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平行世界の僕と出会う②
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「…いくよ?…せーの!」
ガチャリ、とドアを開いたら
靴をポイポイっと脱ぎ捨て、私さんの部屋に…いこうとしたのだけど
きったな!!
いや、部屋までの道だけどなんだこれ!
服と謎の紙と、頭にガンガンくる腐敗臭。
家の中は薄暗く、積まれた段ボールに
ソファと思われる椅子の上は、黒いシミの?シミのついた服か?
とにかく、汚い布。
カーテンの代わりに窓には紙が貼ってあり、ところどころ破れている
窓は空いているが、ちっとも爽やかな空気にはならない。
家では嗅いだことの無い異臭に、思わす鼻をつまむ。
なんだこれ…!
床に物がありすぎて、どうしても踏みつけてしまう。
困った僕は、私さんの方を見た。
((ダッシュ!))
すでに部屋に着いたと思われる私さんは、手招きをしながら声に出さず、口を動かし、僕にジェスチャーをしている。
あそこが部屋か、よし!
一気に部屋に駆け込みドアを閉めると
そこは、さっきの臭いが少なくだいぶマシな空間だった。
一部変なところをのぞいては。
「わああ…」
そこは、一面のキティちゃんの部屋。
どこもかしこもキティだらけ。
猫は僕も好きだけど、度がすぎているのではないだろうか…
正直キモい。だいぶ。
数年後の僕は、このようなキティ好きの人をキティラーと呼ぶことを知るのだが、
この時は、ただのキモい部屋にしか見えなかった。
流行の最前線の部屋だったのに、ごめん。私さん。
素直に、狐憑きの僕以外にも変人はいるもんだ、と思っていたよ。
変人(僕)変人(私)と出会う。
まあ、よいけどね!
さて、僕の目的は
「お母さん」がいない家の探索で
「お母さん」がいなくても生活はできるのか、見るためだ。
あのひどい空間は、お母さんがいないからなのかなぁ。そう思った瞬間
僕の耳がドアの開く音をとらえたと思ったら、頭にまるで全力で漫才の人がするようなツッコミを受けるような衝撃をうけた。
物理的に。
「外に出るなら酒買って来いっていったでしょーっ!!!」
ドアの前に立っていたのは
ゲームのトロールのようなオバさん。
顔が赤く、さっきの汚い部屋の臭いがする。
え?!誰?この人?
え?人か?
頭、、あ。頭にこれがぶつけられたのか…?
落ちていたのは財布?と思われる汚いがま口だった。
理解が追いつかない。
僕は私さんに助けを求めた。
「ママ、、、ごめんなさい!
ごめんなさい!
お酒は買えなかったの!
毎日は子供に売れないって言われて
お父さんかお母さんとおいでって!
あと、今日は友達いるから!
買い物は夕方から行くから!
ねえ、見て!僕くんのこと!
よく見て、ママ!僕くんのこと!」
おい、私さん。
僕を犠牲に逃げようとしてないか?
勘弁してくれ、トロールがいるなんて聞いてない!
てか、ママ!ママって!
お母さんいるじゃないか!
死んだんじゃなかったのか!?
戸惑う僕は、後ろにいるトロールが近づく気配を感じ後ろを振り向いた。
トロール、、ママかよ!?
トロールと目があう。
トロールは僕を見つめている。
僕は逃げられない。
トロールは、、
トロールは、、、
なんと涙を流しはじめたじゃないか!
(うええぇ…泣いても化け物だよおお。)
なんだなんだなんなんだ!?
