猫又と俺の願いを縫う不思議な工房

ありぽん

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6話 現れたのは人の言葉を話すシロタマ?

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『いやぁ、本当に久しぶりだなぁ。会えて嬉しいぞ!!』

「……が」

『ん? 何だって?』

「……こが」

『だから、何だって?』

「ネコが喋ったぁぁぁっ!!」

 俺が叫んだ瞬間、俺とシロタマかもしれないネコのまわりを、少し強めの風が吹き抜けた。

『おい、そんな大声出すなって! じいちゃんと神谷が起きちゃうだろう! 今は俺の力で音をかき消したけど、気をつけろよな』

 慌てて口を手で押さえる俺。確かに、じいちゃんや神谷さんが起きてきたら大騒ぎになるところだ。

 ……いや、そうじゃなくて。いや、違わないけど!! 今はじいちゃんたちのことじゃなくて、ネコが喋ったんだぞ!? 驚いて叫ぶのは当たり前だろう。
 
 普通のネコみたいに、『にゃあ』とか『みにゃあ』とかじゃなくて、『よう、久しぶりだな! 元気だったか!』って。他にもいろいろ言って、最後には「気をつけろ」って言ったんだぞ!?
 
 俺は夢でも見てるのか? 誰かが来るのを待ってたのに、睡魔に負けて寝てしまって、それでこんな夢を見てるだけとか?

 俺はそっと、自分の頬をつねった。……痛い。ちゃんと痛みを感じる。という事は?

「……痛いってことは夢じゃない? じゃあ幻覚? 疲れていないつもりだったけど、久しぶりのじいちゃんの家での生活で、実はすごく疲れてて、それで幻を見てるとか?」

『なにブツブツ言ってるんだ? これは夢でも幻でもないぞ。確かにいきなり話しかけたのは悪かったよ。だけど俺も久しぶりで嬉しくてな。それにまさか今、晴翔が俺のことを見ているとは思わなかったから、思わず普通に話しかけちゃったんだよ』

「……」

『本当はもう少し順序立てて、お前に俺のことを思い出してもらってから、俺のことをもっと良く知ってもらおうと思ってたんだけどな。……俺だよ俺。お前が小さい頃、シロタマって名前を付けてくれた、野良猫のシロタマだ!!』

 ……やたら元気なネコだな。いや違う違う、そうじゃない。落ち着け、俺。とにかく深呼吸だ。俺は深く2回息を吸って吐く。それからネコに向き直った。

「ちょっと待っててくれ。もう少しだけ、確認させてくれ」

『あ? 別にいいけど、何を確認するんだ?』

 俺はフラフラを立ち上がると、洗面所へ向かう。と、ネコも当然のようについてくる。そしてネコが見守る中、俺は勢いよく顔をバシャバシャと洗った。……うん、冷たい。それに頭もすっきりした気がする。

 俺はそのままもう1度深呼吸をしてから、後ろで待ってくれているネコを見た。

『顔を洗うことが、確認なのか?』

 ネコは消えていない、そしてあいかわらず普通に話しをしてくる。

 自分の頬をつねったときもちゃんと痛かった。今、顔を洗ったら水は冷たくて、ちゃんと感覚があった。つまりこれは、本当に起きている現実……。

 俺はネコをしっかりと見た。

「今起きてることは、本当に現実なのか? ネコが人の言葉を話していて、俺と会話してることも?」

『ああ、そうだ』

「……そうか。……それじゃあ、本当にシロタマなのか? 俺の大好きな友達のシロタマなのか?」

『ああ! 俺はシロタマだ!! 晴翔、本当の久しぶりだな。また会えて嬉しいぞ!』

 まさかの展開だった。まさか本当に、元気なシロタマが現れるなんて。……気づけば俺は、シロタマをぎゅっと抱きしめていた。

「……シロタマ、久しぶり。俺も、またお前に会えて、本当に嬉しいよ」



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お読みいただきありがとうございます。
次回更新12時です。
よろしくお願いします。
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