時は平成。発達障害だと知らなかった僕が、狂人から大人になるまで。(ほぼ実話)

カナリア

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平行世界の僕と出会う

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私さんの家にお呼ばれする朝

僕はいそいそと、朝ごはんのお餅を食べて出かけようとしていた。

その日は曇っているのに空は明るくて
蛍光灯の光のような空に、
あぁ、眩しくて嫌だなぁ。

と考えていた。

これは大人に、なった今もだが
蛍光灯の光や
LEDの光は、感覚過敏を持っている人には気持ちを落ち着かなくさせる作用がある。
落ち着かないというか、イライラする。
対向車のライトは目潰しとなり、まともに歩くことさえできないのだ。

そんな晴れた日の日曜日は
本来ならずっと布団をかぶっているけれど、今日は違う。

そして、様子の違う僕に気づいた「お母さん」が声をかけてきた

「今日は学校ないよ?」

「知ってる」

「どこにいくの?」

「…





友達(?)の家」



この会話の後の母親は
珍しく黙り込んだ。

あれ?何も言わない。
怒らないのだろうか?と不安になった。


よくわからないけど、怒られる前に家を出なければ!
そう思った僕の行動は早く、靴を急いで履くために、歯磨きをダッシュで終わらせて
玄関にむかった



しかし、そんな僕の行手を遮るのはお母さん。

僕は回り込まれてしまったのだ。


その手には謎の紙袋。


「?」

「持っていきなさい」

覗き込んだ先には赤い物体。

「…??…りんご?」


もしや、昼はりんご食べて
昼食には帰ってくるなということなのか??

まあ、ポケットにいれたビックリマンチョコを食べるつもりだったから、別に良いけど。

見上げると、なんと普通の声の大きさで話す
「お母さん」がそこにいた


「お友達のお母さんによろしく、挨拶の仕方はわかるわよね?」


!?


!??!?

…!

なるほど、
そういえば僕は友達がすごく少なかった!!

そして、こんな日に出かけることもないのだから
大事な友達と勘違いしたのだろう。


しかし、残念。
細身の僕にはりんごの袋は重く
とてもじゃないがこの量は持てない。

よし、外に捨てて…「ちゃんと持っていきなさいね」

またも、読まれてしまった。

……。イエスマム。





なんともクソ重たいりんごを持って(少し引きずって)
私さんの団地に着いたけど
私さんの家は3階。
平成の団地にエレベーターなんて洒落たもんは無い。
あるのは無情な最上階まで続いているコンクリでできた、階段である。


よし、りんごは下に置いていこう。

僕は階段の下にりんごを置いて

悠々とチャイムを鳴らしたのだ。


「私さん、僕だよ!」

「僕くん…いらっしゃい。

ちょっ!ちょっと!外に出ない?」

僕の返事を待たずに、おっとりした私さんにはめずらしく
僕の手を掴んで走り出し、そのまま一階まで降ろされた。


おぅ…、ここまできてなお
ゴールは遠い。
なんてことだ。

僕たちはまた一階に降りて、
謎の紙袋は速攻で見つけられた。

バレるりんご。

「りんごだ!」

「それ、僕からのお土産」

「え?なんで下にあるの?」


「あー…、落としたみたい。??」


僕は浅はかなので、落とした食材を渡そうとする無礼さがわからなかった。

私さんも気にしてないので、

「変なの!でもありがとう!」
そう話した。


しかし、家に入りたい僕にとって
この状況はよくわからない。

「それより話って?」


「あー、まずね

家がすごく汚いけど、気にしないで。
あと、家に入ったら
リビングを抜けてすぐ、私の部屋に行こう。私の部屋なら遊べるから!
玄関入ったら、ダッシュね?」


なんだそりゃ?
僕は心底不思議だったけど、
この白い明るい空の下にいるより
汚かろうが家の中の方が落ちつくので
私さんの提案に素直にうなずいた。

「りんごは半分ずつ持とうね笑」

そうして、やっと
僕は私さんの家に入れたのである。



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