トロールの涙は、ポロポロと止まらない。
狼狽える僕。
トロールは僕を抱きしめようとするが
全力でごめんこうむりたい。
サッと交わした僕の先には私さんがいて、悲しそうにベッドの横にある写真立てを指差した
「僕くん、ごめん。
僕くんが、お兄ちゃんに似てたから
家に連れて来たかったの。
ママはずっと、お兄ちゃんに会いたがっていたから」
そこに写る、少年は
そんなに似てるかわからないけど
僕っぽい、別の人だった。
どこかの家で
私さんと一緒に何か食べてる写真。
そうか、私さん。
死んでいたのは「お兄さん」なのか、
完全僕の勘違いじゃないか。
…この後、僕はリンゴを押し付けるように家を出た。
家を出る直前、仏壇があったことに気付いたけど、そこの写真は僕っぽいちょっと違う少年。
(同じくらいの人が死んでいるって不思議だな)
家への帰り道、なんとなく考えた。
あれが僕だったら、僕の家はどうなるのだろう。
あれほど、家族と別れるために
関西に行きたかった熱は、もお冷めて無くなっていた。
どこかで僕は、人の生き死にを
ゲームやアニメのように考えていたのかもしれない。
ニュースやワイドショー、新聞の世界を、どこか別の国の話のようにとらえていたんだ。
「帰ろう」
あの仏壇の少年は
東京で地震が起きてたら僕だったかもしれない。
その時、お兄ちゃんはもしかしたら
ずっと僕を探すだろう。
ああ、なんだろう
僕はこの気持ちをうまく表現する言葉が見つからない。
僕の気持ちや
考えや
思いは、いつだって
人にうまく伝える言葉にならないんだ。
…お腹いたいなぁ。頭も痛い。
水かぶってから帰ろう。
こうして、僕の一世一代の
友達と仲良くする努力期間は終わりを告げた。
この後、20年後くらいに実は私さんとは街中で再開する。
あのトロールは、その後
酒の飲みすぎて、吐血した姿で死んでいたそうだ。
私さんは、トロールがアル中になってから
トロールは学校に行ってる私さんに酒を買わせるために、学校に電話してまでお使いをさせていた。
アル中が悪化していく中
必死でトロールを支えていたが、
成人した私さんは彼氏ができて、
彼氏の家から帰って来たら、トロールは死んでいた。
私さんの携帯には、着信が一件残っていたそうだ。
再開時、私さんはそう話しながら
何年も前の着信履歴のスクショを見せてくれた。
そして、こう話した
「ねえ、僕くん。やっとお母さんが死んだの。長かったよ」
…。
ああ、そうか。
君と僕は変人同士だったね。
「彼氏とお幸せにね。」
そう言ってわかれたのが、最後だった。
ガチャリ、とドアを開いたら
靴をポイポイっと脱ぎ捨て、私さんの部屋に…いこうとしたのだけど
きったな!!
いや、部屋までの道だけどなんだこれ!
服と謎の紙と、頭にガンガンくる腐敗臭。
家の中は薄暗く、積まれた段ボールに
ソファと思われる椅子の上は、黒いシミの?シミのついた服か?
とにかく、汚い布。
カーテンの代わりに窓には紙が貼ってあり、ところどころ破れている
窓は空いているが、ちっとも爽やかな空気にはならない。
家では嗅いだことの無い異臭に、思わす鼻をつまむ。
なんだこれ…!
床に物がありすぎて、どうしても踏みつけてしまう。
困った僕は、私さんの方を見た。
((ダッシュ!))
すでに部屋に着いたと思われる私さんは、手招きをしながら声に出さず、口を動かし、僕にジェスチャーをしている。
あそこが部屋か、よし!
一気に部屋に駆け込みドアを閉めると
そこは、さっきの臭いが少なくだいぶマシな空間だった。
一部変なところをのぞいては。
「わああ…」
そこは、一面のキティちゃんの部屋。
どこもかしこもキティだらけ。
猫は僕も好きだけど、度がすぎているのではないだろうか…
正直キモい。だいぶ。
数年後の僕は、このようなキティ好きの人をキティラーと呼ぶことを知るのだが、
この時は、ただのキモい部屋にしか見えなかった。
流行の最前線の部屋だったのに、ごめん。私さん。
素直に、狐憑きの僕以外にも変人はいるもんだ、と思っていたよ。
変人(僕)変人(私)と出会う。
まあ、よいけどね!
さて、僕の目的は
「お母さん」がいない家の探索で
「お母さん」がいなくても生活はできるのか、見るためだ。
あのひどい空間は、お母さんがいないからなのかなぁ。そう思った瞬間
僕の耳がドアの開く音をとらえたと思ったら、頭にまるで全力で漫才の人がするようなツッコミを受けるような衝撃をうけた。
物理的に。
「外に出るなら酒買って来いっていったでしょーっ!!!」
ドアの前に立っていたのは
ゲームのトロールのようなオバさん。
顔が赤く、さっきの汚い部屋の臭いがする。
え?!誰?この人?
