もふもふが溢れる異世界で幸せ加護持ち生活!

ありぽん

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4巻

4-2

     *********


『お話ししたらすぐに戻って来るからね』
『あんまりたくさん探検しないでね』
『何でボク達お話?』

 ピット、ビット、シャーマ君が僕に向かってそう言います。側にいるレスターはちょっと苦笑いです。
 お昼ご飯を食べ終わった僕達が、さあお庭の探検って言っていたら、レスターがピット達とシャーマ君のことを呼びに来ました。パパが呼んでいるから来てって。
 せっかくこれからお庭の探検だったのに。ピット達がレスターにブーブー文句を言うと、お話が終わったらすぐに戻って来ていいからって。
 それを聞いて安心したピット達が今、やっとパパの所に行くところです。
 残った探検のメンバーは、僕とお兄ちゃん、ドラックとドラッホ、ポッケとブラスター、ホミュちゃんとミルク。後ろからベルと、一緒に探検することになったコリンズさんがついて来ます。
 ピット達が行ったら、僕達はまずは庭にいるグエタの所に。グエタに一回肩車をしてもらったら探検開始です。
 僕が楽しくなってきて、いつもの歌を歌ったら、みんなも僕の後に続いて歌い始めます。

「にょっにょ♪ にょっにょ♪」

 そうして、みんなでいつもの歌を歌いながら歩きます。
 何処どこから探検しようかな。花壇かだんは……きっとピット達が探検したいよね。あと草むらとかも。
 僕がキョロキョロしていたら、コリンズさんが、反対側のお庭の方にはお池があるって教えてくれました。
 お池! お池の探検もいいよね。でも絶対時間がかかるよ。今からしたら途中でお昼寝の時間になっちゃうかも。途中でやめるのはなぁ。
 そう思っていた時でした。僕の家にもある、お外でおやつを食べる時の、お椅子いすとかテーブルとかが置いてあるのが見えました。そうだ! ここから探検しよう。

「たいのっ‼」
「ジョーディ、最初はここ探検するの?」

 お兄ちゃんが聞いてきます。僕はグエタに肩車から下ろしてもらって、よちよちテーブルの方へ。
 そして振り返って僕がうんうんと頷くと、お兄ちゃんがみんなに言いました。

「じゃあ、最初の探検はここにしよう。みんな探検開始だよ」

 みんながテーブルの周りに集まって探検開始です。最初に見つけたのはお菓子の欠片かけら。こんなの要らないよ。誰、こぼしたの。ベルも触っちゃダメですよって言って、コリンズさんがポケットから紙の袋を出してそれを入れます。

『何かあったぁ?』

 ドラックが聞くと、ドラッホ、ホミュちゃん、ミルクがそれぞれ返事をします。

『こっちはないよ!』
『ないなのぉ』
『こっちもないんだな』

 う~ん、お菓子の欠片以外何にもない。
 テーブルの下には何にもなかったから、少しテーブルから離れて、また何かないか探してみます。あっ、アリさんの行列発見! 何処まで続いているのかな? よし、ついて行ってみよう。
 そう思ってアリさんの行列の向こうの方を見た時でした。
 アリさんの行列は家を囲んでいる壁の方に進んでいたんだけど、そっちの方に一瞬赤く光るものが見えた気がして。目をパチパチしてもう一回よく見てみます。あれ? 今度は見えない? 僕見間違えちゃったのかな?
 それも確かめに、やっぱりアリさんの行列について行かないとね。

「ちゃいの! りちゃ!」
「なぁにジョーディ、アリさんがどうしたの?」

 お兄ちゃんが僕に気づいて近づいて来ます。

『アリさん達が何処に行くかついて行くって』
『みんな何かあった? なければみんなで一緒に行こう』

 ドラックとドラッホに言われて、みんながそれぞれ報告。見つかったのは、僕が最初に見つけたお菓子の欠片だけ。ここには何にもないから、みんなでアリさん達について行くことにしました。
 少しの間真っ直ぐ歩いていたアリさん達が、急に右に曲がります。それから左に曲がって、グルって一回丸く回ったと思ったら……また真っ直ぐです。
 なかなか僕が見た、赤い何かある場所に着きません。アリさん達、あそこに行かないのかな?

