扇風機を持って異世界転移!? もふもふたちと共に扇風機を操り俺はこの世界を生き延びる!!

ありぽん

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22話 風の精霊王シルフ

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『リョウパパ、シルフおにいちゃんの、おなまえある?』

「……」

『リョウパパ?』

 ミルフィーに髪の毛を引っ張られ、我に帰る俺。

「あ、ああ、どうしたミルフィー?」

『ちゃんと、シルフおにいちゃんのおなまえある?』

「あ、ああ、ちゃんとあるぞ。しっかり家族になれた」

『やったぁ!! シルフおにいちゃん、やったぁ!!』

『うん!! やったぁ!!』

 ミルフィーには、家族になった時、ステータスとこのプレートについては、きちんと説明してあったから。契約すると名前が載る事を、ちゃんと分かっていて聞いてきたんだ。うん、しっかりと載っているから。契約に関しては全く問題はない。

 ないが、別のことが問題だった。俺は喜ぶミルフィーとトールとシルフに、気が散るから少し退いてくれ、と離れてもらい。しっかりとプレートの、シルフの事が載っている部分を確認する。うん、やっぱり俺の見間違いじゃないよな。

 これはまずいんじゃないか? そう思った俺は、すぐに父さんとタイラーに声をかけた。だが、プレートを確認する前から、何故かギャアギャア騒いでいた父さん達に、俺の声は届かず。仕方なく大きな声で、父さん達を呼んだよ。

「父さん!! タイラー!!」

「お、おう!!」

『な、何だ!?』

「何だ、じゃないよ。シルフの契約ができているかは、もう確認できたよ。ちゃんと契約できていたから問題ない。だけどその他に、たぶん問題だと思う部分があるから、ステータスを見て欲しいんだ。だから騒いでないで、こっちにきてよ」

「おう、すまんすまん。こいつがあーだこうーだと、よく分からん事を言ってきてな」

『俺はもしかしたら、かなり大きな問題が起きたかもしれないと、お前に伝えようとしただけで』

「だから2人とも! 揉めるのは後にして、先にステータスを見てよ」

 まったく、何をそんなに揉めているんだか。そっちの揉め事の内容は知らないけど、こっちのステータスはたぶん、いやかなり問題だと思うんだ。だから早く見て欲しいのに。

 もう1度俺に怒られて、ブツブツ言いながらも、ようやくステータスを見てくれた2人。タイラーは人の文字も読めるから問題なしだ。

 ステータスの最後の部分には、こう言う表示がされていた。

*契約精霊
風の精霊王……シルフ 
年齢??? 
魔力量??? 
能力???

 と。俺は父さん達の様子を見る。するとステータスを見たまま、目を見開いて固まっている2人。あ~、やっぱりこれってまずいやつだったか。

「父さん、タイラー、これ、まずいよね?」

「俺は見間違いをしているのか? まさか精霊王なんてな」

『いや、間違いないだろう。俺でも測れない魔力量、それに気配を解いた時のこの感覚、そして名前。ずべてが奴に当てはまる』

「……ここに人がいない事は当たり前だが、それでもやはり、外で話す事じゃない。おい、全員家の中に入るぞ。そこの歌ってる3匹、ちゃんとついてこい」

『『『はーい!!』』』

 喜んでいるうちに、また自分達作の歌を歌い始めていた、ミルフィーとトールとシルフ。元気よく返事をすると、それぞれの定位置。トールはタイラーの頭の上、ミルフィーは俺の頭の上。そしてシルフは俺の肩に乗ってきた。

 そして全員で家に入ると、家の探検をしたいと言い始めたシルフ。それを父さんが、後でゆっくり案内してやるからと、クッキーで何とか止めて。お茶も用意し、改めてシルフについて話をすることになった。

 風の精霊王。風の精霊の頂点に立つ王。世界には四大精霊王がいるが、そのうちの1人。強大な風の魔法や嵐を操る力を持っていて、世界の均衡を司る守護者として、人々が崇める存在。異変が起こると、世界のバランスが崩れたり、暴走したりすることがある。

 この世界ができてから、もうどれだけ経っているか分からないが。姿を見た者はそうおらず。最後に目撃されたのは、今から200年ほど前のため。現在生きている人の中では、会った人はいないらしい。

 だが、他の種族の中には、会った事があると言う者もいるため。真意の程が分からず。結局最近では、伝説の存在になりつつある、と。

 精霊王の話しを父さんがしてくれた後、部屋の中に少しの間沈黙が流れた。いや、沈黙していたのは俺と父さんとタイラーだけか。チビもふ3匹は、今だに楽しそうに歌いまくっているからな。

 伝説の4大精霊王の1人が、今、俺達の前に? 1人? 1匹じゃなくて? なんて。あまりの事態に数分後、最初に話し始めた俺の口から出た言葉は、どうでも良いような事だった。
 人だろうと匹だろうと、そんな事どうでも良いのにな。問題は精霊王ってところなんだから。

「まさか、伝説と言われている精霊王が、俺の家に、息子の契約精霊になるなんて」

『だから、俺はこの事をお前に伝えようとしたんだ』

「伝えようとしたって、何で俺を呼びにきた時に、先に言わなかったんだ」

『その時こいつは気配を消していて、どんな存在なのか分かっていなかったんだ。それに名前があるのも知らなかったからな。戻って気配を元に戻してもらい、その魔力量に驚き。魔力量と名前、全てのことを合わせて考えて、もしかしたらと気づいたから、お前に伝えようとしたのだ』

「あの、父さん、タイラー、これってやっぱりまずい感じかな?」

 黙ったまま何度も頷く2人。やっぱりそうだよなぁ。まずいよなぁ。

「まだ子供のお前が、いや大人だったとしても。もしお前が精霊王と契約した、なんてバレたら、王も他の貴族も、そしてお前に取って、悪にしかならん連中も。全ての者達が、お前の所へやって来るだろう。そして無理やりの手段を使ってでも、お前を手に入れようとしてくるはずだ」

 その父さんの言葉に、3人でため息を吐き、数秒だったがまた沈黙が流れた。
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