんが目を見開いた。

「何だアレは?」
「ジョーディが考えた歌らしい。それをドラック達が覚えて、楽しい時とか嬉しいことがあった時に、よく歌っているんだ」
「アレは歌なのか⁉」
『アレを聞きながら進むのはなかなか難しいぞ』

 驚く兄さんに、ローリーがそう言い添える。ローリーはよく背中にジョーディ達を乗せてくれているから、度々あの変な歌を聞かされているのだ。

「だろうな。あの何とも言えないリズム……聞いているだけで調子が狂いそうだ」
「本人達はいい歌だと思っているんだよ」

 私がそう言うと、兄さんは苦笑する。

「明日オッドが来てあの歌を聞いたら、大笑いしそうだな」

 だんだんと聞こえなくなるジョーディ達の歌声。するとレスターが、ブツブツ文句を言っているピットとビット、それにシャーマを連れて来た。
 そして、ピット達はイライラの矛先ほこさきをローリー達、大人の魔獣に向ける。ひげを引っ張られたローリー達は部屋の中を、ピット達から逃げようとフラフラ歩き回る。
 私はやんちゃな妖精三人にため息をついた。
 話を聞いたらすぐに戻っていいから、頼むから今は静かに話を聞かせてくれ。

    
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