『ぎゃっ、踏んじゃったんだな‼』

 急にミルクが大きな声出して、それからくさい匂いがふわ~って広がりました。

「くちゃ!」
『くしゃい‼』
『ウンチの匂い‼』
『あっ、ミルク踏んじゃってる‼』
『くしゃいなのぉ‼』
『何で踏んだんだよ‼』

 みんながミルクからバッて離れます。ミルクは何かのウンチを踏んじゃったみたいです。
 ベルが嫌な顔をしながらミルクを抱っこすると、コリンズさんが急いでタオルを持って来てくれました。ベルがそれでミルクの足を拭きます。ドラックパパ達がいたら、すぐに浄化の魔法で綺麗にしてもらえたのに。ミルクがちょっと涙目です。
 ミルクが足を拭いてもらっている間に、コリンズさんはウンチのお片付け。ドラック達がこのウンチはタヌーのウンチだって言いました。タヌー? 何それ、どんな魔獣?

「たのねぇ? にゅう?」

 僕が聞くと、ドラックとドラッホが答えてくれます。

『えっとねぇ、丸っこい魔獣』
『あとしっぽがシマシマ』

 丸っこい? しましま? う~ん、分かんないね。
 すると、お兄ちゃんが話に入って来ました。

「ジョーディ、あとで教えてあげるよ。絵本に出て来るからね」

 僕達がお話をしていたら、ミルクがちょっと泣きながら大声を出しました。

『とれないんだぞっ!』
「しっかりついてしまいましたね。これは石鹸せっけんで洗わないと」
『僕、お父さん呼んでこようか?』

 ドラックがそう言ったけど、ベルは首を横に振りました。

「今お話し中ですからダメですよ。すみませんが洗い場はありますか?」
「ええ、スプリングホース達の洗い場があります。そちらへ」

 コリンズさんに案内されて、ベルがミルクを抱っこしたまま歩き出します。
 探検中止です。赤い光った何かのことも、アリさん達の行進も気になるけど、この臭いのはダメ。またあとで探検に戻って来ればいいよね。みんな、ミルクから離れて歩きます……臭いから。
 その後、ミルクは洗い場でベルに綺麗に洗ってもらって、汚れは取れたんだけど、匂いは取れませんでした。
 パパ達のお話し合いが終わって、ドラックパパ達が戻って来るまで臭いまんま。誰もミルクに近づかないし、ミルクは自分でも臭いって言って、しくしく泣いていました。
 結局、ミルクの匂いが消えたのは、僕達のお昼寝が終わってからでした。
 僕達はミルクと違うお部屋でお昼寝したの。ミルクは自分の足が臭かったせいで、お昼寝できなかったみたい。
 お昼寝が終わって僕達が起きると、会議が終わったドラックパパが来て、ミルクの足に浄化の魔法をかけてくれました。

『さぁ、これでどうだ?』
『匂い消えた‼ ありがとうなんだな、ドラックパパ!』

 本当に大丈夫? 僕達はそっとミルクに近寄ります。それでクンクン、みんなでミルクの匂いを嗅いで。……うん‼ もう全然臭くない‼
 部屋いっぱいに広がっちゃった匂いも消えて、僕はミルクの頭を撫で撫で。ミルク、これからはウンチに気をつけてね。
 そうそう、お庭にウンチしたタヌーっていう魔獣は、まん丸のたぬきさんみたいな魔獣でした。お兄ちゃんが、家から持って来た絵本をめくって教えてくれたんだ。
 絵を見ると、地球の狸よりももうちょっとまん丸でボールみたい。それからしっぽも地球の狸よりもモコモコって感じです。
 僕の家の近くの林や森にもいるみたいなんだけど、クレインおじさんの家の近くの方がタヌーがいっぱいいるんだって。うんとね、僕の家の方はウサギ魔獣のサウキーが多くて、クレインおじさんの方はタヌーが多いって感じです。
 サウキー達みたいに人と仲良くなれる魔獣で、庭とか街の広場とか、お店が並んでいるところにも、何処からか入って来て、フラフラ遊んで森に帰るんだって。
 タヌーはまん丸で可愛いし、イタズラとかしないから、みんな嫌いじゃないけど……でもウンチだけはダメ。タヌーのウンチがとっても臭いのは有名で、みんな気をつけているんだって。
 ベルが言うには、ご飯を売っているお店がいっぱいある場所で、誰かがウンチを踏んじゃったことがあったんだって。そしたら、それから三日間もお店を開けられなかったみたい。
 やっぱりタヌーのウンチは危険だよ。僕、タヌーには会ってみたいけど、でもウンチはなぁ。あっ、でも踏まなければ大丈夫なのかな? ミルクが踏むまでは全然匂いしなかったし。
 明日また探検しに戻るけど、ウンチに気をつけよう。あの赤く光ったものも気になるし、アリさん達を追いかけなくちゃいけないもんね。
 それにね、もう一つ行きたい場所があります。このお家には噴水があるんだって。だから噴水でも遊びたいんだ。
 僕が明日のことを考えていると、お部屋にパパがやって来ました。

