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第一章
第3話「知らない痛み」
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朝からなんとなく体が重かった。
昨日の持久走の疲れだろう……そう思い込もうとしたけれど、どうにもお腹の奥がずきずきと痛む。
前の身体なら「ストレスで胃がやられたか」で片づけただろう。だが今は、十一歳の少女の体だ。
休み時間、机に突っ伏していると、担任が心配そうに声をかけてきた。
「如月さん、大丈夫? 顔が真っ青よ。保健室、行っておいで」
「……だ、大丈夫です」
口ではそう答えたが、足は自然とトイレに向かっていた。
(やっぱり……変だ。これは、風邪なんかじゃない)
個室に入って気づく。
――下着ににじむ赤。
「……え、何だこれ……? 怪我……じゃないよな」
鏡に映る小さな顔が、青ざめている。
前世の記憶が頭をよぎる。
女性特有の“あの日”のこと。知識としては分かっていた。けれど、実際に自分の体で体験するとなると……。
額にじわりと汗が浮かぶ。両手で顔を覆い、かすかに呟いた。
「……めんどくせー……」
声が高く響いて、余計に惨めに聞こえた。
⸻
放課後。家に帰ると、母さんがすぐに気づいた。
「ひな、どうしたの? 今日は元気ないじゃない」
俺はしどろもどろになりながら、「お腹が……その、なんか変で……」と答えた。
母さんは一瞬きょとんとしたあと、ふっと笑って、やさしく背中を撫でてくれる。
「大丈夫よ。女の子はね、そういう日があるものなの」
その言葉に、胸の奥がざわついた。
前の人生で、一度も味わえなかった“母に甘える安心感”。
温もりに包まれながら、思わず俯く。
(……俺、もう本当に“女の子”なんだな)
布団に潜り込むと、今日一日の重さが一気に押し寄せた。
目を閉じながら、心の中でまたあの言葉が零れる。
「……めんどくせー……」
けれど今夜は、不思議と孤独じゃなかった。
隣の部屋から母さんの気配が伝わってきて、胸の奥がじんわりと温かい。
その温もりに包まれながら、俺は静かに眠りへと落ちていった。
昨日の持久走の疲れだろう……そう思い込もうとしたけれど、どうにもお腹の奥がずきずきと痛む。
前の身体なら「ストレスで胃がやられたか」で片づけただろう。だが今は、十一歳の少女の体だ。
休み時間、机に突っ伏していると、担任が心配そうに声をかけてきた。
「如月さん、大丈夫? 顔が真っ青よ。保健室、行っておいで」
「……だ、大丈夫です」
口ではそう答えたが、足は自然とトイレに向かっていた。
(やっぱり……変だ。これは、風邪なんかじゃない)
個室に入って気づく。
――下着ににじむ赤。
「……え、何だこれ……? 怪我……じゃないよな」
鏡に映る小さな顔が、青ざめている。
前世の記憶が頭をよぎる。
女性特有の“あの日”のこと。知識としては分かっていた。けれど、実際に自分の体で体験するとなると……。
額にじわりと汗が浮かぶ。両手で顔を覆い、かすかに呟いた。
「……めんどくせー……」
声が高く響いて、余計に惨めに聞こえた。
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放課後。家に帰ると、母さんがすぐに気づいた。
「ひな、どうしたの? 今日は元気ないじゃない」
俺はしどろもどろになりながら、「お腹が……その、なんか変で……」と答えた。
母さんは一瞬きょとんとしたあと、ふっと笑って、やさしく背中を撫でてくれる。
「大丈夫よ。女の子はね、そういう日があるものなの」
その言葉に、胸の奥がざわついた。
前の人生で、一度も味わえなかった“母に甘える安心感”。
温もりに包まれながら、思わず俯く。
(……俺、もう本当に“女の子”なんだな)
布団に潜り込むと、今日一日の重さが一気に押し寄せた。
目を閉じながら、心の中でまたあの言葉が零れる。
「……めんどくせー……」
けれど今夜は、不思議と孤独じゃなかった。
隣の部屋から母さんの気配が伝わってきて、胸の奥がじんわりと温かい。
その温もりに包まれながら、俺は静かに眠りへと落ちていった。
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