【R18】婚約破棄予定の御曹司に溺愛調教される無自覚ドSな同居生活でお試し中です

弓はあと

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創一郎の心の叫び

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「座ったら?」

 俺が促すと、花は俺から少し間隔をあけてソファに座った。
 この距離で並んで座ると、桜の木の下で初めて会った日のことを思い出す。

 実際に会った彼女は、15年以上頭の中で思い描いてきたとおりの女性だった。
 いや、違う。
 実際に目の前で動いて、しゃべって、表情を変える花は、想像していた以上に俺の心を揺さぶった。

 自分では、あまり感情を表に出さない方だと思っている。
 実際、「何を考えているか分からない」と言われることがよくあった。特に女性からは。

 それなのに、花を目の前にしたら何故か気が動転してしまって、言葉も行動もなんだかおかしくなり、格好悪いところばかり見られてしまった。
 けれど彼女は、格好悪くても嬉しいと言う。
 
 自分の気持ちを閉じ込めて、亡くなった父親の病院を守るために生贄になろうとしていた健気な花。
 こんなに早く結婚の話が出るなんて油断していた。本当に俺は馬鹿だ。
 間に合わなかったらと思うと、心臓がギュッと握り潰されたように苦しくなる。

 少年の時には気付けなかった恋心。
 本当は、初めて会った日から彼女のことを好きだったんだと思う。
 そして今ではその気持ちが、俺を無様に格好悪くしてしまうくらい膨らんでいる。

 ただいるだけの自分のことを認めてくれて、普通の人だと言ってくれた花。
 俺に向けられる、愛らしい笑顔。
 ……好きで好きで、愛しくてたまらない。

 15年以上も片思いしてきた愛しい花が、今日から俺の家にいてくれるなんて。

 明日は休みを取った。花と一緒にこの家で使うものを買いに行こう。
 マグカップにお茶碗、お箸をお揃いで買うのもいいかもしれない。
 こんな恋に恋する少女のような感情が自分に湧くなんて、自分でもびっくりしている。

 日本に来てから『その日』はちょっと憂鬱だったが、明日は花と一緒に過ごせる。
 好きな人と『その日』を過ごせるなんて幸せだな、とまた恋する乙女の頭になってしまった。

 ああ、ベッドも買わないと。
 今夜は俺がソファで寝て、花に俺のベッドを使ってもらおう。
 俺のベッド……変な匂いとか染み込んでないよ……な?
 臭いとか思われたらどうしよう。

 ベッドを買おうと提案したら、断られてしまった。
 あまり長くこの家にいるつもりは無いということだろうか。
 花に好きな人ができるまで、いや、本音を言えばずっとこの家にいて欲しいのに。

 ソファで寝るとか言い出すから、なんだか話がややこしくなってしまった。
 しまいには、寝袋で寝るとまで言っている。

 おいおいおい、そんなに俺のベッドを使うのが嫌か。
 そこまで嫌がるような、匂いや汚れでもありそうなイメージなのか。
 今まで女性にされたことがない拒絶の反応に、ちょっとへこむ。

 とりあえず、今日だけ我慢してもらって、明日は無理矢理にでも花のベッドを買おう。
 「会社に泊まる」という言葉に花が慌ててる。
 たぶん、罪悪感を感じてるんだろうなぁ。

 ちょっと意地悪だったかもしれないが、「俺が会社に泊まる」しか選べない選択肢を花に提案した。 
 だから今日だけは我慢して、俺のベッドを使いなさい。

 『ベッド……一緒に、使わせてください……』

 …………冗談だよね。


 寝室に入ると、俺のベッドにちょこんと座る花がいた。

 グレーのスウェットに身を包んだ花。

 家の中でしか着ないであろうリラックスした部屋着姿に、胸が高なる。
 手と足首のところはゴムでキュッと細くなっているから、ゴムのあたりの布が少しタプッとしているのがなんとも可愛らしい。

 こんな格好を見せてもらえるのは俺だけだと思うと、一緒にいられる理由を勘違いしてしまいそうだ。
 このまま好きだと自分の気持ちを伝えて、花の身体をぎゅっと抱きしめたくなる衝動に駆られる。

 でも、ダメだ。
 俺が好きだと言ったりしたら、花はきっと俺の気持ちを優先して、受け入れようとしてくれるだろう。
 花にとっては、俺は爺さんの代わりに自分のことを助けてくれた存在。
 その立場を利用して、花に自分の気持ちを押し付けるようなことはしたくない。絶対にしちゃダメだ。

 本当は、寝室に寄るべきではなかったのかもしれない。
 仕事があるから、とだけ伝えて自室に向かうべきだった。

 少しだけでも一緒にいたいという誘惑に負けて、部屋に入ってしまった。
 普通に会話……できてるよな、俺。

 『一緒に過ごす時間が楽しみ』だと伝えると、花は頬を赤く染めて喜んでくれているようにみえた。
 その様子は本当に可愛くて、愛らしくて。

 気がついたら花を抱きしめようと、彼女の身体に手を伸ばしていた。

「花……」

 抱きしめようとした俺の手に怯える彼女の姿で、ハッと正気に戻る。
 一緒に過ごす時間を、彼女も楽しみにしてくれていると勘違いしてしまうところだった。

 でも……せめて、髪の毛だけでも触れてもいいだろうか。
 今だけだから、これ以上は、何もしないから。
 ああ、俺の愛しい花のお姫様。


 ――なのに、そのお姫様が今、俺の足元で跪いている。

 切なそうに、パジャマに隠された俺の男性器をじっと見つめ、俺のことを『気持ちよくさせたい』と、弱々しく懇願してきた。

 『初めて』で『上手くできないかもしれない』と自信なさそうな彼女を抱きしめ、そんなことはしなくていいと言ってあげたい。
 そのまま優しくキスをして、何度も何度もキスをして、許されるなら、愛らしい声を奏でるその口に舌を挿れて舐め尽くしたい。

 いや、ダメだ。
 彼女にそんなことをしてはいけない。
 よく知りもしない俺なんかに抱き締められ唇を奪われたりしたら、花にとっては恐怖以外のなにものでもないはずだ。

 それでもきっと、我慢してその身を捧げようとしてしまうのだろう。
 そんなつらい思いはさせたくない。花には好きになった人と、幸せな気持ちで抱き合ってほしい。 

 俺がすべき行動はただ一つ。速やかにこの部屋を立ち去ること。ただそれだけだ。

 もう一方で、俺の男性器を気持ちよくさせようと、健気に愛撫する花の淫らな表情が頭に浮かぶ。
 俺の中の悪魔の心が、善からぬことを囁いてくる。


 神様、これはいったい何の試練でしょうか――
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