「さぁ、そろそろ夕飯の時間だ。私達はこの後見回りがあるから少し早い夕食だが、みんな食堂に移動しよう」

 みんなでゾロゾロお部屋から出ます。良かったねミルク、ご飯の前に匂いが消えて。そうじゃなかったら、みんなと一緒にご飯を食べられなかったよ。
 ご飯を食べた後は玄関まで行って、パパ達に行ってらっしゃいをします。これからパパ達は夜の見回り。みんなで色々な場所を見回りするんだ。
 クレインおじさんとじぃじは、ドラックパパと一緒に森の方まで行くみたいです。パパはローリーとドラッホパパと。アドニスさん達は……どっか! もう見回りに行っちゃっていませんでした。

「それじゃあ行ってくる。マイケル、ジョーディ、それにみんなも、ママとばぁばの言うことを聞いて、時間になったらちゃんと寝るんだぞ」
「は~い!」
「あい‼」
「ジョーディはいつも良い返事だが、本当に分かっているのか分からないな」

 パパは玄関を出ると、先に騎士さん達と出発するじぃじとクレインおじさんに手を振りました。次はパパがローリーに乗って、ドラッホパパと騎士さん達と一緒に出発です。
 その時でした。ローリーとドラッホパパの耳がピクって動いて、ローリーがちょっと待っていろって言うと、パパを乗せたまま屋根に登りました。
 屋根からは『赤だな』って声が聞こえます。ローリーも僕みたいに、悪いものが赤く見える時があるからね。その赤のことかな?
 すぐに降りて来たパパが、騎士さん達に指示を出します。パパ達が、ローリーが見た赤い何かの方に行くみたい。僕達が手を振ると、パパ達はニコッて笑って、騎士さん達とは反対の方向――家の屋根にまた上って行っちゃいました。僕達はすぐに家の中に入ります。
 玄関を見て、僕も魔獣のみんなも思い出しました。
 僕達、探検って言って、ついお庭に行っちゃったけど、玄関に置いてある変なお人形のこととか、他の置き物のことを、コリンズさんにまだ聞いてないって。失敗失敗。
 コリンズさんは、明日また一緒に探検してくれるかな? 明日もやることいっぱいで忙しいなぁ。


 次の日の朝、僕は外がうるさくて目が覚めました。部屋の中をキョロキョロ見回すと、ママがいません。パパは……パパはまだ見回りから帰って来てないみたい。
 部屋の中にいるのは、今僕の隣でいつもみたいにぐっすりのお兄ちゃんと、ドラック達。
 ドラック達は、何でか分からないけど、窓の側の小さなテーブルに乗ったり、その周りに集まったりして、みんなで外を見ています。みんな、何を見ているの?
 僕はなんとかベッドから降りようと頑張ったんだけど、身長が足りなくてやっぱりダメ。
 あっ、前みたいに、クッションとか使えば降りられるかも。僕は使っていた枕を落とそうと持ち上げます。う~ん。ちょっとこの枕、重くない? 

「たいのっ‼」
『あ、ジョーディ起きた!』
『おはよう!』

 ドラックとドラッホが僕に気づいて駆け寄って来ました。
 僕はみんなにおはようしてから、枕をベッドから落とすのを手伝うのと、それからクッションを集めてってお願いしました。
 すぐにみんな僕の所に戻って来て、一緒に枕を落としてくれます。そしてドラック達はソファーに置いてあったクッションを持って来てくれました。
 そのクッションを積み上げたら、ベッドの半分くらいの高さになりました。これなら足が届くし、僕が降りても大丈夫。そっとそっと、後ろ向きに足を下ろしていきます。すぐに足がクッションについて、ポスンッ! お座りする感じで床に降りられました。ありがとうみんな!
 次は窓の所に行きます。でもここでも問題が発生。魔獣や妖精のみんなはジャンプしたり自分の羽で飛んだりしてテーブルの上まで行けるけど、僕には無理です。
 テーブルにつかまりながら立ち上がって、何とか窓の外を見ようとするけど、やっぱり全然窓まで届きませんでした。

