君が僕を貫いた ー 現代異能バトルBL参加作品

音無野ウサギ

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7 泣く子には勝てない

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「ぼくもみたいのぉ。見に行きたいのぉ」

そう言って泣きべそをかくショーンに僕は困りきっていた。夕暮れに染まる景色の中ぺしょりと濡れた長いまつげをふるふるさせて道路をじっと見つめている子にただでさえ他の子達と違う生活を強いているのにまた一つ我慢させるのかと罪悪感が僕の胸に広がる。

公園から家へ帰る道すがらショーンは目をキラキラさせてお友達から聞いた異能バトルの話を僕にしてくれた。
最近仲良しのリョウ君は昨日から僕らの住む街で始まった異能バトルリーグの開会式に合わせて子供向けに行われた模擬戦を家族で見に行ったらしい。

「バトラーの人バーンって投げられててドーンって落ちても痛いって言わないんだって!しゃって立ち上がってやーって!すっごくかっこよかったって!!それでね、それでね」
元気いっぱいに身振りも加えて僕に伝えてくれるショーンが可愛くて僕の口元もついほころぶ。

(シオンも今回のリーグにきているんだよな。この子を見たらどう思うんだろう。自分のクローンだって気づくかな?関係者に見られたら隠し子って思われるかな?会いたいけど、会っても僕のことなんて気づいてもらえないかもしれないし)

僕がぼんやりとシオンのことを考えていると一人で話し続けていたショーンの勢いが衰えたことに気づく。
言いづらいことを話そうとしている気配を感じて顔を見ると少し尖らせた口元がへの字になっていた。

「リョウくんのパパがお仕事してるから特別に選手と握手してもらえたんだって」
(パパかぁ)
「大きなお手々だったって」
(リョウ君にパパの自慢されて羨ましくなっちゃったかな)
「僕も見に行きたいなぁ」
(この子が欲してるのは家族のお出かけなんだよな、でも……)

「ごめんね。ママのお仕事が忙しいからたぶん無理だと思う」

そう告げたとたんショーンの瞳から涙がこぼれ落ちた。

「みたいよぉ」

この年頃の子供なら大声を上げて泣いてもおかしくないのに逃亡生活を続けているショーンは大きな声を出して泣いてはいけないと身につけてしまった習慣でメソメソとなく。

ぎゃぁぎゃあと泣きわめかれたほうが世間的から注がれる目線は「あらあら大変ね」といったものになる。でもこう全身で悲しいです。ってぽろぽろと涙をこぼしながらじっと立ち尽くす幼児なんて夕焼け空の下に立たせてしまったらもうだめだ。

「いのぉばとるぅみにつれていってくだしゃい」

ひっくひっくとしゃくりをいれながらもささやかな願いを呟くショーンに通りすがりの人達が「どうしたのかしら?」「何にがそんなに悲しいのかな?」って遠くから気に掛けてくれる。「怒られたんじゃない?」「きつい目つきしてるもんあの親」「いのうバトル?異能バトルって言ったね」「子供向けとはいいがたいよなぁ」「でもほらバトラーの異能を選べばまあなんとか血みどろではなくいけるんじゃない?」「親の顔が怖いんだよなぁ、あの目」

(いや、僕の目つきについては分かってるけども)

結局悲しげに泣く幼子に通りすがりの優しい世間様が「これ割引券だけど」と手を差し伸べて来て、途端に目をキラキラさせるショーンに勝てるわけもなく僕らは異能バトルを見に行くことになってしまったのだった。

(しょうがない。こっそり見て帰れば直接シオンに会うわけじゃないし)

そう思ってにっこにこになったショーンを見る。

(きっと大丈夫)

人はそれをフラグと呼ぶんだけど、そんなこと僕が知るわけもないのだった。
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