【R18】婚約破棄予定の御曹司に溺愛調教される無自覚ドSな同居生活でお試し中です

弓はあと

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ランチの時間

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 今日は久しぶりに、副社長室で創一郎さんとランチ。
 実をいうと、久しぶりなのはランチだけではなく、創一郎さんの顔をゆっくり見るのさえ久しぶり。

 隣に座ってサンドイッチを食べる創一郎さんの横顔をそっと覗き見る。
 そうしたらチラッと横目でこちらを見た創一郎さんと目が合ってしまった。
 慌てて下を向いてサンドイッチを取ろうとしたら中身の具がポロっとこぼれ、フッと創一郎さんが小さく笑う。

 水族館デートをした翌日の月曜日の朝、玄関でいってらっしゃいのキスをして以来、昨日まで激務だったらしい創一郎さんとはほとんど顔を合わせていない。
 私が寝てから家に帰ってきて、私が起きる前に家を出ている創一郎さん。

 一緒に住んでいるのに会えなくて寂しい日々を過ごして、気付いたら今日はもう金曜日。
 午前中にランチのお誘いの内線がかかってきた時は、嬉しくて嬉しくて。

 もしかして、副社長室で抱きしめられて、キスされたりしたらどうしよう、なんて妄想までしてしまった。


 ……でも、そんな心配は無用のようです。



「……どうして俺の部屋にいるんだよ」

 ちょっと棘のある創一郎さんの声。
 私に向けて発せられたものではないようですが……

「「まあまあ」」

 声を揃えて答えるのは、スージーさんと勇太君。
 応接用のソファに私たちと向かい合ってサンドイッチを食べている。

「勇太とお昼食べに行こうとしたら、ちょうどエレベーターのところで花ちゃんに会ってね」
「花ちゃんをランチに誘ったら、創一郎君と一緒にこれからお昼だっていうからさ」
「それで、みんなで一緒にお昼食べようって話になったんです」

 創一郎さんは少し不機嫌そうに、無言でサンドイッチを口に運んでいる。

 勝手にお二人を誘ったのは、悪かったかな……?

 サンドイッチを食べながら、スージーさんと勇太君は、最近あった出来事をおもしろ可笑しく私に教えてくれた。

 パフェが話題のお店にふたりで行ったら、なぜか『サービスです』とケーキをプラスしてくれて、パフェでお腹いっぱいだったけど残すのも悪いからふたりともがんばって食べてしまったこと。
 道を歩いていたら、いきなり勇太君が飛んできたカラスにドカッと蹴られたこと。

 後ろ姿が取引先の人にそっくりだったから、挨拶しながら近づいていったらまったく違う男性で必死に謝ってしまったというスージーさん。
 「相手の男性すごいびっくりして、顔を真っ赤にして恐縮してたよ」とは勇太君談。いきなり海外モデルみたいなスージーさんに話しかけられたら、そりゃ驚くだろう。

 そのあとも最近行ったランチの美味しいお店の話、乗ったことのあるローカル線の話とそこで電車に乗り遅れて大変だった話、旅行先での珍しい食べ物や風習の話……
 
 ふたりと話していると、すごく楽しい。
 たくさん笑って、いつの間にか時間がだいぶ経っていた。
 創一郎さんは、すでに歯磨きまで終わっていそう。
 そろそろ三人とも、午後のお仕事の時間かな……。

「花ちゃん、今日僕少し早く帰れそうだから、夕飯一緒に食べながらもう少し話さない? ふたりきりで、美味しいもの食べ……」
 
 勇太君の言葉が終わる前に、遮るような声が隣から割り込んできた。

「いや、勇太には仕事が入っているはずだ。花、俺午後から泊まりで出張の予定だったけど、無くなったから今日は少し早く帰れそう」

 それを聞いたスージーさんは、「あ、そうそう」と何かに気付いたような表情。

「お昼の時に勇太に伝えようと思ってたの忘れてたわ。勇太、急で悪いけど午後から神戸に1泊で創一郎の代わりに出張をお願い。ちょっと挨拶して、名刺を渡してきてくれればいいパーティーだから。美味しいものたくさん食べられるわよ」
「えぇっ!? もともと創一郎君が行く予定だったなら、予定通り創一郎君が行きなよ」
「勇太、創一郎は今週忙しすぎたから、今日は少し休ませてあげて。その代わりあなたは月曜日に代休とれるようにスケジュール調整したから」