「ちゃいのよぉ? みちゃ?」

 僕が頑張って首を伸ばしている間、ドラック達はみんな窓の外を見てお話ししています。

『あのねぇ、僕も久しぶりに見たんだ』
『森にいた時は、お父さん達が時々捕まえて、お父さん達のご飯にしてたの』

 そう言ったのはドラックとドラッホです。
 今度はホミュちゃんがしゃべり始めました。

『ホミュちゃんは、二回見たことあるなの。でも危ないから、ホミュちゃんはすぐに逃げたなの。他の小さい子達も逃げてたなの』
『オレは見たことないんだな。ずっとジョーディの家にいたから、森の魔獣見たことないんだな』

 ミルクがそう言って耳をかきました。
 何見ているの? 僕も見たい! 僕が見えなくてイライラしてテーブルを叩いていたら、ポッケがグエタを呼んでくれるって言いました。今、グエタがパパと一緒に窓の外にいるみたい。ポッケとブラスターの二人は、グエタと交信ができるんだ。
 なんだ、それなら早く言ってよ。じゃあローリーもいるの? なら、僕がローリーを呼んでも良かったじゃん。ローリーは僕が呼ぶと、離れていてもすぐに来てくれるもんね。僕はローリーのことを呼びます。でも、ローリーが来る気配はありません。
 そしたら、ポッケとブラスターが、グエタから何かを聞いたみたいで僕に言いました。

『ローリーは今来れないって。汚れてるから』
『今ジョーディママが来てくれるってさ』

 汚れてる? 見回りで汚れちゃったのかな?
 ポッケとグエタが交信してくれたおかげで、すぐにママとベルが部屋に戻って来ました。
 ママがベルに、お兄ちゃんはそろそろ起きるはずだから、起きたら連れて来てって言います。そして、僕を抱っこして部屋から出ました。ドラック達は僕とママの後ろをゾロゾロついて来ます。
 玄関を出て僕はすぐにビックリ。玄関の前には大きな大きな、ブタの顔がついた、丸っこい人の形をしているのが三匹、ダンダンダンって並んでいました。
 魔獣だよねこれ? 全員死んでるみたいだけど……あと、絵本で見たことがあったような?
 魔獣の向こう側にはパパやクレインおじさん、じぃじが立っていて、ローリーやドラックパパ達もいます。パパもローリー達もとっても汚れているの。全身泥だらけです。
 ママが僕を下ろしてくれて、僕は魔獣を見ながらパパの方に。パパに抱きつこうとしたんだけど、パパが洋服が汚れるからダメって言いました。
 しょうがない、じゃあ魔獣の方に行こう。ドラックとドラッホが魔獣の顔を蹴ったり引っかいたりしています。顔だけ見ると、ほんとにブタさんみたい。この魔獣の名前は何だろう?

「にゃの? たぁ?」
『これの名前?』
『これはオークだよ』

 オーク? ドラック達とお話をしていたら、お兄ちゃんが急いで家から出て来ました。そのまま僕達の所に来てオークを見た後に、今日のご飯だねって言ったんだ。
 これ、僕らも食べられるの? ドラックパパ達は食べていたみたいだけど。
 じーっとオークを見ていたらじぃじが近づいて来て、じゃあステーキにでもするかって言いました。
 パパがクレインおじさんを連れてやって来くると、ため息をつきます。

「父さん、食べるのも良いけど、これが森から出て来たことに問題があるんだからね」
「分かっておるわ。だがせっかく仕留めたんじゃ。食べないのはもったいないだろう」

 パパはまたため息をつきます。

「はぁ、兄さん、取りあえず着替えてくるよ。話はそれから」
「ああ。これはジオル達に任せよう」

 クレインおじさんがそう答えた後、パパとじぃじはオークを玄関先に残して家に入って行っちゃって、騎士さん達も、ほとんどがバラバラになって何処かに行っちゃいます。
 僕はオークのことが気になって仕方ありません。
 ちょっと触っても大丈夫かな? ドラック達も触っているし。僕はちょんってオークのことをつついてみます。
 ぷに、ぴょん。おお! 弾かれた。もう一回ちょんっとしたら、また弾かれます。
 そんなことをしていたら、家の中から大きな髭をはやしたおじさんが出て来て、その後ろから、見たことのあるお兄さん達が出て来ました。この家に来てから、いつも料理を作ってくれているお兄さん達です。
 おじさんが髭を撫でながらオークを眺めます。

