めんどくさがりな彼女は、元おじさん

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第一章

第4話「兄と私」

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夕飯のあと、居間で宿題を広げていると、隣の席に兄――翔真がドサッと腰を下ろした。
中学一年生。俺から見れば“ひとまわり下の後輩”みたいな存在なのに、見た目は俺よりも背が高い。

「お前さぁ、今日の体育、最後まで歩いてただろ」
「……見てたの」
「見えるだろ。めっちゃ遅れてたじゃん」

憎まれ口を叩きながらも、彼はノートをひょいとめくり、俺の計算ドリルを覗き込む。
「うわ、全部合ってる。ずるい。なんでそんなに早いんだよ」

「……え、えっと、たまたま……?」
(たまたまじゃねぇよ。四十年分の積み重ねだ。けど、そんなこと言えるかよ……)

翔真はふんと鼻を鳴らして、俺のペンを取り上げる。
「でも字はヘタだな。ほら、ここ曲がってる」
「う、うるさいな……!」

思わず睨み返してしまった。
すると翔真が、にやりと笑う。
「お前さ、時々ほんと……小学生っぽくないよな。なんか、オッサンみたい」

心臓が跳ねた。
思わず口の中で小さく呟く。
「……めんどくせー」

「え? 今なんて言った?」
「な、なんでもないって!」
慌てて手を振る俺を見て、翔真は肩をすくめた。

その夜。布団に入る直前、廊下から翔真の声が聞こえた。
「……まあ、運動会、俺リレー出るしさ。お前が出たくなきゃ、無理すんなよ」

ぶっきらぼうな言い方なのに、不思議と胸が温かくなった。
前の人生では、兄弟なんていなかった。
こうして誰かに心配される感覚が、少しくすぐったい。

(……家族って、こんな感じなのか)

思わず笑いそうになったけれど、唇からはまた小さな声が漏れる。
「……めんどくせー」

だけど、今度は――ちょっとだけ、やさしい響きだった。
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