 勇太君は唇を尖らせて不満顔。とは言っても元々凛々しさの中に可愛いさも併せ持つ整った顔をしているから、年上の女性がこの表情を見たら母性本能を擽られる人が多そう。
 出張行かなくてもいいよって、言っちゃう女性もいるのでは。
 でもスージーさんは年上女性だけど、勇太君のこの表情には慣れっこなのか、まったく気にする素振りは無い。

「それなら花ちゃん、月曜にふたりでどこか遊びに行かない?」
「月曜日は午前中にここの保育所で仕事が……。あと午後は、創一郎さんに書類のファイリング作業を頼まれていて」

 午前中に内線をもらった時に、創一郎さんからお願いされて了承したばかり。

「仕事なら僕がスケジュール調整してあげるから、1日くらい休んで大丈夫だよ。花ちゃん毎日がんばってくれてるし。それに創一郎君の作業は月曜じゃなくても絶対に大丈夫。なんならファイリング作業は火曜日に僕と一緒にやろう」

 人懐っこい笑顔で勇太君が私の顔を覗き込む。
 肯定の返事をしてよいものか一瞬迷ったら、隣から悪戯をたしなめるような声が勇太君に向けられた。

「俺は月曜日に終わらせたくて花に頼んだんだ。勇太、公私混同するなんて、よくないぞ」
「……創一郎君に言われたくないねぇ……。絶対僕の代休の日を狙って花ちゃんに仕事をお願いしたでしょ」

 恨み節のような勇太君の声を無視して、創一郎さんが悪戯っぽい笑顔で私の顔を覗き込む。

「花、今日は7時頃に帰れると思うから、久しぶりに一緒に夕飯食べてゆっくりしような」

 勇太君が、なんだか苦虫を嚙み潰したような顔をしている。
 それに反して創一郎さんは、何かの勝負に勝ったような、得意げな顔。
 その二人の間に、スージーさんの声が割って入った。

「あ、そうそう、私今日、創一郎の家に行くわよ。夕飯何か買っていくから、花ちゃんと3人で一緒に食べましょ」
「は!?」

 得意げだった創一郎さんの表情が、開いた口が塞がらないといった感じに変わる。

「今回のモニターの商品、サイズ調整に思ったよりも時間がかかって発送できなかったの。今日直接持っていくわ」
「それなら今日発送すればいい。遅くとも日曜には届くだろ」
「土曜日の方がゆっくり試せるでしょ。だから今日、直接持って行った方がいいわよ。サイズが合っているか私も一緒に確認したいし」

 そういえば、創一郎さんってモニターの報告どんな感じでスージーさんに伝えているのかな。
 どの程度まで話しているの? 

 仕事で長い時間毎日一緒にいるから、きっと色々話すよね。
 そうだよね、私の話だけじゃなくて、きっと色々なことを……。

 ふと、『毎日でもしたい気分になる』と言っていた創一郎さんのセリフを思い出してしまった。
 ここ数日、帰りの遅かった創一郎さん。
 ソファもあって鍵もかかる副社長室。
 毎日一緒にいる、外見も中身も素敵な女性秘書のスージーさん。

 創一郎さんとスージーさんって、結局のところどういった関係なんだろう。
 何でも言い合える、対等な感じで仲がいいっていうのは見ていてわかるけど。
 副社長と秘書。ただそれだけ?

「スージーさんは、前にも創一郎さんの家に来たことあるんですか?」
「そうね、前はよく週末に創一郎の家でお酒を飲んで、そのまま泊まったりしてたわ。日本に来て最初の年とかは、特に」

 家に泊まるような仲なんだ……。
 そんな予感はしていたけど、改めて聞くとなんだかショック。

 ふたりは恋人同士だった時期もあるのかな。
 私が創一郎さんと一緒に住んでいること、スージーさんは気にしてないの?

「いけない、そろそろ行かないと。創一郎、5分後に1A会議室へ。勇太は出張の準備をしてちょうだい」

 スージーさんと勇太君に続いてドアに向かう。
 後ろから手を掴まれて、振り向くと唇に軽く触れるだけのキスをされた。
 ふわりと感じるミントの匂い。

 創一郎さんの手が離れた直後、こちらを振り返った勇太君に名前を呼ばれる。
 耳が熱くなるのを感じながら、慌ててふたりに続いて部屋を出た。
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