「ほう、大物じゃないか」
「さばきがいがありますね」
「よしお前達、向こうに移動して始めるぞ」

 おじさんがそう言うと、まだ残っていた騎士さんとお兄さん達が、オークに縄をぐるぐる巻きます。そして、みんなで縄を持って引きずりながらオークを運び始めました。
 誰かが風の魔法を使って、運びやすいようにしているの。でもそれでも重たそうに、みんなフンって鼻息を立てながらオークを引っ張ります。

『ついて行こうよ!』

 ポッケが言いました。それを聞いたお兄ちゃんが、騎士さん達の所に行って一緒に縄を引っ張り始めます。僕もやりたい!
 オークは重くてなかなか進まないから、歩くのが遅い僕でもおじさん達に追いつけました。追いついた僕を見ておじさんが、

「おっ、坊っちゃん一緒に引っ張るか?」

 って笑いかけてくれました。
 僕が頷くと、おじさんは自分が引っ張っている縄を僕の前に差し出して、一緒に持たせてくれました。

「んちょ、んちゃ」
「ハハハ、坊っちゃんの声は何だか力が抜けるな!」

 おじさんが大きな声で笑います。僕、真剣に運んでいるんだよ。もう、僕が何かするとみんなすぐに笑うんだから。
 ずるずるオークを引っ張って、着いたのは小さな小屋?でした。

「坊っちゃん、到着ですよ。ありがとうございました」

 おじさんがそう言って、お兄さん達は小屋の中に入って行きます。
 その後、中からガシャンガシャンって音が聞こえてきました。おじさんは小屋には入らないで、あっちのオークはこうして、そっちのオークはこうしてって、一人でぶつぶつ言っています。
 僕達は、あとから追いついたママに「離れて見ていましょうね」って言われて、小屋から少し離れた所でおじさんとオークのことを見ます。
 少しして、お兄さん達が小屋から出て来ました。みんな手に何かを持っているの。
 えっと、大きなのこぎりでしょう、それから大きなナイフ。あとは変な形をしている包丁? 木のバケツもたくさん持って来たよ。
 それをオークの周りにガシャンガシャンと音を立てて置きました。でも用意したのはこれだけじゃありません。最後にみんなで大きなテーブルを運んできました。

「お前とお前はあっちのオークだ。アレは焼く用にするからな。お前達はそっちの……」

 おじさんがお兄さん達に指示を出して、みんな道具を持って指示されたオークの近くに並びます。

「よし、始めるぞ‼」

 号令がかかった途端、一気にオークを切るお兄さん達。
 切った部分をテーブルの上に置いて、それをまた小さく切ります。その小さく切ったお肉を、使用人さんやメイドさんが、どんどん何処かに運んでいきます。
 おじさんは一人で一番大きなオークを切ってるんだけど、すごいスピードです。最初、僕はおじさんがオークをいつ切ったのか分かりませんでした。
 おじさんがのこぎりを持って、「よいしょ」って言ったらオークの腕が取れたの。それから「よ」って言ったら、今度は足が取れて。
 僕もドラック達もあれ~?ってなりました。だって、おじさんは声を出しただけで、のこぎりを持ったまま、全然動かなかったんだよ。それなのに腕も足も取れちゃったんだ。

「ちぃのぉ、にゃい?」
『ジョーディママ、どうして腕も足も取れちゃったの? おじさん、全然動いてないのに』

 僕の代わりにドラックが聞いてくれました。

「おじさんじゃなくてジオルよ。ジオルはちゃんと動いたわよ」
『動いた? 本当?』

 ドラックとママが話していたら今度は頭が取れました。ほら、やっぱりおじさんは動いてないのに頭が取れたよ。

「ジオルの動きが速すぎて、みんなにはまだ見えないのよ。ジオルはちゃんとあののこぎりでオークを切ってるのよ。ジオル! 悪いのだけれど、みんなが分かるように、ゆっくり切ってもらえないかしら」
「おう‼」

 ジオルおじさんが返事をして、サッサッサッて三回のこぎりを動かしたら腕が取れました。ママが今は手を六回動かしたのよって言います。ええ~⁉
 僕達が頑張ってジオルおじさんの動きを見ているうちに、オークはバラバラになって、ジオルおじさんのお仕事は終わっちゃいました。ジオルおじさんは一人で切っていたのに、一番に切り終わったんだ。
 僕、最後までジオルおじさんの動きがちゃんと分かんなかったよ。そのうち、他のお兄さん達もほとんど切るのを終えちゃったから、僕達はちょっと遅い朝のご飯を食べに、家の中に戻りました。


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