【R18】義姉に婚約者を奪われた私は、冷酷無慈悲だと噂の公爵に娶られました~元騎士団長の初心で一途な溺愛は、時々エッチ~

弓はあと

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尻を叩きながら、メス豚とおっしゃって

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「それとゴーシュタイン様、閨の場での『ダメ』という言葉は、『すごく良いからもっとして欲しい』という意味になります。そのため私は、ゴーシュタイン様がダメだとおっしゃった時に行為を続けました。注意事項を先にお伝えできておらず申し訳ございません」

 浮気現場を見学していた時にマクリ様が口角を片方上げた表情で腰を振りながら「ダメじゃなくて、すごくイイもっとして欲しい、だろ?」と何度も言っていたのを思い出す。

「ふむ、分かった。閨の場でダメだと言うのは、もっとしてという意味なのだな。肝に銘じておく」

 ゴーシュタイン様は真剣な表情で、私が教えた内容を復唱し学ぼうとしてくれた。
 話した事を理解しようとしてもらえる事が、こんなに嬉しいなんて。
 今やっと気付いた、私は悲しかったのだ。
 領民のためだと思ってフテイシ伯爵領の運営について話しても、父も義母も義姉もマクリ様もまともに聞いてくれなかった事が。

「メスフィルール、俺の方から貴女にしてあげられる事があるなら教えてほしい」

 ゴーシュタイン様は私の言葉に耳を傾け聞こうとしてくれる。
 それならば私も、学んだ知識をしっかりとお伝えできるように努めなければ。

 ベッドに胸をつけてうつ伏せになりお尻の位置だけ高く上げ、ピラ、と夜着の裾を捲る。
 下着はつけていないから直にお尻が空気に触れて、ほんの少しだけひんやりとした。
 んグッ、と喉を詰まらせたようなゴーシュタイン様の咳が聞こえたけれど、うつ伏せの体勢からだと咳き込んでいる表情は見えない。

「ゴーシュタイン様、私のお尻を叩きながら私の事を『メス豚』とおっしゃってください」
「尻を叩きながら……、メス豚、と……?」

 表情は見えないけれど、ゴーシュタイン様の戸惑ったような呟きが聞こえてくる。
 今まで知らなかった事を急にたくさん学ばなければいけないのだもの、戸惑ってしまうのも無理もない。

「はい、私はゴーシュタイン様の事を『ご主人様』と呼びます。そう呼び合いながら男性が叩いて肌に赤い痕を所有印としてつける事は、女性へのご褒美になるようなのです」

 浮気現場を見学していた時、マクリ様は『メス豚、お前は誰のものだ?』と聞き『ご主人様のものです』という返事に満足したような表情を浮かべて『いい子だ。そら、僕のものだと分かるご褒美をやろう』と言いながらペシンッペシンッと勢いよく叩いていたのを思い出す。

「そうか……だが騎士団長の経験もある俺が叩いたりしたら、メスフィルールの尻の骨が折れてしまうかもしれない。こんな感じで、どうだ?」

 そっと触れるように、ゴーシュタイン様の大きな手が私のお尻へ当たる。

「少し弱すぎる気もしますが……私も実際には叩かれた事が無いのでどのくらいが正解か分かりません。ご褒美になる強さについては徐々に調整していきましょう、最初は今の感じでお願いします」

「分かった。それと呼び方だが、俺は日頃訓練していることが咄嗟の時に出てしまうから、閨で呼んでいると人前でもメスフィルールの事を『メス豚』と呼んでしまうおそれがある。最初の二音が同じだからメスフィと、普段も閨でもメスフィルールの名前の一部で呼ぶのはどうだろう?」

「承知いたしました。では私も、人前で間違えても差し支えないようにゴーシュ様とお呼びするのはどうでしょう? それならご主人様と音が似ていますし」

「ああ、そう呼んでくれ、メスフィ」

 メスフィと私を呼ぶゴーシュ様の低い声が、不思議と甘く感じられる。
 名前を呼ばれ大きな手がペタ……とお尻に触れるたび、お腹の奥がゾクリと震えた。
 なんだかもどかしくて、身体が疼く。いっその事もっとしっかりと触れて欲しい。
 
「……ゴーシュ、さまぁ……」
「すまない、痛かったか?」
「痛くは無いのですが、お腹のあたりがムズムズします……」
「そうか、俺も腹のあたりがムズムズ……いや違うな、下腹部がムラムラする」

 私のお尻に触れていた手の動きが止まり、ゴーシュ様は私の隣にごろんと寝そべった。

「ゴーシュ様?」
「俺の硬い尻とは違う尻のやわらかさが男の本能を刺激するのかもしれない。これ以上ムラムラするとメスフィにご褒美をあげられず素振りをしに行かねばならなくなりそうだから叩くのは背中にしてもいいだろうか?」
「はい、では背中を叩いて、ゴーシュ様のものだという赤い所有印をつけてください」

 ゴーシュ様の大きな手が優しく、私の背中をトン……トン……と叩く。
 この、感じは……。
 幼い頃、寝る時に実母が私の背を優しく叩いてくれた時のリズムに似ている気がする。
 なんだかすごく、安心して……

「……ごーしゅさま……ん……ねむ……ぃ……」
「ん、眠いのかメスフィ? 今日は結婚式で疲れただろう。眠いなら寝てしまえばいい」

 その夜の記憶はそこで終わり、私が朝起きた時にゴーシュ様はベッドにいなかった。
 ひとりきりのベッドはすごく広く感じてしまい、寂しくて胸が切ない。

 部屋へ朝食を運んでくれた侍女の方にゴーシュ様の居場所を聞いてみると「早朝から剣の素振りを三千回ほどしたあと、騎士団の訓練場へ行くとおっしゃって出発なさったようですよ。執事長が言っていました」と教えてくれた。






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