めんどくさがりな彼女は、元おじさん

Y-z

文字の大きさ
5 / 36
第一章

第3話「知らない痛み」

しおりを挟む
朝からなんとなく体が重かった。
昨日の持久走の疲れだろう……そう思い込もうとしたけれど、どうにもお腹の奥がずきずきと痛む。
前の身体なら「ストレスで胃がやられたか」で片づけただろう。だが今は、十一歳の少女の体だ。

休み時間、机に突っ伏していると、担任が心配そうに声をかけてきた。
「如月さん、大丈夫? 顔が真っ青よ。保健室、行っておいで」

「……だ、大丈夫です」
口ではそう答えたが、足は自然とトイレに向かっていた。

(やっぱり……変だ。これは、風邪なんかじゃない)

個室に入って気づく。
――下着ににじむ赤。

「……え、何だこれ……? 怪我……じゃないよな」
鏡に映る小さな顔が、青ざめている。

前世の記憶が頭をよぎる。
女性特有の“あの日”のこと。知識としては分かっていた。けれど、実際に自分の体で体験するとなると……。

額にじわりと汗が浮かぶ。両手で顔を覆い、かすかに呟いた。
「……めんどくせー……」

声が高く響いて、余計に惨めに聞こえた。



放課後。家に帰ると、母さんがすぐに気づいた。
「ひな、どうしたの? 今日は元気ないじゃない」

俺はしどろもどろになりながら、「お腹が……その、なんか変で……」と答えた。
母さんは一瞬きょとんとしたあと、ふっと笑って、やさしく背中を撫でてくれる。

「大丈夫よ。女の子はね、そういう日があるものなの」

その言葉に、胸の奥がざわついた。
前の人生で、一度も味わえなかった“母に甘える安心感”。
温もりに包まれながら、思わず俯く。

(……俺、もう本当に“女の子”なんだな)

布団に潜り込むと、今日一日の重さが一気に押し寄せた。
目を閉じながら、心の中でまたあの言葉が零れる。

「……めんどくせー……」

けれど今夜は、不思議と孤独じゃなかった。
隣の部屋から母さんの気配が伝わってきて、胸の奥がじんわりと温かい。
その温もりに包まれながら、俺は静かに眠りへと落ちていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...