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第3章 幼女編
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まず、ここはファンタジーものによくある魔界のような場所であること。城内の外には魑魅魍魎の類から小鬼ゴブリン、ドラゴンなどの大きな魔物も、うじゃじゃしているらしい。
自然界に普通に魔素が存在しており、魔法が当たり前のようにあること以外は、基本的な構造は地球と同じような感じらしい。理由をルイスに尋ねると元々この世界を真似て作ったのが地球だったため、とのことだった。
誰がと聞くとそれはそれは驚いた顔をされ、神様だよと聖書を渡された。皆が皆、信仰心が強い訳じゃないんだぞって言い返したくなったけどそこは口を噤んだ。
どうやらその聖書によると、創世記より前にこの世界は存在していたようで、文献に出てくる邪悪な蛇はここのものだったとちょっと誇らしげに言われた。だけどそもそも、あの蛇って諸悪の根源だったはず。
そうは思っても、ちゃんと空気を読んで言わなかった。リリアちゃんマジ良い子。
昔から地球に存在したシャーマンや巫女のような霊能力者が、こっちの世界の住人とやり取りが行えたようで地球の様々な設定は、この世界の基準からヒントを得ていたよう。だから日付や時間の概念も存在したということだ。
地球と同じく太陽や月も存在しているし、微生物たっぷりの土壌のおかげで、ジャガイモやニンジン、とうもろこしやトマトなどの野菜から、リンゴ、桃などの果物が普通に採れるようだった。
それだけではなく海もちゃんとあるようで、塩や魚などそれも市場で手に入るらしい。牛、豚、馬、鳥などの家畜も存在し、鳥や豚なんかはギルが時々帰り道で狩ってきてくれたりもする。
日中、勉強したあとは、夜は長時間のバスタイム。
私は赤ん坊の頃から、魔素入り風呂に3~4時間浸かるようにしている。濃度も徐々に引き上げて、激痛に耐えながら魔素をこの小さな体に蓄えていた。
外に出たいのにはもう一つ理由がある。
せっかく魔法が使えるのだから、でっかな魔法を使ってみたいのだ。転移魔法だけじゃなくて、広いところで自分の限界まで攻撃魔法をぶっ放してみたいのだ。
そのためには、こんな貧弱な幼女というイメージを崩さなくてはいけない。
夜遅くになって久しぶりに帰ってきたレイン様が嬉しくて、その長い足のお膝の上によじ登り抱っこしてもらった。本当はちゃんと話せるようになってきているのだが、レイン様の前ではまだちょっと舌っ足らず風に喋る。
「レインさま、みてください。たくさんのしゅるいのまほうをつかえるようになりました」
そう言って小さな両手の中から、火、水、土、風、4元素を次々と作り出して見せた。
「……っ」
それはそれは驚いた様子のレイン様。頭を撫でてヨシヨシ良い子してくれるかと思っていた私は得意げに見せたが、レイン様の反応は期待とは違ったものだった。
「リリア、やめなさい」
今までに聞いたことのない冷たい声で私の手を制して止めさせた。正確に言うと、レイン様に手を取られた瞬間、まるですーっと魔力を吸い取られていくように、強制的に止めさせられのだ。
「ど、どして……?」
レイン様と一緒に戦えるように赤ん坊の時から頑張ってきたのに。レイン様は私に魔法を使わせたくないらしい。
「ナンシー!ルイス!」
「は、はい、いかがさないましたか?」
レイン様の珍しく荒げた声に慌ててナンシーが駆け寄ってきた。その後に続いてルイスもやって来る。
「リリアが4元素の魔法を使ってみせたのだが、これは一体どういうことだ。5才の子どもがこうも容易くできることじゃないだろう」
「なんですってっ」
初めての魔法はレイン様に見せたかったから、二人は私が魔法を使えることも知らず心底驚いた様子。ナンシーは戸惑っていたが、ルイスは少し考えたあとにレイン様へ進言した。
「多少の魔法が扱えても良いはずです。お嬢様とはいえ、自衛しなければならない場面だってこの先あるでしょう」
「自衛する場面?そんなものあってたまるか。何にしてもリリアには俺の防御魔法があるのだから必要ない」
珍しく言い合いとなり険悪なムードが漂う中、ナンシーが消え入りそうな声で言いづらそうに話し始めた。
「すいません、実は赤ちゃんのときに余程、魔素入り風呂が気に入ったのか、未だに夜になると長時間入っているようなんです。黙っていてごめんなさい。濃度も以前より増して濃くなって、今では私でも触れない位のものに……」
そうやって私の習慣をばらすが、そんなにいけないことだったのだろうか。ナンシーの話に、レイン様は更に怒った。
「なんだと!」
そう言って頭を抱えると、深くため息をついた。
「あれは、あの一度限りで良かったものだ。少しでも魔法に耐性が付ければ良かったのだが」
しんと静まり返る広間に、レイン様のお顔を覗き込んで言う。
「ごめんなさい、ナンシーのことおこらないで」
「……怒ってない、びっくりしてるんだ」
そう言って、頭を撫でてくれる。
「ごめんなさい。リリアちゃんは、レイン様をとても恋しく思っておられたので……。魔素入り風呂に入ることで、強い魔力を持ったレイン様を身近に感じ、寂しさを紛らわせているのではないかと思ったのです」
ナイスフォロー!