え?人か?
頭、、あ。頭にこれがぶつけられたのか…?
落ちていたのは財布?と思われる汚いがま口だった。
理解が追いつかない。
僕は私さんに助けを求めた。
「ママ、、、ごめんなさい!
ごめんなさい!
お酒は買えなかったの!
毎日は子供に売れないって言われて
お父さんかお母さんとおいでって!
あと、今日は友達いるから!
買い物は夕方から行くから!
ねえ、見て!僕くんのこと!
よく見て、ママ!僕くんのこと!」
おい、私さん。
僕を犠牲に逃げようとしてないか?
勘弁してくれ、トロールがいるなんて聞いてない!
てか、ママ!ママって!
お母さんいるじゃないか!
死んだんじゃなかったのか!?
戸惑う僕は、後ろにいるトロールが近づく気配を感じ後ろを振り向いた。
トロール、、ママかよ!?
トロールと目があう。
トロールは僕を見つめている。
僕は逃げられない。
トロールは、、
トロールは、、、
なんと涙を流しはじめたじゃないか!
(うええぇ…泣いても化け物だよおお。)
なんだなんだなんなんだ!?
トロールの涙は、ポロポロと止まらない。
狼狽える僕。
トロールは僕を抱きしめようとするが
全力でごめんこうむりたい。
サッと交わした僕の先には私さんがいて、悲しそうにベッドの横にある写真立てを指差した
「僕くん、ごめん。
僕くんが、お兄ちゃんに似てたから
家に連れて来たかったの。
ママはずっと、お兄ちゃんに会いたがっていたから」
そこに写る、少年は
そんなに似てるかわからないけど
僕っぽい、別の人だった。
どこかの家で
私さんと一緒に何か食べてる写真。
そうか、私さん。
死んでいたのは「お兄さん」なのか、
完全僕の勘違いじゃないか。
…この後、僕はリンゴを押し付けるように家を出た。
家を出る直前、仏壇があったことに気付いたけど、そこの写真は僕っぽいちょっと違う少年。
(同じくらいの人が死んでいるって不思議だな)
家への帰り道、なんとなく考えた。
あれが僕だったら、僕の家はどうなるのだろう。
あれほど、家族と別れるために
関西に行きたかった熱は、もお冷めて無くなっていた。
どこかで僕は、人の生き死にを
ゲームやアニメのように考えていたのかもしれない。
ニュースやワイドショー、新聞の世界を、どこか別の国の話のようにとらえていたんだ。
「帰ろう」
あの仏壇の少年は
東京で地震が起きてたら僕だったかもしれない。
その時、お兄ちゃんはもしかしたら
ずっと僕を探すだろう。
ああ、なんだろう
僕はこの気持ちをうまく表現する言葉が見つからない。
僕の気持ちや
考えや
思いは、いつだって
人にうまく伝える言葉にならないんだ。
…お腹いたいなぁ。頭も痛い。
水かぶってから帰ろう。
こうして、僕の一世一代の
友達と仲良くする努力期間は終わりを告げた。
この後、20年後くらいに実は私さんとは街中で再開する。
あのトロールは、その後
酒の飲みすぎて、吐血した姿で死んでいたそうだ。
私さんは、トロールがアル中になってから
トロールは学校に行ってる私さんに酒を買わせるために、学校に電話してまでお使いをさせていた。
アル中が悪化していく中
必死でトロールを支えていたが、
成人した私さんは彼氏ができて、
彼氏の家から帰って来たら、トロールは死んでいた。
私さんの携帯には、着信が一件残っていたそうだ。
再開時、私さんはそう話しながら
何年も前の着信履歴のスクショを見せてくれた。
そして、こう話した
「ねえ、僕くん。やっとお母さんが死んだの。長かったよ」
…。
ああ、そうか。
君と僕は変人同士だったね。
「彼氏とお幸せにね。」
そう言ってわかれたのが、最後だった。
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