冷たい外科医の心を溶かしたのは

みずほ

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step1 フシダラな者ですがよろしくお願いします!

本当、世の中シオカライ

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「……一応聞くけど、そのお父さんの名前は?」

「ショージパパですけど……?」

「フルネームで!」

「そんなに怒らなくても……、パパの名前は永崎祥二です」

「まさか、嘘だろ……?」

……永崎祥二は間違いなく俺の父親の名前だ。いよいよ、本当にこいつが俺の妹だということが確信めいてきた。


「もしかして先生がお兄さんなんですか!?」

「……信じたくないけどな」

顔色を変えた俺に、状況を察した奴はそれはそれは嬉しそうにはしゃいでいた。
俺の気も知らずに。

しかし、ここでしのごの言っていても仕方が無い。とりあえず、近くのカフェに入ることに。

席へ着くなり、親父から事情を問い質すべくすぐさま携帯へ連絡する。

……昔から一箇所にはとどまってはいられない人間だ。おそらくまたどこか遠い地方をほっつき歩いてるのだろう。

最悪、海外ってのも考えられる。


その間やってきた店員に奴が対応していた。

「えっと、キャラメルブラウニーホワイトチョコレーフラペチーノを2つ、クリーム多めでお願いします」

その名前を聞いただけで甘ったるそうな飲み物を俺の分まで頼まれて、思わずぎょっとする。

一瞬携帯を耳元から離し即座にいいなおす。

「すいませんそれ1つで、あとブラック1つ」

すると、かしこまりました、と頭を下げ去っていく店員。

「なんでー?あれおいしいのに」

そう言いながら、口元をきゅっと結んで突き出しぶーぶー文句を垂れる。

「ちょっと、黙ってろ」

そんな悠長にはしていられず、一喝して奴を黙らせた。



しばらく、耳元で発信音が空しく鳴り続けている。


……出ないか。

一向に出る気配がない。
諦めて切ろうとした瞬間、電話口で無駄に明るいあいつの声がした。


『はーい!』

「もしもし、俺だけど」

そう言うと、急に電話の向こうで警戒するかのように声色を変えた親父。

『誰だ、名を名乗れ』

「画面に名前出てたろうが、あんたの息子だよ」

『名乗れないとは、お前、もしかしてオレオレ詐欺だなっ?』

「……なんか久しぶりに聞いたなそのフレーズ」

『うちの息子だったら合言葉を言って見ろ!』

「たく、ふざけてる場合じゃないんだよ!」

なかなか本題に入れず焦れったくて思わず声を荒げてしまう。

『いいじゃないか、久しぶりの父と子の会話なんだから付き合ってくれよ』

「悪いけど、今そんな余裕ないんだよ」

『まぁ、そろそろ電話がくるだろうとは思ってたけど』

分かってたなら、さっさと電話出ろや。危うく切るとこだったじゃねぇか。

「楠原っていう子が俺んとこに来てるんだけど」

『あぁ、少し面倒みてやってくれ。俺の子みたいなんだ』

ふざけんな。
なんだ、俺の子みたいって。
どうせ適当に遊んだ女との間にでもできたんだろう。

それをなんで俺があんたの尻拭いをしなきゃなんねぇんだよ。

本当オヤジの女癖の悪さには呆れたもんだ。


「なんで、そういう大事なことを言わないんだよ」

『だって、言ったら絶対お前断るだろ』

「当たり前だ!」

『冷たい奴だなー、お前の妹なんだぞ?』

「いきなり言われて、はいそうですかって言えるか!そもそも……」

と、うっかりこいつの前だということを忘れて口にしてしまいそうになった。

ちょっと待ってろ、とだけ言って席を外し外へ出る。

「そもそも、母親はどうしたんだよ」

『それがこの子が中学生の頃にさ、突然いなくなっちゃってさー。それから音信不通で』

なんだそれ。
なんて無責任な母親だ。

『それから金銭的なところで色々面倒みてたんだけど、家賃滞納で追い出されちゃったみたいでさー。頼むよー、俺はもう海外行っちゃうし。帰ってきたらすぐ迎えに行くから』

情けない声を出して、息子の俺に懇願する。

てかもうあいつ成人してたよな?
なんで親父はそんなに甘いんだ。

自活させろよ。


「……ひとまず預かるけど、親父が帰ってくるまでなんて待てないから。次の部屋決めさせてさっさと追い出すからな」

『追い出すって、相変わらずお前は厳しい奴だな。一体、誰に似たんだ』

「当たり前だ、もう大人なんだから、甘やかしてんじゃねぇよ」

『くれぐれも、仁菜ちゃんには優しくしてやるんだぞ』

まだ電話口で、仁菜ちゃん、仁菜ちゃん言っていたが煩わしくて一方的に切ってしまった。

自分から勝手に頼んでおいてなんなんだ。俺に預けるのが心配なら海外なんて行かずにてめぇが面倒みろ。 

こっちだっていきなり見知らぬ女押し付けられて迷惑だっての。

 
「お兄さん、そろそろ帰らなきゃ」

店内へ戻ると俺の呼び方が変わっていた。

「なんで?」

「お兄さんの部屋に、私の荷物を届けに引越し屋さんが来る頃だから」

……それを早く言え。

と、心の中で毒付き、少し冷めたブラックコーヒーを一口飲んでレジへ向かった。

家へ帰る途中、2人並んで歩いた。
スーツケースを転がす奴の歩調に少し合わせて。

「お兄さん、あの」

「そのお兄さんってのやめろ」

「じゃなんてお呼びしたらいいですか?あ、お名前なんていうんですか?」

「彰人だ」

「じゃ、あっきー」

「……彰人さんと呼びなさい。お前は?下の名前なんだっけ?」

「仁菜です、にいな」

「じゃ、仁菜でいいな。とりあえず家に来ていいけど、さっさと新しい部屋決めて出てってもらうから」

「えぇーっ!そんな、ひどいっ!」

まるで、俺を極悪人のような目で見て責め立てる。

「あぁ、やっぱりそういう運命なんだ、せっかく生き別れのお兄さんと再会したのに、すぐに追い出されるなんて……」

ひっく、ひっくとわざとらしくしゃくりあげる。

次は泣き落としか。
しかし、その目には一切涙など浮かんでいない。ただの泣き真似だ。

たく、嘆きたいのはこっちの方だ。
こんな、頭ぱっぱらぱーな少女としばらく一緒に生活するのかと思うと胃が痛くなってくる。

「あぁ、本当、世の中世知辛いな。タチの悪い詐欺にでもあってるようだ」

「シオカライの?、仁菜シオカラ好きー」

「……お前、それわざとやってんの?可愛いと思ってんの?それともウケ狙い?全部外してんだけど」

イライラして思わず早口で思ったことをぶちまけると、途端にまたシュンとしおらしくなってしまった。






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