なんて素敵な解釈!
その通りとも言わんばかりに、ウルウルの瞳を向けておこを通り越して呆れているレイン様を見つめる。
自然界に普通に魔素が存在しており、魔法が当たり前のようにあること以外は、基本的な構造は地球と同じような感じらしい。理由をルイスに尋ねると元々この世界を真似て作ったのが地球だったため、とのことだった。
誰がと聞くとそれはそれは驚いた顔をされ、神様だよと聖書を渡された。皆が皆、信仰心が強い訳じゃないんだぞって言い返したくなったけどそこは口を噤んだ。
どうやらその聖書によると、創世記より前にこの世界は存在していたようで、文献に出てくる邪悪な蛇はここのものだったとちょっと誇らしげに言われた。だけどそもそも、あの蛇って諸悪の根源だったはず。
そうは思っても、ちゃんと空気を読んで言わなかった。リリアちゃんマジ良い子。
昔から地球に存在したシャーマンや巫女のような霊能力者が、こっちの世界の住人とやり取りが行えたようで地球の様々な設定は、この世界の基準からヒントを得ていたよう。だから日付や時間の概念も存在したということだ。
地球と同じく太陽や月も存在しているし、微生物たっぷりの土壌のおかげで、ジャガイモやニンジン、とうもろこしやトマトなどの野菜から、リンゴ、桃などの果物が普通に採れるようだった。
それだけではなく海もちゃんとあるようで、塩や魚などそれも市場で手に入るらしい。牛、豚、馬、鳥などの家畜も存在し、鳥や豚なんかはギルが時々帰り道で狩ってきてくれたりもする。
日中、勉強したあとは、夜は長時間のバスタイム。
私は赤ん坊の頃から、魔素入り風呂に3~4時間浸かるようにしている。濃度も徐々に引き上げて、激痛に耐えながら魔素をこの小さな体に蓄えていた。
外に出たいのにはもう一つ理由がある。
せっかく魔法が使えるのだから、でっかな魔法を使ってみたいのだ。転移魔法だけじゃなくて、広いところで自分の限界まで攻撃魔法をぶっ放してみたいのだ。
そのためには、こんな貧弱な幼女というイメージを崩さなくてはいけない。
夜遅くになって久しぶりに帰ってきたレイン様が嬉しくて、その長い足のお膝の上によじ登り抱っこしてもらった。本当はちゃんと話せるようになってきているのだが、レイン様の前ではまだちょっと舌っ足らず風に喋る。
「レインさま、みてください。たくさんのしゅるいのまほうをつかえるようになりました」
そう言って小さな両手の中から、火、水、土、風、4元素を次々と作り出して見せた。
「……っ」
それはそれは驚いた様子のレイン様。頭を撫でてヨシヨシ良い子してくれるかと思っていた私は得意げに見せたが、レイン様の反応は期待とは違ったものだった。
「リリア、やめなさい」
今までに聞いたことのない冷たい声で私の手を制して止めさせた。正確に言うと、レイン様に手を取られた瞬間、まるですーっと魔力を吸い取られていくように、強制的に止めさせられのだ。
「ど、どして……?」
レイン様と一緒に戦えるように赤ん坊の時から頑張ってきたのに。レイン様は私に魔法を使わせたくないらしい。
「ナンシー!ルイス!」
「は、はい、いかがさないましたか?」
レイン様の珍しく荒げた声に慌ててナンシーが駆け寄ってきた。その後に続いてルイスもやって来る。
「リリアが4元素の魔法を使ってみせたのだが、これは一体どういうことだ。5才の子どもがこうも容易くできることじゃないだろう」
「なんですってっ」
初めての魔法はレイン様に見せたかったから、二人は私が魔法を使えることも知らず心底驚いた様子。ナンシーは戸惑っていたが、ルイスは少し考えたあとにレイン様へ進言した。
「多少の魔法が扱えても良いはずです。お嬢様とはいえ、自衛しなければならない場面だってこの先あるでしょう」
「自衛する場面?そんなものあってたまるか。何にしてもリリアには俺の防御魔法があるのだから必要ない」
珍しく言い合いとなり険悪なムードが漂う中、ナンシーが消え入りそうな声で言いづらそうに話し始めた。
「すいません、実は赤ちゃんのときに余程、魔素入り風呂が気に入ったのか、未だに夜になると長時間入っているようなんです。黙っていてごめんなさい。濃度も以前より増して濃くなって、今では私でも触れない位のものに……」
そうやって私の習慣をばらすが、そんなにいけないことだったのだろうか。ナンシーの話に、レイン様は更に怒った。
「なんだと!」
そう言って頭を抱えると、深くため息をついた。
「あれは、あの一度限りで良かったものだ。少しでも魔法に耐性が付ければ良かったのだが」
しんと静まり返る広間に、レイン様のお顔を覗き込んで言う。
「ごめんなさい、ナンシーのことおこらないで」
「……怒ってない、びっくりしてるんだ」
そう言って、頭を撫でてくれる。
「ごめんなさい。リリアちゃんは、レイン様をとても恋しく思っておられたので……。魔素入り風呂に入ることで、強い魔力を持ったレイン様を身近に感じ、寂しさを紛らわせているのではないかと思ったのです」
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